リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 特定顧客との関係について
当社グループは、主要事業において、特定の取引先(以下「特定顧客」)に対する売上の依存度が高く、2023年9月期の全売上高に占める特定顧客への売上割合は54.1%となっております。当社グループは、能力測定技術、テスト理論の専門性、大規模テストの運用実績等の強みを基盤に、提供するサービスの付加価値を高めるとともに、事業シナジーを活かしたクロスセル等によって、幅広い顧客の開拓及び深耕を図ってまいりますが、特定顧客との契約内容に変更が生じた場合等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(2) テストセンター事業の安定的運営について
当社グループは、各種検定・試験のCBTの実施に当たり、その実施会場であるテストセンターを運営しており、2023年9月末現在で41の直営テストセンターを有しております。当社グループは、テストセンターの安定的な運営を実現できる体制構築に注力しておりますが、テストセンターの賃料や会場運営等に係る固定費の上昇リスクが生じる等、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(3) テスト運営・受託事業が性質上入札の結果に大きく影響されることについて
テスト運営・受託事業は国内の公的機関が発注者となる場合が多く、安定的に発注がある一方で、受託の際に入札プロセスが導入されるため長期に亘る継続的な契約を結ぶことが難しく、毎年の入札結果によっては受託できないことも起こりえます。当社グループが実績を積み重ね、技術点を上げることで、ある程度継続的に落札することが可能となるものの、新規参入企業による競争激化の可能性もあり、安定的かつ確実な受注環境にあるとはいえない事業です。特に文部科学省の実施する全国学力・学習状況調査等の大規模な案件が国内の公的機関から落札できなかった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(4) テスト運営・受託事業における収益性について
テスト運営・受託事業は、実施に係る印刷コストや採点等に関する経費が原価に占める割合が高い事業です。そのため、経済状況の変動におけるアルバイト賃金の上昇や外注費の高騰等により、期待した利益率を達成できない可能性があります。また、採点や集計に関するトラブルが発生した場合、印刷コストや採点等に関して追加負担が発生することがありますが、受託金額の上乗せを実現することは困難であることから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(5) 海外子会社の運営について
当社グループは、現在、インドのプネにある自社の開発拠点にて、システム開発やメンテナンスを行っております。また、アイルランドのダブリンにて、先端的なAIの開発に取り組んでおります。海外子会社については、運営体制の見直しによるスリム化を図り、早期のコスト削減に努めてまいりますが、各国における為替・金利などの動向が、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(6) 少子化による需要の低下について
国内の教育市場については、構造的な少子化傾向が継続しております。当社グループは、英語学習の低年齢化、リスキリング需要の増加、また各種試験のCBT化等の事業拡大機会を的確に捉え、独自のポジショニングの確立に向け取り組んでおりますが、業界全体に対する需要の低下が続いた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(7) 教育に関わる各種制度の変更について
国内市場においては、学習指導要領の改訂や就学支援金制度、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置等、行政による教育に関わる制度変更が発生します。このような制度変更に対しては早期の察知及びこれを踏まえた適切な対応に努めておりますが、早期の察知や十分な対応ができない場合等において、ビジネスチャンスの逸失や集客の低下等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(8) システム及びコンテンツ開発について
当社グループは、教育関連システムを自社で開発しており、開発コストが想定以上にかかった場合、サービス開始前の資金需要が発生する可能性があります。また、当社グループが展開するテスト商品及びラーニング商品は、時代の変化に合わせて継続的に新たなテスト問題の作成やラーニングのためのコンテンツ制作を行うことが不可欠です。世の中で必要とされるスキルや能力は変化しており、そのスキルや能力を測定又は習得していくコンテンツの開発力を高めることが重要となります。当社グループは、戦略との整合性や投資金額の妥当性の検証を踏まえ、システム及びコンテンツの開発に着手しておりますが、商品の競争力が十分でなくサービス売上が予定を下回った場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(9) 減損会計
当社グループは、各種サービスを提供するため、無形固定資産としてシステム提供のためのソフトウエア及び学習コンテンツを保有するとともに、継続的に開発投資を行っています。これらの資産を利用して提供するサービスの収益性が著しく低下した場合、当社グループが保有するソフトウエア等の資産について減損損失の計上が必要となることが考えられます。なお、当社が保有する固定資産のうち、主にプラットフォーム事業及びテスト等ライセンス事業の固定資産グループについて、当該資産から得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回ったことから、2023年9月期において減損損失を2,032,254千円計上しております。
(10) 有利子負債依存度について
当社グループの有利子負債依存比率(連結)は、2022年9月期末及び2023年9月期末でそれぞれ40.1%、37.9%となっております。当社グループでは、これまで、株式会社教育測定研究所が受託する学力調査等の案件において、アルバイト賃金や外注費等の一時的なコスト負担が生じることや、一般競争入札において流動比率を高めることが入札要件として有利である等の事情があり、借入を増やして現金及び預金残高を高めてまいりました。調達資金に基づく収益が意図したとおりに上がらず、流動比率を維持するための借り入れを継続する状況下で、急激な調達環境の悪化や金利の上昇などが起きた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があり、当社グループのキャッシュ・フロー、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(11) システムトラブルについて
当社グループの事業は、コンピューター・システムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、自然災害や事故等により通信ネットワークが切断された場合には、当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性があります。当社グループではセキュリティ対策やシステムの安定性確保に取り組んでおりますが、何らかの理由によりシステムトラブルが発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(12) 個人情報の管理について
株式会社教育測定研究所は、「英ナビ!」における会員情報や「CASEC」等の受験者情報等の個人情報を保有しており、「個人情報の保護に関する法律」の適用を受ける個人情報取扱事業者です。
株式会社教育測定研究所はプライバシーマークを認証取得するとともに、個人情報については、社内研修などを通じて社員への啓発活動を継続的に実施するなどの施策を講じておりますが、何らかの理由で個人情報が漏えいした場合、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(13) 人材の確保・育成について
当社グループは、今後持続的な成長を図るために、研究開発、事業開発、営業・マーケティング、内部管理の全ての面において、優秀な人材の確保、採用、育成が重要な課題であると認識しております。2023年10月から営業面と商品・サービス開発面を強化した組織体制に移行するとともに、新しい人事制度をスタートさせて、人材の活性化を図ることに加えて、社員への研修・教育制度を整備することで、優秀な人材の確保・育成に取り組んでまいります。しかしながら、これらの施策が効果的である保証はなく、必要な人材を確保できない可能性や育成した人材が当社グループの事業に十分に寄与できない可能性があります。そのような場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(14) 自然災害
当社グループにおいては、地震等の大災害発生に備え、グループ各社の被災状況の情報集約体制の構築、国内事業の情報システムの分散等の事業継続のための施策を講じております。
しかしながら、大災害が発生した場合、被災地域における営業活動の停止、当社グループの施設等の損壊、交通、通信、物流といった社会インフラの混乱、委託先の被災等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、各事業会社の本部機能の東京への集中度が高いため、東京に被害が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(15) 新感染症の発生について
新ウイルス等による感染症の拡大が発生した場合には、グループ各社や委託先の従業員の感染症罹患による事務所等における稼働率低下、各種試験団体による試験の中止や受験者数の大幅な減少、販売先・取引先における事業活動の制限の影響等により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(16) 技術革新等について
インターネット、クラウドコンピューティング、AI等の開発環境は技術進歩が速く、当社グループはソフトウエア投資等を通じて技術進歩に対応するべく努めておりますが、当社グループが想定する以上の技術革新により、当社グループの技術やサービスが競争力を失うような事態が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(17) 知的財産権について
当社グループは、現在、他社の知的財産権を侵害している事実は認識しておりません。しかしながら、当社グループの認識していない知的財産権が既に成立していることにより当社グループの事業運営が制約を受ける場合や第三者の知的財産権侵害が発覚した場合などにおいては、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
また、他社により当社グループの知的財産権が侵害された場合においては、他社が当社グループの参加する一般競争入札において優位な位置を占めるなどして、当社グループの受託を阻害し、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(18) 配当政策について
当社は、株主への利益還元を経営上の重要な課題として認識しており、事業基盤の整備状況や事業展開の状況、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。
ただし、当社としましては、内部留保の充実を図り、成長に向けた事業の拡充や組織体制、システム環境の整備への投資等の財源として有効活用することが、株主に対する最大の利益還元に繋がると考え、現状は通常配当を実施しておりません。将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら配当を実施していく方針ではありますが、現時点において通常配当の実施時期等については未定であります。
(19) 法的規制等について
当社グループは、下請法の他、広告事業の展開に伴い景品表示法の適用を受けております。当社グループではこれらの規制を遵守し事業活動を行っておりますが、当社グループに適用される各種法令・規則や税制等に関連して、今後急激に変更若しくは新たな規制の導入等が行われる場合、又は当社グループが行政処分、行政指導、司法手続等の対象になった場合や、その他当社グループに関連して訴訟や紛争等が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(20) 継続企業の前提に関する重要事象等について
当社グループは、当連結会計年度において、売上高は前年同期比減収となり、前連結会計年度に引き続き、営業損失、経常損失、親会社株主に帰属する当期純損失を計上している状況にあります。そのため、当社グループでは継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
しかしながら、親会社株主に帰属する当期純損失3,105,217千円は、将来に損失を繰り延べないための固定資産の減損損失や各種引当金繰入等の非資金支出2,875,379千円で構成されており、また営業損失に対しては、不採算なプロジェクトからの撤退や採算性の高いプロジェクトへの注力による選択と集中を推進するほか、新規の開発計画の見直し、原価や販管費の削減を継続的に行うことで、収益率の改善と営業キャッシュ・フローの創出を継続的に図り経営基盤の強化・安定に努めております。
また、2023年12月8日付けにて「中期経営計画 -事業計画及び成長可能性に関する事項-」を公表し、2025年9月期以降、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の黒字化を目指しております。
資金面においては、主力金融機関と良好な関係を維持しており、継続的な支援が得られるよう取引金融機関と協議し、手元流動資金の確保に努めており、当連結会計年度末において3,844,871千円の現金及び預金を確保しており、財務基盤は安定しております。
また、当社は2022年7月29日付「株式会社増進会ホールディングスとの資本業務提携契約の締結、株式の売出し、主要株主及び主要株主である筆頭株主並びにその他の関係会社の異動に関するお知らせ」にて開示のとおり、同日付で株式会社増進会ホールディングスとの資本業務提携契約を締結し、株式会社増進会ホールディングスの関係会社となっております。
以上から、当社グループでは、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。
(21) 増進会ホールディングスとの関係について
当社は2022年7月29日付「株式会社増進会ホールディングスとの資本業務提携契約の締結、株式の売出し、主要株主及び主要株主である筆頭株主並びにその他の関係会社の異動に関するお知らせ」において開示した通り、株式会社増進会ホールディングスとの間で資本業務提携契約を締結し、株式会社増進会ホールディングスの関係会社となっております。当社と株式会社増進会ホールディングスとの間の更なる業務提携は当社の収益力の強化ひいては当社の企業価値向上に資すると考えておりますが、資本業務提携契約解消等により、当社と株式会社増進会ホールディングスの関係に変化が生じた場合には、レピュテーションリスクの増加、共同研究や協同プロジェクトを単独で遂行することによるリスクの増加、資本業務提携契約に基づく当社に対する貸付等の資金調達の支援を得られなくなること等が生じる可能性があります。このような場合及びその他の理由で株式会社増進会ホールディングスとの間の更なる業務提携又は当社の収益力の強化若しくは当社の企業価値向上が予定通りに進まない場合には、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(22) 内部統制について
当社は、2021年8月より、特別調査委員会を設置し、一連の会計処理について調査を行いました。その後、特別調査委員会による最終報告書の内容を踏まえ、2021年10月15日及び2022年2月28日付にて、過年度に係る有価証券報告書等の訂正を行いました。これに伴い、株式会社東京証券取引所より、当社株式は2022年4月1日付で「特設注意市場銘柄」の指定を受けましたが、内部管理体制の強化に取り組んできた結果、その取組み内容が評価され、2023年5月20日付で当該指定は解除されております。当社は、引き続き、内部管理体制の整備・強化を継続してまいりますが、再度、内部管理体制に不備が生じた場合には、信用失墜や株価へ影響が生じる可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
株主に対する利益還元は経営の最重要政策のひとつとして位置づけており、安定した業績をあげ継続的に配当を行うことを基本としつつ、企業体質の強化や事業展開等を考慮した上で業績に対応した配当を行うこととしております。
しかしながら、当期の配当につきましては、当社の現状を鑑み、無配となりました。
なお、当社は会社法第454条第5項に基づき、取締役会の決議によって、毎年3月31日を基準日として中間配当を実施できる旨を定款に定めております。期末配当については株主総会、中間配当については取締役会を配当の決定機関としております。