2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

(1) 当社グループのリスクマネジメント体制

当社グループは、当社代表取締役社長執行役員を委員長とし、取締役、執行役員などをメンバーとする「経営リスク委員会」を設置しております。同委員会は、全社のリスクマネジメントを統括し、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす可能性のあるリスク(経営リスク)の特定やそのリスクの低減に向けた取り組み、顕在化したリスクに対する対応策など、リスクマネジメントに関する重要事項を審議しております。また、監査役(社外を含む)も出席し、必要に応じて助言等を行っています。経営リスク委員会で審議された内容は、その都度経営会議および取締役会に報告され、取締役会では、その報告を通じ、リスクマネジメントの有効性を監督しております。

経営リスク委員会は、その傘下に「リスクマネジメント部会」および「コンプライアンス部会」を置き、両部会を統括管理することで、リスクマネジメントおよびコンプライアンスを中心とする内部統制システムの運用と維持管理の機能も果たしております。リスクマネジメント部会は、リスクの想定と予防、危機への対応を任務としており、コンプライアンス部会は、リスクマネジメントの重要な要素であるコンプライアンスを司り、従業員意識の向上やコンプライアンス違反への対処などを任務としております。

特定した経営リスクには、それぞれリスク管理責任者が設定され、リスク管理責任者のリーダーシップの下、リスク対応計画の策定および具体的な施策に取り組みます。リスク管理責任者には、経営リスク委員会が指名したCxOが充てられ、代表取締役社長執行役員であるCEOは経営リスク全体を統括する責任者として位置づけています。

当社各部門および子会社は、上記体制の下、自律的にリスク対応策に取り組めるよう、各リスク責任部門や各種委員会・会議等が指導・支援します。

経営リスクのうち、人権や気候変動・環境問題などのサステナビリティに関連するリスクについては、サステナビリティ委員会が審議し、リスク対応策を検討、推進しております。


 

 

(2) リスクマネジメントプロセス

当社では、中期経営計画や行動規範を踏まえ、またESG(環境・社会・ガバナンス)に関するリスクにも着目し、毎年度、経営リスクの見直しを行っております。

当期においては、従前の当社各部門および各子会社が洗い出した重要なリスクをもとに経営リスクを特定するボトムアップアプローチを見直し、執行役員アンケートおよび社内取締役インタビューを実施し、経営上のリスク認識を反映させるとともに、経営陣の経営リスク特定プロセスへの関与を強めるトップダウンアプローチへの転換を図りました。当社グループを取り巻く経営環境の変化や社会情勢などを踏まえ、また中長期的な視点での潜在リスクや経営課題なども鑑み、経営リスク委員会で審議し、経営リスクを特定し、またリスク管理責任者(CxO)を指名しました。

特定した経営リスクについては、リスクを低減・防止する取り組み施策が有効に機能しているかを半期に1回、経営リスク委員会がモニタリングしております。

さらに、期中に発生したクライシス(リスクが顕在化し企業価値に重大な影響を及ぼすもの)については、当社代表取締役社長執行役員CEOを最高責任者とし、リスクマネジメント部会長が陣頭指揮を執る危機管理体制を整備し、迅速・適切な対応を図っております。クライシス鎮静後は、経営リスク委員会の主導の下、発生したクライシスの真因分析を行った上で、是正措置を展開し全社的な再発防止に努めております。

 

経営リスク

リスク管理

責任者

前期比較

① 原材料調達・為替相場等に関するリスク

COO

継続

 

② 自然災害・感染症・事故等に関するリスク

CTO

変更

従前の「自然災害・感染症に関するリスク」に火災や爆発などの「事故等」を追加し再編

③ 海外展開に関するリスク

COO

変更

従前の「海外進出に潜在するリスク」を経営課題である「海外展開の加速」に合わせてタイトル変更

④ 製品の安全、品質、安定供給に関するリスク

CHRO

変更

異物混入などの品質事故のほか、外部委託先における法令違反や事業中断などに起因する製品の供給途絶にも着目し、従前の「食品安全に関するリスク」を再編

⑤ 物流に関するリスク

COO

継続

 

⑥ 情報漏洩・サイバーセキュリティに関するリスク

CTO

継続

 

⑦ 気候変動・環境に関するリスク

CTO

継続

 

⑧ 人権に関するリスク

CHRO

継続

 

⑨ 人財・労務に関するリスク

CHRO

継続

 

⑩ 資金調達に関するリスク

CFO

継続

 

⑪ のれんや固定資産の減損損失に関するリスク

CFO

継続

 

⑫ 知的財産に関するリスク

CTO

継続

 

⑬ コンプライアンスに関するリスク

CHRO

継続

 

⑭ グループ経営体制の整備に関するリスク

CSO

新規

財務報告に係る内部統制を含めたグループ統制の不備やガバナンスが十分に機能しない場合、当社グループの評価に大きな影響を与える可能性があることから、新たに特定

当社製品の需要低下に対するリスク

取り

下げ

前期まで経営リスクとしていたが、経営課題として、通常の事業活動において取り組みを進めることとし、取り下げ

 

 

 

(3) リスクテーマとそれに対する影響と対応

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、当社グループが定義する「経営リスク」であります。

各経営リスクの影響度と発生頻度で評価したリスクマップは以下のとおりであります。

 

 


 

 

 

経営リスクおよびその影響と対応については、以下のとおりであります。

 

《原材料調達・為替相場等に関するリスク》

○主要原料の品質変化、相場変動による調達コスト増加

○為替・海上運賃などの相場変動による調達コスト増加

○地政学リスクや各国の規制等による調達不能および調達コスト増加

○バイオ燃料需要増加による調達コスト増加

○気温上昇や異常気象による収穫量減少や品質変化などによる原料の安定確保困難

 

(影響)

当社グループは主要原料の大豆・菜種等を海外から調達するため、原料コストは海外の穀物相場の影響を受けております。穀物・油糧種子の相場は、世界人口の増加による需要の増加や異常気象による減産など、需給バランスの変化などにより大きく変動いたします。また、海上運賃(フレート)は世界経済の成長や石油価格の影響を受けて変動いたします。海外からの調達であるため、原料代決済において為替相場の影響を受けます。さらに、ミール相場が下落しますと、オイルコストの上昇につながります。当期において、大豆や菜種、パーム油などの原料コストは依然として高い水準にあり、ドル円為替相場も30年来の円安水準にあるなど、厳しい事業環境は継続しております。加えて、地政学リスクの高まりからスエズ運河の通航回避、異常気象によるパナマ運河の通航制限などの事情もあり、調達コストは増加しており、原料や油脂の安定調達にも懸念が生じております。これらの穀物・油糧種子、為替、海上運賃、ミールなどの相場変動に伴うコストアップ分や価格が高い時点で調達した原料在庫を販売価格に反映できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に大きく影響を及ぼす可能性があります。また、原材料調達においては、安全性や品質の確保だけでなく、環境保全や労働者の人権問題など、サステナビリティの問題に積極的に取り組むことも求められており、これらの課題に対応できないとみなされた場合、企業価値を損なう可能性があります。

(対応)

当社グループは、海外からの原料や油脂の調達にあたり、原料・為替に関わる環境を精査の上、競争優位な産地の選定・最適な組み合わせに努めております。値決めについては、商品先物取引を用いた売買と為替予約を用いた一定のヘッジを行うと同時に、原料購買規程、外国為替予約運用規程の範囲内で、製品の販売価格の確度を見極めながら競争優位と思われるポジションを取っております。また、新規の原料産地とサプライヤーの調査・採用も継続的に行っております。一方で、国内搾油産業の長期的な課題についての共有認識の下、油脂と油粕の安定的な供給を継続的に行うために、日清オイリオグループ株式会社と川上領域である搾油工程(原料と油粕の受委託製造とスワップ)までを範囲とした業務提携基本契約を締結し、その取り組みを着実に実行しております。また、製品の価格改定の継続的な取り組みや経費削減により収益改善を図ってまいります。

さらに、持続可能な原料調達のため、「環境方針」や「人権方針」を基盤に「サステナブル調達方針・調達基準」を定め、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動を推進しております。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

 

《自然災害・感染症・事故等に関するリスク》

○大規模な地震、台風、集中豪雨、火災爆発などの事故による従業員等の人的被害、施設・設備の損壊

○新型コロナウイルスをはじめとする感染症の蔓延による操業停止、製品供給の停滞

○サプライチェーンの分断や社会インフラの機能停止による事業活動の継続困難

 

(影響)

大規模な地震、台風、集中豪雨などによる災害リスクが年々高まってきており、人的被害、施設・設備等の損壊が生じた際には、安定供給に支障をきたす可能性があります。2020年より顕在化した新型コロナウイルス感染拡大の影響は、一定数の自然感染、さらには多くの人がワクチン接種をしたことなどによる免疫獲得もあり、ほぼ収束した状況となりました。しかしながら、今後も病原性の高い新たな変異株や、別の感染症が拡大した場合には、従業員の感染による操業停止やサプライチェーンの停滞などにより、当社グループの事業運営、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、自然災害・感染症・国際情勢の変化においても、海外輸入品に関しては物流の遅延・変更による供給不安定により、顧客に対する供給責任へ影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、食品事業などに携わるものとして、従業員の安全を確保した上で、お客様への供給責任と社会的責任を果たすことなどを基本方針としております。昨今の台風や豪雨に伴う水害等の発生頻度の高まりを受けて、危機管理体制の見直しを行い有事・平時の危機管理体制を強化するとともに、BCPの見直しを通じて、災害に対する対応力強化を図っております。感染症対応については、発生した場合にも事業が継続できるよう、リモートワークの推進など、従業員間の接触頻度を極小化するなどの対応をフレキシブルに行える体制を整え、また、委託先や協力先の確保などにより生産体制の複数化などを実施し、今後も安定供給を実現してまいります。

海外輸入品に関しては、適正な在庫確保と顧客への連絡・情報共有のスピード化で影響を最小限にする対応を行ってまいります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

コーポレートガバナンスの強化

 

《海外展開に関するリスク》

○事業展開する地域における不利な影響を及ぼす法律・規制・税制等の変更

○紛争・テロなどの発生、政治的・社会的情勢の変動

○海外子会社におけるガバナンス不全による不正会計や不法行為の発生

 

(影響)

当社グループは、海外事業の拡大を重点目標として取り組んでおります。法規や税制の改正、また紛争・テロなどの地政学リスクや自然災害の発生により、当社グループの財政状態及び経営成績、従業員の安全に影響を及ぼす可能性があります。

海外子会社での不正・不法行為は、当社グループの財政状態及び経営成績への悪影響ならびに信用の棄損および企業価値の低下につながる可能性があります。

(対応)

リスク課題が発生しないように、あるいはそれが発生した場合に迅速に対策が取れるように、事業が関係する海外各国の法規やリスク情報を外部コンサルタント、海外情報サービス、外務省の海外安全ホームページ、進出しているグループ企業、海外で協業しているパートナー企業などから入手しております。その結果、入手したリスク情報をもとに、必要に応じた対応を行っております。

海外子会社での不正・不法行為に対しては、内部統制の強化と定期的な監査の実施などによる対応を行っております。

(関連するマテリアリティ)

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

コーポレートガバナンスの強化

 

《製品の安全、品質、安定供給に関するリスク》

○お客様への健康危害や表示等の法令違反、異物混入などによる、自主回収(リコール)の発生

○食品偽装やデータ改ざんの発生

○外部委託先における法令違反、事業中断、製造の遅延や不良品発生など

 

(影響)

お客様への健康危害や表示等の法令違反により自主回収(リコール)が発生した場合、異物混入および食品偽装やデータ改ざんが行われた場合、またはお客様への欠品リスクに繋がるような製造遅延や不良品が発生した場合は、当社ブランドの信頼失墜に加え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、ISO9001による品質マネジメントシステムの運用、特に商品の開発設計・工業化段階での品質アセスメントの実施と仕組みの強化による品質リスクの低減に取り組んでおります。また、全ての自社工場においてISO22000認証(食品安全マネジメント)を取得するとともに、品質監査により仕組みの適切な運用について常に確認しています。仕組みの運用だけでなく品質や食品安全に関する従業員教育を継続して行うことで、従業員との信頼関係にもとづいた風通しの良い組織風土醸成に努めております。さらに、お客様に安心して商品をご利用いただけるよう、お客様相談室を通じていただいたお客様の声を商品開発に活かしてまいります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

 

《物流に関するリスク》

○ドライバーや荷役作業員の不足や配送車両を確保できないことによる製品供給の停滞や大幅な配送遅延等、適切な物流コスト管理の未実施による物流破綻

 

(影響)

ドライバーや倉庫作業者の不足などの物流危機に対する対応を講じなかった場合や物流業務に関する料金適正化を怠った場合、物流事業者が当社業務から撤退してしまう可能性があります。

当社製品の供給停滞や大幅な配送遅延は販売機会の損失に繋がり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼします。

(対応)

当社グループは、サステナブルな物流環境を構築するために、物流事業者とともにドライバーや倉庫作業者の労働環境の改善に努めております。具体的には、配送業務外の附帯作業の改善、納品待機時間の把握と長時間待機の削減、計画的な車両確保が出来るようなリードタイムの確保など物流環境改善や適切な料金設定を販売物流(発荷主)と調達物流(着荷主)の両面で進めております。また、物流2024年問題への対応を加速することを目的として、2023年6月に示された行政ガイドラインを鑑み、2023年12月、当社グループとしての取り組みを「自主行動計画」として取りまとめ管轄官庁である農林水産省に提出(内閣府ホームページ掲載済み)するなど、行政方針に沿った活動に取り組んでおります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

 

《情報漏洩・サイバーセキュリティに関するリスク》

○不正アクセスやコンピュータウイルスの感染、ランサムウェア等による情報の漏洩・改ざん・消失、ICT(※1)インフラ・生産ラインなどの停止

○インシデント発生時の対応不備

 

(影響)

年を追うごとに多様化・巧妙化するサイバーセキュリティリスクは、当社グループにおいても、サプライチェーン機能の安定的維持や個人情報を含む情報資産の適切な保持に対する大きな脅威となっており、コンピュータウイルスの感染や情報漏洩・データ改ざんが発生した場合、経営成績や社会的責任の遂行に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループでは、最新のサイバーセキュリティリスクについての動向を協力会社との連携により常に把握し、以下の観点から対策の継続的強化を図っております。

1.社内ネットワークへの不正侵入を防御するシステムの導入、サーバーおよび従業員パソコンへの最新対策ソフトの導入。また、在宅勤務を前提にしたPC対策ソフトを導入。

2.添付メールによる情報漏洩防御のためのPPAP(※2)対策の導入。

3.全社員を対象としたセキュリティ自己点検、標的型攻撃メール訓練、eラーニング実施による従業員へのセキュリティ意識向上と周知徹底。

4.インシデント発生時の早期解決と被害局限化を実現するCSIRT(※3)の設置。

また、今後も引き続き拡大するサイバーセキュリティリスクへの対策を講じるとともにインシデントが発生した場合に被害を最小化し迅速な回復を図るための対応手順強化に取り組んでまいります。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

※1 ICT(Information and Communication Technology):情報通信技術

※2 PPAP:パスワード付きzipによってファイルをメール送信する方式

※3 CSIRT(Computer Security Incident Response Team):コンピュータシステムやネットワークに保安上の問題に繋がる事象が発生した際に対応する組織

 

《気候変動・環境に関するリスク》

○CO2排出規制強化による生産コスト増加

○環境対策の対応不足や環境関連法令違反による企業価値の低下

 

(影響)

当社グループは、各工場でISO14001を取得し、また国や地方自治体に応じた環境法令等への対応や、環境トラブル防止に配慮した事業運営に取り組んでおりますが、環境対策の取り組みが不十分な場合、当社の企業価値を損ね、資金調達や従業員の確保などに影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

ESGの取り組みは、当社グループの事業活動の基盤であり、競争力を左右する重要な要素と捉え、事業と一体となったESG経営を推進しております。環境負荷を極小化するために、省資源・省エネルギー、CO2排出量の低減、脱プラスチック、水資源の有効活用、バリューチェーンにおけるAIの活用に努め、資源の利用効率の最大化を図るためのゼロエミッションなどに積極的に取り組んでまいります。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

 

《人権に関するリスク》

○サプライチェーンにおける人権対応不備による企業価値の低下

○ハラスメントなどの人権侵害

 

(影響)

生活者の環境に対する意識も高まっており、サプライチェーン上で環境や品質、人権などの問題が生じた場合、そのサプライチェーン全体での管理・責任が問われる時代となっております。これらの社会的課題への取り組みが不十分と見なされた場合、企業価値の低下につながる可能性があります。

(対応)

当社グループは、2019年に世界規模で企業とサプライヤーを結ぶ共通のプラットフォームを提供しているSedex(※4)にA/B会員として入会し、Sedexのプログラムを有効活用することで、グローバルな視点で「労働基準」、「安全衛生」、「環境」、「ビジネス倫理」の4領域に関するサプライチェーンのサステナブルな課題の把握とその改善に取り組んでおります。また、2021年9月に国連グローバル・コンパクト(UNGC)に署名し、会員企業に登録されました。UNGC署名企業として人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、腐敗防止の4分野、10原則の順守、実践に取り組んでおります。

持続可能な調達の実効性を高めるためにはサプライヤーとの協働が重要です。当社は「サステナブル調達方針・基準」を定め、自社だけでなくサプライヤーに対して順守をお願いするとともに、2022年度よりグローバル・コンパクト・ ネットワーク・ジャパンが作成した「CSR調達セルフ・アセスメント質問表」(GCNJ共通 SAQ)を用いて、原料・資材のサプライヤーへ調査を実施し、サステナビリティへの取り組み状況を確認しております。

さらに、アブラヤシの果実から搾油されるパーム油は、我々の生活に欠かせない油脂であり、当社グループの事業活動を支える重要な原材料の1つであるため、「サステナブル調達方針・調達基準」および「パーム油調達方針」にもとづき、原産国の環境保全に配慮し人権を尊重するとともに、食を支える企業として、パーム油の安定供給の社会的責任を果たすために持続可能なパーム油調達を実現いたします。

また、2023年度には「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン」にもとづき、人権デューデリジェンスでプロセス構築における課題、ステークホルダーを特定し、当社の現状と検討事項を整理しました。今後、課題の緊急度と重要度による優先順位付けを行い、対応策を決定し取り組みを進めてまいります。

国内外の当社グループ全従業員に向けては、人権教育を実施しております。人権をはじめとする社会課題の解決に向けて、当社事業活動への落とし込みや従業員が自分ごと化できるよう、当事者意識の醸成に努めております。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

多様性の尊重と従業員の働きがい向上

 

※4 Sedex:グローバルサプライチェーンにおける倫理的で責任あるビジネス慣行の実現を目指し、サプライチェーンデータを管理・共有する世界最大のプラットフォームであります。顧客とサプライヤーが共通のプラットフォームを活用して情報を共有し、サプライヤーにおける問題点を抽出するとともに、その課題解決への取り組み状況を把握し、サステナブルな事業慣行の拡大に取り組んでおります。A/B会員は、バイヤー機能を持つA会員と、サプライヤーとしてSAQに回答するB会員の両方の資格を保有しております。

 

《人財・労務に関するリスク》

○高度な専門性を持つ人財や次世代を担う人財の不足

○DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の進展不足による企業競争力の低下

○労働災害、労働関連法令違反や労務トラブル等による企業価値の失墜、損害賠償請求など

 

(影響)

日本全体の社会情勢の変化により、雇用環境や必要となる専門性、人々の労働に対する価値観などが大きく変わりつつある中、当社の成長の原動力となる、各分野で必要とする高度な専門性を持つ人財や次世代を担う人財の確保、育成および配置が計画的に推進できない場合には、事業活動の停滞等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社は労働安全を重要な課題と位置づけ、当社グループで働く従業員の安全と健康に配慮し、事故の予防に努めております。しかし、労働災害が発生した場合には、当社グループの経営成績や評判に悪影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、人的資本経営として、多様な人財の挑戦と成長を促す職場環境を実現し、「サステナブルに強い個が創出されること」および「強い個がエンゲージメント高くチームとして活躍すること」を目指しています。多様な人財にとって働きやすい職場環境を維持・改善し、公正な人事・処遇制度の構築とその適正な運用に取り組んでおります。高度な専門性を持つ人財や次世代の経営を担う人財の育成に取り組むとともに、女性活躍やシニア活躍などのダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンのさらなる推進、働き方の見直しや健康経営をさらに推進しております。

当社では、毎年、労働安全衛生目標を掲げ、当社グループで働く従業員の安全と健康を確保し、労働災害の発生を防止するための取り組みを進めております。例えば、安全衛生教育の実施や安全衛生管理体制の整備、労働環境の改善、さらには事故発生時の迅速な対応などに取り組んでおります。

(関連するマテリアリティ)

多様性の尊重と従業員の働きがい向上

 

《資金調達に関するリスク》

○市中金利の上昇による金利負担の増加

○金融市場の混乱による資金調達難

 

(影響)

当社グループは、銀行借入や社債発行、債権流動化などによる資金調達を行っております。市場金利が上昇した場合、または金融市場の混乱による取引金融機関の融資方針が変更された場合には、資金調達コストが増加し、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。これにより、格付会社による当社グループの信用格付が大幅に低下した場合には、資金調達に制約が課される可能性があります。

(対応)

資金調達に際しては、短中期的な大規模資金需要も踏まえ、財務健全性に配慮した資金調達を行うこととし、資金需要の性質、金融市場環境、長短バランス、資金調達コスト、調達先の分散などを総合的に検討し、資金調達手法を選択しております。金利上昇リスクに対しては、社債や長期借入による固定金利での資金調達を併用することで、金利変動リスクの低減を図っております。定期的に自己資本比率やD/Eレシオなどをモニタリングするとともに、減損懸念資産や繰延税金資産の継続的なモニタリングを通じて自己資本毀損リスク規模を把握しております。また、運転資本管理、政策保有株式縮減などによる資産圧縮を徹底し、資本効率の改善を目指しております。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

食の安定供給による持続可能な社会の実現

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

 

《のれんや固定資産の減損損失に関するリスク》

○買収・資本参加した子会社等の業績不振、事業計画の大幅未達

○固定資産の公正価値の下落

 

(影響)

当社グループは、事業用の設備、不動産や企業買収などにより取得したのれんをはじめとする有形固定資産・無形固定資産を所有しております。こうした資産は、公正価値の下落や、金利の上昇、買収・資本参加した子会社等の業績が事業計画に対して大幅に未達となるなどにより、減損損失が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

投融資委員会や経営会議における買収価格の適切性に関する審議や買収後のシナジー実現に向けたフォローアップ、マクロ経済環境の定期的なモニタリング、事業計画にもとづく将来キャッシュ・フローの見積りの実施などにより、減損処理の適否を判断しております。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

《知的財産に関するリスク》

○競合他社による同様の技術開発に対し、当社の知的財産の権利化が不十分なことによる競争優位性の喪失

○第三者の知的財産権の侵害による販売の差し止めや損害賠償請求など

 

(影響)

知的財産の権利化が不十分なことにより、競争優位性が失われ、開発投資を充分に回収できなくなる可能性があります。その結果、次への開発投資ができなくなることにより、お客様に価値の高い製品の提供が難しくなる可能性があります。また、第三者の知的財産権の侵害は、お客様への製品提供の継続が困難になるだけでなく、当社ブランドの信頼失墜につながる恐れがあります。これらの結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

知財部門からの開発や生産部門等の定期的な会議への参加や、相互連携による発明等の早期発掘により、迅速かつ適切な知的財産の権利化取得を実施しております。また、製品化の際には、第三者の知的財産権の侵害調査を実施し、侵害による差し止めなどを未然に防ぐ仕組みを構築しております。

さらに、知的財産の権利化の重要性や第三者の知的財産権の侵害リスクの認識を向上するために、継続的な研修を実施しております。

(関連するマテリアリティ)

食の安定供給による持続可能な社会の実現

食の安全安心を通じすべての人のウェルビーイングへ貢献

 

《コンプライアンスに関するリスク》

○法規制や社会規範に反した行為や不正・ハラスメントなどの発生

○法規制の変更や追加による事業上の制約

 

(影響)

当社グループは、食品衛生法、食品表示法、JAS法等以外に、環境・リサイクル関連法規、独占禁止法などの様々な法的規制の下で事業展開しております。法規制や社会規範に反した行為や不正、またはハラスメントなどが発生した場合には、当社グループの信用の失墜により財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、予測し得ない法規制の変更や追加による事業上の制約などにより当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(対応)

当社グループは、法規制および社会規範を遵守することを目的とした「J-オイルミルズ行動規範」を策定し、継続的な啓発と全社員を対象とした研修やeラーニングなどを実施することで周知しております。加えて、不正やハラスメントなどを早期に見出し、是正していくために社内外に内部通報窓口を設けることで、法規制や社会規範に反した行為などの発生を低減することを進めております。また、法規制の変更や追加に対応するため、法令改正情報を注視し、関連する法令改正に適切に対応してまいります。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

《グループ経営体制の整備に関するリスク》

○グループガバナンスやグループ内における内部統制に重大な不備や弱点が認められた場合の改善に要する追加コストの発生

○グループ戦略の立案や見直しが適切に行われないことによるシナジー効果の希薄化

 

(影響)

当社は、国内外に子会社、関連会社を有しております。当社グループとしての企業価値の向上と業務の適正を確保する体制を整備しておりますが、グループ会社の統治が十分に機能せず、発生したインシデントの対応の遅れなどが生じた場合には、当社グループの社会的信用が失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、事業環境の変化に対してグループ戦略の策定・推進が適切に行われない場合には、グループ経営の効率化や競争力が低下する可能性があります。

(対応)

当社グループは、中期経営計画の策定と推進を通じて、グループとしての企業価値向上に努めております。また、グループ会社の事業運営の独立性と自立性を尊重しつつ、グループ会社の取締役の職務執行の適正を確保するため、「関係会社運営規程」において、管理項目ごとに報告等の手続き方法を定め、報告を受けることとしております。さらに、グループ会社トップミーティングや役員向けのガバナンス研修会の開催、グループ横断的支援体制の推進により、当社グループ間の連携強化に努めております。

(関連するマテリアリティ)

コーポレートガバナンスの強化

 

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報にもとづき、当社グループが判断したものであります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社の剰余金の配当は、中間配当および期末配当の年2回行うことを基本的な方針としており、配当の決定機関は、定款に基づき、中間配当、期末配当ともに取締役会であります。

当事業年度の剰余金の配当につきましては、連結配当性向40%を目安としつつ連結業績も考慮し、1株につき60.0円(うち中間配当30.0円)としております。

内部留保資金の使途につきましては、収益体質や経営基盤の強化を目指し、企業価値の向上に資する投資資金へと有効に活用していくこととしております。

(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、次のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2023年11月9日

1,000

30.0

取締役会決議

2024年5月10日

1,000

30.0

取締役会決議