2024年6月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

当社は「世界中のありがとうの物語を蓄積し可視化する」をパーパス(存在目的)に掲げ、お互いに助け合いサポートし合う(互助)プラットフォームであるQ&A形式のコミュニティサイト「OKWAVE」の運営を中核に、組織や地域コミュニティの互助力を高めることで生産性を高めるソリューションを提供しています。

現在、当社グループでは企業理念の実現に向けて、創業以来運営しているQ&Aサービスの提供のほか、HR分野を対象としたソーシャルカードサービスを展開しております。このような事業の発展による収益構造や外部環境の変化を見据え、事業のリスクに対して適切かつ迅速に対処できる環境を整えるため、リスク管理についても組織的に取り組んでおります。

下記に示しておりますリスクは本有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当連結会計年度末日(2024年6月30日)において投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある主要なリスクであると当社が判断しているものであり、全てが網羅されているとは限りません。記載されたリスク以外のリスクが顕在化することで、それらが当社事業に悪影響を与える可能性があります。また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業に関するリスク
① Q&Aサイトの運営に関するリスク

a.レピュテーションの低下(発現可能性 低、影響度 大)

 当社グループが運営するQ&Aサイト「OKWAVE」に提供される質問・回答、商品、サービスに関する評価情報等は、全て利用者から提供される情報であり、利用者に質問・回答を強制することはできません。加えて、他のWebサイトと同様、Q&Aサイトには有用で好意的な回答だけでなく、誤った内容や誹謗中傷等の悪意的な内容の回答、第三者の著作権やプライバシー権等の権利を侵害する内容の回答も寄せられる可能性があります。当該リスクの発生可能性、発生時期は予測不能であり想定しておりませんが、何らかの原因により利用者から質問・回答等が提供されない状況が続いた場合や、誤った内容や誹謗中傷等の悪意的な内容の回答、第三者の著作権やプライバシー権等の権利を侵害する内容の回答が続いた場合、サイトの利用価値が薄れ、利用者からの信頼を失い当社グループの業務運営や、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、健全で質の高いサイト運営を実現させるため、参加度合に応じたOK-チップの付与等、参加意欲の醸成を図っております。

b.競合の発生と競争激化(発現可能性 低、影響度 中)

 企業向けサービスの提供においては、Q&Aコミュニティの運営ノウハウやシステムを各クライアント企業へ、特にカスタマーリレーションを目的として提供することで収入を得ております。今後の市場の動向や競合他社との価格競争等によっては当社グループの業績に影響をもたらす可能性があります。当該リスクの発生可能性、時期については当社グループの提供するシステムやマーケティング戦略が競合他社と比較して劣る場合には常態的に存在するものと考えており、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、Q&Aサイトを長年運営してきたノウハウにより他社との差別化に取り組んでいるほか、競合他社の動向を注視し、適切な販売価格の設定に取り組んでおります。さらに、新規事業領域の拡大に向けた新製品の開発、マーケティングの実施に取り組んでおります。

C.ドメイン「okwave.jp」の所有権(発現可能性 低、影響度 大)

 2021年6月に当社グループが運営していたソリューション事業を分社化により株式会社PRAZNA(現 株式会社PKSHA Communication)を新設し、株式会社PKSHA Technologyに譲渡しております。それに伴い、株式会社PKSHA Communicationに対して、「OKBIZ.」シリーズおよび「IBISE BY PKSHA」での「okwave.jp」ドメイン(以下「本ドメイン」)の使用許諾を行っておりましたが、当社が2022年7月に監理銘柄(確認中)に指定されたことにより、株式会社PKSHA Communicationに本ドメインが譲渡されております。なお、株式会社PKSHA Communicationで本ドメインの利用が終了した場合には当社に再譲渡する契約となっており、最終的には当社に本ドメインは帰属するものであること、また、当社が本ドメインを使用することは許諾されておりますが、本ドメインが当社に再譲渡なされない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 新規事業に関するリスク(発現可能性 低、影響度 中)

 当社グループでは、収益基盤をさらに拡大するために今後も新規事業への取り組みを進めていく方針ですが、新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の時間を要することが予想されます。このため、当社グループ全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当社グループの目論見どおりに推移せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなかった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 企業運営に関するリスク
① 法的リスク

a.訴訟の提起(発現可能性 中、影響度 中)

 当連結会計年度において、当社グループでは多岐にわたる事業展開をしており、様々な訴訟等を受ける可能性があり、その内容によっては当社グループの信用状況や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、事業に関連する各種法令、規制を遵守するとともに、知的財産権の適切な管理、契約内容の明確化、相手方との協議の実施により紛争の発生を未然に防ぐよう努めております。また、経営管理部を中心に関連会社の法務担当及び顧問弁護士等と連携し、体制の強化に努めております。

 しかしながら当社では、2022年4月18日に資金の運用を委任していた取引先の依頼を受けた代理人弁護士より、当該取引先が法的整理を行う方針であり、その債務整理を受任した旨の通知を受領しました。この通知により、当該取引先との間の契約で定めた投資運用が行われていない可能性があり、当該取引先に対する債権の取立不能または取立遅延のおそれが生じたことから、2022年6月27日付で過年度の決算訂正を行うとともに、多額の貸倒引当金を計上しております。今後、当該事項に関連して、株主等から訴訟を受ける可能性があります。

 また、当社は2022年9月21日付で、元代表取締役社長福田道夫氏及び元取締役野崎正徳氏より、2022年8月25日開催の臨時株主総会決議取消を求める訴訟を受けており、併せて、当社及び当社取締役らに対して職務執行停止・代行者選任の仮処分命令の申立てを受けておりますが、当社及び当社取締役らに対する職務執行停止・代行者選任の仮処分命令の申立てについては、2023年1月6日に東京地方裁判所より却下する旨の決定がなされております。また、臨時株主総会決議取消訴訟については、2023年7月12日に東京地方裁判所より棄却する旨の判決がなされております。

b.法的規制(発現可能性 低、影響度 大)

 当社グループの事業は「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダー責任制限法)」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定商取引に関する法律」等の制約を受けますため、今後、法的規制の変更等により新たな対応を余儀なくされる場合があります。このようなリスクが発生するのは各省庁等における現行の法解釈に何らかの変化が生じた場合、または、新たにインターネット関連業者を対象とした法的規制等が制定された場合と考えております。当社グループの業務が制約を受け想定通りに事業運営が進まなくなる等、当社グループの経営成績、及び今後の事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、遵法精神のもと各法に従って業務を遂行しております。また、経営管理部を中心に関連会社の法務担当及び顧問弁護士等と連携し、体制の強化に努めております。

② 情報セキュリティに関するリスク

a.システムトラブル(発現可能性 低、影響度 大)

 システム障害、外部からの不正アクセス等、当社グループの事業はインターネットを中心にした通信ネットワークに依存しております。そのため、ウイルスの侵入、自然災害、長期的な大規模停電、事故等によりネットワークが切断される場合や、事業所の損壊やその他の理由により業務継続が困難になる場合があり、Webサイト運営に支障が生じ、当社グループの経営に大きな影響を与える可能性があります。また、外部からの不正アクセスやウイルスの攻撃等による犯罪、職員の過失等によりデータの書き換え、データの消去や不正流出の恐れがあります。これらの障害や不正の発生可能性、時期は予測不可能であるため想定しておりませんが、発生した際には当社グループに直接損害が生じるほか、当社グループシステムへの信頼が低下し当社グループの事業、業績並びに企業としての社会的信頼に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、安定的な運用のためのシステム強化、セキュリティ強化、負荷分散、ディザスタ・リカバリー(災害時におけるシステム障害からの復旧、修復体制)等、通信環境安定化に努めております。

b.情報漏洩(発現可能性 低、影響度 大)

 不正アクセス者等からの侵入や委託先管理不備により、当社グループが保有する利用者等の個人情報、特定個人情報及び顧客企業に関する情報が外部に漏洩し、不正使用される可能性があります。これらの事態の発生可能性、時期は予測不可能であるため想定しておりませんが、このような事態が起こった場合には、当社グループへの損害賠償請求や当社情報セキュリティマネジメントに対する信用の失墜により、当社グループの事業推進及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、当社グループが保有する利用者等の個人情報、特定個人情報及び顧客企業に関する情報の取り扱いについては、ISO27001を取得し、厳重に社内管理並びに委託先管理を行っております。また、不正使用等に備え、当社は個人情報漏洩に対応する保険に加入しておりますが、全ての損失が完全に補填されるとは限りません。

③ 人材の確保に関するリスク

a.人材獲得競争の激化(発現可能性 低、影響度 中)

 今後、人材獲得の激化による既存社員の流出や新たな人材の確保ができない場合があります。このようなリスクは当社の職場環境、待遇が競合他社に比較して劣る場合には常態的に発生すると考えておりますが、発生した場合には十分なリソースの確保ができず当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、従業員の成長とやりがいの充足のため、定期的に新規事業創出の機会を与えております。また、働き甲斐のある職場環境の醸成にむけ組織環境を労使間の対話を通じて検討するなどの機会を設けております。

 

(3) 自然災害、感染症に関するリスク

① 激甚災害に関するリスク(発現可能性 低、影響度 中)

a.保有資産の損傷、システムや社員への被害による経済活動、事業活動の停滞

 自然災害が多く発生している昨今において大地震、水害、気候変動に伴うその他の自然災害により当社グループの事業運営が停滞し、開発や販売活動に支障をきたした場合、当社グループの業務運営や、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、緊急対策室を中心にBCP(事業継続計画)の策定、強化を行っております。またBCP訓練を定期的に実施し、緊急時の対応に関する社員教育を行っております。データに関してはディザスタ・リカバリー(災害時におけるシステム障害からの復旧、修復体制)等の対策を行っております。

② 感染症の流行に関するリスク

a.新型コロナウィルスの感染拡大(発現可能性 中、影響度 小)

 重大な新型感染症が発生し感染拡大した場合は、広範かつ予測が困難であり、問題が長期化することが予想されるため当社グループの経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは当該リスクへの対策として、リモートワーク、外出自粛といった外部環境の変化のなかで求められるサービスの提供を進めております。加えて、業務執行体制、販売体制においても従前と同様の対応をリモートにて行えるよう措置を講じております。

 

(4) 継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは、2022年6月期において、Raging Bull合同会社への投資運用取引による損失(貸倒引当金繰入額3,429,917千円、特別調査費用引当金繰入額99,337千円等)を、またOK FUND L.P.を通じて買収した株式会社アップライツ等の連結子会社化に関連して、のれんの減損損失437,621千円、海外への長期預け金に対する貸倒引当金繰入額363,074千円等を計上しており、親会社株主に帰属する当期純損失は5,120,709千円となりました。 

 2023年6月期においても株式会社アップライツ等に係る投資有価証券評価損318,581千円を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失は1,066,368千円となりました。  

 その結果、2023年6月期末における純資産は△98,562千円の債務超過となりました。  

 このような状況の中、2023年5月12日開催の臨時株主総会で株主割当による新株予約権の発行(払込期間 2023年6月1日から2023年9月1日)を決議し、当新株予約権の権利行使により総額757,371千円の新株発行を行いました。また、2023年9月13日を払込期日とする現物出資(借入金の株式化)により、191,664千円の新株発行を行いました。その結果、当連結会計年度末における純資産は185,891千円となり、債務超過は解消しております。しかしながら、当連結会計年度では営業損失285,528千円を計上しており、2020年6月期以降継続して営業損失を計上しております。これらの状況により、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。  

 当該状況を解消するために、当社グループは、下記の通り収益構造の改善及び財務基盤の安定化に取り組んでおります。  

 

①既存事業の収益構造の改善   

 顧客データの分析により事業の成長性を見極め、事業運営体制を見直し、確実性が高い分野へリソースを再配分することで、営業損益及び営業キャッシュ・フローの向上を図っております。  

 また、売上原価・販売費及び一般管理費について、前連結会計年度より大幅なコスト削減を実施しております。 

②M&Aの実施による収益構造の改善 

 今後、M&Aにより収益力のある企業・事業をグループ化することにより、当社グループの事業展開を加速させるとともに、営業損益及び営業キャッシュ・フローの向上を図ってまいります。 

③財務基盤の安定化   

 当社グループは、運転資金の安定的な確保と維持に向け、子会社の解散・清算を進めるなどグループ内の資金を最大限に有効活用してまいります。なお、取引金融機関等に対しても、引き続き協力を頂くための協議を進めていくとともに、資本の増強策の可能性についても検討しております。  

 

 しかしながら、当連結会計年度において285,528千円の営業損失の状況であることから、現時点においては、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。  

 なお、連結財務諸表は継続企業を前提として作成されており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表には反映しておりません。

 

 

配当政策

3 【配当政策】

 

当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しております。利益還元につきましては、業績の推移・財務状況、将来の事業展開、投資計画等を総合的に勘案し、内部留保とのバランスを取りながら検討実施していくことを基本方針としております。

当期につきましては、手元流動性資金の確保を最優先と考え、誠に遺憾ではございますが無配とさせていただきました。

なお、当社は、会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当を行うことができる旨定款に定めております。