2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業及びその他に関するリスク要因となる可能性がある主な事項を記載しております。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項について、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。

なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、当社の株式に関する投資判断は、本項目及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があります。また、本項目に記載した予想、見通し、方針等、将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、将来実現する実際の結果とは異なる可能性がありますのでご留意ください。

 

(1) 経済状況・市場環境の変動

国内企業の広告費の支出は、企業が景況に応じて広告費を調整する傾向にあるため、国内の景気動向に大きく影響を受ける傾向にあります。当社グループの国内売上高は、連結売上高全体に占める割合が高く、国内景況が悪化すると当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

当社グループは、景況の悪化による影響を軽減するため、広範囲の業種にわたる顧客基盤の構築、マーケティング・コミュニケーションサービスの多様化、海外展開等をはかる所存でありますが、日本経済の回復が遅いもしくは不十分な場合、又は当社グループの対応が十分ではない場合もしくは十分にはかかる影響を軽減できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(2) 当社グループの事業活動に関するリスク

当社グループの新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディア広告の国内売上高は、ここ数年、売上高全体に占める構成比が減少してきているものの、2024年3月期においても、33%程度と大きなシェアを占めております。また、今後も引き続き、広告主のマーケティング活動に活用され、当社グループの中心的な事業のひとつであり続けると認識しております。

また、インターネット広告の国内売上高は引き続き成長しております。インターネット広告は従来のマスメディア広告と組み合わせることでより高い広告効果が得られるため、複数のメディアを最適化するプラニングが求められます。

さらに、近年急速なテクノロジーの進展により、当社グループを取り巻くビジネス環境は大きく変革期を迎えております。従来の広告領域をオリジンとしつつも、その枠を超えた価値を提供することで、ビジネスの拡大を目指しております。

当社グループは、環境変化に対応するため事業構造の変革を進めています。しかし、このような取り組みを迅速かつ十分に行うことができない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(3) 広告業界における取引慣行

マスメディアの広告取引は、主として、広告主からの受注に基づき行いますが、各広告会社は自社の責任で媒体社等と取引を行うのが一般的です。そのため、広告主の倒産等により、債権を回収できなかった場合には、広告会社が媒体料金や制作費を負担することとなり、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

また、広告業界では、慣行上、広告計画や内容の変更に柔軟かつ機動的に対応できるよう契約書を締結することは一般的には行われておりません。当社グループにおいても、継続的な取引関係が成立している広告主との間であっても、個別取引に関する書面は存在するものの、基本契約書等を締結していないことが一般的であります。そのため、広告主との間で明確な契約書を締結していないことにより、取引関係の内容、条件等について疑義が生じたり、これをもとに紛争が生じたりする可能性があります。

なお、欧米では「一業種一社制」(同一業種では一社のみの広告主を広告代理店が担当する取引形態)が一般的であり、広告会社の報酬構造や報酬決定方法も異なっております。日本においてはこのような取引形態は一般的ではありませんが、欧米の広告主、広告会社が日本に進出してきている昨今の状況に鑑みると、今後これらの取引形態及び報酬構造や報酬決定方法が日本の広告の取引慣行に影響を与える可能性があります。当社グループにおきましては、こうした動向に対応し、サービス形態の多様化等に努めてきておりますが、今後、取引慣行の動向・変化に適切に対応できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(4) 法規制等の導入や変更

広告主の広告活動、メディアにおける広告の掲載・放送方法や内容等、広告会社の事業活動等に関する法令・規制・制度の導入や強化、法令等の解釈の変更等がなされる場合があります。法規制等の導入や強化等に対して当社グループが適切に対応できない場合又は広告主の広告活動が減少する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(5) 広告主との関係

当社グループと広告主の間は、継続的な取引関係が成立しておりますが、広告主がコスト削減、取引関係の合理化等の要請を強める昨今の状況の中で、今後取引関係が解消、縮減等されない保証はなく、また、報酬等の水準は当事者間の合意によるものであり、その水準が今後も保証されるものではありません。従前と同様の取引関係が継続されない場合又は従前の取引条件が変更される場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。なお、2024年3月期における当社グループの上位広告主10社に対する売上高は、当社グループの国内売上高の18%程度となっております。

 

(6) 媒体社との関係

当社グループの広告事業においては、新聞・雑誌・ラジオ・テレビといったマスメディアの広告及びインターネット広告に関する事業が主体であるため、主要媒体社等からの仕入れの依存度は高くなっております。

当社グループと媒体社等は、長年の継続的な取引関係が成立しておりますが、媒体社等との取引が継続されない場合又は取引条件等が変更された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(7) 競合に関するリスク

日本の広告業界では、サービスの多様性、対応力、企画力、販売力等の観点から、売上高で上位の広告会社への集中傾向が高く、またインターネット広告専業を含む上位広告会社を中心に熾烈な競争が行われております。さらに、大手の海外広告会社や各種プラットフォーマーも参入し、競争がますます激しくなる傾向にあります。

また、事業領域を拡大していく中で、コンサルティング会社など異業種企業と新たな競合が生じる機会も増加しております。

当社グループは、サービスの多様化、企画力、創造的提案力、経験、広告主との長年の継続的な取引関係等により競争上の優位性を確保していく所存でありますが、継続してかかる優位性を確保できる保証はなく、優位性を逸した場合あるいは競争の激化に伴い報酬が減額した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(8) インターネット広告等の進展

近年、インターネット広告の進展は著しく、この分野においては技術の進化や多様な広告手法が生み出されております。当社グループは、これまで培ってきたリソースとノウハウを集約した新会社“Hakuhodo DY ONE”を新たに設立し、フロントラインの最適化、QCD(クオリティ・コスト・デリバリー)の改善、プラットフォーマー対応機能強化を通じて、競争力の強化と生産性・収益性の向上を目指します。

しかしながら、今後、インターネットメディアの拡大をはじめとしたマーケティングのデジタル化の進展に対して当社グループが適切に対応できない場合や新しいメディアやマーケティング手法に対する当社グループの事業戦略や取り組みが功を奏しないもしくは十分ではない場合には、当社グループのサービスの品質の低下が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(9) 当社グループの事業展開に関するリスク

当社グループは、広告事業会社である株式会社博報堂、株式会社大広、株式会社読売広告社、株式会社Hakuhodo DY ONE及びソウルドアウト株式会社、総合メディア・コンテンツ事業会社である株式会社博報堂DYメディアパートナーズの6社並びに専門性と先進性の継続的な当社グループへの取り込みを狙った当社傘下の事業組織「kyu」に加えて、各組織がそれぞれ所有する広告関連サービスを提供する子会社群等から形成されており、広告主に対しワンストップでのマーケティング・コミュニケーションサービスを提供すべく国内外において事業展開をしております。また、中期経営計画においては「マーケティングビジネスの構造改革」「新たな成長オプションの創造」「グローバルビジネスのリモデル」の3つの取り組みを進め、事業構造を変革することとしており、「収益性改善と成長オプションの創造期」と位置づけております。

グループ会社を通じた事業展開、新たな価値を生み出す事業領域として注力する会社の設立、買収、資本業務提携等により出資を含むグループ会社関係を構築することについては、出資額あるいは場合によっては出資額を超える損失が発生するリスク、グループの信用を低下させるリスク等を伴う可能性があり、出資会社の事業活動や経営成績によっては、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(10) 知的財産権

広告業において一般的なリスクではありますが、当社グループにおいても同様に、事業活動を行う過程で、当社グループが所有する又は使用許諾を受けている以外の知的財産権の侵害及び逆に当社グループが所有する知的財産権が侵害されてしまうおそれがあり、当社グループがかかる事態を防止し、あるいは適切な回復をすることができない可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

(11) 人材の確保及び育成

当社グループの成長性及び競争上の優位性は、優秀な人材の確保に大きく依存します。人材に関しては、新卒者の安定的採用や即戦力となる中途採用の推進により確保をはかり、各職責、能力、市場環境の変化に対応した教育研修等による育成に努めておりますが、何らかの理由により優秀な人材の流出や人材の確保に支障をきたす可能性もあります。かかる事態が生じた場合、当社グループの競争力に悪影響を与える可能性があります。

 

(12) メディア・コンテンツビジネスに関わるリスク

当社グループは、今後もスポーツ等イベントの権利取得や興業、映画製作への投資、アニメ・キャラクター関連番組制作等のコンテンツ関連ビジネスを行っております。しかしながら、メディア・コンテンツビジネスの事業展開には、投資リスクを伴う場合があり、計画通りに進行しない場合又は収益を確保できない場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(13) 海外市場展開

当社グループは、広告主のニーズに応えるため、また中期経営計画における基本戦略の一つとして、更なる拠点拡充や専門マーケティングサービス企業のM&Aによるグループ内への取り込みを含め、積極的な事業展開を行っておりますが、これらの事業展開には、海外の事業投資に伴うリスク(為替リスク、カントリーリスク等)、出資額あるいは出資額を超える損失が発生するリスク及びグループの信用を低下させるリスク等を伴う可能性があり、計画通りに事業展開ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(14) グループ経営基盤に関わるリスク

当社グループは、持株会社体制という枠組みの持つ優位性等、経営統合の相乗効果を最大限活用し、グループ経営基盤の強化に努めておりますが、持株会社統治等の効果が十分発揮されなかった場合には当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

また、資金運用面においても、グループ内での資金運用、配分の効率化を進めておりますが、その効果が十分に発揮されない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(15) 訴訟等に関わるリスク

当社グループは、様々な要因により今後直接又は間接的に、何らかの訴訟・紛争に関与することとなる可能性は否定できません。当社グループが訴訟・紛争に関与した場合、その経過・結果如何によっては、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

なお、前連結会計年度の有価証券報告書に記載した東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に関する事案については、現在裁判中ですが、特別検証委員会からの提言も踏まえ再発防止策の実施を徹底しております。

 

(16) 投資有価証券に関わるリスク

当社グループは、投資有価証券の評価基準及び評価方法として、市場価格のない株式等以外のものは期末の時価にて評価するため、株式市況等の変動により評価損を計上する可能性があります。一方、市場価格のない株式等は実質価額で評価するため、発行会社の財務状況や今後の見通しなどに鑑み、時価が著しく下落し、その回復が見込めない場合には、減損処理により評価損を計上する可能性があります。このような状況になった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(17) 退職給付債務に関わるリスク

当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、割引率、年金資産の期待運用収益率等の一定の前提条件に基づいて数理計算を行っております。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合、その差額は将来にわたって規則的に損益認識されます。金利の低下、運用利回りの低下、年金資産の時価の下落等があった場合や退職金制度、年金制度を変更した場合には、追加的な退職給付に係る負債の計上、未認識の過去勤務費用の発生又は将来の退職給付費用の増加により、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。当社グループは、これらの影響を軽減すべく退職給付制度の一部を2018年4月以降、確定給付年金から確定拠出年金に変更しておりますが、引き続き確定給付年金も残されているため、これらの可能性を完全になくすことはできません。また、退職給付に関する会計基準の変更等により、従来の会計方針を変更した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

 

(18) 役職員等の不正行為のリスク

役職員等の不正行為の防止を目的として、当社グループでは、「グループコンプライアンス委員会」を設置し、グループ全体のコンプライアンス活動を推進する体制を構築しております。また、博報堂及び博報堂メディアパートナーズにおいて、博報堂の代表取締役社長を委員長とする「ビジネス意識・行動改革委員会」を設置し、行動規範および遵守事項の徹底、取引ルールの明確化と周知、倫理のみに頼らない仕組みづくりなど、各種テーマで再発防止策の策定と実施を行っております。しかし、法令及び社内規定の遵守のための様々な取組みをもってしても、役職員の不正行為を完全に防止することはできません。また、当社グループの取引先等の不正行為への関与が問題となる可能性もあります。これらの役職員等の不正行為により、当社グループの財政状態、経営成績及び社会的信用に悪影響を与える可能性があります。

 

 

(19) 災害、事故、紛争(あるいは戦争)、感染症の流行等に関わるリスク

当社グループが事業を遂行又は展開する地域において、自然災害、電力その他の社会的インフラの障害、通信・放送の障害、流通の混乱、大規模な事故、伝染病、戦争、テロ、政情不安、社会不安等が起こった場合又その回復状況等が、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動に悪影響を及ぼすことが想定されます。

 

(20) 情報システムに関わるリスク

当社グループは、広告主のマーケティング又は広告に関する情報の管理を含む当社グループの事業のために、情報システムを使用し、情報インフラに依存しております。当社グループ又は当社グループが利用する第三者の情報システムに、システムの障害や停止、システムへの不正なアクセス、コンピュータウィルスの侵入、サイバーアタック、従業員の不適正な事務・事故・不正等による人為的過誤などが発生した場合、また同様の要因により情報の外部漏洩・不正使用等が発生した場合、当社グループ又は当社グループの取引先の事業活動あるいは当社グループの社会的信用に悪影響を及ぼし、当社グループの財政状態及び経営成績に悪影響を与える可能性があります。

配当政策

 

3 【配当政策】

安定配当を基本方針として、年間の配当金額を配当性向(30%程度)、資金需要の状況、内部留保の充実等を総合的に勘案の上決定することといたします。

毎事業年度における配当の回数については、中間、期末の年2回を基本方針(注)としており、これらの配当の決定機関は、中間配当においては取締役会、期末配当においては株主総会であります。なお、自己株式の取得につきましては、配当金を補完する株主還元の手段と位置づけ、財務状況、資金需要や業績の状況、当社グループを取り巻く環境等を総合的に勘案し、適宜検討していく方針です。

上記の方針に基づき、2024年3月期の年間配当額は、1株当たり32円(中間配当額16円、期末配当額16円)とし、2025年3月期の年間配当額につきましては、1株当たり32円を予定しております。

 

(注) 当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 

 なお、第21期の剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2023年11月13日

取締役会決議

5,873

16.00

2024年6月27日

定時株主総会決議

5,873

16.00