リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)競合について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の基幹技術であるAI-OCRを利用した会計帳票の読み取り技術は、類似のサービスが多く存在しており、中でも昨今はAIを利用したサービスも増えつつあることから価格競争による売上単価の減少リスクがあります。当社は会計帳票に特化することで、読み取り精度や、読み取り結果を仕訳に反映するシステムなど特異性のある技術をいち早く確立し、さらにこれらの技術に関連した経理業務の効率化に関連する特許を集中取得することで、技術的優位性を確保しておりますが、引き続き開発体制の拡充と早期権利化に取り組んでまいります。しかしながら、競合他社に比して優位な価格を提供できない場合、または、技術的優位性を確保できなくなった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)情報セキュリティについて
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社が取り扱うお客様の会計データは、機密となる情報を含むことも多く、外部からの不正アクセス等によりこれらの情報が外部に流出した場合には、当社は損害賠償責任を負担するほか、他のお客様からの信頼失墜に直結し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社では、国際的な情報セキュリティマネジメント規格である「ISO/IEC 27001:2013(JIS Q 27001:2014)」、クラウドセキュリティ認証「JIP-ISMS517-1.0(ISO/IEC 27001:2013及びISO/IEC 27017:2015を含むISMSクラウドセキュリティ認証スキーム)」を取得しており、このマネジメントシステムを適切に運用することで、これらのリスクの最小化を図ってまいります。
(3)技術革新等への対応について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社が属するAI業界の技術は、国内外を問わず研究開発が進められており、その結果、常に新しい技術が生み出され、その技術がサービスの一部として提供されております。当社のAIソリューション事業(経理AI事業)の競争力の源泉は技術力であるため、最新の技術の収集及び優秀な人材確保に努めてまいりますが、急速な技術革新への対応が遅れた場合、新規契約が伸びず、また既存顧客の解約が発生することで当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)解約リスクについて
(発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
クラウドサービスの契約期間は通常1か月から数年の設定となっておりますが、当社の2023年12月末における顧客の平均契約締結期間は27ヶ月となっております。当社は、顧客満足度を高めるために、顧客ニーズを迅速かつ的確に捉え、ニーズを充足するための機能開発に努めております。また、当社が提供するサービスが顧客の業務フローに円滑に組み込まれるためのカスタマーサクセス体制の構築にも取り組んでおります。しかしながら、主要取引先について契約期間の満了時に契約が更新されない場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)販売パートナー、OEMパートナーとの取引について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の販売体制としては、当社の営業担当が直接顧客にアプローチするダイレクト営業のほか、再販売契約等を締結した販売パートナー、OEMパートナー経由で顧客にアプローチするパートナー営業があり、2022年12月期においてパートナー経由の売上高割合は約3分の2となっております。現状、いずれのパートナーとも良好な関係を築くよう努めておりますが、今後パートナーとの契約が解約または更新されなかった場合やパートナーの販売方針の変更等により、パートナー経由の売上が著しく落ち込んだ場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6)知的財産権の侵害について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社が提供するサービスが他人の特許等の知的財産権を侵害することで訴訟に至り業績に重要な影響を及ぼすリスク、及び事業の継続に支障を来すリスクがあります。当社では、知的財産分野に強みを持つ弁護士及び弁理士と顧問契約を締結し、新規の技術やサービスについてはサービス検討と並行して随時当該弁護士等に第三者による権利化の有無を調査依頼し、知的財産戦略上、当社の競争優位性を得られるものについては自社技術の権利化に努めるとともに、第三者の知的財産権の侵害を防ぐ体制をとっております。しかしながら、他人の特許等の知的財産権を侵害している旨の訴えがあった場合、または当社が保有する知的財産権が第三者により侵害された場合には、法的措置を含めた対応が想定され、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7)システム障害への対応について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社サービスは、インターネットを利用してお客様へサービス提供を行ういわゆるSaaSビジネスであり、システムの安定的な稼働が不可欠となります。一時的なアクセスの急増によるアクセス障害や、ネットワーク機器・サーバの動作不良、ネットワーク障害や自然災害などが生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社では、サーバ監視システムの導入、システムの随時バックアップや冗長化を行うほか、ISO/IEC 27001:2013(JIS Q 27001:2014)に準拠した内部監査を含むマネジメントシステムの運用により、これらのリスクの最小化を図ってまいります。
(8)法令について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の提供しているAI-OCRサービスについては、電子帳簿保存法をはじめとした法令の要件を満たすようサービス設計を行っておりますが、今後、法令の改正により現状のサービスが法令の要件に適合しないこととなる恐れがあります。当社では、電子帳簿保存法その他主要な関連法令について、顧問弁護士や顧問税理士等と随時情報共有を行い、いち早く改正の動きをキャッチできる体制を整えております。
また、2023年10月に開始されたインボイス制度をきっかけとして請求書等の電子化が進み、将来的にはAI-OCR 技術が利用されなくなる可能性が考えられます。当社は、国内のデジタルインボイスの標準規格である「Peppol」を用いてデジタルインボイスを送受信するためのアクセスポイントも提供しており、その他の新規事業についても積極的な検討を行っております。
しかしながら、これらの法令の改正等による事業環境の変化に当社サービスが適切に対応できない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9)人材の採用及び育成について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の事業領域は、進化の早いAI領域であることに加え、多様化するエンタープライズを中心とした顧客ニーズに対応するためには、最先端の技術と経験を有する優秀な人材の確保が必要と考えております。当社は継続して採用活動を行っておりますが、必要な人材を獲得できない場合及び十分な人材育成が進まなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10)内部管理体制について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は少人数であり、現段階の事業規模にあわせた内部管理体制をとっております。今後、事業規模の拡大に伴い、人材の採用、育成を行うことにより現状の内部管理体制をより強固にしていく方針ではありますが、この体制強化が事業規模の拡大に追いつかない場合には、内部管理体制が有効に機能せず、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11)訴訟及び係争事件について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
現段階で、顧客、パートナーや取引先及び株主などのステークホルダーとの間で訴訟等はなく、その可能性も把握しておりませんが、将来これらが生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
(12)自然災害について
(発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、サービスシステムをクラウドサーバに置いており、当該クラウドサーバにおいても、複数のデータセンターにおける常時バックアップ体制等により洪水や地震等の大規模災害のサービス提供への影響を最小限に抑える対策を講じておりますが、想定を超える自然災害が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13)特定人物への依存について
(発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の代表取締役社長である森啓太郎は、当社のサービスモデル及びビジネスモデルの考案、事業戦略の立案に加えて、営業活動をはじめとする事業推進においても中心的な役割を担っております。当社では今後の事業拡大に備え、外部人材の登用、社内人材の育成など代表取締役へ過度に依存しない体制の構築を進めておりますが、何らかの理由により代表取締役が職務遂行をできなくなった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、森啓太郎から当社金融機関借入に対する債務保証を受けており、その詳細は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 関連当事者情報」に記載のとおりでありますが、当社は金融機関との継続交渉により当該債務保証を解消していく方針であります。
(14)小規模組織であることについて
(発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は現在のところ、高い能力を有する少数の従業員による小規模組織体制で業務運営を行っております。そのため、大規模な組織と比べると業務が属人化しやすく、人員減少への耐性も低いといえ、業務の標準化やマニュアル化を進めておりますが、従業員の大量退職が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(15)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について
(発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、役職員の意欲を高め、経営への参加意識を醸成するため、役職員に対してストック・オプションとして新株予約権を発行しており、その総数は2023年12月末時点における発行済株式総数の12.2%に相当します。これらの新株予約権が行使された場合には、既存株主の株式価値及び議決権比率が希薄化する可能性があります。
(16)配当政策について
(発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと認識しておりますが、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としており、当面の配当性向は法定実効税率による税金費用を前提として10%とする予定であります。しかしながら、当社の業績が計画どおりに進捗しない場合には、配当を実施できない可能性があります。
(17)税務上の繰越欠損金について
(発生可能性:高、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は、税務上の繰越欠損金を計上しているため、利益が生じた場合の税負担が軽減されることが想定されます。しかしながら、当該欠損金に相当する利益を計上するまでに税務上許容される期限が経過し、欠損金が消滅した場合、また当社業績が順調に推移し繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が発生し、当社の経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つと認識しておりますが、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としており、当面の配当性向は10%とする予定であります。
当社は、「剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、株主総会の決議によらず、取締役会の決議によって定める。」旨定款に定めております。
当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき、税引前当期純利益から実効税率に基づく税金費用を控除した額の10%として、1株当たり1.55円の配当を実施することを決定しました。この結果、当事業年度の配当性向は6.0%となりました。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(千円) |
1株当たり配当額(円) |
2024年2月29日 取締役会決議 |
8,175 |
1.55 |