リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況並びに株価等(以下「業績等」という。)、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクには次のようなものがあります。
なお、記載中、将来に関する事項は当連結会計年度末(2024年3月31日)において判断したものであります。
また、当社グループは、これらのリスクの回避、低減及び顕在化した場合の影響最小化への対応に努める方針であります。
A.当社グループの主力事業であるエネルギー事業に特有のリスク
(1) エネルギー業界を取り巻く環境の変化
当連結会計年度の国内エネルギー業界においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた第6次エネルギー基本計画が2021年10月に閣議決定されるなど、当社グループを取り巻く事業環境は大きく変化しています。主力の石油類・LPガスの仕入れ価格に影響を及ぼす原油価格・プロパンCPが、主要産油国による協調減産の延長などを受けて一時的に急騰したものの、世界的な温暖化や中国の景気低迷などによる需給の緩みが影響し、全体としては前連結会計年度と比べて低位で推移しました。一方、石油・ガスの国内需要は、少子化の進展等による人口減少、省エネ機器の普及やライフスタイルの変化などにより全体としては減少傾向が継続しています。
石油・ガス業界をとりまく環境は、供給側であるOPECプラスの産油量動向や中東情勢、需要側では大消費国である米国、中国、インド等の経済状況等が原油価格に大きな変動をもたらします。また、国内では環境意識の高まりや脱炭素社会に向けた官民をあげての取り組みにより、エネルギーの節約志向は今後一層強まるものと考えられます。これら原油価格の変動や国内市況並びにエネルギー環境の変化等が当社グループの業績等に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループでは、原油価格等の変動や消費者の節約志向等には直接対応できないため、エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)では、住設機器の販売や住宅向けリフォーム等の住まいと暮らしの事業(ライフクリエイト事業)の拡大等、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、太陽光発電設備のメンテナンス事業や国内外の再生可能エネルギー事業の拡大等の非石油・ガス事業への展開のほか、ライフクリエイト事業等の非エネルギー事業への積極投資により業界環境変化のリスク低減に取り組んでいます。
(2) 気温の変動によるリスク
当社グループの主力となる事業は、エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)であり、全セグメントの売上高のうち94.1%を占めています。このエネルギー事業については、基本的には気温の変動によるリスクを有しており、なかでも石油部門の主力商品である民生用灯油については、冬が最需要期であり、夏の使用量と比較して著しい格差があります。このため、暖冬により冬場の灯油の消費量が減少した場合、販売計画に狂いが生じ、また価格にも影響を及ぼすなど、気温の変動が当社グループの販売実績及び業績等に重要な影響を与える可能性があります。
エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、冬場の気温に需要が左右される石油・ガスだけでなく、夏場に需要が増加する電力販売の拡大を進めると共に、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)における既存の石油販売施設について、建設機械やトラック等の燃料として年間を通じて需要の見込める軽油の出荷能力を増強したオイルスクエアへの移行等により気温の変動によるリスク低減に取り組んでいます。
また、電力については世界的にLNGをはじめとする燃料の高騰を背景にした電力需給環境の変化が激しい状況が続いています。特に夏場と冬場の需要期において、電力卸売市場の価格変動により業績に重要な影響を与える可能性がありますが、市場連動型プランへの移行の推進(BtoB事業)を図ることで価格変動リスクを最小化する一方、他社のバランシンググループ(BtoC事業において複数の小売電気事業者が1つのグループを形成し、一般送配電事業者との間で1つの託送供給規約を結ぶ仕組み)に参加し、電源調達と需給管理を委託することで、需給バランスの最適化に取り組んでいます。
(3) エネルギー業界における競争の激化
当社グループの属するエネルギー業界においては、規制緩和、環境問題、少子化の進展による人口減少等の要因により、電力、石油、都市ガス、LPガス等の垣根を越えたエネルギー間競争が激化しています。「オール電化」「太陽光発電」「エネファーム」等のエコロジーと関連する商品群の開発・販売推進により、今後もこの傾向が続くものと予想されます。
また、LPガス業界においては、LPガス消費者の獲得やそれに伴うLPガス価格の引き下げ等、同業者間の競争が激しくなっています。石油業界においても、ガソリンスタンド間の厳しい生き残り競争や民生用灯油の巡回販売、ホームセンター他の販売チャネル間の争い等、同業者間の激しい競争が続いています。
こうしたエネルギー間競争及び同業者間競争の激化に加え、世界的な脱炭素・SDGsへの意識の高まりや国内でも2050年カーボンニュートラルの実現に向けた動きが加速する中、総合エネルギーサービス企業グループとして責任ある対応が強く求められており、これらへの対応の遅れは当社グループの業績等に重要な影響を与える可能性があります。
エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)では、LPガス事業の営業権の買収や同業者のM&Aで事業基盤の維持拡大に努めています。また、石油・ガス・電気のエネルギーを取り扱い、セット販売等でお客様に継続してお取引いただくことや顧客数拡大に向けた新たな取り組みとして、CO2排出量を実質ゼロとする「ミライフカーボンニュートラルLPガス」の販売を開始する等により競争激化に対するリスク低減に取り組んでいます。
エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、実質再生可能エネルギー100%の電気料金プランの提供をはじめ、オフサイトコーポレートPPAによる再生可能エネルギー電力の供給開始やCO2排出量削減に寄与する次世代バイオディーゼル燃料の取り扱い開始など、「電力・再生可能エネルギーなど総合エネルギーサービスへのポートフォリオ転換」に向けた取り組みを進めています。
(4) 石油・LPガス設備の保安等と環境汚染に関するリスク
当社グループは、「保安は全てに優先する」と考え、石油及びLPガス販売に係る設備等について、関係諸法規及び内部規程に基づき定期的に厳格な保安監査を実施しています。また、石油設備については石油漏出による環境汚染事故を防止するため損害保険ジャパン株式会社と共同でリスクファイナンスを含む総合リスクマネジメントを実施しています。しかしながら、これらの対策が石油及びLPガスの漏洩等の事故及びそれによる損失の可能性を無にするものではありません。
エネルギー卸・小売周辺事業(BtoC事業)では、ガス関連設備について、法定点検に加えて、お客様の要望に応えた自主保安点検として戸建て住宅向けに「ひまわり点検」を実施しています。また、エネルギーソリューション事業(BtoB事業)では、石油漏出を早期発見するため、日々漏洩点検を実施すること等により設備の保安等と環境汚染に関するリスク低減に取り組んでいます。
B.グループ事業全般におけるリスク
(1) 取引先の信用リスク
当社グループの販売形態には、卸売販売及び小売販売があります。卸売販売については主に掛売りをしており、2024年3月末現在の「受取手形及び売掛金等の売上債権」の残高は398億円であります。
これらの売上債権については、回収サイトの短縮化や、取引先の資金状況を勘案し一部現金による前受制により回収の早期化を図っています。また、コンピュータシステムによる与信等債権管理の徹底を行っています。さらに、当社グループは貸倒損失発生時に備え十分な引当金を計上していますが、予測不能な事態が生じた場合には、売上債権の回収に支障をきたし、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、信用調査会社のデータベースに基づき、毎年、与信枠を設定することで与信管理を徹底し、与信枠を増枠する場合は、個別に決裁すること等により取引先の信用リスク低減に取り組んでいます。
(2) 外国為替変動リスク
当社グループは、主に、国内において円建による取引を行っていますが、シナネン株式会社の石油製品の輸出入及びシナネンサイクル株式会社の自転車の輸入、株式会社シナネンゼオミックの抗菌剤の輸出については一部外貨建で取引を行っています。このため、当社グループの業績が外国為替の変動に影響を受けることがあります。当社グループは、為替変動リスクを軽減するためヘッジ取引を行っていますが、必ずしもこれを完全に回避できるものではありません。
また、主力商品である石油類及びLPガスについては主に国内元売会社から仕入れていますが、原油やLPガスの輸入価格が、為替の変動により間接的に当社グループの仕入価格に影響を及ぼすというリスクを有しています。
外国為替取引においては、為替予約や想定為替レートを設定し、ヘッジ取引により外国為替変動によるリスク低減に取り組んでいます。
(3) 固定資産の評価に関するリスク
当社グループは、主にエネルギー事業に係る資産として、石油類卸売設備、LPガス充填設備及びガソリンスタンド設備並びにこれらの設備を使用するための土地を保有しており、有形固定資産の2024年3月末現在の帳簿残高は282億円となっています。当社グループはこれまで非効率資産の売却を進め、財務体質の強化に努めています。
設備投資については、回収可能性を十分に検討したうえで実行し、定期的に回収可能額の評価を行いますが、その結果、新たに減損損失が発生するリスクを有しています。
当社グループでは、第三次中期経営計画において、資本効率の改善を定性目標として掲げています。事業の効率化を進め、利益率を向上させること、低稼働資産を有効活用し、収益をあげること等により固定資産の評価に関するリスク低減に取り組んでいます。
(4) 投資等に係るリスク
当社グループは経営基盤の強化を図るため、子会社または関連会社の設立、外部との資本提携等を行っていく可能性があります。投資等にあたっては投資リスク等を勘案したうえで決定し、その後定期的に投資価値のチェックにより回収可能性の判断を行っています。その際、必要に応じて回収不能額を見積り、引当金等を計上する方針ですが、投資先の経営成績及び財政状態が予想以上に悪化した場合には、当社グループの業績等が影響を受ける可能性があります。
また、当社グループは、取引の関係や提携の強化・円滑化を図る政策的な理由等から株式を長期間保有しています。これらの株式の一部については、減損処理を行っていますが、その後の投資先の経営成績及び財政状態並びに株価の推移等から投資価値は十分にあると認識しています。しかしながら、日本経済の動向及び海外情勢等に予測し難い事態が生じた場合には、株価下落により評価損が発生し、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、事業投資や資産の取得等の投資について、適正性・収益性等を評価する「事前審査委員会」と代表取締役社長の意思決定に関する諮問機関としての「経営会議」を設置しています。それらの機関での検討内容を参考にして、最終的な意思決定をすることにより投資等に係るリスク低減を進めています。また、投資後についても、一定期間モニタリングを継続し、事前に定めた撤退審議基準に抵触した場合は、その改善を指示し、あるいは撤退・売却を指示すること等によりリスク低減を進めています。
(5) 新規事業に参入するリスク
当社グループは、新規収益源の発掘・育成を積極的に推進していきますが、事業環境の変化によっては、新規事業が想定通りの収益を計上できない可能性があり、将来においてこれらの新規事業の業績が当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、新規事業への参入についても投資等に係るリスクと同様に「事前審査委員会」「経営会議」のプロセスを経ること、新規事業のフィジビリティスタディ(実行可能性評価)を事前に実施すること等によりリスク低減に取り組んでいます。また、投資後についても、投資等に係るリスクと同様のモニタリングを実施し、事前に定めた撤退審議基準に抵触した場合は、その改善あるいは撤退を指示することによりリスク低減を図っています。
(6) 海外取引に伴うリスク
株式会社シナネンゼオミックの製造する抗菌剤「ゼオミック」について、EPA(米国環境保護庁)及びFDA(米国食品医薬品局)等をはじめとする国内外の取得許認可を活かして、米国、欧州、中国、韓国及び東南アジア等への販売活動を進めています。欧州においては、規制情報の収集や関係当局との情報交換を通じて、EU-BPR(欧州殺生物性製品規則)の承認取得に取り組んでいます。
このように当社グループは海外事業へ進出していますが、法令または関税等の貿易取引制度の改正、政治的・経済的変動、テロ、戦争、その他の要因による社会的混乱等のリスクが内在しています。
当社グループでは、海外進出において、政治動向、経済動向、法制度、(優遇)税制等を事前に調査・評価することにより海外進出に関するリスク低減に取り組んでいます。
(7) 製品の品質及び安全に関するリスク
当社グループは、抗菌事業、環境・リサイクル事業、自転車等の輸入販売事業その他の事業において製造、販売をしています。製品の生産開始以来、品質管理には十分留意しており、製造物責任法(PL法)の施行後は、生産物責任賠償保険に加入し、事故発生による費用負担の低減を図っています。また、消費生活用製品安全法に基づき、製品の安全な使用方法に関する周知徹底を図るとともに事故発生時の対応強化に努めています。
しかしながら、今後大規模な製品回収や製造物責任が問われる不測の製品事故等が発生した場合には、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
抗菌事業を行う株式会社シナネンゼオミックでは、2002年4月にISO9001の認証を取得した上で、社内の品質監査体制を強化しています。また、製品の製造・販売を行う各事業会社においては、品質管理を担当する部署を設置すること等により製品の品質及び安全に関するリスク低減に取り組んでいます。
(8) 個人情報の取り扱いについて
当社グループは、エネルギー事業における石油・ガス・電気等の消費者データ及び非エネルギー事業における製品販売・サービス提供等で取得した顧客データ等の個人情報を保有しています。これらの個人情報を保護するために、リスク・コンプライアンス委員会を設置するとともに、従業員等に向け定期的に個人情報保護に関する研修の実施、暗号化等の情報セキュリティシステムの導入、各種規程の制定等を行っています。
しかしながら、何らかの原因により個人情報が外部に漏洩した場合には、当社グループに対する信用が失われ、その結果、売上高の減少等により当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、個人情報保護方針、個人情報保護規程を制定し、個人情報の取り扱いに関するリスク低減に取り組んでいます。また、システム事業を行う株式会社ミノスは、プライバシーマーク認定事業所であるほか、同社運用部では情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)に関する国際規格である「ISO/IEC27001:2013・JISQ27001:2014」を取得し、リスク低減に取り組んでいます。
(9) 自然災害等に関するリスク
当社グループは、石油卸売設備、LPガス充填設備及びガソリンスタンド設備等のエネルギー事業の設備、抗菌事業の製造設備、自転車事業の倉庫や店舗(在庫を含む)、シェアサイクル事業の自転車やステーション設備等の資産を所有しています。これらの設備が大規模な台風、地震、津波、洪水等の自然災害等により被災した場合、正常な事業活動ができなくなり、当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
当社グループでは、充填施設等、事業継続のため中核施設には非常用電源を設置し、自然災害等の被災に備えています。また、建物は免震、耐震、制震構造とすることにより自然災害に関するリスク低減に取り組んでいます。
2024年1月1日に発生した「能登半島地震」においては、能登半島にミライフ西日本株式会社の珠洲店があること から、グループ危機対策本部を立ち上げました。当連結会計年度においては珠洲店の設備被害、太陽光発電設備の損傷などの物的被害が確認され、太陽光発電設備損傷による特別損失1億円を計上しております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主各位に対する利益還元を経営の最重要政策と位置づけ、連結配当性向30%以上を目安に、1株当たり75円を下限とした安定的な配当を基本とした株主還元を実施していきます。内部留保資金につきましては、事業領域拡大の原資及び事業基盤強化に向けた設備投資等に充当していく予定です。
また、毎事業年度における配当の回数についての基本的な方針は、期末配当の年1回としており、配当の決定機関は、取締役会であります。
当事業年度の配当につきましては、1株当たり75円(年間)といたしました。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。