リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、ここに記載した事項は、当社グループに関する全てのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ないまたは重要と見なされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)外部事業環境等
当社グループの経営成績は、自動車や電子部品などの需要動向により影響を受けるほか、原油や基礎石油化学製品などの原燃料市況ならびに為替相場の変動の影響を受ける可能性があります。当社グループは、経営計画「Mission 2030」において、全ての事業をスペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」とすることを目指し、外部環境の変化に左右されにくい、企業体質の強化を進めてまいります。
(2)品質、製造物責任
当社グループは、社会および顧客の信頼を第一に考え、安心して使用できる製品の提供のため、各事業セグメントに品質保証部門をそれぞれ設置し、当社および主要子会社における全事業所の対象製品において継続的な品質改善に努め、ISO品質マネジメントシステム規格の認証を取得するなど、万全の対策を講じております。しかしながら、製品やサービスの提供は高度かつ複雑な技術の集積であり、また原材料の外部調達もあることなどから品質保証の管理は複雑化しております。当社グループの製品やサービスに予期せぬ品質問題が発生した場合は当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(第三者認証等における不適切行為について)
当社および持分法適用関連会社である東洋スチレン株式会社が製造・販売する樹脂製品の一部において、米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories Limited Liability Company等の認証に関する不適切な行為が判明し、2023年5月29日に公表するとともに、当社グループと利害関係を有しない社外有識者による外部調査委員会を設置し、本件不適切行為に関する徹底的な調査と原因究明、再発防止策の提言を委嘱いたしました。
そして、2023年12月11日に同委員会から、調査報告書を受領しました。調査報告書では、不適切事案の申告に対する心理的安全性確保のための体制不足など、少なくない組織課題をご指摘いただきました。調査報告書の指摘を真摯に受け止め、コンプライアンス最優先の経営姿勢を当社グループ全体に浸透させるべく、抜本的な対応策を全力で進めております。
外部調査委員会の調査報告書および当社グループにおける対応策の詳細につきましては、当社HP「当社および持分法適用関連会社の樹脂製品における第三者認証等の不適切行為に関する外部調査委員会による調査報告書ならびに当社グループの対応策の公表について」
(https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1185/20231211_denka_report_measures.pdf)にて公表しております。
(3)事故・自然災害
当社グループは、安全最優先をすべての事業活動の基盤と位置付けております。2023年の配管破裂事故を教訓に、その再発防止対策であるリスクアセスメントの質的向上、工事安全管理、安全保安教育、安全監査など、すべての現場で災害を起こさないための総合的な対策を進めております。しかしながら、重大な産業事故や、地震、気候変動による急性の豪雨および大型台風などの自然災害が発生した場合、従業員や第三者への人的、物的な損害、生産設備の損壊や生産停止等が生じるリスクがあり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(当社青海工場 配管破裂事故について)
2023年6月14日に当社青海工場(新潟県糸魚川市)内にて製造設備のメンテナンス工事作業中に配管が破裂する事故が発生しました。本事故により、工事に携わっていた協力会社の1名の方が亡くなられ、2名の方が負傷されました。
当社は事故発生以降、関係当局による事故原因の調査に全面的に協力するとともに、当社においても専門的な調査により徹底した事故原因の究明および再発防止策の策定を行うため、2023年7月11日に社外の有識者および専門家を中心に構成される事故調査委員会を設置しました。
そして、2024年1月11日に、同委員会から最終報告書を受領しました。同委員会からの提言を重く受け止め、再発防止対策の確実な実行と安全文化の醸成に、鋭意取り組んでおります。
事故調査委員会の最終報告書および再発防止策等の詳細につきましては、当社HP「青海工場クロロプレンモノマー製造設備事故調査最終報告書」
(https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1193/20240111_denka_omi_finalreport.pdf)にて公表しております。
(4)環境
当社グループは、環境に関する各種法律、規制を遵守するとともに、パリ協定および日本政府が掲げる目標を念頭に、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた温室効果ガスの排出量削減に関する中長期目標を定め、自家水力発電所建設などを通じたクリーンエネルギーの利用拡大、温室効果ガスを回収・固定化・有効利用する革新技術の開発、製品のライフサイクルを通じた地球温暖化ガスの排出削減、グループ各工場の環境負荷物質排出削減など、環境負荷の低減に取り組んでおります。しかしながら、環境に関する規制の強化やカーボンプライシング(炭素税・排出権取引)が発動された場合、事業活動の制限や対応費用の負担等が発生し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(5)海外事業展開
当社グループは、アジア、米国、欧州等の国および地域に進出し、現地生産や販売をおこなうなど、海外展開を推進しております。海外での事業活動には予期できない法律や制度の変更、労使や人材確保の問題、テロや戦争などによる社会的混乱等のリスクが内在しており、これらのリスクが発生した場合、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(6)財務
当社グループは、将来の安定的な成長を持続するため、良好な財務バランスを維持することが重要と考えており、資金需要に見合った資金調達をおこなうことを基本的な方針としております。資金の流動性については、適正な水準の現預金を保持した上で、不測の事態に対応するため、取引金融機関と貸出コミットメント契約を締結することで流動性を確保しております。また、長期借入金の金利を固定化する等、金利変動リスクの低減を図っております。しかしながら、金融環境が急激に悪化した場合、資金調達リスクや金利の上昇等が発生し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(7)固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。当社グループが保有する固定資産について、事業環境の著しい悪化による収益性の低下等があった場合には、減損損失が発生し、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(8)訴訟等
当社グループは、倫理規定をはじめ各種社内規定に基づき、国内外の法令遵守はもちろんのこと、当社グループの社会における信頼を維持・確保することに努めておりますが、広範な事業活動を行う中で訴訟やその他の法律的手続きの対象となり、重要な訴訟等の提起を受けた場合には、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
なお、訴訟等については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (2) その他 ② 訴訟」をご参照下さい。
(9)新型コロナウイルス等の感染症
当社グループは、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、顧客、従業員、関係先等の安全・安心を第一に考え、国内外の事業所において各国の状況にあわせた感染防止対策をおこなっております。
今後、新型コロナウイルスやその他の感染症の流行が発生した場合には、ロックダウンなどによる活動の制限、サプライチェーンの停滞、世界経済の悪化などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)ロシア・ウクライナ情勢
当社グループはESG基本方針に則り、人権の尊重やサステナビリティの観点から、ロシア・ウクライナ情勢に対する国際社会の動きや日本政府の方針を尊重するとともに、日本政府を含むステークホルダーと建設的な対話に努め、適切に対応してまいります。
今後、現下の情勢が長期化した場合には、一部原料の調達難に伴う操業への影響、およびナフサ・天然ガス・石炭など原燃料価格の継続的な高騰などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
その他、国内外の経済・政治情勢、技術革新、株式相場の変動、繰延税金資産の取崩し等が、当社グループの業績と財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、2023年4月に、2030年度までの8カ年を対象とする経営計画「Mission 2030」をスタートさせ、「事業価値創造」、「人財価値創造」、「経営価値創造」の3つを成長戦略として、財務・非財務の双方に重点を置き企業価値向上に取り組んでおります。「事業価値創造」では、デンカの全ての事業を、スペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」とすることを目指し、想定される未来世界とメガトレンドから導き出された「3つの注力分野」である「ICT & Energy」、「Healthcare」、「Sustainable Living」に重点を置いております。
これらの実現へ向けて、戦略投資や研究開発を行っていく一方、株主さまへの配分については、経営計画8年間累計で総還元性向50%を目安にいたします。そのうえで将来キャッシュフローなども加味し、1株当たり配当額の維持・増額を目指した、積極的な株主還元を実施いたします。
経営計画「Mission 2030」における株主還元
総還元性向50%(経営計画8年間累計)を目安にしたうえで、1株当たり配当額の維持・増額を目指す。
※総還元性向=(配当+自己株式取得)÷連結当期純利益
(注)基準日が当該当年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。