2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社のリスク管理体制に関しましては、「4 コーポレート・ガバナンスの状況等、(1)コーポレート・ガバナンスの概要、② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由、ⅵ リスク・コンプライアンス委員会」に記載のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経済状況・競合に関するリスク

当社グループの主要顧客であるシニア女性を含むシニア市場は、高齢化の進展に伴い拡大し続けている成長市場であり、その傾向は今後も継続する見通しであります。シニア市場の中でも介護、葬儀、お墓等に代表されるライフエンディングサービスは近時において企業の参入が増えつつあるとの認識ですが、当社グループの事業領域は50代から70代までを中心としたアクティブな女性をターゲットとしており、成長市場でありつつも競合他社が少ないところと考えております。その成長市場において、当社グループは雑誌「ハルメク」を中心に認知度を高め、シェアを拡大しておりますが、当社グループの提供する雑誌及び通信販売のシナジーを生かした事業展開の有用性を低下させるような法規制の変化や、IT技術の進化などが起こった場合、もしくは当社が提供する情報や商品、サービスを凌ぐ画期的な情報媒体、商品もしくはサービスを具備した競合の参入などがあった場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くないと認識しておりますが、顕在化に備え収益性や健全性を確保するとともに、事業環境についてはマーケティング部門が、法規制については法務部門が最新の情報や将来の見通しの把握に努め、必要な対応を適時にとれる体制を構築してまいります。

 

(2) システムに関するリスク

① セキュリティに関するリスク

当社のサービスはコンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを利用して提供されており、商品の調達や販売等多岐にわたるオペレーションをコンピュータシステム上で実施しております。そのため、当社では、それらのシステム全体にセキュリティ対策を施し、かつシステム部門において最新のセキュリティリスク情報を毎週集約し、バッチプログラムの実行などの必要な措置を講じております。また、当社は定期的に外部機関のセキュリティアセスメントを受けており、その指摘に従い、セキュリティ強化方針を見直したうえで、更なるセキュリティ強化を進めております。セキュリティの保全状態及び強化の進捗状況は四半期に一度、リスク・コンプライアンス委員会で報告・討議され、改善が必要な事象が認識された場合、システム部門を中心として改善対応が実施されております。しかし、IT関連の技術革新により、不正アクセスやハッキング等の行為を完全に排除することはできません。第三者からのサイバー攻撃によるシステム障害、情報漏洩等の問題が発生した場合、業務停止等の事態が生じる可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② システム障害に関するリスク

当社のシステムは、定期的なデータバックアップ等の対策を講じており、システム上のトラブルが発生しても日常の業務に影響が起こらないよう対策を講じておりますが、故意、過失に関わらず、大規模なシステム障害等が発生した場合、業務を停止せざるを得ず、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くなく、発生したとしてもバックアップデータのリストアにより影響を最小限に抑えられると認識しておりますので、顕在化に備え、バックアップデータからのリストア訓練などを定期的に実施しております。

 

(3) 特定人物への依存に関するリスク

当社グループの運営は、代表取締役社長である宮澤孝夫に大きく依存しております。当社は事業の拡大に伴い、過度に経営陣に依存しない体制を構築すべく、経営組織の強化を図っており、少なくとも短期間の不在であれば問題なく事業運営が行える体制になっておりますので、現時点において顕在化のリスクは高くないと考えておりますが、何らかの理由により、突然、長期的に当人の業務遂行が困難となった場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) レピュテーションリスク

当社グループに関して様々な情報が流れることがあります。この情報については必ずしも事実に基づいているとは限りませんが、真偽に関わりなくステークホルダーを含む第三者の行動に影響を与える可能性があります。この場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。当社に関する風評状況については毎月モニタリングしており、問題となるような風評がネット空間などで流されていないことは確認できておりますので、このリスクが顕在化する可能性は高くないと認識しておりますが、今後も日頃から風評の発見及び影響の極小化に努め、当社グループ又は当社グループが提供する商品・サービスについて否定的な風評が拡大した場合には、リスク・コンプライアンス委員会での討議を経て対応にあたる方針となっております。

 

(5) 自然災害等に関するリスク

地震、台風、津波等の自然災害、火災、各種感染症の拡大等が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。特に大規模な自然災害が発生した場合、正常な事業運営が行えなくなる可能性があり、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。一部地域において、これらのリスクが顕在化する可能性はある程度高くございますが、顧客接点であるお客様センターを東京・大阪・鹿児島・秋田に設置し、物流拠点を神奈川と兵庫に設置することで、一部地域が機能不全となっても、他の地域で補完できる体制にするなど、グループ全体に与える影響を極小化する対策を進めております。

 

(6) 仕入に関するリスク

当社グループが取り扱う商品の価格は国内外の商品市況や為替変動の影響を受けて、上下することがあります。また、近年においては仕入先の地域や国における新型コロナウイルス感染拡大により、仕入先の工場の稼働が影響を受けることがあります。当社グループは、こうした影響を極力抑えるため、早い段階で発注を行い、価格変動リスクを負う期間を短縮し、欠品リスクを低減させる取り組みを行っております。しかし、想定を超える大幅な市況の変化や為替変動が生じた場合や、工場の長期停止などが起こった場合には、仕入れ価格の高騰や欠品により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は一定程度ありますが、仕入先国の分散や国内取引先の活用により、影響を極小化する対策を進め、リスクを低減できていると認識しております。

 

(7) 在庫に関するリスク

当社グループでは、仕入・販売・在庫計画の精緻化や在庫コントロールの強化など、在庫の抑制、商品回転率の向上に努めると共に、毎年2回のセール期間(6月、11~12月)の後に、毎年2回(8月、2月)のアウトレットセールにより在庫を圧縮するプロセスを導入していることから、リスクは適切にコントロールできていると認識しておりますが、販売の予期せぬ変動により在庫が過剰となった場合、その削減が進まなければ廃棄処分や評価損によって、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8) 業績の季節的変動

当社グループは、第1四半期(6月)と第3四半期(11月・12月)に大きなセールを行うことから、第1四半期と第3四半期の売上収益及び利益が大きくなる一方で、第2四半期(8月)と第4四半期(2月)においてはアウトレットセールを行うことも加わり、売上収益及び利益が小さくなる傾向があり、四半期ごとの業績に季節的変動があります。

 

(9) 商品の品質に関するリスク  

当社グループは、お客様の信頼を第一に考え、関連法規を遵守した安全な高品質な商品の提供に努めております。その実現のため、当社に設置した品質管理室が、各子会社が提供する商品の品質を確認しております。新型コロナウイルスの感染拡大期など真にやむを得ない理由がある場合を除いて、工場監査も実施し、書面による確認と合わせて事前チェックを念入りに行うと共に、商品提供開始後においては、毎週のクレームゼロ会議においては、当社代表取締役社長も出席する中で、お客様から頂いたクレームを確認し、「お客様からの信頼第一」を判断の基軸にしながら対応を検討・決定しております。これらの取り組みにより、商品の品質に関するリスクは大きく低減できていると認識しておりますが、商品の品質に関する大きな問題が発生してしまった場合においては、当社グループのイメージ低下による売上高の減少などにより、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(10) 配送に関するリスク

当社グループは、商品の配送を全面的に外部の運送業者へ委託しております。全般に運送業者とは良好な関係を構築しておりますが、運送業者における人手不足が深刻化した場合などには、当社グループが負担する配送費の大幅増や、商品を配送する運送業者を確保できなくなることによる配送不能等により、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くはありませんが、顕在化した場合に備え、複数の運送業者と取引をし、状況の変化に柔軟に対応できる体制の構築を進めております。

 

(11) 法的規制等に関するリスク

当社グループは、商品の販売などを行うにあたり、景品表示法、特定商取引法、薬機法等、非常に多くの法的規制を受けております。当社グループにおいては、コンプライアンスの重要性についての教育を行い、日常行動の基本的な考え方や判断基準を定めたコンプライアンス規程に基づき行動しております。また、商品やサービスの選定においては「シニア世代の信頼を裏切らない」ことを最重要基準として判断しております。更に、今後の法的規制等の検討状況についても、法務部門を中心に情報収集し、事前に対応策の検討を進めております。しかし、今後これらの法的規制の強化や新たな規制により事業活動が制限された場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は低いと考えておりますが、顕在化した場合、「シニア世代の信頼を裏切らない」ことを最重要判断基準として、誠実な対応を行う方針であります。

 

(12) 個人情報に関するリスク

当社グループは事業を通じて取得した個人情報を所有しております。個人情報の管理は厳重に行っており、「個人情報の保護に関する法律」の規定に則って作成した個人情報保護規程に沿って管理すると共に、必要なグループ企業においては「プライバシーマーク」の付与認定を受け、個人情報の保護に取り組んでおりますが、故意、過失もしくはサイバー攻撃などにより個人情報が漏洩した場合や、個人情報の収集過程で問題が生じた場合、当社グループへの損害賠償請求や社会的信用の失墜、業務停止などの損害が発生し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化しないよう、「(2)システムに関するリスク」に記載のとおり、セキュリティ対策を講じ、顕在化リスクの低減に努めております。

 

(13) 減損に関するリスク

当社グループが保有する資産のうち、減損リスクがあると考えられる資産として、有形固定資産、使用権資産、のれん及び無形資産(商標権、ソフトウェア等)があります。

この中でも、のれんについては当連結会計年度末現在4,452百万円計上しており、総資産に占める割合が22.1%と高くなっております。

当社グループはIFRSを採用しているため当該のれんの毎期の償却負担は発生しませんが、対象となる事業の収益力が低下し、減損損失を計上するに至った場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクが顕在化する可能性は高くないと認識しておりますが、顕在化に備え収益性や健全性を確保してまいります。

 

(14) 人材確保・育成に関するリスク

当社グループが長期的な成長を続けるためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠であると考えています。このため、当社グループの将来を担う優秀な人材を積極的に採用すると共に、社内外での教育・研修を実施し、社員の育成を図っております。特に、当社グループのお客様が主に50代以上の女性であることを鑑み、管理職である課長以上における女性の比率も重視しており、当連結会計年度末における比率は27.7%であり、この数値の引き上げも並行して目指してまいります。これらの取り組みから、顕在化するリスクは高くないと判断しておりますが、当社グループの求める優秀な人材が十分に確保できなかった場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15) 新株予約権に関するリスク

当社グループは、企業価値の向上を意識した経営の推進を図ると共に、当社グループの業績に対する役職員の意欲を高めることを目的として、ストック・オプション制度を採用しております。

これらのストック・オプションの行使が行われた場合、発行済株式総数が増加することにより1株当たりの株式価値が希薄化し、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(16) 当社株式の流動性について

当社グループは、事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、大株主への一部売り出しの要請、ストック・オプションの行使による流通株式数の増加等により、流動性の向上を図っていく方針でありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(17) 新規事業について

当社グループは、事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、新規事業への取り組みを進めていく方針です。新規事業が安定して収益を生み出すまでには一定の期間と投資を要することが予想され、全体の利益率を低下させる可能性があります。また、将来の事業環境の変化等により、新規事業が当初の計画どおりに推移せず、新規事業への投資に対し十分な回収を行うことができなくなる可能性があります。予算統制により、新規事業から発生する損失は一定額以下にコントロールしているため、これらのリスクが顕在化する可能性は高くはないですが、顕在化した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18) M&A及び資本業務提携等のリスク

当社グループは、持続的な成長のため、M&Aや資本業務提携等を行うことがあります。これらの実施にあたっては、事前に対象企業の財務内容や契約内容等の審査を十分に行い、各種リスクの低減に努める方針です。しかしながら、これらの調査後の事業環境の変化等により、当初想定していた成果が得られない場合や、資本業務提携等を解消・変更する場合等には、当社グループの財務状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクが顕在化する可能性は、当該M&Aが実施される時期及びM&A実施後の事業展開に起因することから、合理的な予測は困難であると認識しております。当社では当該リスクに対し、継続的な業績のモニタリングを行っており、のれんや固定資産に関する減損損失が発生する前に対策を講じるように努めております。

 

(19) 大株主との関係について

当社の大株主である松島陽介氏、山元雄太氏はエンジェル投資家であり、松島氏は1,900,000株(発行済株式総数の17.43%)、山元氏は1,520,000株(同13.95%)を所有しております。両氏は安定株主として引き続き一定の議決権を有し、その議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。また、当社といたしましても、両氏は安定株主であると認識しておりますが、将来的に何らかの事情により大株主である両氏の保有株式数が減少した場合には、当社株式の市場価格及び議決権行使の状況等に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主利益が最大となるよう配当と、事業拡大に向けた資金需要に対応するための内部留保への最適な配分を行うことを経営方針としております。現在、当社グループは事業が成長過程にあると認識しており、事業の継続的な拡大発展を実現させるために当事業年度は配当を実施しておりません。

当社は株主に対する利益還元を経営の重要事項の一つと認識しております。今後につきましては、事業環境の変化や将来の事業展開に備えて内部留保の充実を図りつつ、今後の収益状況の見通しなどを総合的に勘案し中間配当又は期末配当による利益還元を検討してまいります。

内部留保金につきましては、財務体質の強化と積極的な事業展開のための備えとしていくこととしております。

なお、当社の剰余金の配当は年1回の期末配当を基本としており、その他年1回中間配当を行うことができる旨、及び上記の他にも基準日を定めて剰余金の配当を行うことができる旨を定款で定めております。また、配当の決定は、取締役会の決議にて定めることができるとしています。