2023年10月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 829 100.0 37 100.0 4.5

事業内容

3【事業の内容】

(1)ミッション

当社は、「『教える』をなめらかに」をミッションに掲げ、学習塾を中心とする教育事業者等(注1)のバックオフィスのアナログ的な業務をデジタル化(DX)(注2)することで効率化を図り、講師等(注3)がより多くの生徒と向き合える「教える時間」を捻出できるよう、教育事業者等向けSaaS(注4)型業務管理プラットフォーム「Comiru」の開発・運用に注力しております。

当社は、「教える」という現象の本質は、講師等と生徒の関係性にあると考えています。講師等と生徒の関係性は相互に尊重し合い、相互にオープンで、相互に影響し合うものだと当社は感じていますが、この関係性の構築には講師等の気持ちと時間に余裕が必要です。しかし、今の講師等は授業時間以外の事務作業に追われており、気持ちと時間に余裕がないため、この関係性を構築することが非常に難しくなりました。当社は、そのような講師等が「Comiru」を活用することにより、バックオフィス業務の作業時間を減らし、多くの生徒の成長や学習効果の向上に良い影響を与えられる環境を実現してまいります。

なお、当社の事業は、教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略をしております。

(2)サービス概要

当社は、学習塾を中心とする教育事業者等のバックオフィス業務の生産性向上に寄与するSaaSサービスを開発・提供してまいりました。

具体的には、2015年12月に教育事業者等のバックオフィス業務の効率化及び保護者とのコミュニケーションを強化するSaaS型業務管理プラットフォーム「Comiru」をリリースしました。その後、「Comiru」と連動する形で、リモート教育をより効果的に実現しやすいオンライン授業・自宅学習支援サービス「ComiruAir」を2020年8月に、講師等の労務管理・コミュニケーションサービス「ComiruHR」を2020年12月にリリースし、サービスの拡充に努めてまいりました。

各サービスの収益モデルは以下のとおりです。

サービス名

プラン名

初期費用

(教室単価)

月額費用①

(ID単価)

月額費用②

(基本料金※)

追加料金

30,000円

300円/生徒

応相談

500円/生徒

 

30,000円

3,000円~

(3,000分)

500円

(500分)

 

300円/講師

※1分数カウントは参加生徒と講師全ての利用時間の合算となります(例:60分の授業に講師1人、生徒3人参加の場合は240分利用)。

「Comiru」サービスの収益モデルは、教育事業者等がサービス導入時の初期費用、及びその後利用生徒ID数×ID単価に応じた月額費用によって構成されております。

① SaaS型業務管理プラットフォーム「Comiru」

バックオフィス業務の効率化及び保護者とのコミュニケーション強化のために、教育事業者等に活用して頂くSaaS型サービスです。教育事業者等における利用生徒のID数に応じて利用料を頂戴しております。

教育事業者等は、以下の機能を活用することにより、バックオフィス業務に費やした作業時間や関連コストの削減が期待できます。また、各種経営数値を迅速に集計することができるようになり、早期の意思決定ができるようになります。

さらに、教育事業者等は、「Comiru」を通じて保護者向けには生徒の教育事業者等での勉強の様子や進捗、今後の学習計画、及び教育事業者等からのお知らせ等を従来の手紙配布よりもタイムリーに配信することが可能となり、保護者満足度の向上に繋がることが期待できます。

本書提出日現在において、「Comiru」は、教育事業者等の事業規模、利用されたい機能に応じて、「Comiru FREE」、「Comiru BASIC」及び「Comiru PRO」の3プランを提供しております。「Comiru FREE」に関しては、デジタルツールを初めて導入する教育事業者等向けに提供する無料のサービスであり、Web申込み(エントリーフォーム)の作成、見込み顧客管理、口コミ収集&掲載などの生徒集客機能にフォーカスしたサービスです。「Comiru PRO」に関しては、大手教育事業者等向けに基幹システムの機能を提供するサービスであり、一般的に在籍生徒・契約情報・問い合わせ数、請求情報、退塾数、弟妹通学率など、多岐に渡るデータを各教室で保有・管理していましたが、全データを1つのサービスで包括的に本部が一元管理することで、各教室のデータをリアルタイムで集計することが可能となりました。その結果、教室間での数値比較を通じて、状況の芳しくない教室のフォローが可能となります。

これらにより、導入教育事業者等における業務時間の短縮と運営コストの低減、経営の意思決定の迅速化、及び保護者とのコミュニケーション強化による満足度の向上を実現することが可能となります。

●コミュニケーション機能:

専用アプリ&LINE連携

専用アプリやLINEとの連携で教育事業者等からの連絡・共有事項を保護者のスマホに直接伝達

指導報告書・お知らせ

テンプレートを使うことで、品質を落とすことなく手書きよりも早く簡単に指導報告書やお知らせを作成することができるほか、保護者の既読や未読等の閲覧状況も確認可能

入退室管理

教育事業者等による機器購入費やカード発行費は不要、生徒の入室・退室の情報を自動的に記録し、保護者と共有

面談予約記録・管理

入会時の面談や講習会前の面談など、保護者・生徒と実施した面談内容を記録・管理

●業務改善機能:

請求書

教育事業者等から保護者に送付する毎月の請求書を自動で作成。入金状況の確認や未入金の再依頼も対応可能

口座振替

保護者が授業料等の支払いをインターネット経由で口座引落しに設定した場合、教育事業者等から決済銀行への支払手数料を決済(注5)。教育事業者等と保護者の双方にとって面倒な書類の手続きも不要で、オンラインで完結

成績管理

生徒ごとのテストの結果をデータ管理。保護者にテスト結果のデータを報告することも可能。保護者による生徒の学校成績等の直接入力も可能であり、面倒な学校のテスト結果等の回収作業も容易

カード決済

クレジットカード決済にかかる決済代行業者等への支払手数料を最低1.7%(注6)で提供。これにより、教育事業者等が決済代行業者等と個別契約を締結する場合よりも安価な手数料水準でクレジットカード決済を導入可能。また、教育事業者等は請求書機能との連動で簡単に請求・管理することが可能

座席管理

授業のコマ管理をサポート。季節講習も座席自動配当でより教育事業者等の業務負担を軽減

分析

保護者のお知らせや指導報告書の閲覧情報、生徒の遅刻・欠席、学習進捗及び宿題の提出状況等の利用状況を詳細にデータ化。教育事業者等へのアラート機能の設定により、退会傾向のある生徒を早期に発見し、ケアすることが可能

学習進捗管理

各学習計画・科目、教材ごとの学習時間やその進捗を管理し、学習計画に関して講師と保護者・生徒のコメントのやり取りが可能。

●生徒集客管理機能:

見込み顧客管理

見込み顧客情報のデータベース化やステータス及びアクション管理が可能

口コミ収集&掲載

入会の決め手となる口コミを従来の手書きの口コミや講師の聞き込みによる方法よりも効率的・効果的に収集及び掲載することが可能

Web申込み

ホームページに申込フォームを設置することで電話のやり取りを介さず、見込み顧客への対応が可能

② オンライン授業・自宅学習支援サービス「ComiruAir」

オンライン授業及び生徒の自宅学習をサポートするSaaS型サービスです。教育事業者等における利用教室数及び利用時間に応じて教育事業者等から利用料を頂戴しております。

通常のWeb会議ツールの場合、個別生徒に合わせた画面共有やコミュニケーションが難しく、授業前後の連絡や報告も別システムを利用する必要があります。この課題に対し、教育事業者等は「ComiruAir」の以下の機能の利用及び「Comiru」との機能連携により、オンライン授業の利用だけではなく、授業の前後の業務をオンライン化することができ、より効率的なオンライン学習運営を実施することが可能となります。授業自体も生徒それぞれに合わせた画面共有やコミュニケーションが可能となり、講師等と生徒が1対1の個別指導に近い環境を実現することができます。また、生徒の自宅学習のサポートとして、動画コンテンツの視聴履歴の記録や理解度テスト、問題集の質疑応答も「ComiruAir」を通じて応対することが可能となります。

●オンライン授業機能:

個別対応

特定の生徒を指定して、その生徒のみと会話や画面共有、講師側からの音声切替等を行うことが可能

レッスン通知

教育事業者等でレッスン作成時に、生徒個別に授業のURLを送る必要なく、自動で生徒へ通知

オンライン面談

保護者面談の予約と実施及び記録は、全てオンライン上で実施

●自宅学習支援機能:

学習支援ルーム

生徒自宅学習時の質疑応答もオンラインで対応可能。また、対応履歴は保護者にも通知

動画レッスン

動画コンテンツを指定した生徒のみに視聴させ、視聴履歴の記録や理解度テストも実施可能

③ 講師等の労務管理・コミュニケーションサービス「ComiruHR」

講師等のシフト調整、給与労務の集計、及びこれらに関連するコミュニケーションを効率的に行うSaaS型サービスです。教育事業者等における利用講師等ID数に応じて利用料を頂戴しております。

教育業界の勤務形態に最適化されていない一般的な勤怠管理ツールの場合、教育事業者等に特有の授業種類別、作業種類別の賃金体系や授業時間と連動したシフト調整が難しく、アナログな集計・調整作業が必要となります。「ComiruHR」の以下の機能を利用することにより、他社の勤怠管理ツールではフォローしきれない講師等の勤怠管理や給与管理への「ComiruHR」による一元管理が可能となります。

●労務管理機能:

シフト管理&教室入退室管理

講師等のシフト集計から、授業単位での出勤記録、一日複数回の出退勤、事務作業時間記録などの教育事業者等特有の勤務体系に対応

講師等の給与計算のアシスト

コマ給、時間給等の学習塾特有の給与形態に合わせて給与計算の基礎となるに支給額を自動で算出し、社会保険料や各種税金などの控除額を別途算出していただくことで、給与明細への反映や電子で送付可能

講師等連絡

講師等への連絡もスマートフォンから簡単送信。既読/未読が確認可能

<事業系統図>

 

(3)「Comiru」サービスの特徴

① 教育業界に特化したサービスのUI/UX(注7)

教育業界の業務管理の特性、あるいは煩雑さから業界横断型のSaaS型サービスでは、最適な管理が難しく、UI/UX面において、改善の余地が残っている状況です。

当社は、教育業界に特化したサービスであり、取り分け教育業界の中でもバックオフィス等の業務が煩雑である学習塾業界にフォーカスして、サービスのUI/UXを進化し続けてまいりました。

具体的には、当社代表取締役の栗原慎吾をはじめとする社内の学習塾経営経験者の知見に基づき、教育事業者の運営に最適な業務プロセスと各種機能や帳票のフォーマットを洗い出し、サービス化してまいりました。また、サービスローンチ後も、開発部門やカスタマーサクセス部門等を中心に、教育事業者等からの要望や改善要請を常にヒアリングし、絶えずアップデートし続けてきました。その結果、サービスローンチ当初は指導報告書の1機能のみの提供から、2023年10月末現在で教育事業者等の運営に必要な15機能まで拡大し、当社サービスの月間解約率は0.4%以下(2023年10月末現在)に留めることができました。

② 教育事業者等の要望等に合わせたスピーディ且つ安定的な開発の実現

今日のデジタル経済の急速な発展により、様々な業界において、これまで作業効率化の手段であった情報システムが、重要な経営戦略の実現手段の一つとなりつつあります。これによりシステム開発は、コストパフォーマンスだけでなくタイムパフォーマンスも重要視されるようになり、当社では、少人数かつ短期間で情報システムを開発できるアジャイル手法(注8)を採用しております。

一般的にアジャイル手法は、ウォーターフォール型(注9)と呼ばれる従来型の手法と比較して、業務分析や要件定義等の上流工程に関する手法が定義されていません。このため、ウォーターフォール型と比較して、プロジェクトの管理が困難であることから、国内企業においては広く活用されていないのが現状です。

国内のシステムインテグレーター(注10)が提供する受託開発サービスの多くは、ウォーターフォール型のスクラッチ開発(注11)で実施されることが多く、アジャイル手法を活用する場合でもスクラッチ開発が採用されています。これは国内のシステムインテグレーターのほとんどが、これまでの豊富なシステム開発経験をもとに、ゼロから情報システムを作り上げるスクラッチ開発の膨大なノウハウを蓄積し、それらを活用したシステム開発を実施していることが要因であると考えられます。

当社では、教育事業者等からの要望や改善要請のヒアリングを常に行い、当社サービスに欲しい機能や足りない機能などの情報収集を欠かさず、その要望等をスピードとテストを重視したアジャイル手法による開発で、且つアジャイル手法に不足している上流工程とテスト工程の作業を標準化した安定的なアジャイル手法によるシステム開発を実現しています。

③ 教育業界における業務効率化・コスト削減及び売上向上への貢献

教育事業者等が「Comiru」を導入することにより、保護者への連絡や請求、授業編成等のバックオフィス業務にかかる作業時間を削減することができ、請求書の送付、口座振替及びクレジットカード決済費用等の支出の削減も期待できます。

また、教育事業者等の講師等は、上記業務効率化により捻出された時間を生徒への授業や、保護者とのコミュニケーションの活性化等の時間に充当することが可能となり、その取り組みにより、生徒及び保護者が教育事業者等に対して満足度の向上や信頼関係が構築され、生徒の継続学習期間の延伸、退塾率の低減が期待できます。

④ 教育事業者等に寄り添った価格設定とAPI化(注12)によるシステムの拡張性

従来の教育事業者等においては、個社ごとに独自のシステムを開発するしかありませんでした。しかし、独自のシステム開発は多額な開発コストとメンテナンスコストがかかり、IT投資の体力が限られる教育事業者等にとって、大きな負担となっていました。また、独自のシステム開発自体が難しい規模の企業においては、市販のソフトウェアにアナログのプロセスを加えて補う運用がなされてきました。こうした市販のソフトウェアは、価格的に安いものではなく予算の限られる学習塾には広く普及していなかったのが実情です。

当社は、「Comiru」サービスを幅広い教育事業者等に利用して頂き、業務効率化を図って頂くために、生徒1名につき1IDを付与し、月額300円/ID(「Comiru BASIC」プラン利用時)とし、小規模の教育事業者等でも利用しやすい価格設定となっております。

また、教育事業者等の社内業務のための独自のシステムやソフトウェア開発にかかる負担軽減及び当社サービスの導入ハードルの抑制のために、「Comiru」サービスの各機能をオープンAPI化しております。これにより、教育事業者等が自社の業務プロセスに合わせて、必要な部分のみ当社サービスを取り入れることができ、カスタマイズ開発を従来よりも簡単に行うことができます。

以上の特徴を背景に、当社の有料契約企業数、課金生徒ID数(注13)、課金生徒ID単価(注14)及びARPU(注15,16)共に伸長した結果、当社のARR(注17,18)は堅調に成長し、事業は順調に拡大しております。

項目

2021年10月期

2022年10月期

2023年10月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

有料契約企業数(社)

944

1,118

1,120

1,212

1,288

1,326

課金生徒ID数(千ID)

(注13)

219

330

344

308

331

340

ARPU(円)(注15,16)

44,821

52,886

55,204

49,781

49,986

49,937

ARR(千円)(注17,18)

507,736

709,519

741,945

724,012

772,589

794,601

課金生徒ID単価(円)

(注14)

192

179

179

196

194

195

顧客の解約率(%)

(注19)

0.5

0.5

0.5

0.5

0.5

0.4

(注)1.「教育事業者等」とは、学習塾や予備校といった学習支援機関や教育機関の他、教育に携わる主体全般を指します。

2.「DX」とは、「Digital Transformation」の略称で、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」(「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)Ver.1.0」経済産業省、2018年12月)を指します。

3.「講師等」とは、学習塾や予備校の教員や教育機関の講師の他、講義を行う主体全般を指します。

4.「SaaS」とは、「Software as a Service」の略称で、IDを発行されたユーザー側のコンピュータにソフトウエアをインストールするのではなく、ネットワーク経由でソフトウエアを閲覧する形態のサービスです。

5.支払手数料は決済銀行に教育事業者等から直接支払いを行うため、当社の収益への計上はされておりません。

6.クレジットカード支払手数料に関しては、クレジットカード決済機能を利用する教育事業者等から決済代行業者等に支払われる手数料であり、当社の収益への計上はされておりません。

7.「UI/UX」とは、UIは「User Interface」の略称で、デザインやフォント、コンピュータシステムあるいはコンピュータプログラムと人間(ユーザー)との間で情報をやり取りするための方法、操作、表示といった仕組みの総称です。UXは「User Experience」の略称で、製品やサービスの利用を通じて得られる体験の総称です。

8.「アジャイル手法」とは、現在主流になっているシステムやソフトウェアの開発の手法のひとつであり、要件定義、設計、開発、テストといった開発工程を機能単位の小さなサイクルで繰り返す手法のことです。

9.「ウォーターフォール型」とは、1970年代に提唱された、大規模なシステム受託開発を行う場合の作業の流れのことであり、日本のシステム受託開発において主流となっている手法です。具体的には、まず作りたいソフトウェアの要求を全て定義して合意し、それを基に設計を全て行い、それに基づくプログラムを全て製造し、最後にそれらが正しく動作するかを検証する手法です。この手法は、作りたいソフトウェアの要求を最初に全て決定する必要があるため、要件定義後に発生する要求の変更に対応することができません。このためこの手法では、昨今の急速な社会環境の変化や技術の進化による要件の変化や新規追加に対応することが難しくなっています。

10.「システムインテグレーター」とは、主として情報システムの開発、運用などの業務をシステムのオーナーとなる顧客から一括して請け負う企業のことです。

11.「スクラッチ開発」とは、一般的に製品を開発する際に、すでに存在する何かを土台とせずにゼロから新たに作り上げることを指します。情報システム開発においては、システム全体をゼロから手作業でプログラミングを行うことで、新規に作成する、あるいは作り直すことを指します。

12.「API」とは、「Application Programming Interface」の略称で、ソフトウェアの機能を共有する仕組みであり、異なるサービスをAPIで連携することで、ユーザーの承諾のもとサービス間でのユーザーデータの共有等が可能となります。

13.従来「利用生徒ID数」と表記しておりましたが、当事業年度より「課金生徒ID数」に変更しております。なお、この変更による公表数値への影響はございません。

14.「課金生徒ID単価」は、四半期末(期末)時点の「MRR」を「課金生徒ID数」で除して算出しております。「MRR」とは、「Monthly Recurring Revenue」の略称で、対象月の月末時点における顧客契約プランの月額利用料の合計額(一時収益は含みません)です。

15.「ARPU」とは、「Average Revenue Per User」の略称で、四半期末(期末)の「MRR」を有料契約企業数で除して算出しております。

16.「ARPU」の算出方法について、従来は有料契約企業1社当たりの「Comiru」の基本利用料(月額課金)の平均値を示しておりましたが、当事業年度より四半期末(期末)の「MRR」を有料契約企業数で除して算出する方法に見直しました。なお、既に公表している見直し前の「ARPU」の値は以下のとおりです。

項目

2021年10月期

2022年10月期

(見直し前)ARPU(円)

40,638

48,456

17.「ARR」とは、「Annual Recurring Revenue」の略称で、四半期末(期末)時点の「MRR」を12倍して算出しております。

18.「ARR」の算出方法について、従来は基本利用料(月額課金)の1年間の積み上げを示しておりましたが、当事業年度より四半期末(期末)時点の「MRR」を12倍して算出する方法に見直しました。なお、既に公表している見直し前の「ARR」の値は以下のとおりです。

項目

2021年10月期

2022年10月期

(見直し前)ARR(千円)

410,532

609,923

19.「顧客の解約率」は、「月中に解約した有料契約企業数÷前月末時点での有料契約企業数」の対象期間の平均です。

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

 

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態の状況

(資産)

当事業年度末の資産については、総資産が878,443千円となり、前事業年度末と比較し182,636千円の増加となりました。

流動資産の残高は、前事業年度末に比べ169,867千円増加し、772,192千円となりました。主な増減内訳は、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資による新株式の発行、第三者割当増資(オーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資)による新株式の発行及び新株予約権の行使に伴い、現金及び預金が154,017千円、「Comiru」の拡大に努めた結果、売上が増加し売掛金が13,784千円増加したことによるものであります。

固定資産の残高は、前事業年度末に比べ12,769千円増加し、106,251千円となりました。主な増減内訳は、繰延税金資産が7,659千円増加したことによるものであります。

(負債)

当事業年度末の負債については、240,617千円となり、前事業年度末と比較し48,589千円の減少となりました。

流動負債の残高は、前事業年度末に比べ4,167千円増加し、142,214千円となりました。主な増減内訳は、人員増加により未払費用が6,190千円増加したことによるものであります。

固定負債の残高は、前事業年度末に比べ52,757千円減少し、98,403千円となりました。増減内訳は、長期借入金の返済により52,757千円減少したことによるものであります。

(純資産)

当事業年度末の純資産については、637,825千円となり、前事業年度末と比較し231,225千円の増加となりました。その主な増減内訳は、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資による新株式の発行、第三者割当増資(オーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資)による新株式の発行及び新株予約権の行使に伴い資本金が102,632千円、資本準備金が102,632千円増加したことや当期純利益の計上により繰越利益剰余金が26,410千円増加したことによるものであります。

② 経営成績の状況

当事業年度におけるわが国の経済は、既往の資源高の影響などを受けつつも、供給制約の影響の緩和や、新型コロナウイルス禍での経済活動に対する制約の解消を背景とした個人消費の緩やかな増加により、持ち直しております。一方で先行きについては、海外経済の回復ペース鈍化による下押し圧力の影響、物価上昇によるコストの増加や需要の減少、人手不足による人件費増加が懸念され、依然として不透明な状況が続いております。

教育業界においては、従来から問題視されていた教育現場の労働生産性の改善意識も高まっており、新型コロナウイルス感染症を契機としたオンライン教育への急速な関心・注目の高まりや、2020年度から始まった政府のGIGAスクール構想で進められている教育環境のデジタル化といった事業環境への変化にも機敏な対応が求められております。また、5Gをはじめとする通信インフラの整備やデジタル化の急速な進展を背景とした、AIやIoTの活用による教育手法の革新という面でも、機動性の高い民間教育が担うべき役割や責務はますます大きくなっております。

このような状況のもと、当社は、「『教える』をなめらかに」をミッションに掲げ、学習塾を中心とする民間教育業界にフォーカスして、そのアナログ業務を効率化するコミュニケーションツール「Comiru」の開発・運用に注力してまいりました。今後も、更なるユーザー獲得及び顧客満足度向上のため、新機能の充実を図り、引き続き機能追加を行ってまいります。

当事業年度においては、主力サービスである「Comiru」は、既存顧客からのアップセル(利用部門や利用生徒数の拡大等)や中小規模の学習塾及び英会話やプログラミングスクール等において、順調に新規顧客を獲得したことにより有料契約企業数及び課金生徒ID数が増加し、かつ低い解約率を維持したことによりARR及び課金生徒ID単価が上昇しました。その一方で、2023年10月19日に公表した「2023年10月期 業績予想の修正に関するお知らせ」のとおり、一部のカスタマイズ案件の仕様変更等により翌期への期ズレ(2024年10月期第1、第2四半期(2023年11月~2024年4月)予定)が発生し、第2四半期に発生した大手学習塾の解約による影響や、新規大手学習塾の課金開始時期が2024年10月期第2、第3四半期(2024年2月~7月)とする案件が増加したことにより、当初計画していた大手学習塾5社の課金開始を達成できず、売上高が当初見込みを下回り、ARPUが僅かに減少する結果となりました。

なお、当事業年度から強化している大手学習塾向けの「ComiruPRO」の導入と基幹システムの有償開発をセットにしたサービスの提案や教育委員会を始めとした自治体への提案も継続しており、引き続き顧客基盤の拡大に向けて取り組んでまいります。

顧客基盤別の取り組みとしては、以下のとおりであります。

(学習塾領域)

学習塾領域においては、中小規模の学習塾向けに経営セミナーの開催等効果的なマーケティング活動や既存顧客による紹介により、順調に新規顧客を獲得しております。

大手学習塾については、「ComiruPRO」の導入と基幹システムの有償開発をセットにしたサービスへの引き合いが増加しており、複数の案件が現在進行しております。具体的な商談状況としては、14社と商談し、そのうち7社から受注しておりますので、今後、2024年10月期以降の売上高及び利益の増加を見込んでおります。

また、2023年7月には「テラコヤプラス by Ameba」を運営する株式会社CyberOwlと業務提携し、集客情報の管理を始めとした学習塾のマーケティング領域にかかる業務プロセスから見直し、DX化を推進するとともに、学習塾を検討されている保護者への新たな価値を提供してまいります。

(習い事領域)

英会話やプログラミングスクール等の学習塾以外の習い事領域においては、活用事例の共有や業界特化型のセミナーの開催等のマーケティング施策により、特にプログラミングスクールを中心に、引き続き新規顧客の獲得数を順調に伸ばしております。

(学校領域)

公教育の学校領域においては、2023年1月の株式会社FCEエデュケーションとの業務提携の他、2022年12月にスポーツ庁及び文化庁が発表した「学校部活動及び新たな地域クラブ活動の在り方等に関する総合的なガイドライン」により、各自治体が公立の中学校・高校における休日の部活動を外部に移行する部活動改革に動き出しており、この「部活動の地域移行」に関連した取り組みとして、千葉県内の教育委員会のモデル事業において、学校・教員、地域の部活動指導員、保護者・生徒の3者間におけるコミュニケーションツールとして「Comiru」が採択されました。引き続き教育委員会を始めとした自治体への提案を継続してまいります。

「Comiru」は、サブスクリプション型のリカーリングモデルであり、また、顧客である教育事業者等の生徒集客がID数増加を推進するビジネスモデルでもあります。これらの特長を踏まえると、新規顧客の獲得に加え、既存顧客からの追加ID獲得が重要であり、また、顧客ニーズに即した魅力的なプロダクトを提供し続ける必要があると考えております。そのために、先行的に顧客ニーズに即したプロダクトを提供するためのシステム開発人員及び営業人員にかかる人件費、並びに新規商談数獲得や認知度向上のためのマーケティング活動費用として広告宣伝費を投下し、前事業年度以降、継続的に投資を実施しております。一方、新しい生活様式、働き方のスタイルを取り入れ、対面での営業活動やセミナーなどを一部オンラインへ切り替えたことにより広告宣伝費、販売促進費、旅費交通費など一部の経費については減少しております。

これらの結果、当事業年度における売上高は、「Comiru」の課金生徒ID数等の増加により829,201千円(前年同期比24.6%増)となり、売上総利益は、売上高の増加及び開発部門における開発活動の効率化の取り組みにより610,612千円(前年同期比28.2%増)となりました。一方で、展示会(EDIX(教育総合展)東京)への出展やWEB広告を中心としたオンラインマーケティングの拡充による広告宣伝費や、営業体制の強化による人件費などの増加により、営業利益が37,230千円(前事業年度は営業損失20,483千円)となりました。また、支払利息及び上場関連費用の計上により、経常利益が33,089千円(前事業年度は経常損失26,987千円)、当期純利益が26,410千円(前年同期比233.2%増)となりました。

なお、当社の事業セグメントは教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業のみの単一セグメントであるため、セグメントごとの記載を省略しております。

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、659,596千円となり、前事業年度末に比べ154,017千円増加しました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、8,173千円(前事業年度は13,306千円の使用)となりました。これは主に、増加要因として、税引前当期純利益33,089千円の計上等があった一方で、減少要因として、売上増加による売上債権の増加額13,720千円、法人税等の支払額15,481千円等があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は9,537千円(前事業年度は4,476千円の使用)となりました。これは主に、パソコン等の有形固定資産の取得による支出2,259千円、ソフトウエア仮勘定計上の無形固定資産の取得による支出2,886千円、従業員に対する貸付けによる支出5,253千円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は155,381千円(前事業年度は309,717千円の獲得)となりました。これは主に、増加要因として、東京証券取引所グロース市場への上場に伴う公募増資による新株式の発行、第三者割当増資(オーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資)による新株式の発行による収入179,611千円、新株予約権の行使による株式の発行による収入25,203千円、減少要因として、長期借入金の返済による支出69,433千円によるものであります。

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載にはなじまないため、記載を省略しております。

b.受注実績

当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載にはなじまないため、記載を省略しております。

c.販売実績

当事業年度における販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2022年11月1日

至 2023年10月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

教育事業者等向けSaaS型業務

管理プラットフォーム事業

829,201

124.6

合計

829,201

124.6

(注)1.当社の事業区分は「教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業」の単一セグメントであります。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満であるため、記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択と適用を前提とし、資産・負債及び収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や将来における発生の可能性等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

当社の財務諸表を作成に当たり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

② 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載しております。

b.経営成績の分析

(売上高)

当事業年度における売上高は、前事業年度に比べ163,869千円増加し、829,201千円(前年同期比24.6%増)となりました。これは主に、主力サービスである「Comiru」の課金生徒ID数及び有料契約企業数が順調に増加したことと顧客単価が上昇したことによるものであります。

(売上原価、売上総利益)

当事業年度における売上原価は、前事業年度に比べ29,501千円増加し、218,588千円(前年同期比15.6%増)となりました。これは主に、主力サービスである「Comiru」のエンジニア人員及び開発にかかる外部協力者への外注費が増加した結果によるものであります。売上原価は増加したものの、売上高の増加及び開発部門における開発活動の効率化の取り組みにより、売上総利益は前事業年度に比べ134,367千円増加し、610,612千円(前年同期比28.2%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ76,653千円増加し、573,381千円(前年同期比15.4%増)となりました。これは主に、将来の成長を支える人材の確保に伴い従業員給料及び手当が46,670千円、展示会(EDIX(教育総合展)東京)への出展やWEB広告を中心としたオンラインマーケティングの拡充により広告宣伝費が11,971千円増加したことによるものであります。

以上の結果、営業利益は37,230千円(前事業年度は営業損失20,483千円)となりました。

(営業外損益、経常利益)

当事業年度における営業外収益は、前事業年度に比べ443千円減少し、23千円(前年同期比94.9%減)となりました。これは主に、消費税等調整額が450千円減少したこと等によるものであります。また、営業外費用は、前事業年度に比べ2,806千円減少し、4,164千円(前年同期比40.3%減)となりました。これは主に、上場関連費用が前事業年度に4,211千円発生したものの、当事業年度は2,335千円を計上したこと等によるものであります。

以上の結果、経常利益は33,089千円(前事業年度は経常損失26,987千円)となりました。

(特別損益、当期純利益)

当事業年度における特別利益及び特別損失は発生しておりません。

当事業年度における法人税等は、前事業年度に比べ42,166千円増加し、6,678千円となりました。これは主に、法人税等調整額が38,149千円減少したこと等によるものであります。

以上の結果、当期純利益は26,410千円(前年同期比233.2%増)となりました。

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の当事業年度のキャッシュ・フローは、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

当社の資本の財源及び資金の流動性について、当社の運転資金需要のうち主なものは、従業員の人件費、システム開発の外注費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、運転資金は第三者割当有償増資及び取引金融機関と長期的な借入契約を借入の都度締結することを基本としております。

なお、当事業年度末における借入金を含む有利子負債の残高は114,495千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は659,596千円となっております。

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の進捗について

当社の売上高は主に教育事業者等向けSaaS型業務管理プラットフォーム事業で構成されております。当該事業は毎月経常的に得られる月額利用料が売上高の大半を占めており、その積み上がり状況の指標であるARRの拡大を経営上の目標としております。その達成状況を判断するうえで、有料契約企業数、課金生徒ID数、ARPU、ARR、課金生徒ID単価を重要な指標としております。ARRを高めていくためには、有料契約企業数を増やしていくことが重要であると考えております。

また、当社の持続的な成長と安定的な収益を実現するために、投資効率を計る指標として広告宣伝費/売上高比率、顧客の解約率、及び売上総利益と営業利益率を重要な経営指標として確認しております。なお、過年度の各指標の推移は以下となります。

項目

2021年10月期

2022年10月期

2023年10月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

有料契約企業数(社)

944

1,118

1,120

1,212

1,288

1,326

課金生徒ID数(千ID)

219

330

344

308

331

340

ARPU(円)

44,821

52,886

55,204

49,781

49,986

49,937

ARR(千円)

507,736

709,519

741,945

724,012

772,589

794,601

課金生徒ID単価(円)

192

179

179

196

194

195

広告宣伝費/売上高比率(%)

13.2

5.2

5.3

4.9

6.0

5.6

顧客の解約率(%)

0.5

0.5

0.5

0.5

0.5

0.4

売上総利益(千円)

301,727

476,244

145,877

300,233

448,151

610,612

営業利益率(%)

△40.8

△3.1

4.4

5.6

3.2

4.5