2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月27日)現在において当社が判断したものであります。

1.出版に関する事業について

①委託販売制度について

 当社は、出版業界の慣行に従い、書店保護の見地から原則として当社が取次店及び書店に配本した出版物(書籍、雑誌)について、配本後、約定期間内に限り、返品を受け入れることを販売条件とする委託販売制度を採用しております。そのため、当社は製品の返品による損失に備えるため、過去の返品実績等に基づく将来返品見込額を返金負債として計上しております。対応策といたしましては、返品率の低減を目指し、計画刊行、電子書籍販売の拡大に努めてまいります。

②再販売価格維持制度について

 当社が制作、販売する出版物については、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(独占禁止法)第23条の規定により、再販売価格維持制度(再販制度)が認められているため、書店では定価販売が行われております。なお、当社は、取次販売会社または書店の間の取引価格の決定に際しては、定価に対する掛け率によっております。これは出版物がわが国の文化の振興と普及に重要な役割を果たしていることから、同法律の適用除外規定により例外的に出版業界においては再販制度が認められているものであります。この再販制度について、公正取引委員会は2001年3月23日に「著作物再販制度の取扱いについて」を発表しており、当面、再販制度は存置される見通しでありますが、一方で、再販制度を維持しながら、今後も消費者利益のため、現行制度の弾力的運用を業界に求めていく方針を発表しております。当該制度が廃止された場合には、出版競争の激化等により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。対応策といたしましては、公正取引委員会の動向を注視しつつ、再販制度の影響を受けない電子書籍販売等の拡大に努めてまいります。

③出版不況と読者の嗜好の変化について

 当社は出版物を中心とした業務を行っておりますが、出版業界では引き続き書籍販売額、雑誌販売額ともに減少傾向が続いております。これは、デジタルデバイスの多様化と普及、ネットワークの高速化・大容量化などによるメディアの多様化や新古書店、マンガ喫茶、図書館などの出版物購入に結びつかない消費形態の拡大などの様々な要因が考えられます。このような、出版業界全般の低迷が今後も継続した場合、当社出版物の販売部数の減少により当社の経営成績及び財政状態に悪影響が生じる可能性があります。また、読者の嗜好は常に変化しており、当社が出版する雑誌の誌面構成や編集方針等が何らかの理由により読者から急激に受け入れられなくなった場合には、当社の経営成績にも悪影響が生じる可能性があります。対応策といたしまして、読者の嗜好性を捉えたスピーディなコンテンツ開発に努めております。

④広告売上の景気変動によるリスク

 当社の2023年度の全体売上における広告収入の構成比率は約12%となっております。この広告収入は景気の影響を受けやすい傾向にあります。わが国経済と広告主の広告支出に高い相関が見られる原因として、広告費を先行投資ではなく変動費として認識する広告主が多く、景況悪化が見込まれる時期には支出を削減し、好転が見込まれる場合には支出を増加させることがあげられます。今後、景況の急激な悪化は当社の業績に何らかの悪影響を与える可能性があります。対応策といたしましては、雑誌、WEBサイト、イベントなどの特定の媒体での広告制作、掲載という従来の広告モデルではなく、雑誌、WEBサイト、SNSでの発信、マーケティング等を組み合わせたクライアントへのソリューション提案を軸とした競合との差別化、商品力の向上を図っております。

⑤競合について

 当社の発行する雑誌については、主として20~30代の女性をターゲットとしたライフスタイル誌を制作し、首都圏地域を中心に販売しております。当社の発行する各雑誌には、有力な競合誌が複数存在し、同業他社との競争は激しい状況にあります。また、広い意味でのタウン情報やファッション情報または、ライフスタイル情報を切り口とする雑誌も当社の競合誌となり得るものであり、今後これらの分野に大手資本が参入し、さらに競合媒体が増加した場合には、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対応策といたしましては、マーケットリサーチによる読者の嗜好性を捉えた誌面作り、ブランド力の向上、SNS等による情報発信、読者イベント等のロイヤルカスタマー化施策に努めております。

2.インターネットに関する事業について

①インターネットに関する法的規制の可能性について

 現時点では、当社のインターネット事業の展開を大きく阻害する要因となるような大きな法的規制等はありません。また、日本国内のインターネット事業及びモバイル事業を取り巻く法的環境は、インターネットの歴史が浅いため未整備であり、インターネットのみを対象とした法令等の規制はきわめて限定的であるため、主として他の一般の規制を準用するものとなっております。今後はインターネット関連の法規制あるいはルールというものがより整備されていくものと予想されます。将来的にインターネット利用者、関連業者を対象とした法的規制あるいはスマートフォン、その他のモバイルメディアにおける利用規制がより厳しく制定された場合、当社の一部業務において制約を受け、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。対応策といたしましては、法的規制等の動向や新技術への注視よる課題等の早期把握や対応に努めております。 

②競合について

 当社の行っているインターネット事業は、競争の激しい分野であり、当社が提供するサービスと類似するサービスを国内で提供している事業者は非常に多く、新規参入も相次いでおり、今後も激しい競争が予想されます。業界全体の競争激化による価格競争や、更なる大手資本の参入も考えられ、その場合には当社の業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。対応策といたしましては、他サイトとの差別化として女性誌などの出版事業で蓄積したブランド力を活かした信頼性の高い情報及び記事の提供や、出版物と連動した企画・サービスの提供等に注力しております。

③システムトラブルについて

 当社のインターネット事業は、コンピューターシステムを結ぶ通信ネットワークに依存しており、自然災害や事故などによって、通信ネットワークが切断された場合には、当社の同事業は運営不可能となります。また、アクセス数の急激な集中などの一時的な過負荷によって当社のサーバーが作動不能に陥ることや外部からの不正手段によるコンピューターへの侵入などによりデータが改ざんされる等のいわゆるハッカーや不正アクセスによる事故の発生も考えられます。これらの障害が発生した場合には、当社の運営するサイトに直接的損害が生じる他、当社の運営するサイトに対する信頼性が低下する可能性もあります。対応策といたしましては、想定されるシステムトラブルに対する技術的な対応措置、重要なデータベースに対するアクセス制限等を行っております。

 

3.その他の事項について

①知的財産権について

 当社はブランドを重要な財産と考え、積極的に商標等を取得してまいりました。本書提出日現在では、当社は独自の事業に関連した特許権等の知的財産権侵害に係る訴え(損害賠償や使用差止めを含む)を起こされた事実はありません。しかし、特許権、実用新案権、商標権、著作権等の知的財産権が出版事業及びインターネット事業にどのように適用されるのか全てを正確に想定するのは困難であり、当社の事業関連技術についての特許等が第三者に成立した場合、また当社の認識していない特許権等が成立している場合に、特許侵害により当社が損害賠償請求を受けることや、抵触する特許権について使用を継続することができなくなる可能性があります。また、当社に他社が保有している特許権等の使用が認められた場合においても、ロイヤリティーの支払い等により当社の業績に悪影響を与える可能性があります。対応策といたしましては、商品の将来性も考慮した商標権等の取得に努めております。

②個人情報の管理について

 当社は、ウエブサイトを運営する過程において、ユーザーに会員登録をしてもらうためにユーザーの個人情報を取得しております。そのため、不測の事態により当社が保有する顧客情報が社外へ漏洩した場合等には、顧客への信用低下やトラブル解決のための費用負担等により当社の業績に影響を与える可能性があります。対応策といたしましては、個人情報に対してのセキュリティ管理体制については整備・強化に努めるとともに継続的に改善を図っております。また、社員に対する個人情報管理に関する勉強会の実施、個人情報取り扱いに関する誓約書も提出させ、意識付けを徹底させるとともに、社内ネットワークにおけるセキュリティにおいてもパスワード管理やアクセス権限ルールを策定し、情報漏洩に関する防衛対策を図っております。

③新型コロナウイルス感染症に関するリスクについて

 新型コロナウイルス感染症については、感染症法上の位置づけが5類感染症となり、日常生活の行動制限が撤廃されるなど一定の収束はみられたものの、経済活動への影響は不確実性が高いことから、当社の業績に影響をおよぼす可能性があります。

 当社といたしましては、引き続き感染拡大の状況に合わせて、感染予防の取り組みや感染拡大の影響を受けにくい事業に経営資源を集中させるなどの柔軟な対応をおこなってまいります。

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題のひとつとして認識し、経営体質を強化するために必要な内部留保と成果配分とのバランスを勘案しながら業績に裏付けされた安定配当を継続していくことを基本方針としております。

当社の剰余金の配当は、株主総会決議による年1回の期末配当を基本方針としております。なお、2024年3月26日開催の第41期定時株主総会において、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議により定める。」旨の定款変更決議を行っております。また、これまで年1回の期末配当として剰余金の配当を実施してまいりましたが、利益還元機会の一層の充実を図るために2024年12月期より中間配当、期末配当の年2回の剰余金の配当を基本方針といたします。

当事業年度の期末配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり60円の配当を実施することといたしました。

 内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変更に対応すべく、また、新規商品の開発や新サービスの提供をすすめられるよう、有効に投資してまいりたいと考えております。

 なお、当事業年度の剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2024年3月26日

230,379

60

定時株主総会決議