事業内容
セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
-
セグメント別売上構成
-
セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
-
セグメント別利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | セグメント別 売上高 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
セグメント別 利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
(単一セグメント) | 674 | 100.0 | -650 | 100.0 | -96.4 |
事業内容
3 【事業の内容】
株式会社坪田ラボは「ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする」をミッションに掲げ、近視(*1)・ドライアイ(*2)・老眼(*3)・脳疾患の治療に画期的なイノベーションを起こすことを目標に設立した、慶應義塾大学医学部発ベンチャーです。2012年5月に慶應義塾大学医学部眼科学教室の研究成果を社会に届けるために、また、イノベーションを起こすために、当社の前身である株式会社ドライアイKT(現 当社)が設立されました。
近視、ドライアイ、老眼は、超高齢社会における健康長寿とQuality of Visionの観点から眼科医療領域において大きな課題と認識されておりますが、いまだ原因療法が確立していない、いわゆるアンメット・メディカル・ニーズ領域(*4)であります。世界では、近視は約26億人、ドライアイは約7.5億人、老眼は約18億人の患者数が推定されています。当社では、これらの3領域に加えて、眼と同じ中枢神経系である脳関連の疾患にも研究領域を拡大し、患者様に対して画期的なイノベーションによる研究開発成果を届けるため、提携大学と連携し先進的な研究を行っております。その研究成果を評価するパートナー企業と共同開発を行い、新しい価値を提供する製品を上市しております。なお、当社の事業セグメントは、研究開発事業のみの単一セグメントであります。
主な提携研究機関 :学校法人慶應義塾
主なパートナー企業:株式会社ジンズホールディングス、ロート製薬株式会社、 住友ファーマ株式会社、わかもと製薬株式会社、マルホ株式会社、Twenty/Twenty Therapeutics、Laboratoires Théa
(1) ビジネスモデル
当社のビジネスモデルは、パートナー企業との共同研究開発契約および実施許諾契約による契約一時金、マイルストーン・ペイメントならびに事業化後(上市後)のロイヤリティ契約によるロイヤリティで収益化し、その収益を新しい研究に投資することで、新たな価値創造につなげることです。
大学は研究のレベルが高く、特許を取得し、研究内容に関する論文の執筆までは行いますが、社会全体にその研究開発成果を届けることが難しくなっています。大学単独ではイノベーションが起こりにくいことを踏まえ、当社では慶應義塾大学発ベンチャーとして、大学の研究成果・知的財産“サイエンス”を商業化“コマーシャリゼーション”してイノベーションを生み出すべく、日々研究開発・事業展開に取り組んでおります。
当社の事業領域は基礎的な研究開発から一部治験までとなっております。これらの研究開発成果に基づく製品は、患者様に利用いただくことになると思いますが、当社は患者様との直接的な接点を持っていないため、最終的なユーザーである患者様に接する大手企業が当社の直接的な顧客となるB to Bのビジネスモデルとなっております。
当社の研究開発では、多くの研究が外部委託研究員によって進められています。これが当社の特徴の一つであり、各外部委託研究員は様々な領域で、高度な専門性を持つ研究者であり、当社の幅広いパイプラインに対し、確固たるエビデンスに基づいた研究成果を上げ、新たなパイプラインを創出する役割を果たしています。
また、医薬品、医療機器の開発・販売には時間を要するため、コモディティの開発・販売も並行して進めるデュアル戦略を採っております。さらにコンサルティング業務などで安定的な収入も得ております。現在までに数十社の企業と早期に契約を締結しています。
以下の図は、当社の標準的な収益構造を示しております。
当社の研究成果、知財をパートナー企業に提供し、その対価として、共同研究開発契約又は実施許諾契約の契約一時金、ならびに開発のステージに伴うマイルストーン・ペイメントを順次受け取ります。そして事業化後(上市後)はロイヤリティ収入を得るビジネスモデルですが、現時点で当社収益の中心は、契約一時金とマイルストーン・ペイメントとなっております。
(当社における収益構造)
(事業系統図)
また、成長戦略の基本としてT型戦略(「深化」と「探索」)の概念を取り入れ、サイエンス(研究)においては、研究予算全体の70%を深化(研究の深掘り、知財の導出等)に、30%を探索(基礎研究による発見、新規知財等)に配分し、バランスの取れた研究を目指しております。
(2) 事業の概要
a 近視領域
近視は、失明の主要因であり、有病率の増加は大きな社会問題となっております。近視が激増している現在、世界保健機関(WHO)が発表した「THE IMPACT OF MYOPIA AND HIGH MYOPIA」によると、世界には2020年時点において約26億人の患者が存在しており、2050年には約48億人にもなると試算されています。また、近視は単にメガネをかければよいものではなく、失明につながる重大な疾患であり、予防方法の確立が急がれています。その市場規模は数兆円ともいわれ、巨大なアンメット・メディカル・ニーズが存在する研究領域であります。
当時、当社代表取締役社長坪田一男が教授を務めていた慶應義塾大学医学部眼科教室では2017年に、バイオレットライト(波長360~400nmの可視光)(*5)の光が近視の予防に効果がある事を発見いたしました。
バイオレットライトは、OPN5(*6)という非視覚系光受容体(*7)を刺激し、脈絡膜(*8)を介した眼の血流を維持、増大することが判明いたしました。これら一連の発見の知財化を進めてきております。「現代社会で欠乏しているバイオレットライトを効率的に子供たちに供給することにより近視の進行を抑える」ということが当社の基盤技術となっており、以下の図の様な研究アプローチとなっております。
(a) TLG-001(Tsubota-Lab Glassframe-001)[株式会社ジンズホールディングス][Twenty/Twenty Therapeutics]
TLG-001は、バイオレットライトを1日に3時間310μW/cm2の強度(東京における水平方向で東西南北方位の年間平均バイオレットライト放射照度)で供給することにより、子供の近視の予防を行うメガネフレーム型近視予防デバイスであります。
探索治験によりバイオレットライトの安全性が確認されており、医療機器製造販売承認に向け、2022年6月より最終的な検証治験(*9)を実施しております。
当社は株式会社ジンズホールディングスと日本国内における実施許諾契約を締結しており、近視予防を請求できる医療機器製造販売承認を株式会社ジンズホールディングスが取得し販売開始する計画があります。ビジネスモデルとしては開発契約金に加えて、マイルストーン・ペイメント、ロイヤリティ収入を受け取る契約となっております。
また海外においては、2022年11月にTwenty/Twenty Therapeuticsと、当社が所有する知的財産権のアメリカ大陸における独占的実施許諾契約を締結しました。
(b) TLM-003(Tsubota Lab Medicine-003) [ロート製薬株式会社][Laboratoires Théa]
TLM-003は1日1回~2回の点眼によって近視の進行を予防する、新しいタイプの近視進行予防点眼薬です。TLG-001がバイオレットライトにより眼の血流を増大させ近視予防をするのに対して、本点眼薬は強膜の菲薄化を抑制することにより、強膜の伸展を抑え、近視となることを抑制します。すでにマウスの動物実験において、近視進行抑制効果を証明しており、ロート製薬株式会社と長期の開発契約を締結し、ロート製薬株式会社が2023年から第1相臨床試験を開始しております。
また海外においては、2022年12月にLaboratoires Théaと、米欧を中心とした地域において、当社が所有する知的財産権の独占的実施許諾契約を締結しました。
(c) TLM-007 (Tsubota Lab Medicine-007)
TLM-007は血流増大の効果がある緑内障の点眼薬を適用拡大し、近視の進行を予防する点眼薬としての開発をしています。2024年から特定臨床試験を開始しております。
b ドライアイ領域
現代の視覚情報化社会において眼は酷使され、乾燥による蒸発増大や、現代社会のストレスによる涙液分泌の低下によりドライアイを引き起こします。症状としては眼が乾く、眼が疲れる、眼が重いなどの不定愁訴(*10)が多く、日本だけで2,000万人(ドライアイ研究会ホームページより)の潜在患者がいると考えられております。
ドライアイは涙液層の不安定さを伴う不定愁訴であり、現代社会においては急増しており、特に新型コロナウイルス感染症の影響による在宅勤務の増大により、ドライアイ症状を持つ患者が急増していると考えられております。涙液層の不安定化の原因は主に3つの要因から成り立っており、涙液そのものの減少、ムチン層(*11)の減少、異常及び油層(*11)の異常による蒸発量の亢進とされております。現在この3つのメカニズムについて全世界で治療法の開発が行われており、当社では眼の周りの環境を整えるためのメガネや、涙液の量を増やすためのサプリメントの開発などを行っております。
(a) TLM-001 (Tsubota Lab Medicine-001) [マルホ株式会社]
ドライアイは上図にありますように3層からなる涙液層が不安定になり、慢性疼痛を引き起こす疾患です。3層は油層、涙液層(水層)、ムチン層(*11)から構成されておりどの層が障害を受けても涙液層は不安定となります。最近増えているタイプのドライアイはこのうち油層に影響するものが多いとされています。油層を構成する油成分はまぶたの縁にあるマイボーム腺という脂腺から分泌されます。加齢や炎症によってこの脂腺の機能が落ちますが、我々はビタミンD関連物質がこの機能を回復させることを動物実験および臨床研究によって証明しました。現在ビタミンD関連物質を主体とした眼軟膏を開発しており、すでにマルホ株式会社と全世界の導出に関する契約を結んでおります。開発が進むにつれてマイルストーン収入を得ますとともに、上市されればロイヤリティ収入を受け取る契約となっております。
c 老眼領域
老眼は加齢によって水晶体が硬くなるために生じる調節力障害であり、40歳以降の多くの人が罹患します。顕著な症状として、近くのものが見にくくなります。従来は多焦点メガネや眼内レンズ等で対応しておりますが、根本的に老眼を予防治療する医薬品はまだ開発されておりません。
現在、患者数は40歳または50歳以上の全人類に相当するといわれ、超高齢化社会の到来とともに老眼問題はさらに拡大するのが予測されます。水晶体の老化は、まさにエイジングそのものであるため、代謝からの新しい切り口により、医薬品等の開発を進めて参ります。
d 脳疾患領域
(a) TLG-005 (Tsubota Lab Glassframe-005)[住友ファーマ株式会社]
眼が脳の神経組織の一部であることを考えると、バイオレットライトが眼の血流を上げるだけでなく脳の血流も上げることを予期し研究を重ねた結果、実際にこの現象を発見いたしました。バイオレットライトには、近視の予防効果があることに加えて、うつ病や認知症等の脳に対しても効果があることが徐々に解明されており、うつ病、パーキンソン病や軽度認知障害については複数の特定臨床研究を行っております。2023年度に、うつ病およびパーキンソン病の研究を終了し、また、軽度認知障害についても被験者組み入れが完了しております。
(注)パーキンソン病につきましては、2024年5月22日に開催された取締役会において、住友ファーマ株式会社とのプロジェクト終了を決議しております。
e その他
バイオレットライトによる脈絡膜の機能維持期に貢献できるとの仮説のもとに、後眼部疾患への応用も検討中です。更に、光による角膜コラーゲンのクロスリンク(*12)を目指した円錐角膜治療の臨床研究TLG-003でも、データを蓄積しており、至適治療条件を探索する研究が進んでいます。
更に、OPN5は網膜の局所的な概日光同調にとって必要かつ十分な感光色素であることが判明しており、脳中枢を介してサーカディアンリズム(*13)を改善し、現代の生活スタイルに根付く生活習慣病の治療に展開する準備の一つとして、女性の月経不順に対してバイオレットライトによる治療に挑戦します。
また、これらの知見はペット領域への展開も検討中であり、老犬の体調管理に対する試験を公的支援のもと実施中です。
(3) 当社のパイプライン
以下の表は、当社の開発製品並びにその適応症、市場、開発段階及び本書提出日現在の進捗状況を示しております。
なお、製品の開発に際しては様々なリスクを伴います。当社製品の開発リスクの概要については、「第2[事業の状況] 3[事業等のリスク]」の通りであります。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当事業年度(2023年4月1日~2024年3月31日)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが変更されたこと等により経済活動に緩やかな持ち直しの動きがみられました。一方で、不安定な国際情勢等の影響による原材料価格やエネルギー価格の高騰に加え、円安進行に伴う物価上昇が続いており、依然として先行き不透明な状況が続いております。
こうした環境下、当社は慶應義塾大学発ベンチャーとして、“ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする”をミッションに掲げ、近視、ドライアイ、老眼、脳疾患の治療に画期的なイノベーションを起こすという目標のもと、中長期的な事業の拡大と収益向上を目指し、事業活動を行ってまいりました。
研究開発では引き続き、新規知財の発見及び新規パイプライン追加のための基礎研究、知財の導出及び共同研究先であるパートナー企業との研究開発を強化いたしました。また、バイオレットライト技術を用いた近視進行抑制のための医療機器開発(TLG-001)の検証的臨床試験(治験)における被験者の組み入れが完了し、脳疾患関連のパイプラインであるTLG-005のパーキンソン病、うつ病、軽度認知障害(MCI)の特定臨床研究における被験者組み入れも完了いたしました。この他にも、眼血流増大の効果がある緑内障の点眼薬を適応拡大し、近視の進行を予防する点眼薬として開発しているプロジェクト(TLM-007)の特定臨床研究が開始されました。
公的資金においては、3つの大型公的研究助成金を獲得いたしました。「老齢犬の認知機能低下に対する介入による認知機能改善機器の研究開発」が、令和5年度成長型中小企業等研究開発支援事業(GoTech 事業)として、「網膜色素変性症に対する革新的医療機器の開発」が、令和5年度TOKYO戦略的イノベーション促進事業における助成事業として、「光照射による月経不順治療機器」が、令和5年度女性のためのフェムテック開発支援・普及促進事業における助成事業として採択されました。
事業開発では、TLG-001の検証的臨床試験の被験者の組み入れが完了し、株式会社ジンズホールディングスと締結したライセンス契約のマイルストーンを達成いたしました。また、当社が保有し、また今後保有する点眼薬に関する知的財産権及び研究開発成果に関し、ロート製薬株式会社と知的財産権実施許諾契約を締結し、新しい点眼薬(TLM-018)の開発に着手いたしました。この他、ヘルスケア分野でのコモディティ開発にも注力し、NECパーソナルコンピュータ株式会社との特許等実施・使用許諾契約に基づき、同社よりバイオレットライトLED搭載ノートパソコンが発売されました。
一方で、2026年3月期に終了予定であるTLG-001の検証的臨床試験およびその後に実施される統計解析(期間は1年を予定)に係る費用が契約一時金を超過する見込みとなり、契約損失引当金として328,303千円を計上いたしました。
これらの結果、当事業年度における当社の経営成績は以下のとおりとなりました。
なお、当社は研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメント情報に関連付けた記載は行っておりません。
(単位:千円)
② 財政状態の状況
(流動資産)
当事業年度末の流動資産の残高は、2,223,696千円となり、前事業年度末に比べて344,919千円減少いたしました。これは、未収還付法人税等が28,998千円増加し、現金及び預金が277,616千円、仕掛品が69,643千円及び前払費用が18,145千円減少したことが主な要因であります。
(固定資産)
当事業年度末の固定資産の残高は、71,463千円となり、前事業年度末に比べて32,882千円減少いたしました。これは、工具、器具及び備品が24,883千円、特許権が2,553千円及び繰延税金資産が3,996千円減少したことが主な要因であります。
(流動負債)
当事業年度末の流動負債の残高は、837,547千円となり、前事業年度末に比べて229,819千円増加いたしました。これは、契約損失引当金が328,303千円増加し、買掛金が12,248千円、未払金が13,181千円、未払法人税等が36,705千円及び契約負債が44,054千円減少したことが主な要因であります。
(固定負債)
当事業年度末の固定負債の残高は、90,380千円となり、前事業年度末に比べて24,480千円減少いたしました。これは、長期借入金が24,480千円減少したことが要因であります。
(純資産)
当事業年度末の純資産合計は、1,367,231千円となり、前事業年度末に比べて583,141千円減少いたしました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本準備金がそれぞれ29,088千円増加し、当期純損失641,317千円を計上したことが要因であります。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、1,883,400千円となりました。当事業年度期間における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は301,350千円(前年同期は28,491千円の収入)となりました。これは主に、契約損失引当金の増減額328,303千円、棚卸資産の増減額69,643千円、減価償却費35,744千円、その他の資産の増減額17,929千円、未払消費税等の増減額13,948千円の増加要因があった一方、税引前当期純損失636,371千円、契約負債の増減額44,054千円、仕入債務の増減額12,248千円、未払金の増減額8,949千円及び法人税等の支払額60,443千円の減少要因があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は12,001千円(前年同期は54,027千円の支出)となりました。これは、有形固定資産の取得による支出12,001千円の支出があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は35,736千円(前年同期は1,011,623千円の収入)となりました。これは、株式の発行による収入58,176千円の収入があった一方で、長期借入金の返済による支出22,440千円の支出があったことによるものです。
④ 生産、受注、仕入及び販売の状況
a. 生産実績
当社は直接的な生産活動は行っておりませんが、製造原価の品目としては主に経費のみであることから、生産実績にはなじまないため、記載を省略しております。
b. 受注実績
当社の事業による共同研究は受注形態をとっておりませんので、記載を省略しております。
c. 販売実績
販売実績は、次のとおりであります。なお、当社は、研究開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次の通りであります。なお、当事業年度のLaboratoires Théaに対する販売実績はありません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績の分析
当事業年度末の経営成績につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」に記載のとおりでありますが、主要な表示科目に沿った認識及び分析は次のとおりであります。
・売上高
当事業年度の売上高は673,532千円(前期比281,161千円減)となりました。これは主に、国内を対象としたTLG-001(*1)の実施許諾契約による、マイルストーン・ペイメント100,000千円、TLM-003(*2)の共同研究契約による、マイルストーン・ペイメント80,000千円及び当社が保有し、また今後保有する点眼薬に関する知的財産権及び研究開発成果に関し、知的財産実施許諾契約を締結したことによる契約一時金450,000千円、合計630,000千円の計上によるものであります。
*1 バイオレットライト技術を用いた、近視進行抑制のための医療機器開発
*2 近視進行抑制作用を発揮する点眼薬開発
・売上原価、売上総利益
当事業年度の売上原価は652,153千円(前期比416,596千円増)となりました。これは主に、TLG-001の治験等における研究費の計上及び2026年3月期に終了予定であるTLG-001の検証的臨床試験およびその後に実施される統計解析(期間は1年を予定)に係る費用が契約一時金を超過する見込みとなり、契約損失引当金として328,303千円を計上したことによるものであります。その結果、売上総利益は21,379千円(前期比697,757千円減)となりました。
・販売費及び一般管理費、営業利益
当事業年度の販売費及び一般管理費は670,934千円(前期比118,828千円増)となりました。これは主に、事業拡大による人件費218,578千円(前期比27,351千円増)、研究開発強化による研究開発費205,296千円(前期比79,030千円増)及び特許費用53,569千円(前期比27,874千円増)等の計上によるものであります。その結果、営業損失は649,554千円(前期比816,585千円減)となりました。
・営業外収益、営業外費用、経常利益
当事業年度の営業外収益は14,528千円(前期比10,216千円増)となりました。これは主に、助成金収入5,354千円(前期比2,712千円増)及び償却債権取立益7,550千円の計上によるものであります。営業外費用は1,344千円(前期比25,776千円減)となりました。これは、支払利息1,005千円(前期比227千円増)及び為替差損339千円(前期比6,269千円減)の計上によるものであります。その結果、経常損失は636,371千円(前期比780,592千円減)となりました。
・特別損失、法人税等合計、当期純利益
当事業年度の特別利益、特別損失の計上はありません。当事業年度の法人税等合計額は4,946千円(前期比49,093千円減)となりました。これは、法人税、住民税及び事業税を950千円(前期比55,148千円減)及び法人税等調整額3,996千円(前期比6,055千円増)計上したことによるものであります。これらの結果を受け、当事業年度の当期純損失は641,317千円(前期比731,498千円減)となりました。
② 財政状態
財政状態につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりであります。
③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討
キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容
当社は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、各パイプラインの事業化(上市)を目指して実施許諾または共同研究開発を行うベンチャー企業であり、事業化後(上市後)のロイヤリティ収入を安定的に計上するステージにはまだありません。従いまして、当社は、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)といった経営指標を目的とせず、各パイプラインの進捗状況等を適時かつ正確に管理することを目標においた事業活動を推進してまいりました。当事業年度の達成状況につきまして、売上高については、国内を対象としたTLG-001の実施許諾契約によるマイルストーンを達成、TLM-003の共同研究契約によるマイルストーンを達成及び当社が保有し、また今後保有する点眼薬に関する知的財産権及び研究開発成果に関し、知的財産実施許諾契約を締結したことによる契約一時金等により673,532千円となりました。また、研究開発費については、205,296千円となりました。当期の経営成績並びに研究開発活動の詳細につきましては「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」並びに「第2 事業の状況 6研究開発活動」に記載のとおりであります。
今後もパートナー企業とともに共同研究開発を行うため、基礎研究の強化を図るとともに、国内に展開している各パイプラインを海外へと横展開を推進し、各パイプラインの進捗状況等を目標に努めてまいります。
なお、パイプラインの開発の進捗については、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (3) 当社のパイプライン」に記載しております。
⑤ 資本の財源及び資金の流動性
当社の資金の状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社は、事業上必要な資金を手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、株式市場からの必要な資金の獲得や銀行からの融資、補助金等を通して、安定的に開発に必要な資金調達の多様化を図ってまいります。資金の流動性については、資産効率を考慮しながら、現金及び現金同等物において確保を図っております。資金需要としては、継続して企業価値を増加させるために、主に継続した研究開発や必要な設備投資資金となります。
⑥ 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たりましては、資産、負債、収益及び費用に影響を与える見積り及び判断を必要としております。
当社は財務諸表の基礎となる見積り及び判断を過去の実績を参考に合理的と考えられる判断を行った上で計上しております。しかしながら、これらの見積り及び判断は不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
また、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、特に重要なものは次のとおりであります。
(仕掛品の評価)
仕掛品の貸借対照表価額は、収益性の低下に基づく簿価切下げの方法により算定しております。
当該収益性の見積りには、マイルストーンの達成などの将来の未確定事象に係る見積要素が含まれており、パートナー企業における研究開発の進捗状況に大きく依存するものであります。
そのため、翌事業年度において、研究開発結果によりマイルストーンの達成が困難となり共同研究開発が終了した場合には、損失が発生する可能性があります。
(TLG-001(国内)実施許諾契約に係る契約損失引当金の見積り)
TLG-001(国内) 実施許諾契約に係る契約損失引当金は、実施許諾契約で定められているマイルストーン達成に必要な見積り総費用が、マイルストーン達成時に得られる収入を超過する額を見積り損失額として算定しています。
契約損失引当金の見積り要素として、マイルストーン達成までに要する期間とその費用が含まれております。マイルストーン達成までに要する期間とは、実施許諾契約で定められている条項を達成するために要する期間であり、当初予見していなかった事象が生じた場合、その期間が延長されます。その結果、翌事業年度において、マイルストーン達成までに要する期間が延長され、追加費用の見積りが必要になるため、見積りの不確実性は高まります。
⑦ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照下さい。
⑧ 経営者の問題認識と今後の方針にあたって
当社は、“ビジョナリーイノベーションで未来をごきげんにする“をミッションに掲げ、「近視、ドライアイ、老眼、脳疾患の治療に画期的なイノベーションを起こす」ということを経営方針としております。この経営方針実現のために、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載の課題に対して取り組んでまいります。