2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下の通りであります。

 

(1)景気変動、経済情勢等のリスク

当社グループの主要製品であるけい酸カルシウム保温材の主な需要先は石油・石油化学、電力・ガス、鉄鋼等の業種における設備投資動向に依存し、また、けい酸カルシウム耐火被覆材についてはオフィスビルや物流施設等の建設需要の動向に依存し、内外の景気動向や経済情勢の影響を受けます。また、建築物やプラント全体の建設費用の高騰があった場合は、けい酸カルシウム以外の保温材、耐火被覆材との価格競争を惹起する可能性があり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 原材料・エネルギー等価格の変動及び調達に関するリスク

当社グループの製品の主な原材料は石灰石、珪石等であり、また、製造工程において熱源として天然ガス等を使用しています。原材料及びエネルギー価格の上昇があった場合や、地政学リスク等により需給のひっ迫により安定的調達が困難となった場合、あるいは、物流業界の労働時間管理強化による製品・商品の運賃の上昇があった場合には、当社グループの製造コストを上昇させ、当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの調達する多くの原材料において高い純度を求めていること等により仕入先は限定されることが多く、これに伴い調達先の確保が困難となるリスクがあります。

 

(3) 人材の確保・育成に係るリスク

従業員一般での人材確保ができない場合には、適切な労働環境の確保が困難となるリスクがあります。特に建設事業においては、有資格者の確保が事業を継続していくための基盤となっており、建設現場では主任技術者の配置が必須であり、今後の業容拡大のためには、人材の採用及び教育研修実施・内容の充実により、専門的な知識を持った人材の確保・育成をすることが重要な経営課題であると認識しております。有資格者の採用及び社員の資格取得の促進に注力しておりますが、急激に業容が拡大する等して必要な人材の確保が追いつかない場合や、採用に係るコストが上昇した場合には、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) アスベストによる健康障害者への補償のリスク

過去に建設現場等において石綿に曝露し、これが原因で肺癌等の疾病に罹患した作業員及びその遺族等が、集団で国及び建材メーカー多数を相手に損害賠償請求の裁判を提起しております。当社もその建材メーカー多数の中の1社として現在係争中であります。当社はこれまで当社製品と原告の発病との明確な因果関係が認められなかったこと等から集団訴訟において敗訴となったことはごく一部の事案を除きありません。但し、当社製品と原告の発病との明確な因果関係が認められた場合等は敗訴となる可能性があり、必要な場合、合理的な方法で訴訟損失引当金の計上の要否を検討してまいります。このように、アスベスト健康被害に関し、個別に損害賠償請求の提訴を受けた場合も含めて、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、当社起因のアスベスト疾病により死亡または療養されている従業員及び元従業員に対して、社内規定に基づき補償金を支払っており、今後もアスベストによる健康障害者への補償費用等の負担が継続していく可能性があります。なお、補償金支払の対象者が発生した都度、検討し、健康被害補償引当金を計上しています。

 

(5) 労働災害に関わるリスク

当社グループが関与する工事現場においては、労働災害の防止や労働者の安全と健康管理のため、労働安全衛生法等に則り安全衛生体制の整備、強化を行っております。当社では、社内に安全衛生委員会を設置し、日常的な安全衛生教育を実施している他、経営幹部等による安全パトロールを実施する等、事故の未然防止を図るための安全管理を徹底しております。しかしながら、万が一重大な労働災害が発生した場合には、当社に対する社会的信用が毀損し、ひいては受注活動に影響が及ぶ等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 経営成績の季節変動性に関するリスク

当社グループの製品の販売については、大きな季節変動はありませんが、工事については、工事完了時期が年度末付近に集中することから、下期に偏重する傾向があります。万一、比較的大きな案件で何らかの事情で工事の完了が遅れることになる場合には、予定の売上が上がらずに翌期にずれるなど、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 海外事業に伴うリスク

当社グループは、連結子会社の立地するベトナムをはじめ東南アジア地域において、事業展開を行っております。これらの地域におけるテロ、戦争、疫病等社会的混乱の発生、社会インフラの未整備による停電や物流の停滞等予期せぬ事象、商慣習の違いから生じる取引先との予期せぬリスクの顕在化等によって、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループが拠点を持つ各国において、税法をはじめとした法令改正、経済の減速、貿易障壁の発生、反日デモや不買運動等が発生した場合、あるいは、移転価格税制等に基づく課税等が生じた場合にも当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

さらに、東南アジア地域では、もみ殻を原料・燃料に使用したバイオマス事業として、けい酸カルシウム保温材の市場展開を図っておりますが、計画通りに進まなかった場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

これらの事象については、当社グループの取引先において発生した場合も、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(8) 協力会社の確保に関するリスク

当社グループは、工事の施工管理を行っており、優秀な協力会社の確保が必要不可欠であります。現状は、長年取引を行っている協力会社を中心として受注工事に対応できる十分な施工能力を有しておりますが、万が一主要な協力会社との協力関係に不測の事態が発生し、施工能力に問題が生じた場合もしくは外注コストが上昇した場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9) 固定資産の減損に関わるリスク

当社グループは、固定資産の減損に関わる会計基準を適用しております。経営環境の著しい悪化による収益性の低下等により、保有する固定資産に減損損失が発生し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)自然災害等に関わるリスク

当社グループは、国内外に複数の生産拠点などを有しております。万一、当該拠点のいずれかにおいて大規模な地震、風水害、疫病等の自然災害が発生した場合には、保有設備の復旧活動に関する安全確認、施工中物件の工事の遅延、一時的な生産の停止による出荷の遅延等により多額の費用が発生し、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)収益及び費用の計上基準に関わるリスク

工事契約において、一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗に基づく収益を計上しております。なお、進捗度の見積りの方法は、発生した原価の累計額が工事原価総額に占める割合(インプット法)で算定しております。

工事原価総額等の見積りは、工事の完成引渡しまでに必要となるすべての工事内容に関する原価を見積って算定しており、工事着手後に工事内容の変更が生じた場合は、適時・適切に再見積りを行っております。当該見積りは、将来の不確実な経済条件の変動によって影響を受ける可能性があり、実際に発生した工事原価及び工事収益総額が見積りと異なった場合や、異なる結果になると見込まれた場合には、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(12)不採算工事の発生に対するリスク

当社グループは、工事にあたり適切な積算を行っておりますが、想定外の追加原価等により、万一不採算工事が発生した場合には、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(13)情報セキュリティに関わるリスク

当社グループは、事業活動を通じて、取引先の個人情報及び機密情報を入手することがあり、また、営業上・技術上の機密情報を保有しています。これらの情報について、情報の管理に関する諸規定等の整備・充実や従業員等への周知・徹底を図るとともに、サイバー保険に加入するなどの対策を強化しておりますが、サイバー攻撃、不正アクセス等により、情報流出や重要データの破壊、改ざん、システム停止等が生じた場合には、当社グループの信用低下や財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。 

 

 

(14)債権管理のリスク

当社グループでは、取引先に対して、売掛金、受取手形や差入保証金などの債権を有しております。取引先の与信管理については細心の注意を払っておりますが、取引先の業績悪化や倒産等により、売上債権の回収に支障が出た場合は、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)法的規制、コンプライアンス等についてのリスク

当社グループは、建設業法に基づき国土交通省より特定建設業・一般建設業の許可を得ているほか、建築基準法、消防法、労働安全衛生法、環境基本法等、幅広い法規による規制を受けており、それらに従って事業を行う必要があります。また、当社グループの工場は、環境関連、労働安全衛生関係で、国内外の政府や自治体の監督を受けております。

当社グループでは、事業継続のため、これらの法令等を含めたコンプライアンスが遵守されるよう、役職員に対して研修等を通じて周知徹底を図ることで、これらの適用法令等に対応できる体制を構築しております。現時点で事業継続に支障を来す事項はありませんが、今後、何らかの理由により適用法令等の違反が発生した場合には、処罰、処分その他の制裁を受け、損害賠償等の責を負い、当社グループの社会的信用やイメージが毀損することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、これらの法令等に将来改正が行われた場合、当社グループの事業の継続に影響を及ぼす可能性があります。

なお、適用法令等について、その有効期間やその他の期限等が法令等により定められているものは下表のとおりであります。下表のとおり2025年7月11日に許可の有効期限が到来する予定であります。

 

取得・登録者名

当社

取得年月

2020年7月

2020年7月

許認可等の名称

一般建設業(許可)

特定建設業(許可)

所管官庁等

国土交通省

国土交通省

許認可等の内容

管工事業、機械器具設置工事業

国土交通大臣 許可(般-2)第4567号

建築工事業、とび・土工工事業、内装仕上工事業、左官工事業、塗装工事業、熱絶縁工事業、解体工事業

国土交通大臣 許可(特-2)第4567号

有効期限

2020年7月12日から2025年7月11日

2020年7月12日から2025年7月11日

法令違反の要件及び主な許認可取消事由

不正な手段による許可の取得や役員等の欠格条項違反等に該当した場合は許可の取消(建設業法第29条)

不正入札等不誠実な行為があった場合は業務停止等の処分(建設業法第28条)

不正な手段による許可の取得や役員等の欠格条項違反等に該当した場合は許可の取消(建設業法第29条)

不正入札等不誠実な行為があった場合は業務停止等の処分(建設業法第28条)

 

また、当社グループは、2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法の趣旨に則り、パワーハラスメント防止に向けた相談窓口の設置等の制度を構築し、運用しております。現時点で事業継続に支障を来す事項はありませんが、今後、万一法令違反やハラスメントに係る事案が発生した場合には、当社グループの社会的信用やイメージが毀損することにより、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)製品及び工事の品質の瑕疵のリスク

当社グループは、ISO9001の品質保証規格やJISに基づく認証を受けており、厳しい品質管理体制のもとに生産活動を行っておりますが、製品の開発・製造における不具合や工事の施工での施工ミス等の品質上の全てのリスクを完全に排除することは困難であります。今後、当社グループの製品に予期しない重大な欠陥が発生した場合や施工ミスによる瑕疵が発覚した場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)為替変動に伴うリスク

当社グループでは、海外事業展開をしており、輸出入取引において為替の変動によって影響が生じます。当社グループの連結財務諸表作成にあたっては、在外連結子会社の財務諸表を円貨換算しており、為替変動による期間損益の円貨換算額が増減するリスクが存在します。これらの為替変動リスクは、事業及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)知的財産権についてのリスク

当社グループは、事業活動に有用な知的財産権の取得に努めると共に、他社の知的財産権の調査を行うことにより、問題発生を回避する様に努めておりますが、万一、他社から訴訟等を提起された場合、その結果によっては経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)繰延税金資産の回収可能性に係るリスク

当社グループは、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)を適用しております。課税所得の見積りに影響を与える要因が発生した場合は、回収可能性の見直しを行い繰延税金資産の修正を行うため、当期純利益が変動する等、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)サプライチェーンにおける人権侵害に伴うリスク

当社グループは、海外から原料の一部を輸入するとともに、製品の一部を海外へ輸出しております。原料調達に当たっては、人権侵害の有無に留意して調達先を選定しており、原料の多くは別の供給先に代替可能なものでありますが、万一、原料調達先で人権侵害や紛争が発生した場合、原料調達に影響を及ぼす可能性があります

 

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主への還元を第一として、配当原資確保のための収益力を強化し、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。

当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としております。配当金の決定機関は、期末配当については株主総会であります。なお、当社は会社法第459条に基づき、取締役会の決議によって剰余金の配当を行うことができる旨を定めております。

第79期事業年度の剰余金の配当につきましては継続的な安定配当の基本方針のもと、普通配当1株当たり37円、記念配当1株当たり3円としております。

内部留保資金の使途につきましては、今後の事業展開の備えと研究開発費用として投入していくこととしております。

なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 

(注) 基準日が第79期事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2024年6月25日

定時株主総会決議

346,190

40