人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数165名(単体) 71,127名(連結)
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平均年齢45.4歳(単体)
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平均勤続年数16.9年(単体)
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平均年収15,885,604円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
(2023年12月31日現在)
(注) 1.従業員数は就業人員数であります。
2.当連結会計年度より、報告セグメントは、従来の「国内事業」及び「海外事業」の2セグメント制から、「日本」、「Americas」、「EMEA」及び「APAC」の4セグメント制に変更しております。また、前連結会計年度において「海外事業」に含めておりましたロシア事業及び海外事業に帰属する全社機能に関する従業員数は、当連結会計年度より、「全社」へ変更しております。
(2) 提出会社の状況
(2023年12月31日現在)
(注) 1.従業員数は就業人員数(委任型執行役員等を除く)であります。
2.平均勤続年数は、当社子会社からの出向者については当該子会社での勤続年数を通算しております。
3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
(3) 労働組合の状況
当社に労働組合はありませんが、一部の連結子会社には、電通労働組合など各社労働組合が組織されており、組合員数は、電通労働組合及びその他の組合を合計した当社グループの組合合計で5,485人であります。
なお、労使関係は円滑で特記事項はありません。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業等取得率及び労働者の男女の賃金の差異
① 提出会社
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「―」は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)において選択公表をしていない場合、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定による公表義務がない場合、「労働者の男女の賃金の差異」について男女の両方若しくはいずれかの該当者がいない場合、又は「男性労働者の育児休業取得率」について分母がゼロとなる場合を示しております。
② 連結子会社
当社の主要な国内連結子会社各社の、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づく管理職に占める女性労働者の割合、育児休業等取得率及び労働者の男女の賃金の差異は以下のとおりであります。また、下記以外の連結子会社につきましては、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報」に記載しております。
(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。
4.2024年1月1日付で㈱電通総研に社名変更しております。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
(1) 2030サステナビリティ戦略
当社グループにとってサステナビリティとは、パーパスである「an invitation to the never before.」を実現するための前提であり、経営の中核であります。
サステナビリティは、短期の利益だけでなく、中長期の持続性を重視し、自己利益をこえた、サプライチェーン、業界、社会、ひいては地球視点での全体最適を志向するものであり、この価値観をステークホルダーと共有し、新たな関係性を構築することを当社グループは目指しております。
2023年、「グループ・マネジメント・チーム」によるグローバル経営体制へ移行し、それに伴うグループビジョンの設定やビジネスモデルの拡張に伴い、様々な外部環境の変化の中で当社グループが持続的に成長・価値提供していくための重要課題、マテリアリティを策定しました。「企業倫理とコンプライアンス/データセキュリティ」「DEI」「人的資本の開発」「気候変動へのアクション」「イノベーションに導くリーダーシップ」の5つであります。策定の過程では、当社グループの現状と将来を見据えた経営戦略やビジネスモデル、グループリスク委員会が管理するグループ経営上のリスク項目さらには取締役会やサステナビリティ関連会議資料等を分析対象としております。
このマテリアリティを反映してアップデートした「2030サステナビリティ戦略」では、パーパス、ビジョン、経営方針のもと、「困難な社会課題を解決する未来のアイデアを生み出していく」ことによって、当社グループと社会のサステナビリティを実現することを掲げております。
なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
2030サステナビリティ戦略
(注)1.「2030サステナビリティ戦略」の詳細についてはHP(https://www.group.dentsu.com/jp/philosophy/sustainability-strategy-2030.html)で開示しております。
2.マテリアリティ策定過程の詳細については、「統合レポート2023」(https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/common/pdf/integrated-report2023_all.pdf)で開示しております。
① ガバナンス
サステナビリティに関する当社グループのガバナンス体制は以下の通りであります。
・取締役会(BOD)
当社グループのサステナビリティを巡る取組みについての基本的方針を定め、グループ・マネジメント・ボード(GMB)が決議・承認したサステナビリティに関連する経営上の重要な事項に関して報告を受け、監督する責任を担います。
・グループ・マネジメント・ボード(GMB)
当社グループのサステナビリティに関してグループサステナビリティ委員会(GSC)が策定する戦略、KPI、アクティベーション等について、GSCからの報告を審議し、決議・承認するとともに、その事案を取締役会に報告する責任を担い、GSCの活動をモニタリングします。
・グループサステナビリティ委員会(GSC)
当社グループでは2021年8月に「サステナブル・ビジネス・ボード」を設置し、「2030サステナビリティ戦略」で掲げられた目標の進捗を年4回の会議の中でモニタリングしてきました。2023年1月からはグループ・マネジメント・チームによるグローバル経営体制へと移行したことに伴い、グループ・マネジメント・ボードの直下に「グループサステナビリティ委員会」を新設しております。
同委員会は、さまざまな専門性と地域性を持つ12名のメンバーで構成され(2023年度)、年4回の会議を通じて多様な視点から、「2030サステナビリティ戦略」の進捗状況を確認、評価しております。
2024年より、グローバル・チーフ・サステナビリティ・オフィサーが議長を務めております。
役員報酬との連動
2022年度より、当社グループの役員の年次賞与にESG指標を採用しております。詳細は、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (4) 役員の報酬等」を参照ください。
② リスク管理
当社グループにおけるサステナビリティに関連するリスクは、既存の経営戦略や事業等のリスクを反映して策定したマテリアリティによって識別され、年4回実施されるグループサステナビリティ委員会においてマテリアリティをベースとした「2030サステナビリティ戦略」の推進の進捗状況を評価、管理しております。
推進に当たっては、マテリアリティの項目別にグループサステナビリティ委員会のメンバーであるグループ・マネジメント・チームがその責任を負うとともに、グローバル・チーフ・サステナビリティ・オフィサーが全体統括を行います。
なお、同戦略に掲げた目標達成が計画通りに進捗しなかった場合等のリスクについては、グループリスク委員会で評価、管理しております。
③ 指標及び目標
2030サステナビリティ戦略で設定されたマテリアリティとゴールイメージは以下の通りであります。2024年度は、新たに指標・目標を設定し、それに基づく進捗状況の管理を開始する予定であります。
(2) 気候変動へのアクション
① 気候変動に対する戦略
気候変動は当社グループ、株主・投資家、パートナー、顧客企業等に対して財務をはじめとする多様な影響を及ぼし得る重要な課題であり、「2030サステナビリティ戦略」に組み込まれているマテリアリティの1つであります。
事業に対する潜在的な影響を最大限把握するため、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)の 分析をベースとして用いたシナリオ分析を行い、移行リスクと物理リスクを特定しております。詳細は、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿った、「電通グループ TCFDレポート 2023」(https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/common/pdf/TCFDreport2023.pdf)で公開しております。
これらのリスクについては、顧客企業や社会の適応を支援するための機会でもあることから、リスクと機会の双方を視野に入れた対応戦略を展開しております。詳細は後述の「リスクと機会を踏まえた事業方針」「目標と実績」をご覧ください。
気候変動に関するガバナンスについては、前述のサステナビリティ全般に関するガバナンスの項目をご覧ください。
② 事業方針
2023年度は以下の事業方針を展開しました。
・サステナビリティコンサルティング室の設立
2023年1月、㈱電通にサステナビリティコンサルティング室を新設しました。あらゆる企業にとってサステナビリティへの取組みが求められる中、その企業ならではのポテンシャル発見を軸にしながら、ビジネス創造やビジネス変革の支援をしております。
・マーケティング領域におけるGHG(温室効果ガス)排出量の可視化・削減と、誠実なコミュニケーション
2023年10月には、日本におけるマーケティングコミュニケーションに伴い排出されるGHGの削減を目的に、関連サプライチェーン内のGHG排出量可視化・GHG削減のためにマーケティング領域の脱炭素化イニシアティブ「Decarbonization Initiative for Marketing」を設立しました。同時に、英国を拠点に広告やコンテンツ制作におけるGHGの可視化を推進する一般社団法人Ad Greenと覚書を結び、今後のグローバルでの標準ツールの開発に向けて取組みを進めることで合意しております。
また気候変動を含むサステナビリティ課題全般のコミュニケーションについて、同年12月には、業界横断の重要課題であるグリーンウォッシュ(企業等の団体が実態以上に環境への取組みを行っているように見せかけるコミュニケーション)に陥らないためのヒントを、日本で活動する企業や団体向けにまとめた「サステナビリティ・コミュニケーションガイド2023」を作成、無償公開しております。詳細はHPを(https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/pdf/sustainability-communication-guide2023.pdf)をご覧ください。
・社外ステークホルダーとの戦略的パートナーシップ
社外ステークホルダーとの協働から得られる知見をグループ内の経営に生かし、気候変動をはじめとするサステナビリティ課題への対応の高度化を目指します。
2023年度は、世界経済フォーラム(World Economic Forum)のストラテジック・パートナーに9年連続で選出され、「Alliance of CEO Climate Leaders(CEO気候リーダー・アライアンス)」のメンバーとしてネットゼロ社会の実現に向けた活動に取組んでおります。
また2023年7月には、持続可能な脱炭素社会実現を目指す日本独自の企業グループ、日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)に、賛助会員として参画しました。
③ 目標と実績
当社グループは、パリ協定で示された「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力」の目標を視野に、より野心的なゴールを設定し、その達成に取り組んでおります。
・2040年までにGHG排出ネットゼロ
当社グループでは、GHGプロトコルのスコープ1-3において2040年までにGHG排出量ネットゼロ、2030年までに同じくスコープ1-3のGHG排出量を2019年比で46%削減することを目標としています。
ネットゼロの目標については、当社グループの海外事業を統括していた電通インターナショナルが、すでに2021年10月にSBTi(Science Based Targets initiative)の認定を受けていましたが、2024年度中にこれを国内事業を含むグループ全体に拡大することを約束しております。
(注)GHGは、ISO14064-3:2019に基づいて算定しております。
GHG排出量(tCO2e)
(注)1.マーケット基準は、スコープ2について適用しています。
2.2023年実績に含まれるスコープ1、スコープ2及びスコープ3の各合計数値については、KPMGあずさサステナビリティ株式会社による第三者保証を取得しております。第三者保証報告書はHP(https://www.group.dentsu.com/jp/sustainability/common/pdf/third-party-assurance.pdf)で開示しております。
・再生可能エネルギー比率100%
企業が自らの事業の使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブであるRE100のメンバーとして、2030年までに使用電力における再生可能エネルギーの比率を100%とすることを目指しております。日本国内においては2023年12月から、国内で最もエネルギー使用割合の高い汐留ビルに100%再エネ可能エネルギーを導入しました。
再生可能エネルギー使用量(kWh)
(注)再生可能エネルギー使用量に関するデータは、第三者保証対象外です。
(3) 人権の尊重
電通グループにとって人権の尊重は自社グループの存立基盤、倫理的かつ持続可能なビジネスの根幹をなす重要事項です。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、人権の擁護に努めてまいります。2018年に「電通グループ人権方針」を策定しており、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」などの国際的なフレームワークに則ることも明文化しております。詳細はHP(https://www.japan.dentsu.com/jp/esg/human_rights_policy.html)に開示しております。
① 戦略
電通グループ全体のガバナンス体制と部門横断的な取組みを推進し、法令遵守とあらゆるステークホルダーからの要請への準備を開始しております。 また、「2030サステナビリティ戦略」との整合も図ってまいります。
② ガバナンス
電通グループでの人権への取組みの統括はグローバル・チーフ・ガバナンス・オフィサーが担っており、業務上の人権対応は専門部署の担当者が行っております(グループ全体をカバーするべく、日本及び海外の両方に配置して連携しております)。
また、グループサステナビリティ委員会では各回必須で「人権」を議題として取り扱い、日本固有の課題についてはdentsu Japanのマネジメントで構成する「電通グループ人権委員会」で対応しております。
③ リスク管理
「統合レポート2023」「人権への取り組み」の項目で記載の通り、2023年度のdentsu Japanを対象に実施した人権デューディリジェンスに基づく重点課題は以下の4分野となっております。
・ 委託先の労働環境
・ 電通グループ内の労働環境
・ 不適切な表現(広告表現の適切性)
・ 再委託先における個人情報保護
④ 指標と目標
指標と目標は、以下の2項目となっております。
・ グループ全体での人権デューディリジェンスの実施を通じた課題の更なる明確化とそれらを反映した人権啓発活動の更新(人権方針、研修等)。
・ 人権に関する取組みの積極的な情報公開と外部ステークホルダーとの対話。
(4) 人的資本に関する方針と取り組み
① 基本方針
当社グループのビジョン<「人起点の変革」の最前線に立ち、社会にポジティブな動力を生み出す>には、「人」が創り出す可能性を信じ、そこから生まれる新たな力で社会に貢献していきたいという思いが込められております。この実現のためには、我々の最大の資産であるユニークで多様な人財の力を解き放ち、その力を掛け合わせてゆくことが重要と考えております。
こうした前提のもと、当社グループの人的資本のとらえ方の根幹にあるのは「人は誰でも『貢献したい。成長したい。』という気持ちを持っており、仕事を通じて自身の成長を実感することに喜びを感じる」という信念であります。こうした人の自律的な成長意欲を信じ、誰もがチャレンジし成長する機会が得られる環境を実現することで、人的資本、つまり「人」の可能性に投資し、そのケイパビリティを拡張していく経営を進めてまいります。
② 戦略
「人起点の変革」を推進し社会に貢献していくために、当社グループは従業員のユニークで多岐に渡るケイパビリティを統合し、顧客の持続的成長を実現する「インテグレーテッド・グロース・ソリュ―ション(IGS)」に注力してまいります。このIGSによる成長をグローバルに実現していくことを目指した体制として、2023年より、世界の4つの地域が一体となった経営体制を発足しました。更にグローバル共通の事業の枠組みとして「One dentsu オペレーティング・モデル」を発表することで、地域/事業領域ごとの協業を促し、より統合されたサービスが提供しやすい業務体制を整えることに着手しました。一方で、このビジネス変革を規律をもって遂行するために、ガバナンスと内部統制の再構築も経営戦略の要として位置付けました。体制整備とともに、インテグリティを重視した組織風土の醸成を鍵とし、意識行動改革に向けた取り組みを進めております。
これらの経営戦略、重要課題に応えていくためには、「人」の可能性をどのように拡張していくかが大きな焦点ですが、これには、大きく二つの望ましい状態の実現が必要と考えております。まず、多様な人財が繋がり合い、ともに学び、互いの専門性を掛け合わせることで組織・個人ともに高いケイパビリティを持っている状態であります。これは当社グループならではの「統合」されたソリューションの提供に不可欠なものであります。そしてもう一つは、従業員一人ひとりがインテグリティを持ちチームに前向きに貢献しようとする意識、エンゲージメントが高まっている状態であります。この二つの状態をグローバルに実現できることが、One dentsuで「人」の可能性を高め、経営戦略実現を支援している姿であり、我々の目指すところでもあります。
2023年度からは、この目標に対しての取り組みを一段と加速してゆくことができました。まず、1月よりグローバル企業で人事プロフェッショナルとして経験を積んできた谷本美穂が新チーフ・HR・オフィサー(CHRO)として参画し、グローバル横断的な人事リーダーシップチームを構築しました。これにより従来、日本市場、海外市場それぞれに向けた組織として運営されていた人事部門をワンチームとして主要ポジションと責任領域を再定義し、より積極的な情報共有や協業を可能にしました。この中でCHROのもと世界4地域の人事責任者が集合して必要な戦略や課題を集中的に議論する場を年2回設定し、グローバルで一貫した戦略体系を構築するに至りました。
・人事ミッション
グローバル人事戦略の起点となるのは、人事領域の担当者が何を目指して仕事をするのかを定めたミッションであります。CHROと4地域の代表、またタレントや報酬、人財データなどの専門分野のリーダーが議論し確立したのが、「1つのチームになり、仲間の力を引き出す」というミッションであります。これには、人事領域の各チームが垣根無くそれぞれの力を出し合い、従業員一人ひとり、そして組織全体の秘める可能性を解き放つ、という我々の役割を明確に表しております。この人事ミッションのもと、経営戦略の支援・ビジョンの実現に向けた具体的な注力領域などを定めた三つの柱から成る人事戦略体系を構築しております。
・人事戦略1: People Growth(人の成長)
人の成長をどのように実現するかは、言うまでもなく人財戦略の最重要な柱であります。従業員一人ひとりの成長はもちろんのこと、組織が変革を求められている状況においては、リーダーがいかに成長をドライブできるかが重要であります。組織が発揮できる能力は、それを率いるリーダーの行動が与える影響により、大きく異なると考えるためです。
当社グループにおいても、人と組織の成長を加速する鍵となるのはリーダーシップの在り方であると考え、人的資本投資の中でも優先的に取り組みを進めております。
ⅰ) dentsu Leadership Attributesの定義
「dentsuの目指す姿」を牽引するリーダーシップを見極め、育てることを重点課題と捉え、dentsuのリーダーが持つべきリーダーシップ行動要件を「dentsu Leadership Attributes(dLA)」として言語化・定義しました。dLAは組織としてどのような行動が推奨され評価されるべきなのかを示す5つの要素から構成されております。変革力を表すDrive Change、イノベーション力を表すFoster Innovation through one-dentsu、人と組織の育成力を表すNurture People & Culture、顧客と社会へのソリューション提供をリードする力を表すLead with Client at Heart、グローバルなリーダー力を表すDemonstrate Global Leadership。2023年はまずdentsu Japanの主要役員の評価指標としてこの要件の導入を開始しました。今後これらの要素は人財選定・評価・育成の指針となっていきます。
ⅱ) 人財を見極め、育てるためのディスカッション
今後のリーダー人財候補者の特定・育成に向けては、dLAに基づいた「People Discussion」(人財についてレビューをするディスカッション)をグループ・各リージョンの経営層を対象に部門ごとに実施しました。この活動の結果、2023年度におけるグループ・マネジメント・チームの主要15ポジションについて、当該部門における有力人財の可視化、後継者候補の選定を行うとともに、育成投資についての焦点を絞ることができました。さらに、この可視化を通じ、より若年の後継候補プールを厚く設定することが課題の一つとして確認できたため、2024年度は組織の最上位から数段階広げた層を議論対象とし、より深く広い人財パイプライン作りを目指しております。
ⅲ) 高ポテンシャル人財、戦略領域人財への投資
People Discussionを通じて可視化された人財に対してはそのポテンシャルを最大化すべく、戦略的なグローバルで多様な環境での自身をストレッチさせる業務の経験機会、スキルや視野を広げる育成プログラムを提供してまいります。2023年の11月にはOne dentsuオペレーティング・モデル推進に向け組織を改編しましたが、この新組織におけるグローバルリーダーの抜擢の際には、重点人財に成長につながる体験をさせることも意図されております。また、育成プログラムの代表的なものとしてはトップビジネススクールと連携し、dentsuらしさも追求した次世代リーダー育成プログラム「Leading High Performing Organization」、日本事業の強みである統合的なクライアントソリューションをグローバルに広めていく「EIGYO」プログラムなどを提供しております。両プログラムを通じてのべ100名以上が参加し、リーダーとしての成長機会とともに地域・事業を越えたネットワーキングの場を得て活躍しております。2024年度はこれらのプログラムに「One dentsuオペレーティング・モデル」に即したブラッシュアップを加え発展させてまいります。
また、当社グループが目指す成長に向け、日常的なパフォーマンス支援、評価フィードバックの促進に加え、幅広い従業員に向けたスキルアップやリスキリングも促進しております。幅広い事業ニーズに応えるためのオンライン学習プラットフォームではデータテクノロジー、マーケティングからクリエイティビティを養うリベラルアーツまで、幅広い領域を網羅したコンテンツを提供しております。これらの取り組みも通じ、重点分野と位置づけるCT&T領域では人財強化を継続しており、日本市場で同領域に携わる人員の構成割合は37.0%(2022年12月末時点)から39.2%(2023年12月末時点)に伸長することができました。
ⅳ) 人を育てる仕組みと文化の定着に向けて
今後継続的に十分な効果を出していくため、ここまでに挙げた各種施策は継続的なサイクルの仕組みとして設計されており、今後はこれを通じた「リーダーがリーダーを育てる」文化を定着させていくことを目指します。具体的には、dLAの各種人事施策への組み込みと定期的なPeople Discussionの運営・対象範囲の拡大を通して、人財の可視化や戦略的人財配置などの直接効果にとどまらず、議論に参加する各リーダー自身の人財育成意識に働きかけてまいります。今後はこの成果を確認するべく、プロセスとしての対話時間や結果としての後継者準備率をモニタリングする一方で、エンゲージメント調査を通じ、従業員側の成長実感がどの程度得られたのかも併せて計測してまいります。これら複合的な指標を用いて、People Growthの進捗を確認してまいります。
・人事戦略2:Winning as One Team(ワンチームとなって勝つ組織)
当社グループの強みは多様でユニークな個の力を掛け合わせて価値を生み出すところに存在し、そしてそこに我々ならではのクリエイティビティが生まれると考えます。その価値発揮のため、グローバルに存在する人財の一人ひとりが個々の強みを発揮するに留まらず、同じ目的に向かってコラボレーションすること、つまりワンチームになることを重視しております。その素地となるのはインテグリティに基づくdentsuらしいカルチャーづくりとDEIであると捉えて、重点的に活動を行っております。
ⅰ) 地域性に応じたDEIへの多様なアプローチ
グローバルに事業を展開する当社グループでは、DEIへの取り組みは一貫性を持たせたグローバル施策と、地域の事情を汲んだ実効性のあるローカル施策のバランスを考慮しつつ進めております。人財の多様性についての課題認識は地域社会ごとに異なり、時にセンシティブな要素もはらんでおります。4つの地域ごとにチーフ・エクイティ・オフィサー(日本はチーフ・ダイバーシティ・オフィサー)を配置し、地域の状況に即したきめ細かい活動が行える体制を築いております。
グローバル単位ではジェンダーの多様性を共通の取り組み課題と位置づけ、数値目標として2030年度までに女性リーダー比率を45%にすることを掲げております。2023年末の実績値は32.4%であり、年初に目標として掲げた32.5%にわずかに届かない結果でした。この目標は役員報酬のKPIにも組み込まれていることもあり、結果を経営陣でも十分に認識した上で、今後の改善に向けて引き続き経営陣のコミットメントを高めてまいります。
またもう一つの多様性である国籍視点では、国に関係なく人財が活躍できる環境の整備として、グループ内で短期・中長期に人財が交流する機会づくりや、国を跨いだ異動を円滑化するポリシーの整備も行っております。なお、2024年度からはDEI領域を人事部門の管轄とすることで、多くの人事施策と密接に連携した推進ができる体制を築いてまいります。
ⅱ) エンゲージメント調査を通じた組織カルチャーについての課題の特定
従業員がチームとして前向きに協力し合う文化の形成には、エンゲージメントは最も重要な要素の一つです。当グループでは毎年の調査で、従業員の満足度と推奨度からエンゲージメントスコアを算出しており、全グループ単位と地域・会社などの部門単位で課題を特定した上で改善に取り組んでおります。また役員報酬のKPIにも組み込んでおります。
直近の調査結果からは、日本と海外それぞれで組織カルチャーについての課題がある事が捉えられており、日本では将来性、経営リーダーシップ、イノベーションといった項目へのスコア(信頼や期待感)、海外ではビジョン・戦略、人財開発、経営からのコミュニケーションなどの項目へのスコアが重点課題であると捉えております。2023年度は、経営からのコミュニケーションやメッセージの明確性に改善の機会があると捉え、国内・海外ともに経営層からメッセージなどの情報発信・Town Hall Meetingなどの直接インタラクションの機会を数多く設定しました。今後スコア改善には更に踏み込んだ戦略のメッセージや双方向のコミュニケーションが重要と考え、2024年度にはコロナ禍後初めてグループ内主要人財を東京に集めたシニアリーダーシップミーティングを実施するなど、より密度の濃い活動を展開いたします。
他方、ガバナンス観点で重視される個人のインテグリティやコンプライアンス意識についての回答は、日本・海外とも比較的高いスコアを記録しました。これを前向きな機会と捉え、更なる意識向上や活動改善の取り組みを進めてまいります。
ⅲ) フレキシブルで生産性の高い働き方ができる環境の整備
従業員が十分に活躍できる環境整備として、労働環境の改革にも継続的に取り組んでおります。ハイブリッドワークを前提とした柔軟性の高い働き方を引き続き推奨しつつ、各地域で年間2~4日の特別休暇の付与、各社・各現場においてメンタルヘルスをサポートする人財のためのMental Health First Aider資格取得支援など、多角的な施策を打ち出しております。
日本で継続してきた労働環境改革においては、勤務管理や従業員見守りなどに関する意識・活動のベースを保ちつつ、ハイブリッドな働き方などの現場実態に即し、今後の持続的成長に向けた活動を継続しております。
ⅳ) 多様な能力のコラボレーションを高める従業員意識
多様な従業員が安心して能力を発揮し、コラボレーションを通じてより良いソリューションを生み出していく組織文化では、それを育む従業員の意識が重要であります。DEI活動では多様な人財が活躍できる仕組みを作る一方で、様々な「違い」のある従業員同士がその差を理解し、互いに尊重し合いながら働くことができる意識と、そのための場づくりの活動にも注力しております。この成果を確認するべく、エンゲージメント調査に盛り込んでいる「敬意/Respect」のスコアを指標とし、各従業員が職場で他者から尊重されていると感じられているかどうかを注視してまいります。
同様に、コラボレーションに対する意識、インテグリティに対する意識についても、対応するエンゲージメント調査のスコアをモニタリングし、関係施策のPDCAに繋げてまいります。組織文化の状況を一つの指標で定量的に測定していくことは困難ではあるものの、当社グループの目指す状態を構成する要素として、互いへの敬意、コラボレーション意識、インテグリティ意識の水準を把握し、総合値としてのエンゲージメントとの関係性にも着目することで、Winning as One Teamの推進に活用してまいります。
・人事戦略3:HR Service Excellence(最良の人事サービスとパートナーシップ)
People Growth、Winning as One Teamの各戦略に基づく一連の施策を具現化していく際、人事部門は事業領域と質の高いパートナーシップを築くことが重要であります。この実現のため、人事部門の専門性と生産性を高め、人と組織の面から経営戦略や意思決定を支えていくグローバル体制を構築しております。具体的には、経営・事業に寄り添うHRビジネスパートナー(HRBP)と、人財マネジメントや報酬設計などの専門チームから成るCenter of Excellence(CoE)を両輪とし、組織的なケイパビリティを高めております。
ⅰ) 事業変革に対応したHRBPサポート
ビジネスに最も近い位置で様々な支援を行うHRBPは、人事パートナーシップの要であり、その能力を向上させることが人事サービスの質に直結します。海外においては直近、新たな事業オペレーティング・モデルに合わせHRBPの配置を見直し、密にビジネスニーズに応えられる体制を構築しました。特に新たな組織設計に基づく「プラクティス」提供部門に対して迅速にサービスを展開できるよう、整備を進めております。
並行してグループ内最大の拠点である日本におけるHRBP機能の導入も試験的に進めており、海外の各地域で先行する知見を取り込みつつ、㈱電通グループでのサポートを開始いたしました。2023年度には日本でのコーポレート部門に対するPeople Discussionを実施しましたが、その際、HRBPの役割をもつ人事メンバーが各部門リーダーと対話を重ねる機会を設けました。この試みにより、組織独自の課題の明確化や、グローバルリーダー候補となる可能性がある人財の把握などの成果が出始めております。
ⅱ) HRサービスインフラの整備
人事部門の活動やサービスを支える人財データ領域への投資・活動も継続しており、直近では特にデータの精度向上、及びグループ共通のデータ項目整備に注力しております。中でも日本には数多くの法人が存在するため、他地域と比べて人財情報の共通定義を設けることが困難な状況でしたが、2023年度に統一データテンプレートを開発し、各社の人財状況を同じデータ項目で俯瞰することが可能になりました。これにより、今後の各施策のKPIモニタリングの精度が上がるだけでなく、ファクト情報に基づいた将来の組織戦略を描くことが可能になります。これらの取り組みを通じ、従来は地域・個社ごとにあった情報の統合が可能になり、グループ単位での戦略的な意思決定に寄与できる基盤を整えつつあります。
また、人財データ把握の枠組みの一つとしてグループ共通の職務・等級フレーム「One Dentsu Career Framework」の導入を進めております。海外で組織横断的に定着してきたこのフレームワークについて、2023年度はグループ経営層への導入を始めました。将来的には、当社グループに存在する全ての職務・等級を同じ単位で把握することが可能になり、より正確な人財データの提供、戦略的なリソースマネジメント及び人財の配置、従業員のキャリア選択肢の拡大など、様々なかたちで応用の幅が広がります。2024年度には等級(ジョブレベル)をグループ共通で把握することを目指してプロジェクトを推進しております。
もう一つ重要な柱として日常業務の効率性を高める取り組みも継続しており、作業量の多いオペレーション業務についてはプロセスの最適化や自動化、コスト効率の高いニアショア・オフショア地域でのシェアードサービスの活用を推進しております。地域間の業務の違いも考慮しながら、全体最適化が望ましい業務についてはプロセスやシステムを見直し、グローバルでの統合、標準化などを通じ、更なる生産性の向上を進めていく考えであります。