リスク
3【事業等のリスク】
当社グループの事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
これらの事項に対しましては、当社グループのリスクマネジメント委員会主導のもと、優先順位に基づき、1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(5)優先的に対処すべき事業及び財務上の課題の取組みと共に、将来の業績への影響を軽減させる方針であります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)通期を通した資金繰りについて
①融資について
当社グループの事業については、多額の資金が必要になります。多額の資金を自己資金で賄うことは現実的ではなく、金融機関等の借入金により、各事業のプロジェクトを遂行しております。経済環境の変化により、金融機関の融資条件等がより一層厳しくなった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②有利子負債について
当社グループは、原則として、プロジェクト案件ごとに用地の取得資金と開発費用等そのプロジェクトの推進に必要な資金を、プロジェクトの期間に応じた金融機関からの借入金により調達しており、下表のとおり有利子負債依存度が高い水準で推移しております。なお、当社グループにおいて、「短期借入金」、「1年内償還予定の社債」、「1年内返済予定の長期借入金」、「リース債務」、「社債」、「長期借入金」が有利子負債に該当いたします。
また、運転資金については、原則として手許資金で賄うこととしておりますが、資金繰り弾力化のため、一部金融機関からの借入を実施しております。近年においては、低金利の継続により、金利負担は比較的低水準で推移しておりますが、将来において金利が上昇した場合、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後の金融政策の方針が変更された場合、プロジェクトの進捗や業績に影響を及ぼす可能性があります。
決算期 |
総資産(百万円) |
有利子負債(百万円) |
有利子負債依存度(%) |
第51期連結会計年度 |
29,676 |
15,585 |
52.5 |
第52期連結会計年度 |
32,302 |
17,967 |
55.6 |
第53期連結会計年度 |
30,252 |
18,092 |
59.8 |
第54期連結会計年度 |
38,375 |
23,410 |
61.0 |
第55期連結会計年度 |
39,829 |
24,821 |
62.3 |
③現金及び預金残高の増減について
マンション事業においては、その性質上、竣工引渡時に一斉に売上代金を回収するため、一時的に現金及び預金の残高が大幅に増加し、その後の数ヶ月間で工事代金の最終金決済やプロジェクト資金の返済が行われるため、大幅に減少いたします。竣工時期に偏りがないような用地仕入、並びにゼネコンとの工事請負契約締結のスケジュール組みに着手しておりますが、想定通り進まない場合、当社グループの財政状態に大きく影響を及ぼす可能性があります。
尚、第2 事業等の状況 (5)優先的に対処すべき事業及び財務上の課題 ③売上の偏重にも記載の通り、完成時期、引渡し時期が偏ることによる売上の偏重は、資金繰りを不安定にさせる大きな要因となっております。通年で安定した売上を確保することで有利子負債や現預金の波を緩やかにできるため、売上の偏重は当社の優先して
取り組むべき課題として捉えております。
(2)人材の不足並びに育成について
住宅・不動産及び建築人財においては人材不足が大きな問題になります。当社グループとしては、従業員の働きがいを高め、積極的な事業展開により在職者、求職者にとって魅力的な企業となるべく努力をしてまいりますが、予想を大幅に上回るような退職者が発生した場合や、必要な人材確保及び育成が計画通りに進まない場合、当社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、事業展開に合わせた適材適所の人員配置、業務改善による効率化、継続的な成長を達成するための優秀な人材採用と育成が重要であると考えております。
(3)機密情報及び個人情報の漏洩について
当社グループでは、事業の性質上、常時多数のお客様の個人情報をお預かりしている状況にあります。個人情報については、プライバシーマークを取得し、個人情報保護基本規程等に基づいて厳重に管理しております。また、社内では個人情報だけではなく、インサイダー取引に抵触する情報も取り扱います。漏洩を防ぐため、個人情報保護委員会やリスクマネジメント委員会を設け、当社グループの従業員等に対する定期的な教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底を行っております。しかし、これらの対策にもかかわらず機密情報が外部に漏洩した場合には、社会的信用が著しく低下する上に、多額の損害賠償金等が発生、業務停止など、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)突発的災害等によるインフラ機能の低下
当社グループでは、膨大な情報をサーバーにて管理しております。各事業の業務を迅速かつ適正に進めていくために欠かせないシステムですが、災害によるシステムダウンやハッキング、メール等からのウイルス感染によりシステムの機能不全に陥った場合や、本社社屋及び各事業所などの固定資産の老朽化が進み、災害による機能不全や適切なメンテナンスが計画通りに進まない場合は、事業の遂行が遅延、停止するため、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
(5)不動産市況等について
当連結会計年度における不動産業界におきましては、諸外国の地政学的問題、米国による利上げによる急激な円安、また、当社グループの事業展開エリアである九州・山口の人口や世帯数の推移、顧客の価値観の多様化等、外部環境の変化による影響を非常に受けやすく、これら環境の変化における対応が求められております。
①人口動向について
当社グループの事業エリアである九州・山口エリアは、総人口の減少と少子高齢化が進んでおり、今後、その傾向はますます強くなることが想定されます。このことにより、特に住宅事業の主な購入者層である20~40代の子育て世代は、減少していくことが確実視されます。今後は、従来の北九州近郊から事業エリアを広げて顧客を確保すること、多様な家族構成・価値観に合わせた商品開発を展開し、住まいシェアを確保するなどの対策を検討しなければなりませんが、対策がうまくいかなかった場合、売上が低下し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②金融機関による利上げ
米国での利上げにより米国の住宅需要は減少している状況にあります。日本においては、大手金融機関で一部利上げはあったものの、当社グループにおけるお客様の多くが利用される地方銀行等の住宅ローン金利は、現段階での利上げはみられておりません。しかしながら、住宅ローン金利が上昇した場合、顧客の住宅ローン返済額の増加や借入限度額の減少による購入可能な顧客の減少、住宅購入マインドの低下などが起こる可能性があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③原材料・資材価格等の高騰について
当連結会計年度においては、円安による国外資材、エネルギー価格の高騰など、国内外市場の動向により大きな影響を受けました。建築コストは売上原価の主要項目であり、原材料・資材・物流等の価格が上昇した場合は、原則として上昇分に応じて販売価格に転嫁しております。しかしながら、想定を上回って建築コストが上昇し、販売価格へ転嫁することが難しい場合は、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(6)訴訟等について
①契約不適合責任について
当社グループの不動産事業については、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」により、新築住宅(分譲マンション含む)の構造上主要な部分及び雨水の浸水を防止する部分について住宅の引渡しから10年間、その他の部分については、「宅地建物取引業法」により住宅の引渡日から最低2年間について契約不適合責任を負っております。当社グループは建築工事の工程管理、品質管理に万全を期しておりますが、何らかの事情により当社グループが責任を負うことにより、想定外の補償工事費用の計上や当社の信用力の低下が発生した場合、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
②完成工事補償引当金について
お客様へ物件を引き渡した後に補修工事を行う場合や、完成工事の瑕疵担保責任に備える目的の引当金を計上しております。販売棟数の増加に伴い必然的に利益圧縮に繋がることに加え、不測の施工不良等により実際に多額の補修工事が発生した場合、引当金の計上額(販売費及び一般管理費)が増加し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)法的規制について
当社グループの属する不動産業界は、「宅地建物取引業法」「建築基準法」「国土利用計画法」「都市計画法」等、不動産取引や建築に関わる多数の法令、及び各自治体で定められる建築に関する条例等の法的規制を受けております。また、連結子会社の大英リビングサポート株式会社におきましては、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」等による法的規制を受けております。このため、将来におけるこれらの法的規制の改廃、新法の制定等により、事業計画を見直す必要が生じる場合や、これらの法的規制等に定める事項に抵触した場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループの事業活動における必要不可欠な免許として、当社、株式会社大英エステート、株式会社大英不動産販売においては宅地建物取引業免許が、大英リビングサポート株式会社においては管理業務主任者免許があります。現時点では、免許または登録の取消事由・更新欠格事由(※下表枠外に記載)に該当する事実は存在しておりませんが、今後、何らかの理由により免許及び登録の取消・更新欠格による失効等があった場合には、当社グループの主要な事業活動に支障をきたし、業績等に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの有する免許、許可及び登録については、以下のとおりであります。
会社名 |
法令名 |
免許・許可・登録等 |
有効期限 |
大英産業㈱ |
宅地建物取引業法 |
宅地建物取引業免許 国土交通大臣免許(2) 第008700号 宅地建物取引士(179名) |
2024年11月11日 |
大英産業㈱ |
建築士法 |
一級建築士事務所登録 福岡県知事登録第1-60140号 一級建築士(3名) 二級建築士(25名) |
2025年12月12日 |
大英産業㈱ |
建設業法 |
特定建設業許可 福岡県知事許可 (特-2)第98911号 一級施工管理技士(7名) 二級施工管理技士(9名) |
2025年9月10日 |
大英リビングサポート㈱ |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律 |
国土交通大臣(3) 第093710号 管理業務主任者(4名) |
2025年12月16日 |
㈱大英エステート |
宅地建物取引業法 |
宅地建物取引業免許 福岡県知事(1) 第19857号 宅地建物取引士(3名) |
2026年12月9日 |
㈱大英不動産販売 |
宅地建物取引業法 |
宅地建物取引業免許 福岡県知事(1) 第19858号 宅地建物取引士(5名) |
2026年12月9日 |
※許認可等の取消事由について
a.宅地建物取引業者免許の取消事由は、宅地建物取引業法第66条に定められております。
b.一級建築士事務所登録の取消事由は、建築士法第26条に定められております。
c.建設業許可の取消事由は、建設業法第29条に定められております。
d.マンション管理業者登録の取消事由は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第83条に定められております。
(8)自然災害
自然災害のリスクとしては、1点目にお客様に提供した住まいに関するリスク、2点目は当社従業員や関連企業の方々、地域の方など、関わる全てのステークホルダーの安全リスクです。
リスクの備えとして、BCPの策定、災害対策本部の勉強会及びシミュレーション、安否確認システムの構築・運用訓練、災害備蓄の施地などを行っております。
しかしながら、当社グループ事業エリアにおける震災、また、広域で被害予測される南海トラフ地震等の災害が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があります。
(9)住宅、不動産業界の動向について
①土地の仕入について
当社グループでは、主要事業が全て土地に関連する事業のため、事業用地の仕入れが各プロジェクトの成否において生命線となります。立地条件、地積、地盤、周辺環境、権利関係、収支計画等について事前に調査・検討し、その結果を踏まえた上で土地の仕入を行っております。近年、全国的な土地公示価格が上昇、土地の取引価格においても相対取引が減少し、入札による取引が増加していることから、土地の購入価格は年々高騰しております。このような土地価格の高騰により、プロジェクトの収益が計画どおりに確保できない、あるいは仕入中止によりプロジェクトを断念するなど、当社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、用地取得時に予想できない土壌汚染や地中埋設物が発見された場合や、工事進捗に影響する近隣住民との問題が解決できなかった場合においても、プロジェクトの遅れや追加費用の発生により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
②建築の外部委託及び工程監理について
当社グループの事業における建築工事は、一部または全部を外部に委託しております。このことは、自社の固定人件費の抑制に繋がっており、不況時においては、経営リスクを軽減する反面、好況時においては、外部委託先への委託業者の競合が増加し、委託先が十分に確保できなくなり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、住宅建築工事においては、外部に分離発注する形態にて工事委託を行っておりますが、一部、連結子会社の大英工務店が携わっております。将来の住宅業界における工事職人不足は顕在化しており、当社委託先の職人が減少した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。各現場工程監理につきましては、各事業担当者にて、より慎重を期して行っておりますが、不測の事態等により工事の遅延等が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③住宅業界の技術革新について
2021年10月閣議決定された「第6次エネルギー基本計画」において、「2030年度以降新築される住宅について、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)基準の省エネルギー性能の確保を目指す」という政府の目標が宣言・公表されました。SDGsの観点から高付加価値を持つ住宅に対するニーズは大いに高まっております。また、省エネに加え、IOTを駆使したスマートハウスのニーズもあり、様々な新商品が市場に投入される傾向にあります。これら高付加価値の商品を導入する場合、建築コストの増加においては、販売価格への転嫁を行うことになりますが、原価の高騰から販売価格への転嫁が難しい場合、また、業界またはお客様の望む技術革新のスピードに当社グループが対応できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④販売の外部委託について
当社グループは、一部物件の販売活動を外部業者に委託しております。これにより、当社グループのみで販売する場合に比べて、より多くの物件を同時に販売できる反面、販売手数料等の増加により利益率が悪くなります。また、新築住宅において、販売を外部へ委託する販売手法を採用する住宅会社が増加してきたことにより、競合が激化しております。2021年10月1日(2022年9月期)付けにて、将来の販売体制を見据えマンション事業、住宅事業における子会社の販売会社を設立いたしましたが、今後も引き続き外部業者への委託を継続していくため、委託割合が増加した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤競合について
当社グループは、沖縄県を除く九州全域で事業展開しております。首都圏等に比較すると少ないものの、大手マンションデベロッパー・ハウスメーカーから個人事業者に至るまで大小様々な競合他社が多数存在しており、大変厳しい競争環境に晒されております。今後においても新規大手の参入や異業種からの参入も増える可能性があり、更に競争が激化することが想定されます。これにより、物件の仕入価格の上昇(原価の高騰)や、販売価格の下落(売上の減少)が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)棚卸資産の評価損処理について
当社グループでは事業の性質上、棚卸資産が総資産に占める割合は2023年9月期において72.97%と非常に高い水準にあります。会社方針により竣工在庫を抑制するよう努めており、完成在庫である販売用不動産だけであれば、総資産の25.79%と比較的少ない水準ではありますが、何らかの理由により不動産の市場価値が下落した場合は、評価損処理が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、剰余金の配当、自己株式の取得等、会社法第459条第1項各号に定める事項について、法令の別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定める旨定款に定めております。また、当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要な政策と位置付け、配当に関しましては、経営環境の変化や中長期的視野に立ったうえでの今後の事業展開、更には企業体質の強化等を総合的に勘案のうえで、安定的かつ継続的な配当を実施していく方針であります。
当社は当事業年度より、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うこととしております。なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当ができる旨を定款に定めております。これらの剰余金の配当の決定機関は、中間配当、期末配当ともに取締役会であります。
当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり23円の配当(うち中間配当11円)を実施することを決定しました。
この結果、当事業年度の配当性向は14.3%となりました。
内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、将来の事業展開と経営体質の強化のための財源として利用してまいりたいと考えております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たりの配当額(円) |
|
2023年4月17日 |
取締役会決議 |
36 |
11 |
2023年10月16日 |
取締役会決議 |
39 |
12 |