事業内容
セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
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セグメント別売上構成
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セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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セグメント別利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | セグメント別 売上高 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
セグメント別 利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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(単一セグメント) | 69 | 100.0 | -889 | 100.0 | -1,283.4 |
事業内容
3【事業の内容】
(1)概要(背景)
当社は、難治性疾患、すなわち「症例数が少なく、原因不明で、治療法が確立しておらず、生活面への長期にわたる支障がある疾患」に対する治療薬の研究開発を目指す大学発バイオベンチャーとして設立されました。
設立後、中村敏一氏(当時:大阪大学大学院医学系研究科教授)の発見したHGF(Hepatocyte Growth Factor:肝細胞増殖因子)タンパク質を開発パイプライン*として導入し、組換えDNA技術*を応用したタンパク質(以下、「組換えタンパク質」という。)の製造法の確立、非臨床試験*の実施を経て、欧米及び日本における臨床試験*を複数実施いたしました。
その結果、組換えヒトHGFタンパク質の医薬品としての安全性を確認し、脊髄損傷急性期を対象とする臨床試験においては有効性を示唆する結果、すなわちPOC*(Proof Of Concept)を得ることができました。 従来の創薬バイオベンチャーの戦略としては、ここまでの研究成果を導出して製薬企業に開発・製造販売を委ねるのが常ですが、当社は組換えヒトHGFタンパク質を医薬品として確実に社会に提供することを第一の使命と考え、自社で開発を続け、医薬品の製造販売承認を得る方針で事業を進めております。 |
<図1 当社の企業理念> |
(2)事業モデル
当社が想定している事業モデルを図2に示します。当社は対象疾患や提携先に応じてA、B、Cを組み合わせたハイブリッド型の事業モデルを志向しております。その中でも、臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。当社の臨床段階のパイプラインについては、脊髄損傷急性期と声帯瘢痕はAとBのハイブリッド(自社開発と販売提携)、ALSと急性腎障害はBによる事業化を目指しております。また、クラリス・バイオセラピューティクス社への原薬供給はCに該当します。
<図2:当社の事業モデル>
また、開発については一般的な新薬開発プロセスに従って実施する必要がありますが、難治性疾患に対する治療薬の開発を実現するために以下に示すようなプロセスを実施しております。
① 基礎研究*
医薬品の候補となるシーズ*探索は長期の研究期間が必要である上に、この段階で候補が見つかっても医薬品として成功する確率は非常に低いことがわかっております。当社では、基礎研究として、組換えヒトHGFタンパク質の新規適応症の探索及び新規候補品の探索を行っておりますが、大学との共同研究において専門的な知識を活用することにより、成功確率を高めるよう基礎研究を進めております。
② 非臨床試験・製造
非臨床試験や製造については、開発業務受託機関、製造受託機関等の専門技術を活用することにより、迅速に進めております。また、この開発段階では膨大な支出に対する収入が得られないため、公的資金(助成金、補助金)を活用することにより、自社負担を減らし、経済的なリスクを低減させております。
③ 臨床試験(第Ⅰ相試験*、第Ⅱ相試験*、第Ⅲ相試験*)
患者数の少ない難治性疾患では、疾患の原因も病態も明らかでないことがあり、臨床試験の評価項目の設定や症例の選定等が難しいとされております。当社では、大学との連携により、難治性疾患に対する専門的な知見を集積し、小規模で成功確度が高い評価項目を策定し臨床試験を実施しております。臨床試験の一部の業務については、開発業務受託機関に委託して品質・開発速度を確保するとともに、臨床評価や解析については、専門病院及び大学病院の医師と連携して科学的な質を高めております。また、大学病院等が公的資金を確保し、臨床試験(医師主導治験)の実施を希望する場合には、治験薬及び科学的な情報・知識を提供して治験推進に協力し、成果の独占的な利用許諾を得ます。
④ 承認申請・許可
臨床試験の成果をより確実に医薬品として社会実装するため、自社での医薬品製造販売承認申請を行うことを基本方針とします。難治性疾患を対象として開発しているため、POCが得られた後には厚生労働省の「希少疾病用医薬品指定」を受け、開発費用の助成、優先審査の活用などにより申請までの業務を加速することが可能です。また、「条件付き早期承認制度」「先駆的医薬品指定制度(旧 先駆け審査指定制度)」等の制度を活用することにより申請・審査に係る時間を短縮し、早期承認を目指します。
⑤ 販売
難治性疾患は高度医療機関において治療が行われるため、開発した医薬品の取り扱い施設の数が限定されます。したがいまして、通常の医薬品のような大規模な流通販売網の構築が不要となります。また、競合する医薬品が少ないことから営業活動に大きな費用をかける必要がありません。当社が医薬品製造販売業の許可を取得し、医薬品卸売販売業者と提携することで、必要な場所に必要な医薬品を届けるサプライチェーンの構築が可能です。その結果、販売に係るコストが削減され、売上総利益を高い割合で継続的に得られるメリットを享受することができます。
なお、脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーンについては、現時点で当社内に営業販売体制がないことから、下図に示すように丸石製薬株式会社と東邦ホールディングス株式会社との提携により構築されております。丸石製薬株式会社は救急領域のスペシャリティファーマ*として国内の救急病院をカバーする営業体制を有しているため、当該製品の販売及びプロモーションの提携をすることで、サプライチェーンを構築することが可能であると考えております。
<図3:脊髄損傷急性期を対象とした製品のサプライチェーン>
⑥ 適応拡大
個々の難治性疾患は患者数が限られますが、複数パイプラインの開発を進めること、海外へ販売を拡大すること、他領域の疾患についても開発を進めることにより、市場の拡大が可能であると考えております(図4)。例えば、脊髄損傷急性期及びALSにおいてHGFの神経保護作用が示された場合には、脳神経領域の疾患に対しても神経保護作用を示し、治療薬として開発される可能性が考えられます。また、声帯瘢痕においてHGFの抗線維化作用が示されると、声帯以外の線維化が原因となる疾患への応用が考えられます。さらに、急性腎障害において静脈内投与でのHGFの効果が確認された場合には、腎臓以外の臓器における難治性疾患への応用の可能性が考えられます。HGFは様々な作用を持っていることから、一つの作用についての効果が確認されると、他領域への応用の可能性があると考えております。将来的には、当社において適応拡大による市場の拡大を行いながら他の製薬企業から他領域での開発を希望する提案を受けた場合には、原薬を供給することにより、継続的な収益を得ることも可能であると想定しております。
<図4:適応拡大の可能性>
なお、当社の事業セグメントは、医薬品開発事業の単一セグメントであり、事業系統図(図5)及び収益の種類(表1)は以下のとおりであります。
(事業系統図)
<図5:事業系統図>
<表1:収益の種類>
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収益の種類 |
内容 |
A |
契約一時金 |
製品販売に関する卸業者との契約時に得られる一時金 販売促進活動協力を目的として契約時に得られる一時金 原薬供給に関する契約時に得られる一時金 |
B |
マイルストーン |
研究開発の進捗により受取る収益 |
C |
ロイヤリティ |
製品販売後に販売額の一定比率を受取る収益 |
D |
製品販売 |
医薬品製造販売(製品販売)に対する売上 原薬供給による売上 試薬販売による売上 |
(3)創薬シーズ
現在、当社の保有する創薬シーズは組換えヒトHGFタンパク質であり、組換えヒトHGFタンパク質を有効成分とした複数の製剤を用いて、各種臨床試験を実施しております。HGFは当初、肝細胞の増殖を促進する増殖因子として日本で発見されました。増殖因子は細胞の表面に存在する受容体*と結合することにより、細胞の核(遺伝子)にシグナルを伝達し、細胞の増殖開始のスイッチをオンにする物質です(図6)。もともと体の中で働く物質であることから組換えタンパク質として製造が可能になれば、高い安全性と効果を併せ持つ医薬品になる可能性があります。 |
<図6:増殖因子の作用機序*> |
HGFはその後の研究によって、細胞増殖以外にも細胞保護、形態形成等の生物活性*を併せ持つことが明らかになり、対象となる細胞も肝細胞だけでなく、腎臓、肺、皮膚等の細胞に対して効果があることが示されました(図7)。特に、線維成分の蓄積により細胞の機能が低下する「線維化」や「硬化」を解除する作用(以下、「抗線維化」という。)及び神経細胞・グリア細胞*等の神経系細胞に対する生物活性が明らかになると、複数の難治性疾患に対する治療薬の候補として様々な研究成果が報告されました。
<図7:HGFの生物活性>
実験動物を用いて疾患モデルを作製すると、体内のHGFタンパク質量が上昇し、疾患が治癒することが示され、HGFと組織修復の関係が明らかになってきました。そこで、組換えヒトHGFタンパク質を疾患モデルに補充的に投与すると症状の軽減や治療効果が示されました。組換えヒトHGFタンパク質を用いた研究は現在でも多くの疾患領域について行われておりますが、臨床応用の可能性がある代表的な疾患は下表のようになります。
<表2:組換えヒトHGFタンパク質の臨床応用の可能性がある疾患>
疾患臓器 |
疾患名 |
生物活性 |
腎臓 |
急性腎障害・慢性腎不全・腎移植・糖尿病性腎症 |
腎上皮細胞の保護・増殖、 尿細管細胞の保護・増殖、形態形成誘導 筋線維芽細胞の増殖抑制、線維化成分の抑制 |
肝臓 |
急性肝炎・劇症肝炎・肝硬変・胆道閉鎖症・脂肪肝・肝移植 |
肝細胞、肝芽細胞の保護・増殖 |
心臓・血管 |
血管障害(閉塞性動脈硬化症・血管再狭窄防止等)・心筋梗塞・拡張型心筋症 |
心筋細胞の増殖 血管内皮細胞の保護・増殖、形態形成誘導 |
神経系 |
ALS・脊髄損傷急性期・脳梗塞・パーキンソン病・ハンチントン病・認知症 |
神経細胞の保護、軸索*形成誘導 グリア細胞の保護 |
肺・気管支 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)・肺線維症・気管支喘息 |
肺上皮細胞の保護・増殖 気管支上皮細胞の保護・増殖 |
その他 |
皮膚潰瘍・声帯瘢痕・炎症性腸疾患・角膜損傷 |
各種細胞の保護・増殖、形態形成誘導 筋線維芽細胞の増殖抑制、線維化成分の抑制 |
※太字は当社が現在医薬品の開発をしている疾患
当社は、HGFの発見者である中村敏一氏(当時:大阪大学大学院医学系研究科教授)より2005年に組換えヒトHGFタンパク質の開発実施権の許諾を受け、難治性疾患を対象としたパイプラインとして開発を開始いたしました。
(4)製造体制
組換えヒトHGFタンパク質を医薬品として製造するためには、①原薬製造及び②製剤製造の大きく2種類に分けられる製造を行うことが必要です。この2種類の製造についてはいずれも当社が実施権を保有しており、製造受託機関に委託して原薬及び製剤の製造を行っております。医薬品の製造については、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」という。)及び「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」(GMP*省令)に基づき、厳格な品質管理の下で製造を行う必要があります。
また、組換えタンパク質を医薬品として製造する場合には細胞を用いた製造法になるため、複雑で特別な技術が多数必要となります(図8)。当社は、組換えヒトHGFタンパク質の製造方法(原薬製造及び製剤製造)のノウハウを有しており、2社の製造受託機関に原薬製造及び製剤製造を各々委託することにより、原薬及び製剤の供給を行っております。
<図8 製造工程の概略>
開発段階では、製品販売による収入が得られず、定期的な製造計画も決められないため、自社で製造設備を有して人材を確保・管理するよりも外部の受託機関を活用する方が経済的なリスクが低く、効率的と考えております。また、難治性疾患を対象としているため、必要となる製品量も少ないことが想定されます。したがいまして、開発から販売初期までは現在の製造体制を持続いたしますが、適応症の追加や拡大等、開発状況に応じてスケールアップ検討を進める予定です。さらに、現在米国においてドラッグマスターファイル*の登録を完了しており、提携会社が米国において組換えヒトHGFタンパク質の開発を行う場合には、当社の製造法を提携会社に開示することなく当社が提携会社に原薬販売することが可能となる体制を構築しております。
(5)製剤開発
HGFは発見から長い年月が経過しているため、物質特許はすでに失効しておりますが、当社は医薬品の製剤として設計・開発する過程で2種類の製剤組成について特許を取得しております。1つは長期的な安定性を目的とした凍結乾燥製剤(特許1)、もう1つは長期的な安定性に加え、神経疾患の治療に適用できるよう組成を改良した凍結乾燥製剤(特許2)です。なお、凍結乾燥製剤(特許2)に関しては、神経疾患に限らず当社の声帯瘢痕パイプラインでも使用しております。
<表3:製剤組成に関する特許>
(2023年9月30日現在) |
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特許の名称 |
出願人 |
最新状況 |
特許1 |
HGF製剤 |
当社 |
日本、米国、欧州、カナダ、韓国にて特許取得済 |
特許2 |
神経疾患の治療に適したHGF製剤 |
当社 |
日本、米国、欧州、カナダ、韓国にて特許取得済 |
(6)開発の状況
開発の状況を図9に示します。臨床試験までステージが進んでいるパイプラインは4件(脊髄損傷急性期、ALS、声帯瘢痕、急性腎障害)、動物疾患モデルにおいて有効性が認められ、提携パートナーにより臨床試験が進められているパイプラインが1件(クラリス・バイオセラピューティクス社による眼科疾患)、基礎研究のステージにあるパイプラインが複数あります。現在は最も開発ステージの進んでいる脊髄損傷急性期を対象とした医薬品開発に注力し、製造販売承認を得ることにリソースを集約しております。一方、基礎研究については大学等との共同研究を継続し、新規適応症の開拓、新規シーズの探索を行っております。
<図9:パイプラインの開発状況>
(2023年9月30日現在) |
① 脊髄損傷急性期を対象とした開発
脊髄とは脳と体をつなぐ神経が集積している組織であり、脊椎と呼ばれる骨の中に保護されております。脊髄損傷とは、事故や転倒により脊髄に強い外力が加わり、組織が損傷を受けた結果、運動神経や感覚神経の機能が失われ、運動障害や感覚障害を発症する疾患です。国内では年間約6千人の新規患者が発生すると報告されております(Miyakoshi N et al. Spinal Cord 2021 Jun;59(6):626-634.)。しかしながらこれまでのところ、損傷した脊髄に対する有効な治療法はなく、脊髄を囲む脊椎の骨折や脱臼を治療するための手術や、リハビリテーションによる残存神経機能の有効利用と日常生活動作の獲得など、対症療法のみとなっております。
<図10:脊髄損傷の発症メカニズムとHGFによる治療効果>
HGFは神経細胞に対し保護作用を示すこと、軸索伸展*の促進作用があることから、脊髄損傷の治療薬として開発される可能性があると考えられます。脊髄損傷は外力によって引き起こされる組織の損傷(一次損傷という。)に続いて周辺組織に損傷が広がる二次損傷が起こります(図10)。脊髄損傷の急性期においては、この二次損傷を抑えることが治療につながると考えられております。当社では慶應義塾大学医学部整形外科との共同研究により、脊髄損傷モデル動物を用いて組換えヒトHGFタンパク質の薬理効果を確認する試験を実施したところ、運動機能評価において有効性が確認されました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(安全性試験、薬物動態*試験など)を実施して、臨床試験に開発ステージを進めました。脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要を表4に示します。
<表4:脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要>
デザイン |
多施設、無作為化、二重盲検*、並行群間*、プラセボ*対照比較試験* |
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患者母集団 |
18歳以上、75歳以下の頚髄損傷患者 受傷後66-78時間の時点で改良Frankel分類*A/B1/B2に該当する患者 |
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用法用量 |
0.6㎎/回、1回/週、計5回、脊髄腔内投与 (HGF群:28例、プラセボ群:17例) |
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主要評価項目 |
評価基準 |
安全性、抗体産生の確認 ASIA motor score*の24週時におけるベースライン*からの変化量 |
結果 |
安全性及び忍容性*はいずれも良好であった。 ASIA motor scoreの24週時におけるベースラインからの変化量について有意な差がみられなかった。 |
|
副次評価項目 |
評価基準 |
神経学的評価項目の推移 |
結果 |
ASIA motor scoreの20週時におけるベースラインからの変化量について有意差を認めた。 |
主要評価項目のうち、安全性に関する項目については問題ないことが確認できましたが、有効性の指標としたASIA motor scoreの24週時(168日目)におけるベースラインからの変化量では有意な差が得られませんでした(図11)。しかしながら、経時的な推移ではプラセボ群に比較してHGF投与群において機能回復の傾向が一貫しており、副次評価項目であるASIA motor scoreの20週時(140日目)におけるベースラインからの変化量について有意差が認められたことから、HGFが神経細胞を保護して、運動機能を回復させる効果についてPOCが得られたと考えております。 |
<図11:ベースラインからの変化量 (公表論文より)> |
本試験の結果を踏まえて、HGF(脊髄腔内投与用製剤:KP-100IT)は2019年9月に厚生労働省により脊髄損傷急性期を対象とした希少疾病用医薬品指定を受けました。また、本試験の結果は、国際医学雑誌Journal of Neurotraumaにも論文発表されております(オンライン公開:2020年5月22日、DOI: 10.1089/neu.2019.6854)。この試験で得られたPOCを検証する目的で次の第Ⅲ相試験の計画を策定し、下表に示す概要で2020年7月より第Ⅲ相試験を開始しました。
<表5:脊髄損傷急性期患者を対象とした第Ⅲ相試験計画の概要(実施中)>
デザイン |
非ランダム化、単群*、多施設共同試験 |
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患者母集団 |
18歳以上、89歳以下の頚髄損傷患者 受傷後66-78時間の時点でAIS* Aに該当する患者 目標症例数:25症例 |
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用法用量 |
0.6㎎/回、1回/週、計5回、脊髄腔内投与 |
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主要評価項目 |
評価基準 |
投与後6ヶ月のAISがC以上に改善した症例割合 |
副次評価項目 |
評価基準 |
神経学的評価項目の推移 有害事象の発生 |
第Ⅲ相試験は2023年4月に症例組入れを完了し、2023年10月に最終症例の最終観察日を終了しており、有効性を示すデータが得られましたら製造販売承認申請を進める予定としております。
② 声帯瘢痕
声帯瘢痕とは、声帯の物性が固く変化(線維化、瘢痕化)して動きが悪くなるため、声が出しにくくなる音声障害を生じる疾患です。発症原因は明らかになっていませんが、声帯の外傷や炎症、声帯の手術後などに起こりやすいことが知られております。患者数については、小規模の疫学調査結果(平成21年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「声帯溝症の診断治療の確立と、標準化に向けたガイドラインの作成に関する研究」)から、国内に3,000~12,000人の患者がいると推定されております。これまでのところ、声帯瘢痕に対する有効な治療法はなく、音声訓練等のリハビリテーション及び声帯の位置を移動する手術といった対症療法が中心となっております。
HGFの生物活性として線維化を抑制する抗線維化作用があるため、声帯瘢痕の治療にも活用できる可能性があると考えられます。当社では、京都大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科及び公益財団法人先端医療振興財団(現 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構)との共同研究により、声帯瘢痕モデル動物の声帯内に組換えヒトHGFタンパク質を投与したところ、声帯機能の改善を認めました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(声帯内投与における試験)を追加で実施し、臨床試験に開発ステージを進めました。声帯瘢痕患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要を下表に示します。
<表6:声帯瘢痕患者を対象とした第Ⅰ/Ⅱ相試験結果の概要>
デザイン |
オープンラベル、用量漸増試験(医師主導) |
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患者母集団 |
20歳以上65歳以下の声帯瘢痕患者 |
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用法用量 |
1、3、10µg/片側声帯/回(各群6例) 1回/週、計4回、両側声帯粘膜内局所投与 |
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主要評価項目 |
評価基準 |
安全性の確認 |
結果 |
声帯の充血が認められたが、軽度で回復しており、安全性上大きな問題は生じないと考えられた。 |
|
副次評価項目 |
評価基準 |
有効性評価指標及び評価時期の探索 |
結果 |
有効性評価指標として測定した5種類の評価項目のうち、3種類の評価項目について改善の傾向がみられた。 |
当該試験の主要評価項目である安全性の確認について、重篤な副作用は認められず、忍容性も良好であることが示されました。また、副次評価項目において、改善傾向の見られる評価項目、評価時期についての知見が得られました。
この試験で得られたPOCを検証する目的で次の第Ⅲ相試験の計画を策定し、下表に示す概要で2022年11月より第Ⅲ相試験を開始しました。
声帯瘢痕においてHGFのPOCが確認された場合には、HGFの抗線維化作用に基づく創薬コンセプトそのものが示されることになり、声帯瘢痕のみならず他の線維化が原因となる慢性疾患(慢性腎不全、肝硬変、肺線維症等)への適応拡大の可能性が示されると考えております。
<表7:声帯瘢痕患者を対象とした第Ⅲ相試験の概要>
デザイン |
多施設共同ランダム化試験 |
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患者母集団 |
18歳以上75歳以下の声帯瘢痕または声帯溝症患者 |
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用法用量 |
二重盲検期:20㎍のHGFまたはプラセボの声帯粘膜内投与 (週1回×4回)、観察24週間 継続期:希望者にHGF20㎍を投与(週1回×4回)、継続観察24週間 |
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主要評価項目 |
評価基準 |
二重盲検期の観察期間24週目におけるVHI-10スコア*改善 |
副次評価項目 |
評価基準 |
期間経過におけるVHI-10*スコアの改善率や変化量等 |
なお、本試験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE、研究開発課題:組換えHGFタンパク質を用いた難治性線維症治療薬の開発)の支援を受け実施しております。
③ ALS
ALSは「難病の患者に対する医療等に関する法律」において難病指定を受けている難治性神経疾患の1つで、運動神経細胞が選択的に障害を受けるため、筋力の低下、筋肉の萎縮が引き起こされる疾患です。その結果、歩行困難、言語障害、嚥下障害及び呼吸障害等の症状が進行的に現れ、発症後3~5年で約80%の患者が死亡すると言われております。国内患者数は約1万人(令和3年度特定医療費(指定難病)受給者証所持者数、難病情報センター)と報告されております。国内ではすでに承認された医薬品が2剤ありますが、いずれも効果は限定的であり、より効果の高い新規治療薬の開発が強く望まれています。実際の医療現場では、リハビリテーションによる生活動作の維持・獲得、鎮痛剤を用いた痛みの抑制などの対症療法が既存治療法となっております。
<図12:ALSの発症メカニズムとHGFの治療効果>
ALSの発症要因は遺伝によるもの、グルタミン酸毒性によるもの、原因不明のものと様々ですが、運動神経細胞が障害を受け脱落することにより筋肉の萎縮が起こることが共通する現象であるため、運動神経細胞を保護することが治療効果につながると考えられます。したがって、前項の脊髄損傷同様に、HGFの神経細胞に対する保護作用、軸索伸展の促進作用はALSの治療につながる可能性があると考えられます(図12)。当社では、東北大学医学部脳神経内科との共同研究により、ALSモデル動物を用いて組換えヒトHGFタンパク質の薬理効果を確認する試験を実施したところ、運動機能の回復、発症の遅延、生存期間の延長といった効果が確認されました。そこで、医薬品の開発に必要な非臨床試験(安全性試験及び薬物動態試験など)を実施して、臨床試験に開発ステージを進めました。ALS患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要を下表に示します。
<表8:ALS患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要>
デザイン |
オープンラベル*、用量漸増試験*、単回投与3群、反復投与2群(各群3例) |
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患者母集団 |
20歳以上、65歳未満のALS患者 発症後3年以内のALS患者であってALS重症度分類*が1もしくは2の患者 |
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用法用量 |
脊髄腔内に治験機器を埋込、皮下ポートを通じて治験薬を脊髄腔内に投与した。 単回投与は0.2mg、0.6mg、2.0mgで実施した。 反復投与(1週ごとに5回投与)は、0.6mg、2.0㎎の2用量で実施した。 |
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主要評価項目 |
評価基準 |
安全性及び忍容性 |
結果 |
安全性及び忍容性はいずれも良好であった。 |
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副次評価項目 |
評価基準 |
・薬物動態の解析 ・抗体の産生の有無 |
結果 |
・薬物動態学的特性を検討した結果、半減期は1.2-1.4日であり、反復投与による蓄積性はないものと考えられた。単回投与、反復投与時ともに血中への移行はほとんどなかった。 ・抗体の産生は認められなかった。 |
当該試験の主要評価項目である安全性及び忍容性の確認について、重篤な副作用は認められず、良好であることが示されました。また、副次評価項目として、適切な投与量を策定するために薬物動態を検討した結果、有効性を検討するために必要な投与量についての知見が得られました。この試験で得られた結果を基に、POCの確認を目的とした第Ⅱ相試験を実施しております。ALS患者を対象とした第Ⅱ相試験の概要は下表のとおりです。
<表9:ALS第Ⅱ相試験計画の概要>
デザイン |
プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験(非盲検*非対照継続投与期を含む)(医師主導) |
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患者母集団 |
20歳以上、70歳以下のALS患者 12週間の前観察期のALSFRS-Rスコア*の変化量が-1~-3の範囲にある患者 目標症例数48例(HGF群32例、プラセボ群16例) |
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用法用量 |
脊髄腔内にカテーテルを挿入し、皮下ポートを通じて治験薬を脊髄腔内に投与する。 2.0㎎/回、1回/2週、24週(二重盲検期)希望者へのHGF投与24週(継続投与期) |
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主要評価項目 |
評価基準 |
二重盲検期24週のALSFRS-Rスコア変化量の群間差 |
副次評価項目 |
評価基準 |
長期投与における有効性及び安全性を確認する。 |
当該試験は、東北大学による医師主導治験として行われ、投与観察期24週時点でのALSFRS-Rスコアの変化量を主要評価項目として評価しましたが、HGF投与群とプラセボ群の間で統計的な有意差は認められませんでした。また、事前に定めた副次評価項目においても両群間で統計的な有意差は認められませんでした。一方、HGF投与群において進行の遅い症例もあり、本試験結果の解釈には、さらに詳細な解析が必要となります。なお、安全性に関しては、HGF投与群とプラセボ群で有害事象の発現率は同程度であり、忍容性が確認されました。今後、東北大学と共同でバイオマーカー評価等の追加解析を実施する予定であります。
④ 急性腎障害
急性腎障害とは、腎臓の損傷、腎臓への血液供給不足、尿路の閉塞等により、数時間~数日という短い期間に急激に腎機能が低下する状態で、その結果、尿を介した老廃物の排泄ができなくなり、体内の水分や塩分量などを調節することができなくなる疾患です。重篤な場合には救急医療が必要になり、死亡に至る場合もあります。発症要因が多数あるため、原因を特定できない場合が多く、有効な治療法は確立されていません。HGFは腎臓の細胞に対して保護効果や増殖作用を示すことから、急性腎障害の治療薬となる可能性があると考えられます。当社は、米国の腎臓専門クリニック(Rogosin Institute)の協力を得て米国において臨床試験を行いました。ただし、第Ⅰ相試験においては、組換えヒトHGFタンパク質の安全性を確認することが目的であるため、容態の不安定な急性腎障害患者を対象とすることは不適切であると判断し、比較的容態が安定している慢性腎不全患者を対象として試験を実施いたしました。当該試験は、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:以下「FDA*」という。)により、必要性の高い新薬の審査を優先的に行う制度であるFast Track*の認定を受けて実施しております。試験結果の概要を下表に示します。
<表10:慢性腎不全患者を対象とした第Ⅰ相試験結果の概要>
デザイン |
第Ⅰa相:オープンラベル、用量漸増試験(全9例) 第Ⅰb相:プラセボ対照二重盲検試験(全15例) |
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患者母集団 |
18歳以上85歳以下の慢性腎不全患者 |
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用法用量 |
第Ia相:3用量、静脈内単回投与 第Ib相:2用量、1回/日、5回、静脈内反復投与 |
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主要評価項目 |
評価基準 |
安全性及び忍容性 |
結果 |
重篤な副作用及び死亡例はなかった。 |
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副次評価項目 |
評価基準 |
薬物動態の解析 |
結果 |
単回投与で投与後速やかに消失し、反復投与で蓄積性はみられなかった。 |
当該試験において得られた情報を基に、次相試験として急性腎障害患者を対象とした臨床試験の計画を策定しております。また、国内での臨床試験実施を想定した第I相試験の追加試験(日本人での最大耐用量を確認する小規模試験)についても同時に策定しております。具体的には、急性腎障害を対象とした治験実施計画書の作成のため、医学専門家へのヒアリング、他社治験例の検討、バイオマーカー*調査等の検討を継続しております。しかしながら、次相試験は比較的大規模なプラセボ対照二重盲検比較試験になることが想定されており、現状では当社単独で神経系の治験と並行しての開発継続は難しいと判断し、製薬企業等と提携し、開発資金を確保した上で開発を進める方針としております。また現在、欧米において急性腎障害を対象とする競合品が第Ⅲ相試験の開発段階にあることから、その動向を注視しつつ、HGFの優位性を示すための開発を進めてまいります。
なお、静脈内投与は最も全身性に被験薬が到達するため、安全性の問題も発生しやすい投与経路になります。当該試験において安全性が確認されたことで、他の投与経路の開発を進める上で重要な知見が得られたと考えております。静脈内投与は様々な疾患に適応拡大しやすい投与経路であることから、急性腎障害に限らず、安全性及び有効性が効果的に確認できる疾患を策定しながら開発を進める方針です。
⑤ その他のパイプライン
当社は、国内外の大学や企業との共同研究において基礎研究を行い、新規パイプラインの強化を進めております。当社からは原薬あるいは治験薬の提供を行い、共同研究先にて有望なデータが得られた場合には成果を共有し、開発ステージを進める予定です。
<用語解説>
用語 |
意味・内容 |
開発パイプライン |
医薬品になる可能性のある候補物質。 |
組換えDNA技術 |
複数種のDNAを結合する技術。 |
POC (Proof Of Concept) |
新薬候補物質の有用性・効果が、患者を対象とする臨床試験によって確認され、治療薬になり得るという仮説(コンセプト)が実証されること。 |
シーズ |
開発パイプラインの基となる物質。 |
スペシャリティファーマ |
得意分野において一定の評価を得る開発力を有する製薬企業。 |
上市 |
新しい製品として市場に出すこと。 |
ライセンスイン |
他社が持つ開発権や販売権などの権利を自社に導入すること。 |
ライセンスアウト |
自社の開発権や販売権などの権利を他社に使用許諾すること。 |
生物活性 |
生体の特定の機能に作用する性質。 |
遊走 |
細胞などが別の場所に移動する作用。 |
受容体 |
特定の生物活性を有する物質と結合し、情報を伝える分子。 |
作用機序 |
薬がその効果を発揮するための生化学的な反応の流れ。 |
軸索 |
神経細胞から伸びた突起状の構造。 |
グリア細胞 |
神経細胞を取り囲む神経細胞ではない細胞。 |
基礎研究 |
新規物質の創製と候補物質の絞り込みをするための研究。 |
非臨床試験 |
被験薬の有効性や安全性を確認するため臨床試験以外の動物などを用いた試験。ヒトを対象としない生物学的試験研究。 |
臨床試験 |
ヒト(患者又は健常者)を対象として行う試験で、被験薬の効果・安全性・動態を確認することを目的とする。 |
第Ⅰ相試験 |
少数の健常者を対象に、安全性(人体に副作用は無いか)・薬物動態(被験薬が体にどのように吸収・分布・代謝・排泄されていくか)を確認する試験。希少疾病においては、患者を対象に第Ⅰ相試験と第Ⅱ相試験をあわせて第Ⅰ/Ⅱ相試験として行うこともある。 |
第Ⅱ相試験 |
比較的少数の患者に対して第Ⅰ相試験で安全性が確認された用量の範囲で被験薬が投与され、安全性、有効性、用法、用量を探索する試験。 |
第Ⅲ相試験 |
多数の患者に対して被験薬を投与し、第Ⅱ相試験の結果で得られた有効性、用法、用量を確認する試験。 |
GMP |
Good Manufacturing Practiceの略で、適正製造規範と訳される。原料の入庫から製造、出荷にいたる全ての過程において、製品が「安全」に作られ、「一定の品質」が保たれるように定められた規則とシステムであり、医薬品の製造に関しては、義務として課せられている。 |
用語 |
意味・内容 |
巻締 |
容器であるガラスバイアルをゴム栓及びアルミキャップで閉塞する工程。 |
ドラッグマスターファイル |
医薬品の原料、材料、あるいは原薬の製造関連情報をあらかじめ審査当局に登録しておく制度。最終製品を製造するメーカーに原料・材料の詳細情報を開示することなく治験申請や新薬承認申請を行うことができる。 |
プラセボ |
色、重さ、味及び匂いなど物理的特性を可能な限り被験薬(治験実施の目的となる、開発中の未承認有効成分を含む製剤)に似せ、かつ薬効成分を含まない「偽薬」のこと。 プラセボ群とは、それらを投与される試験群のこと。 |
軸索伸展 |
神経細胞の軸索が伸びる作用。 |
二重盲検(比較試験) |
医師及び患者の両者がプラセボか被験薬かがわからない状態で行う試験。試験終了後に開鍵(盲検化されていた情報を開示)し、被験薬投与群とプラセボ群の間で有効性や安全性を比較する。 |
並行群間(比較試験) |
複数の試験群が設定され、試験参加者がいずれかひとつの群に参加する試験。 |
プラセボ対照比較試験 |
効果を調べたい被験薬の対照としてプラセボを使用し、薬効成分の有無により効果の違いを比較する試験。 |
改良Frankel分類 |
四肢麻痺の機能障害を5段階に分類したFrankel分類を、さらに予後の違いから細分化したもの。完全麻痺のAから正常のEまで11段階に分類される。 |
ASIA motor score |
米国脊髄障害学会による運動機能を評価する指標で、上肢(50点)と下肢(50点)の運動機能スコアの合計(100点)で構成される。脊髄の各部位に関連した主要筋肉が動くかどうかを点数化したもの。実施が容易で再現性が高いこと等を理由に広く普及している脊髄損傷急性期の評価項目。 |
ベースライン |
評価の際、基準となるもの。脊髄損傷急性期を対象とした治験では、治験薬投与前のスコアがベースライン。 |
忍容性 |
薬を被験者に投与した際に現れる副作用の程度。副作用が発生したとしても被験者が十分に耐えられる程度であれば「忍容性が高い薬」とされる。 |
単群(試験) |
単一の試験群を設定して実施する試験。 |
AIS |
ASIA impairment scale、米国脊髄障害学会が定めた脊髄損傷の機能障害尺度。最も重度のA(完全麻痺)から正常のEまで5段階に分類される。 |
オープンラベル |
医師及び患者の両方がどのような治療を受けているかがわかっている状態で行う試験。 |
用量漸増試験 |
被験薬の用量を段階的に増やして投与する試験。 |
ALS重症度分類 |
厚生労働省「特定疾患調査研究」において定められたALSの重症度。軽度の1から重度の5まで5段階に分類される。 |
薬物動態 |
薬物が体内に投与されてから排泄されるまでの過程。 |
非盲検 |
投与された被験薬が盲検化されない試験。 |
ALSFRS-Rスコア |
ALS患者の日常生活活動を見るもので、12項目の動作について各々0~4の5段階で点数化するもの。 |
VHI-10スコア |
10項目の質問から、自分の声をハンディキャップと感じている程度を患者本人がスコア化する。各質問は、0(障害なし)から4(最大障害)までの回答が設定されており、症状が悪化するほど高値となる。 |
FDA |
米国食品医薬品局。食品や医薬品などについて、その許可や違反品の取締りなどの行政機関。 |
Fast Track |
重篤な疾患あるいは生命にかかわる疾患における治療開発の必要性がある疾患に対して、高い治療効果が期待できそうな新薬をFDAが優先的に審査する制度。 |
PMDA |
独立行政法人医薬品医療機器総合機構のこと。健康被害救済、医薬品や医療機器などの承認審査、市販後における安全対策を業務としている。 |
バイオマーカー |
病気の進行や薬の効果などを体内の分子によって定量的に評価するための指標。 |
業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1)経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
製薬業界の概況としましては、高齢化に伴う医療費の増大に対応してジェネリック医薬品による代替が進むとともに、薬価改定期間が短縮され、高額医薬品の薬価が著しく低下しております。また、臨床試験の大規模化等に起因する新薬開発のためのコスト増大により、国内外での製薬企業の合従連衡が進みM&Aにより企業規模が拡大するとともに、自社創薬開発において重点領域の絞込みが行われており、社外から開発品目を導入する動きも活発化しております。
一方、新薬開発については、対象患者が多く将来安定した多額の収益が得られる、いわゆるブロックバスター医薬品から、特定の患者群に効果的な治療が行える医薬品の開発に移行しており、経営資源が特定分野に集中し短期に意思決定が行われる創薬ベンチャーが、その中心的役割を担うと言われております。これに対応すべく、政府は、厚生労働省や経済産業省の中央省庁を中心に、日本発の創薬を積極的に支援するため、特に、創薬ベンチャー支援の取り組みとして、医療系ベンチャー・トータルサポート事業(MEDISO)の開始や「伊藤レポート2.0バイオメディカル産業版」が作成されております。日本国内での創薬を促進するため、医薬品の条件付き早期承認制度や先駆的医薬品指定制度も法制化されました。
このような事業環境下、当社は、組換えヒトHGFタンパク質(開発コード:KP-100)の研究開発によって創薬イノベーションを起こすことが事業機会の創出・獲得につながると考え、組換えヒトHGFタンパク質プロジェクトに経営資源を集中して、以下の各事業活動を展開しました。
1.医薬開発活動について
(ア)脊髄損傷(SCI)急性期
慶應義塾大学整形外科中村雅也教授を治験調整医師とする治験実施体制のもとで、脊髄損傷急性期患者を対象として第Ⅰ/Ⅱ相試験を実施し、安全性を確認するとともに有効性を示唆する結果を得ました。第Ⅰ/Ⅱ相試験で得られたPOC(プルーフ・オブ・コンセプト:研究開発中である新薬候補物質の有用性・効果が、ヒトに投与することによって認められること)を検証する目的で第Ⅲ相試験の計画を策定し、2020年6月9日付で医薬品医療機器総合機構(以下「PMDA」という。)に治験計画届書を提出しました。
2020年7月より第Ⅲ相試験を総合せき損センター、北海道せき損センター及び村山医療センターの3施設で開始しました。2021年3月より神戸赤十字病院及び愛仁会リハビリテーション病院を加えた合計5施設を治験実施医療機関としており、2023年4月に最後の患者組入れが完了しました*。
*2023年10月2日に最終症例の最終観察日が終了しております。
一方、米国での臨床開発の準備として、2023年9月にアメリカ食品医薬品局(FDA)との事前相談を開始いたしました。
脊髄損傷急性期治療薬としての製造販売承認取得に向けて、組換えヒトHGFタンパク質の製造プロセスに関する各種試験も進めております。原薬製造につきましては、承認申請に必要とされる実製造と同様のプロセスで行う試験製造(プロセスバリデーション)を前事業年度に終了しました。製剤製造のプロセスバリデーションも本事業年度に終了しました。
また、脊髄損傷を対象に、組換えヒトHGFタンパク質製剤のより効果的な投与方法や投与のタイミングを検討するために、2021年2月より慶應義塾大学医学部と共同研究を開始しております。本共同研究において、慢性期完全脊髄損傷モデル動物に対して、慶應義塾大学が保有するiPS細胞由来神経幹/前駆細胞と当社が開発するHGF及びスキャフォールド(足場基材)を併用することにより運動機能の回復が得られることを見出し、2022年3月に同大学と当社は共同で特許出願を行い、2023年3月には当該特許出願に基づく優先権主張出願を行っております。さらに、重度の脊髄損傷モデル動物に対して、急性期にHGFを投与することに加え、亜急性期にiPS細胞由来神経幹/前駆細胞を移植したところ、各単独投与群に比べ顕著な運動機能の回復がみられたことから、2022年9月に本共同研究に基づく2件目の特許共同出願を行い、2023年9月 には当該特許出願に基づく優先権主張出願を行いました。HGF及びiPS細胞由来神経幹/前駆細胞の単独治療は既にヒトでの臨床段階に進んでいることから、両者の併用治療は、急性期及び亜急性期の脊髄損傷に対する次世代複合治療法として早期の実用化が期待されます。
2021年6月には、アジア太平洋脊椎外科学会とアジア太平洋小児整形外科学会の第13回合同学会(APSS-APPOS 2021、2021年6月9日~12日、於神戸国際会議場)において、脊髄損傷急性期での第Ⅰ/Ⅱ相試験に関する発表がAPSS CONGRESS Best Clinical Research Award(APSS会議最優秀臨床研究賞)を受賞しました。
2021年12月には、「神経疾患の治療に適したHGF製剤」の特許が欧州で登録されました。本製剤は脊髄損傷急性期のみならず、筋萎縮性側索硬化症及び声帯瘢痕に対する臨床試験においても治験薬として使用されており、HGF製剤の適応拡大の基盤となるものです。既に権利化されている日本、米国、カナダ、韓国に、欧州が加わることで、HGF医薬品のグローバルでの事業展開に有利な知財環境が構築できました。
(イ)声帯瘢痕(VFS)
声帯粘膜が硬く変性(線維化)する疾患であるVFSを対象とした医師主導による第Ⅰ/Ⅱ相試験によって、KP-100製剤の声帯内投与の安全性が確認され、声帯の機能回復を示す症例も確認されました(J Tissue Eng Regen Med. 2017;1–8.)。その後、2019年7月に実施したPMDAとの事前面談を踏まえ、次相試験について京都府立医科大学と協議を重ね、2022年10月に第Ⅲ相試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)の治験計画届書をPMDAに提出し受理されました。その後、京都府立医科大学附属病院において治験を開始し、2023年1月には第1例目の被験者が症例登録されました。2023年5月には、新たに久留米大学医学部附属病院、東北大学病院、川崎医科大学附属病院、日本大学病院を治験実施医療機関として加え、現在合計5施設で症例登録を推進しております。
なお、治験の実施費用並びに治験薬の製造及び市販製剤の開発費用の調達を目的として、2021年11月に新株予約権の発行を行っており、2022年7月には全ての行使が完了しました。さらに、本プロジェクトは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による「医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)」課題として採択され、2022年4月より公的資金の活用も進めております。
(ウ)筋萎縮性側索硬化症(ALS)
2016年5月より東北大学神経内科青木正志教授による医師主導治験として、東北大学病院及び大阪大学医学部附属病院において第Ⅱ相試験(プラセボ対照二重盲検比較試験)が実施されました。2020年11月には患者組入れを終了し、2021年12月に最終症例の最終観察日が終了しております。その後、東北大学においてデータ解析が進められた結果、主要及び副次評価項目に関して実薬群とプラセボ群の間で統計的な有意差は認められませんでした。一方、実薬群において進行が遅い症例もあり、本試験結果の解釈には、さらに詳細な解析が必要となります。なお、安全性に関しては、実薬群とプラセボ群で有害事象の発現率は同程度であり、忍容性が確認されました。今後、東北大学と共同でバイオマーカー評価等の追加解析を実施する予定であります。
(エ)クラリス・バイオセラピューティクス社への原薬供給
当社は、2020年4月に米国のクラリス・バイオセラピューティクス社とLicense and Supply Agreementを締結し、同社が米国において眼科疾患を対象に臨床開発を進めるためのHGF原薬の供給を行っております。
前事業年度においては、同社に対し治験薬製造等に必要となるHGF原薬を供給しましたが、当事業年度ではHGF原薬の供給はありませんでした。一方、当社が提供した各種情報をもとに、同社は神経栄養性角膜炎を対象とする第Ⅰ/Ⅱ相試験を開始するためのIND申請*を2021年5月に実施しており、同年8月には1例目の投与が開始されております。当社はこれを起点として、毎年定額の技術アクセスフィー(ロイヤリティ収入)を受領し、該当期間分を売上高に計上しております。同社はカナダにおいても本試験を開始するベく、2022年7月に、Health Canada(カナダ保健省)に治験申請を行い承認されました。今後、米国とカナダの両国において本試験が継続されるため、症例組入れのさらなる加速が期待されます。
また、当社は2023年9月に同社と業務提携し、組換えヒトHGFタンパク質の製造法効率化に着手いたしました。今後のグローバルでの必要量増大に対応し、全世界での安定供給を目指すことを目的としております。
*米国食品医薬品局(FDA)に対する新薬治験開始申請
(オ)その他の共同研究
2022年7月には、京都大学と、HGFの再生医療への応用研究に関する共同研究契約を締結しました。バイオマテリアル技術を応用し、対象疾患に最適で効果的な次世代治療法の探索研究を行い、KP-100を他の難治性疾患に適応拡大することを目的としています。
また、当社は、2018年10月より、東京医科歯科大学と共同研究を実施しております。2022年7月、潰瘍性大腸炎の難治性潰瘍の修復を目指した、自家腸上皮オルガノイド移植による臨床研究において、同大学により1例目の移植が行われました。本移植治療に用いる腸上皮オルガノイドの作製には、当社のKP-100が用いられております。
2022年9月には、HGFタンパク質のさらなる可能性を追求するために、「HGFタンパク質を利活用した新しい研究テーマ」を幅広く多くの研究者から募集するオープンイノベーションを推進していくことを決定しました。
また、当社は2023年9月に新株予約権を発行しており、調達資金の一部を非臨床段階の共同研究の推進・拡大を含む新規パイプラインの創製に用いることを決定しております。
2.事業開発活動について
当事業年度においては、脊髄損傷急性期での海外展開を見据えて、海外製薬企業等との事業提携協議を中心に、事業開発活動を行いました。また、脊髄損傷急性期を対象とする米国での臨床開発及び製造開発(組換えヒトHGFタンパク質の製造法効率化)の費用の一部を調達することを目的に、2023年9月に新株予約権の発行を行っております。これにより最大の医薬品市場である米国での開発戦略を明確化し、事業提携の協議を加速することを期待しております。
2021年9月には、当社パイプラインの主成分である組換えヒトHGFタンパク質(5アミノ酸欠損・糖鎖付加型、開発コード:KP-100)の国際一般名が、「Oremepermin Alfa」(オレメペルミン アルファ)に決定されました。
以上の結果、当事業年度の業績は以下のとおりとなりました。
当事業年度における売上高は原薬供給が発生しなかったため、69,250千円(前事業年度比82.3%の減少)となり、営業損失は888,762千円(前事業年度は、426,165千円の営業損失)、経常損失は852,660千円(前事業年度は、330,339千円の経常損失)、当期純損失は854,151千円(前事業年度は、331,829千円の当期純損失)となりました。
なお、当社は医薬品開発事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。
② 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は、前事業年度末に比べて590,033千円減少(前事業年度末比18.4%減)し、2,617,617千円となりました。これは主として、声帯瘢痕の治験費用をはじめとした研究開発費の支払いにより現金及び預金が619,930千円減少したことによるものであります。固定資産は、前事業年度末より変動はなく、同額の1,040千円となりました。
この結果、資産合計は、前事業年度末に比べて590,033千円減少(前事業年度末比18.4%減)し、2,618,657千円となりました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は、前事業年度末に比べて46,229千円増加(前事業年度末比28.4%増)し、209,054千円となりました。これは主として、前受金が75,911千円減少した一方で、未払金が118,797千円増加したことによるものであります。固定負債は、前事業年度末に比べて131,220千円増加(前事業年度末比51.1%増)し、387,900千円となりました。これは主として、長期預り金の増加120,875千円によるものであります。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べて177,450千円増加(前事業年度末比42.3%増)し、596,955千円となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて767,484千円減少(前事業年度末比27.5%減)し、2,021,702千円となりました。これは主として、新株予約権行使に伴う増資により、資本金及び資本準備金がそれぞれ37,668千円増加した一方で、当期純損失を854,151千円計上したことによるものです。
この結果、資本金97,546千円、資本剰余金3,095,517千円、利益剰余金△1,185,981千円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,761,239千円となり、前事業年度末と比較して740,806千円減少しました。
当事業年度におけるキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、689,095千円の支出(前事業年度は15,796千円の収入)となりました。これは主として、未払金の増加額118,797千円の資金増加はあるものの、税引前当期純損失852,660千円による資金減少によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは120,875千円の支出(前事業年度は254,383千円の支出)となりました。これは、定期預金の預入による支出120,875千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは69,164千円の収入(前事業年度は603,112千円の収入)となりました。これは主として、新株予約権の行使による株式の発行による収入67,922千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
該当事項はありません。
b.受注実績
当社は受注生産を行っていませんので、受注実績の記載はしておりません。
c.販売実績
当社は医薬品開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの情報は記載しておりません。当事業年度の販売実績は以下のとおりです。
セグメントの名称 |
当事業年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
前年度比(%) |
医薬品開発事業(千円) |
69,250 |
△82.3 |
合計(千円) |
69,250 |
△82.3 |
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりです。
相手先 |
前事業年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
当事業年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
||
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
クラリス・バイオセラピューティクス社 |
391,829 |
100.0 |
69,250 |
100.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。また、財務諸表の作成に当たっては、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性のある見積りや予測を行っており、見積りの不確実性による実績との差異が生じる場合があります。
当社の財務諸表の作成に係る重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載のとおりであります。
② 経営成績の分析
当事業年度におきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、売上高69,250千円(前事業年度比82.3%減少)、売上原価は発生なし(前事業年度は88,413千円)、販売費及び一般管理費958,012千円(前事業年度比31.3%増加)、営業外収益43,431千円(前事業年度比58.3%減少)、営業外費用7,330千円(前事業年度比12.6%減少)となりました。
この結果、当事業年度の営業損失は888,762千円(前事業年度は営業損失426,165千円)、経常損失は852,660千円(前事業年度は経常損失330,339千円)、当期純損失は854,151千円(前事業年度は当期純損失331,829千円)となりました。
(売上高)
当事業年度の売上高は、クラリス・バイオセラピューティクス社とのLicense and Supply Agreementに基づく技術アクセスフィー収入による売上であります。
(販売費及び一般管理費)
当事業年度の販売費及び一般管理費は、主に脊髄損傷パイプライン治験費用、声帯瘢痕パイプライン治験準備費用及び治験費用の増加、製造開発に係る各種試験費用等の発生により、研究開発費が増加しております。
(営業外収益)
当事業年度の営業外収益は、主に補助金収入が発生したことによるものです。
(営業外費用)
当事業年度の営業外費用は、新株予約権発行費が発生したことによるものです。
③ 財政状態の分析
当事業年度におきましては、当社は、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、資産合計は、2,618,657千円となり、前事業年度末と比較して590,033千円減少し、負債合計は、596,955千円となり、前事業年度末と比較して177,450千円増加するとともに、純資産の残高は、2,021,702千円となり、前事業年度末と比較して767,484千円減少しました。
④ キャッシュ・フローの状況の分析
当事業年度におきましては、当社は、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおり、営業活動によるキャッシュ・フローは689,095千円の支出、投資活動によるキャッシュ・フローは120,875千円の支出、財務活動によるキャッシュ・フローは69,164千円の収入となっております。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑥ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社は、複数のパイプラインの開発を行っておりますが、POCが確認されている脊髄損傷急性期の開発に優先的に資金を充当しております。当事業年度において、脊髄損傷パイプライン関連の研究開発費は、その製品化に必要な製造関連研究開発費を含めて、452,576千円を計上しております。また、新たに第Ⅲ相試験を開始した声帯瘢痕に157,829千円を計上しております。
当社は、事業上必要な資金については、手元資金で賄う方針としており、売上高や営業外収益による収入が現時点では限定的であるため、第三者割当増資並びに補助金等により調達を行っております。手元資金については、資金需要に迅速かつ確実に対応するため、流動性の高い銀行預金により確保しております。
今後も、売上高、営業外収益による収入及び、補助金等による収入が生じることによる一定の財源は確保できる予定ですが、研究開発費の全額を賄うことは困難であるため、主要なパイプラインである神経疾患を中心に資金配分を行い、事業の黒字化を早急に達成するよう開発を進捗させる計画であります。