リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 研究開発について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、アカデミア(大学や国立研究所のような、国の研究機関)、企業との共同研究も交え、市場ニーズに基づいた新製品の開発及び既存製品の改良を行っております。しかしながら、計画どおりに研究開発が進行しない、製造販売承認の取得に時間を要する、新製品が期待どおりの性能を示さない等を理由に、開発の期間延長又は中止を余儀なくされる場合があります。その結果によっては、追加投資が必要となる、又は、それまでに出資した研究開発費の回収が見込めない等、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(2) 競争環境について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、迅速かつ効率的な研究開発及び既存製品の改良を行っておりますが、常に、他社との技術革新に関する開発競争が展開される状況にあります。これらの競争の結果によっては、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(3) 事業環境について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの細胞加工事業について、当社は医療機関から細胞加工受託サービスの対価として加工受託料を受領しております。新型コロナウイルス感染症の世界的な流行以前は、アジアを中心とした海外から多数のインバウンドの患者が当社の取引先医療機関へ来院し、細胞治療を行っていたため、当社の受託件数も増加し、大きな売上高を計上しておりました。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行により、インバウンドの患者が激減したことを受け、本事業の売上高が減少し、当社グループの業績に大きな影響を与えました。
今後も、新型コロナウイルス感染症の感染状況並びにその他の要因により、インバウンドの患者の来院数が増減する場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(4) 工場の操業停止について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループの工場、倉庫及び細胞加工施設等の生産設備は一部を除き坂戸本社工場に集中しており、坂戸本社工場において、火災、地震等の災害や重大な設備事故、技術上の問題、使用原材料の供給停止等が発生した場合には、事業活動の停止等が生じる可能性があります。災害対策マニュアルの作成、防災訓練等の対策を講じてはおりますが、被害を完全に回避できるものではなく、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(5) 人材確保及び人材育成について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
変化する顧客ニーズへ対応し顧客満足度を高めていくためには、適切な人材確保が重要課題の一つと認識していることから、当社グループは、各部門に配属可能な高い専門性を有する人材の確保と育成に注力しております。しかしながら、他業界に比べ比較的人材が流動的である傾向にあることなどから、適切な人材が十分に確保、育成できない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(6) 情報セキュリティについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループでは、社員のセキュリティ対策に対する意識を高め、顧客から信頼される高度なセキュリティマネジメントの実現に努めております。なお、細胞加工受託サービスの提供にあたり、顧客データと個人情報を取り扱う場合があります。これらの個人情報保護につきましては、「個人情報保護方針」に基づき、適切な管理に努めております。しかしながら、不正アクセスや人為的な重大ミス等により、万が一顧客情報の紛失、破壊、改ざん、漏洩等があった場合、社会的信用の失墜、顧客からの信用喪失、又は損害賠償請求による費用の発生等により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(7) 知的財産権について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループでは、特許権、実用新案権を含む知的財産権を厳重に管理し、第三者からの侵害、あるいは当社グループの製品が第三者の知的財産権を侵害しないよう十分に留意し、疑義ある場合には顧問弁理士に調査を依頼しております。一方、当社グループは、培地等の組成等の一部のノウハウに関しては、公開を前提とする特許等の知的財産権を獲得することよりも、単なるノウハウとして特許化せずに、機密情報として保有する方が事業戦略上有利であると考え、外部に流出しないよう管理を徹底しております。
しかしながら、当社グループの保有する知的財産権やノウハウが第三者から侵害を受けた場合、あるいは当社グループの製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(8) 技術・ノウハウ管理の流出について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの製品は、過去の生産実績及び経験から積み上げた技術並びに研究開発によるノウハウを主たる収益基盤としているため、従業員等の関係者及び共同研究先並びに取引先との秘密保持契約を締結するよう徹底しております。
これらが記載された機密性の高い書類の保管に関しては、保管場所を厳重に管理し、データ情報についてはアクセス権を限定するなどし、外部に流出しないよう留意しております。
しかしながら、これらの技術・ノウハウが流出した場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9) 新型コロナウイルス感染症について(発生可能性:中、発生時期:2023年5月以降、影響度:中)
当社グループでは、微生物事業において、これまで新型コロナウイルス感染症のPCR検査用のウイルス輸送液及び抗原検査キットが業績に貢献し、2022年3月期の当該2製品の売上高は854百万円(前年同期比50.0%の増加)、売上総利益は608百万円(前年同期比33.9%の増加)、2023年3月期の売上高は1,286百万円(前年同期比50.7%の増加)、売上総利益は776百万円(前年同期比27.6%の増加)と大きく寄与いたしました。
2023年5月より同感染症の感染症法上の分類がインフルエンザと同じ5類に引き下げられ、その後の検査需要の変化により同感染症の抗原検査キット及びウイルス輸送液の販売数量は当初計画を大きく下回る結果となり、2024年3月期において、当該感染症関連棚卸資産の評価損218百万円を計上いたしました。今後も品質・生産性の向上、コスト対応力強化のための施策を展開していく方針ですが、販売価格等、営業方針によっては今後の業績に影響を与える可能性があります。
また、同感染症の新たな変異株の出現などにより、国内の感染者数が増加するなどした場合、上記新型コロナウイルス感染症関連商材の売上増加が期待される一方、当社従業員への感染拡大が発生した場合には、製品供給に制限が出るなど、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(10) 法的規制について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループは、事業の遂行にあたって、一部製品について「再生医療等安全確保法」及び「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の関連法令をはじめ、様々な法的規制の適用を受けており、事業に関連する法的規制やリスク対応等について、毎月リスク・コンプライアンス委員会において検討すると共に、社内の管理体制の維持・強化を図ることとしております。
また、以下の主要な許認可を含めこれらの許認可等を受けるための諸条件及び関係法規の遵守に努めており、現状においては当該許認可が取消しとなる事由は発生しておりませんが、今後、これらの関係法規が改廃又は新たな法的規制が設けられるなどを理由に、仮にこれらの法的規制を遵守できなかった場合、事業活動を制限されることはもとより、社会的信用の低下を招き、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、これらの法的規制を遵守するためのコストが発生し、利益率の低下につながる可能性があります。
(11) 製造物責任について(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの主力製品である、細胞培養用培地及び細菌検査用培地共に「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」等の適用法的規制は無く、雑品扱いとなるものの、GMP(医薬品等の製造及び品質管理の基準)に準拠した厳格な品質管理体制を構築しており、再生医療等製品で使用される組織培養培地の使用原料に関しては「生物由来原料基準」に適合した原料を選択しております。また、すべての製品において、品質管理部及び品質保証部を通じて製品の品質・安全に配慮した開発・製造・販売活動を行っております。
しかしながら、すべての製品において、コンタミネーションや異物混入などの予期せぬ品質問題が発生しないという保証はなく、返品、回収等の措置を取る可能性があります。また、細胞加工受託サービスの提供により患者の健康被害を一切引き起こさないという保証もありません。そこで、当社グループは、すべての製品において製造物責任保険に加入しておりますが、この保険が最終的に負担する賠償額を十分にカバーできるとは限らず、大規模な製品の回収や製造物責任賠償につながるような不具合・欠陥が発生した場合には、当社グループの社会的信頼性に重大な影響を与え、多額の費用、又は損失の発生や売上高の減少により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(12) 原材料やエネルギー価格高騰について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループは、原材料を国内外より調達しており、重要製品の原材料についてはサプライチェーンの代替先を順次選定を進め安定供給を目指しておりますが、原材料価格の高騰により製品原価に影響を及ぼす場合や、原材料の需給バランスの変動、国内外の規制又は原材料メーカーによる品質問題の発生等により、原材料の入手が長期的に困難になり製品を製造・販売することができなくなる可能性があります。また、自然災害や世界情勢等により電気やガスといったエネルギーの価格が上昇した場合には、事業運営コスト及び製品原価が上昇し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(13) 資材の調達について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループは、一部の代替性の乏しい原材料及び資材等の調達について、特定の仕入先に依存しており、これらが調達できない場合、代替品対応についても、PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)への届出を要することから、製造スケジュールの遅延、製造中止等当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(14) 再生医療等治療について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
再生医療に関する規制の枠組みは、2014年11月に施行された「再生医療等安全性確保法」により整備されました。
当社グループの細胞加工事業は、同法に基づき業務を遂行しておりますが、自家培養による免疫細胞や幹細胞を用いた治療はいまだ黎明期であり不確実性が高く、今後の法令諸規則の制定・変更や治療効果等の動向によっては医療機関における治療件数の増加ペースが鈍化することもあり、その場合には当社の業績に影響を与える可能性があります。
(15) 創業者への依存について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の代表取締役社長である中村孝人は、当社の創業者であり、設立以来40年以上にわたり、代表取締役社長として経営方針や事業戦略の立案・決定及び事業運営等において重要な役割を果たしております。当社グループでは、担当業務毎に取締役、執行役員、又は部長を配置し、適宜権限委譲を行うことで同氏に過度に依存しない経営体制を整備しております。しかしながら、何らかの理由により、同氏が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(16) 大株主について(発生可能数:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の代表取締役社長である中村孝人、同氏の資産管理会社であるTAKAコーポレーション株式会社、配偶者・中村美千代、長男・中村雄一及び長女・中嶋久美子の保有株式は、当連結会計年度末現在で議決権の66.12%を保有しております。同氏は、引き続き安定株主として一定の議決権を保有し、その議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。しかしながら、将来的に何らかの事情により当社株式が上記大株主により売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況等に影響を与える可能性があります。
(17) 借入契約に係る財務制限条項について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループが取引金融機関との間で締結している借入金に係る契約のなかには、財務制限条項が付されているものがあります。当該財務制限条項に抵触した場合、貸付人からの請求があれば同契約上の期限の利益を喪失し、直ちに債務の弁済をするための資金確保が必要となるため、当社グループの資金繰りに影響を与える可能性があります。
(18) 海外事業展開に伴うカントリーリスクについて(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、香港に持株会社を、中国上海に製造販売拠点を有しております。これらの海外市場への事業進出は、以下のような不測の事態が発生するリスクがあります。
① 政情不安、反日感情の高まり及び経済環境の悪化
② 優秀な労働力の不足、人件費の高騰、大規模な労働争議の発生
③ 社会インフラの未整備に起因するエネルギー供給の不安定化
④ テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などによる社会的混乱
当社グループは、持株会社を有する香港並びに製造販売拠点の存する中国上海の情勢把握には常に注意を払い、損害を未然に防止できるよう努めておりますが、大規模な労働争議、テロ、戦争、暴動、自然災害、感染症の蔓延などの不測の事態が発生した場合には、当該地域における生産活動や販売活動の停止、現地資産の喪失などにより、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主への利益還元を経営上の重要事項の一つとして位置づけております。一方、安定的な経営基盤の維持、及び将来の事業展開の備えとしての内部留保の充実を図ることも企業価値の向上のために重要と考えており、両者を比較衡量しながら事業年度における業績及び財務状況を総合的に勘案し、株主への利益還元を進めてまいります。
当社では、期末の年1回において、剰余金の配当を行うことを基本方針としておりますが、会社法第454条第5項に規定する中間配当を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。配当の決定機関は中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。
当事業年度の剰余金の配当につきましては、上記方針のもと1株当たり14円としております。内部留保資金の使途につきましては、今後の事業展開の備えと工場設備投資費用として投入していくこととしております。
なお、基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。