2023年12月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 1,040 100.0 101 100.0 9.7

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、「ITで 世界をもっと おもしろく」を経営理念に掲げております。現在、様々な分野においてテクノロジー化が進んでおりますが、中小企業をはじめとした顧客対応業務ではこうしたテクノロジー化が進んでおらず、様々な課題が発生しております。特に、電話をはじめとした顧客とのコミュニケーションについては、そもそもこうしたコミュニケーションを記録していないこと、仮に記録していたとしても顧客情報との紐づけができておらず、その活用の幅が極めて狭いことなどの課題があります。その結果、顧客とのコミュニケーションに関しては、電話対応者などのコミュニケーションスキルに依存し属人化することとなり、会社として顧客対応を均一に行うことができない、顧客とどのようなコミュニケーションを行っているのか把握できないなど、多くの課題が発生しています。

 これらを解決すべく、当社は“会話を クラウドで おもしろく!”をコンセプトとする「カイクラ」を提供しております。「カイクラ」は、顧客(注1)に関する情報をクラウド(※)に蓄積しており、カイクラユーザー(注2)のオフィスの固定電話に着信があった場合、その着信と同時に「カイクラ」と連携したパソコン/タブレット/スマートフォンの画面に自動で顧客情報をポップアップ表示します。このポップアップ画面では過去の会話履歴メモや録音記録も参照することができるため、電話対応者は顧客情報や会話履歴を画面で確認しながら電話応対が可能となり、結果、顧客とのコミュニケーションに関して属人化からの脱却が可能となり、顧客との電話業務に関わる課題を減らし、より円滑なコミュニケーションを実現することができます。

 さらに「カイクラ」はSMS(※)送信機能、通話録音機能、ビデオ通話機能、携帯通話録音機能、及びメール連携機能などを備えています。これらの機能により、顧客がカイクラユーザーのオフィスに電話した場合だけではなく、カイクラユーザーから顧客に送信したSMS、顧客と行ったビデオ通話記録、携帯電話の録音記録やメールによるコミュニケーションも顧客情報と関連付けて一元管理し、自動で保存することができます。その結果、カイクラユーザーはきめ細やかな顧客対応を安定して実現できるだけではなく、カイクラ内のコミュニケーション履歴を参照することで、顧客とのコミュニケーションを組織として管理することが可能となります。

 また販売面では、自社の販売部門や、販売代理店や取次店などの販売パートナーによる「カイクラ」の販売に加え、「カイクラ」の機能をより迅速に展開するため、「カイクラ」の一部機能を他社にOEM(※)提供することで、先方の販売力とブランド力を生かして「カイクラ」機能の拡大を担っていただいております。

 当社は「カイクラ」を通して、顧客との様々なチャネルによるコミュニケーションを自動で記録・整理し一元管理し、必要な時にこれを参照できるようにすることで、顧客とのコミュニケーションロスやクレームを減らし、カイクラユーザーと顧客の双方の満足度を向上させるとともに、コミュニケーションに関する業務の効率化やカイクラユーザーにとって優良な顧客の囲い込みを可能とすることで、「カイクラ」を利用する企業や店舗、個人事業主などの生産性の向上に寄与していきたいと考えております。なお、当社は、カイクラ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の開示を省略しております。

 

 (注)1.カイクラユーザーのお客様(カイクラユーザーが提供する製品・サービスを利用している企業や個人)

2.当社が提供する「カイクラ」を利用している、当社の直接のユーザー

 

(1)コミュニケーションプラットフォーム「カイクラ」

(a)「カイクラ」の特徴

 「カイクラ」は、企業活動で発生する様々なコミュニケーションのDX(※)を実現するサービスであり、個別の機能として、オフィスの固定電話でのコミュニケーション支援機能やSMS送信機能、通話録音機能、ビデオ通話機能、携帯電話録音機能、及びメール連携機能などを備えております。「カイクラ」を使うことにより、顧客とのこうしたコミュニケーションを自動で記録・整理し、一元管理することが可能です。

 例えば、固定電話とSMSなど、異なるコミュニケーション手段を用いて顧客とコミュニケーションを取った場合であっても、カイクラユーザーはカイクラを通じ、これらを自動で記録・整理し、顧客情報と関連付けして一元管理することが可能となります。その結果、「カイクラ」を導入したオフィスでは、コミュニケーションの属人化を排除することができ、電話対応者の業務経験やスキルに依存しない、より質の高い顧客対応が可能となります。

 また、固定電話及び携帯電話の会話を「カイクラ」で録音した場合、AI(※)により自動でテキスト化することができます。このテキスト化されたデータを用いて、「解約」等ビジネス上影響があると考えられる単語の強調表示や会話内で頻出する単語の分析などが可能となります。

 「カイクラ」は、オフィスに設置したカイクラアダプターにより、そのオフィスへの固定電話への着信時に、インターネット回線を通じて関連する顧客情報やコミュニケーション履歴を自動で呼び出し、パソコン/タブレット/スマートフォンにこれらをポップアップします。カイクラアダプターを設置しても、カイクラユーザーは自身の固定電話番号などの電話環境を変更する必要はありません。

 これにより、カイクラユーザーは既存の電話環境を維持しながらも顧客対応業務の効率を改善させ、電話対応の負担を削減できることから、顧客満足度及び従業員満足度を向上させ、結果カイクラユーザーの収益向上に貢献します。なお、「カイクラ」サービスのイメージ図は下記のとおりです。

 

 

 

(b)「カイクラ」の主な機能

イ.固定電話でのコミュニケーション支援

 カイクラユーザーのオフィスの固定電話へ着信があった時に、関連する顧客情報や会話履歴を自動で呼び出し、パソコン/タブレット/スマートフォンにこれらをポップアップします。ポップアップさせる情報はカスタマイズ可能であり、例えば顧客氏名、住所、営業担当者、商品購入日、商品の詳細など、カイクラユーザーのニーズに合わせたオリジナルの画面を提供することができます。

 また、カイクラユーザーが他社のCRM(※)システムを通じて顧客情報を管理している場合、API連携(※)により「カイクラ」とこれらCRMシステムとを連携させることが可能です。この場合、カイクラユーザーのオフィスへ着信があった時に、当該CRMシステムで管理されている情報を、「カイクラ」の画面上に表示させることができます。

 これにより、電話の応対時に、カイクラユーザーが必要とする情報を確認できることから、よりきめ細やかで安定したコミュニケーションが可能となります。また、顧客情報はクラウド上のデータベースに蓄積されており、これは電話着信時だけではなくいつでも参照することができるため、カイクラユーザーは組織として、顧客情報やコミュニケーション履歴を管理することができます。

 なお、カイクラ画面のイメージは以下のとおりです。

 

 

ロ.SMS送信

 「カイクラ」の画面から、以下のイメージのように、顧客や自社の従業員に対してSMSを送信することができます。SMSは携帯電話の番号に対して送信できるため、顧客への連絡や不在時の伝言に有効となります。また、「カイクラ」は送信したSMSの履歴を自動で記録し、顧客情報と関連付けて一元管理するため、どの顧客に・いつ・どのようなSMSを送信したか、顧客情報から検索できるだけでなく、カイクラユーザーのオフィスの電話に着信があった時にはその内容がパソコンなどの画面にポップアップされます。

 さらに、「カイクラ」のSMS送信機能は予約送信機能を有しているため、例えば来店予約の前日に来店リマインドのメッセージを自動で送付するなど、いわゆるMA(※)ツールとして利用することも可能です。

 

 

ハ.通話録音

 カイクラユーザーのオフィスの電話の内容を自動で録音し保存することができます。また、この電話の会話内容をAIにより自動でテキスト化し、さらに生成AIによりそのテキストを要約することも可能です。

 通話録音の音声データ及びそれをテキスト化したデータは、「カイクラ」により自動で顧客情報と関連付けられ、一元管理されます。

 この通話録音機能により、カイクラユーザーは重要な会話などについてあとから聞き直すことができ、より適切な顧客対応が可能となります。また、会話のテキストデータは「カイクラ」上で検索や分析が可能となるため、「解約」「キャンセル」などの特定のキーワードが含まれている会話だけを抽出したり、どのようなキーワードが頻繁に使われていたりするのかなどの分析も可能となります。

 通話録音機能に関する「カイクラ」の画面は以下のとおりです。

 

 

ニ.ビデオ通話

 「カイクラ」はビデオ通話機能を有しております。特定のアプリケーションのインストールは不要で、パソコンやスマートフォンのブラウザ上で簡単にビデオ通話を行うことができます。このビデオ通話機能ではカメラを通じた動画や音声だけでなく、パソコンやスマートフォンの画面の共有も可能であり、またビデオ通話内容を録画することも可能です。この録画データも「カイクラ」により自動で顧客情報と関連付けて記録・整理され、他のコミュニケーション履歴とともに一元管理されます。また、その履歴は必要に応じて検索が可能です。

 ビデオ通話機能のイメージ図は以下のとおりです。

 

ホ.携帯通話録音

 「カイクラ」は、固定電話だけでなく、社用の携帯電話で会話した内容を自動で録音することができます。また、この電話の会話内容をAIにより自動でテキスト化することも可能です。

 この携帯電話での会話の音声データ及びそれをテキスト化したデータは、「カイクラ」により自動で顧客情報と関連付けて記録・整理され、他のコミュニケーション履歴とともに一元管理されます。その結果、カイクラユーザーはこの携帯電話での会話データを、顧客情報、オフィスの固定電話での会話内容、送信したSMS、ビデオ通話内容とともに参照することが可能です。

 「カイクラ」の携帯通録は、録音データのアクセス権をアカウントごとに設定できるだけではなく、電話の相手先の属性ごとに、携帯電話での会話の録音可否を設定できます。このように、携帯電話での会話については、録音記録が必要な会話のみを記録し、必要な従業員にしかそれをアクセスできないようにすることで、個人情報やプライバシーに配慮しながら、必要な会話を一元管理することが可能となります。

 携帯通話録音機能のイメージ図は以下のとおりです。

 

 

(注)3.現在、携帯通話録音機能はNTTドコモ、au、SoftBankの提供する社用携帯電話のみ対応しております。

 

へ.メール連携

 「カイクラ」は、オフィスの固定電話着信と同様に、メールの送信時及び受信時にその内容を「カイクラ」に取り込み、社内のチームメンバーに対してポップアップ通知することができます。これにより、「カイクラ」の画面上で顧客とのメールのやり取りを確認・共有できるとともに、固定電話やSMS、ビデオ通話、携帯電話など、「カイクラ」で一元管理されているその他のコミュニケーション履歴を参照しながらメール対応することが可能となります。

 また、「カイクラ」に取り込むメールは顧客とのメールに限定し、その他の不要なメールは取り込まないなど、個人情報やプライバシーに配慮しながら必要なメールのみを一元管理することが可能です。

 メール連携機能のイメージ図は以下のとおりです。

 

 

(2)「カイクラ」の収益構造

 「カイクラ」の主な収益構造は、カイクラユーザーから得られる「カイクラ」の利用料収入であります。

 この利用料収入は、「カイクラ」導入時の初期費用、サブスクリプション(※)型の月額利用料及びSMSなどの従量課金売上の3つから構成されます。

 初期費用は「カイクラ」を導入した拠点ごとに収益計上されます。また月額利用料及び従量課金売上は「カイクラ」を導入した拠点が継続して「カイクラ」を利用することで収益が計上されます。

 当社の収益モデルは、「カイクラ」導入拠点数及びその利用量が増加するに従って月額利用料及び従量課金売上などの収益が逓増する、いわゆるSaaS(※)型の収益モデルとなっております。

 2018年12月期以降の各期末時点でのアクティブユーザー(注4)(会社)及びその拠点数の推移、業界ごとの導入企業割合は以下のとおりです。

 

(注)4.アクティブユーザー:獲得したカイクラユーザーのうち、解約によりカイクラを利用しなくなったユーザーを除いたユーザー数

 

 

 

 また、当社の事業系統図は以下のとおりであります。

 

[事業系統図]

 

<用語集>

下記は、「3 事業の内容」の文章中において※で示した用語の本書内での意味を説明しております。

用語

説明

クラウド

インターネット等を経由して、コンピュータ資源をサービスの形で提供する形態のこと。

SMS

「Short Message Service」の略称で、携帯電話の電話番号を使ってメッセージがやりとりできるサービスのこと。

OEM

「Original Equipment Manufacturing」の略称で、委託者や発注元の名称・ブランドで製品やサービスを生産・提供すること。

DX

「Digital Transformation」の略称で、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務や組織などを変革し、競争上の優位性を確立すること。

AI

「Artificial Intelligence(人工知能)」の略称で、コンピュータがデータを分析し、推論、判断、最適化提案、課題定義や解決、学習等を行う、人間の知的能力を模倣する技術のこと。

CRM

「Customer Relationship Management」の略称で、顧客管理のためのツールやシステムのこと。

API連携

APIは「Application Programming Interface」の略称で、API連携とはアプリケーション間やシステム間でデータや機能を連携し、利用できる機能を拡張すること。

MA

「Marketing Automation」の略称で、ソフトウエアを利用してマーケティング活動を自動的に行うプロセスのこと。

サブスクリプション

顧客に対し提供するサービスの対価を、利用期間に応じて継続的に受領する収益モデルのこと。

SaaS

「Software as a Service」の略称で、クラウド上にソフトウエアを用意し、インターネット経由でその機能を利用できるサービスのこと。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和され、景気の持ち直しが期待された一方で、ウクライナ情勢の長期化や世界的な資源・エネルギー価格の高騰、金利上昇圧力の高まりなど、先行きが不透明な状態が続いております。

 このような中、当社が属するクラウドサービス市場は、クラウド技術の発展・普及によって、企業内に情報システムを構築することなくデータの共有や機能の拡張ができるようになったことから、国内でクラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は、2022年時点で72.2%(出典:総務省「令和4年通信利用動向調査」)となっており、引き続きクラウドサービスへの投資は拡大基調にあります。さらに、デジタル庁は、各府省庁などが共同利用する「ガバメントクラウド」を整備し、2022年度に利用する対象クラウドサービスとして米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス)の「Amazon Web Services」、米Google(グーグル)の「Google Cloud」、米Microsoft(マイクロソフト)の「Microsoft Azure」、米Oracle(オラクル)の「Oracle Cloud Infrastructure」を採択したことを2022年10月に発表しました。このように、わが国では民間だけでなく政府をあげてクラウドサービスを活用する機運が高まっており、今後もこの状況は継続するものと考えられます。

 このような状況のもと、当社は、「ITで 世界をもっと おもしろく」を経営理念とし、これまでクラウドCTIサービスを中小企業、店舗等へ提供してまいりました。現在はさらにサービスを進化させ、コミュニケーションテック企業として、固定電話でのコミュニケーションを支援する機能を通話録音機能や音声テキスト化機能、SMS送信機能、メール連携機能などと結びつけ、カイクラユーザーと顧客の会話をデータ化することで、ユーザーの顧客ニーズの分析、応答品質の向上、リスク管理など顧客対応力向上を可能とする「カイクラ」を展開し、サービスの提供範囲も固定電話でのコミュニケーション支援から、通話録音、SMS、ビデオ通話などのオプションを提供し、かつこれらをクラウドで一元管理するサービスを提供するところまで広げております。

 当事業年度においては「カイクラ」の統計情報を拡充し、会話データを統計処理して可視化することで、取引先とのコミュニケーションや現場での電話業務の稼働状況をより効率的に管理できるような機能を提供しました。また、「カイクラGPT要約機能」をリリースし、「カイクラ」に録音された会話について内容を要約するとともに、会話に対しての感情のラベリングを行えるような機能を提供いたしました。これにより、カイクラユーザーは、顧客コミュニケーションの改善や顧客対応満足度の向上、クレーム対応の見直しなどをより容易に行えるようになりました。

 さらに、前事業年度に引き続き、自動車業界や不動産業界などユーザーニーズの高い業界に対する営業や通話録音オプションの販売に注力したこと等により、アクティブユーザーを継続して増加させることができ、当事業年度末のアクティブユーザー数は会社数で2,602社(前事業年度末比9.6%増)、拠点数は4,508拠点(前事業年度末比20.1%増)となりました。

 以上の結果、当事業年度における当社の経営成績は、売上高1,040,169千円(前事業年度比35.4%増)、営業利益101,364千円(前事業年度は150,966千円の営業損失)、経常利益98,057千円(前事業年度は150,836千円の経常損失)、当期純利益は108,902千円(前事業年度は136,124千円の当期純損失)となりました。

 なお、当社の事業セグメントは単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産合計は439,380千円となり、前事業年度末に比べ106,582千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が101,024千円増加したことなどによるものであります。

 当事業年度末における固定資産合計は97,370千円となり、前事業年度末に比べ30,392千円増加いたしました。これは主に、ソフトウエア仮勘定が10,178千円増加、敷金が11,402千円増加、繰延税金資産が12,123千円増加したことなどによるものであります。

 この結果、資産合計は536,751千円となり、前事業年度末に比べ136,975千円増加いたしました。

 

(負債)

 当事業年度末における流動負債合計は122,937千円となり、前事業年度末に比べ36,410千円増加いたしました。これは主に、未払消費税等が29,016千円増加、未払金が4,849千円増加、契約負債が3,298千円増加したことによるものであります。

 当事業年度末における固定負債合計は21,875千円となり、前事業年度末に比べ8,338千円減少いたしました。これは、長期借入金が8,338千円減少したことによるものであります。

 この結果、負債合計は144,812千円となり、前事業年度末に比べ28,072千円増加いたしました。

 

(純資産)

 当事業年度末における純資産合計は391,938千円となり、前事業年度末に比べ108,902千円増加いたしました。これは、当期純利益108,902千円の計上によるものであります。

 この結果、自己資本比率は73.0%(前事業年度末は70.8%)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、319,540千円となり前事業年度末に比べ101,024千円増加いたしました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果獲得した資金は、146,663千円(前年同期は185,697千円の支出)となりました。これは主に、売上高の増加に伴い税引前当期純利益98,057千円を計上したこと、減価償却費及びその他の償却費20,111千円が発生したこと、及び未払消費税等の増加額29,016千円などによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は、35,077千円(前年同期は8,917千円の支出)となりました。これは主に、基幹システムの開発に伴いソフトウエア仮勘定が増加した結果発生した無形固定資産の取得による支出11,648千円、及び敷金の差入による支出16,112千円などによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は、10,560千円(前年同期は3,297千円の支出)となりました。これは、長期借入金の返済による支出10,560千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

 当社は、カイクラ事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は行っておりません。

a.生産実績

 当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度における販売実績を収益区分別に示すと、次のとおりであります。

収益区分

当事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

初期売上

151,320

126.5

月額売上

747,481

137.9

従量課金売上

138,927

131.2

その他

2,440

272.2

合計

1,040,169

135.4

 (注) 最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 前事業年度に引き続き、自動車業界や不動産業界などユーザーニーズの高い業界に対する営業や通話録音オプションの販売に注力いたしました。これにより、アクティブユーザーを継続して増加させることができ、当事業年度末のアクティブユーザー数は会社数で2,602社(前事業年度末比9.6%増)、拠点数は4,508拠点(前事業年度末比20.1%増)となりました。また、ARPA(ユーザー1拠点あたりの売上単価)は17,324円(前事業年度末比6.5%増)となりました。

 さらに、獲得したユーザーのオンボーディング活動や、「カイクラ」の追加機能の開発にあたりユーザーの声を反映するなどの取り組みを継続することにより、当事業年度の月次解約率(年度平均)を0.33%(前事業年度は0.28%)とすることができました。

 この結果、初期売上は151,320千円(前年同期比26.5%増)と前年同期から増加し、月額売上が747,481千円(前年同期比37.9%増)、従量課金売上が138,927千円(前年同期比31.2%増)と大きく伸長し、当事業年度の売上高は1,040,169千円(前年同期比35.4%増)となりました。

 

(売上原価、売上総利益)

 カイクラアダプターの仕入やサーバ利用料などにより、売上原価は172,602千円(前年同期比5.8%増)となりました。アクティブユーザー数、アクティブ拠点数の増加やARPAの向上によりサブスクリプション収入が増加したため、売上総利益率が83.4%(前年同期は78.8%)に向上いたしました。この結果、当事業年度の売上総利益は867,566千円(前年同期比43.4%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当社の販売費及び一般管理費は、主に人件費、広告宣伝費、その他の経費で構成されております。今後の成長に備えた体制整備に伴い人件費は増加したものの、費用対効果の高い広告宣伝活動に注力し広告宣伝費を削減した結果、当事業年度の販売費及び一般管理費は766,202千円(前年同期比1.3%増)となりました。この結果、当事業年度の営業利益は101,364千円(前年同期は150,966千円の営業損失)となりました。

 

(営業外収益・営業外費用、経常利益)

 還付金収入等の計上により営業外収益は489千円(前年同期比27.3%減)、上場関連費用や支払利息の計上により営業外費用は3,795千円(前年同期比598.4%増)となりました。この結果、当事業年度の経常利益は98,057千円(前年同期は150,836千円の経常損失)となりました。

 

(特別利益・特別損失、法人税等、当期純利益)

 前事業年度に引き続き、特別利益及び特別損失の発生はありません。主に法人税等調整額を12,123千円(前年同期は15,445千円)計上した結果、当事業年度の当期純利益は108,902千円(前年同期は136,124千円の当期純損失)となりました。

 

② 財政状態の分析

 財政状態の状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析

 当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社の資本の財源及び資金の流動性については、内部留保の充実を図るとともに、経営基盤の長期安定に向けた財務体質の強化及び事業の継続的な拡大発展を実現させることと、株主への利益還元を考慮し実施していくこととしております。

 当社の資金需要の主なものは、主たる事業であるカイクラ事業に係る仕入原価のほか、販売費及び一般管理費の人件費等の事業に係る運転資金であります。

 当社は必要となった資金については、主として内部留保資金及び営業活動によるキャッシュ・フローによるものを活用しておりますが、安定的な財源確保のため、株式の発行による資金調達を行っております。

 

⑤ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りによる不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。詳細は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。