事業内容
セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
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セグメント別売上構成
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セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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セグメント別利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | セグメント別 売上高 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
セグメント別 利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
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(単一セグメント) | 0 | 100.0 | -1,155 | 100.0 | -1,604,275.0 |
事業内容
3 【事業の内容】
当社は、新規の「がん免疫治療薬」の開発に領域を定める、探索研究から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインを有する創薬ベンチャーです。事業モデル、技術の特徴は以下のとおりであります。
(1) 事業モデル
当社の事業モデルは、新規がん免疫治療薬を自社創製もしくは導入し、探索研究から早期臨床試験までを手掛け、国内外の製薬会社に開発製造販売権をライセンスアウトし、ライセンス先からライセンス収入を得るものです。
医薬品開発は上市までに一般的に10年以上かかり、投資回収までが長く、開発後期段階になるほど要する資金が大きくなるため、ベンチャーで創薬を事業として成立させるためには、開発投資を早期に回収できる仕組みが必要ですが、医薬品産業においては大手製薬企業が開発途上にあるベンチャーが創製するシーズをライセンスインする取引が豊富に行われています。現在は承認薬に至ったシーズのうち、ベンチャーが創製するシーズの数が、従来の大手製薬企業のそれを上回るようになっています。
この事業モデルでは、上市前の開発段階で、ライセンス先製薬企業から開発進捗に応じたライセンス関連収入(ライセンス契約締結時の一時金、その後開発進捗に応じて設定したマイルストンを達成する毎に得られる開発マイルストン収入、上市後は製品売上高の一定割合を得る販売ロイヤリティ収入等)を得ることを目指します。ライセンス後もライセンス先企業と共同開発し、開発費の貢献に合わせて将来の利益を按分したり、ライセンス先から開発協力金を得て開発を主導する等、色々な形態があります。
当社は、様々な開発ステージにあるパイプライン(医薬品候補)の開発を同時並行で進めることにより、投資早期回収と黒字転換後の継続的な収入の実現を図ります。
(2) 開発中のがん免疫治療薬の特徴
がん免疫治療薬の開発では、動かなくなってしまったがん免疫を再び動くようにすること、いったん動いたがん免疫が、任務を終えた後に「元に戻る」仕組みによってブレーキをかけられるのを防ぎ、持続させることが、創薬のターゲットとなります。これに成功すればがんを治療できることは、2018年にノーベル賞を受賞したPD-1という免疫チェックポイント(免疫のブレーキ)を阻害する抗体が、がん治療に革新をもたらしたことによって、立証されてきました。今を生きる私たちは、この治療の革新の恩恵を受ける途上にあり、がんの個別性や免疫応答の多様性にどう対応していくか、未解明の領域がたくさん残されていると考えています。がん免疫にがんの目印を与えるがんワクチン、T細胞というがん免疫そのものを大量に外から投入する細胞医薬、PD-1以外にもいくつもある「免疫が元に戻る仕組み」を一定期間止める抗体医薬、これらが当社の開発している薬です。がんの克服を目指す人に、新たな治療選択肢を提供するために、これからも研究活動を推進してまいります。
(3) 開発パイプライン
当社の開発パイプラインは以下のとおりです。このほか、次世代パイプラインの構築を目的として複数の探索・非臨床試験研究を実施しております。
細胞医薬
〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕
BP2201(iPS-NKT)は、iPS細胞から分化誘導したナチュラル・キラーT(NKT)細胞*1をがん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補です。NKT細胞は、がん細胞を直接殺傷する能力をもつと同時に、他の免疫細胞を活性化することにより、間接的にも抗腫瘍効果を発揮する免疫細胞です。しかし、ヒト末梢血中にわずか0.01~0.1%程度しか存在しないとされ、NKT細胞を体外に取り出し、がん治療に必要な細胞数まで培養・増殖させることが非常に難しいという課題がありました。
そこで国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)では、生命医科学研究センター副センター長の古関明彦氏を中心に、この課題を解決する方法として、iPS細胞技術を用いることが計画されました。具体的には、NKT細胞を初期化して樹立したiPS細胞(NKT-iPS細胞)から再度NKT細胞(iPS-NKT細胞)に分化・誘導可能なことが示され、2010年、iPS細胞から抗腫瘍活性を備えたNKT細胞だけを大量に作り出すことに成功しました。
当社は、本細胞療法の研究開発に、開発元の理研とともに取り組んでまいりましたが、2022年11月に導入オプション権を行使し、全世界で独占的に開発・製造・販売するライセンスを取得しました。
本ライセンスにより、1)iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する「特許」(日米欧で登録済み)、2)現在進行中の治験によって臨床上の安全性と一定の有効性の示唆が期待される「マスターiPSセルバンク」、3)マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる「製造法」の3つで構成されるプラットフォームを有することになりました。
このプラットフォームは、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。
また、2020年6月より国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がんを対象とする臨床第Ⅰ相医師主導治験(以下「本治験」)が実施され、2024年1月に無事終了しました。本治験について、2024年2月に学会で発表されたトップライン・データでは、主要評価項目である忍容性および安全性に問題ないこと、並びに初期的な臨床活性の確認が示されました。
〔CAR-iPSNKT細胞療法:BP2202〕
BP2202(CAR-iPSNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞にがんの目印(抗原)を認識するキメラ抗原受容体(CAR: Chimeric Antigen Receptor)を付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規のCAR-T細胞療法*2です。CAR-T細胞療法とは、がん細胞が細胞表面上に発現する抗原(がんの目印)を認識するキメラ抗原受容体(CAR:Chimeric Antigen Receptor)を、体外でT細胞に遺伝子導入し、CARを導入したCAR-T細胞を培養で増殖させて投与する治療法です。
当社が試作したHER2を標的抗原とする CAR iPS-NKTは、非遺伝子改変iPS-NKTと比較して抗腫瘍効果が高まることをマウスモデルで確認しています。
また、当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-iPSNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となり、現在そのプロトタイプ製品の研究開発を進めています。
〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕
BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。これまで血液がんを標的とするCAR-T細胞療法は、優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。
この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用います。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になりました。
2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。
抗体医薬
抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子*3もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212を開発パイプラインとして有します。
がんワクチン
〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕
BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン*4・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを標的とするT細胞をペプチド単体よりもはるかに強力に惹起させることを、担がんマウスモデルで証明しました。
今後、個別化ネオアンチゲン・ワクチン開発は、BP1209のフォーマットに絞って、臨床応用に向けて準備を進めていきます。
(4) 許認可、免許及び登録等の状況について
① 許認可、免許及び登録、行政指導等
医薬品開発は、各国の医薬品の開発及び当局への申請等に関する法律、日本では「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法、2014年11月25日施行、「薬事法」から改称)、米国では「連邦食品・医薬品・化粧品法(Federal Food, Drug, and Cosmetic Act)及びその関連する法令」、上記の他、日本及び米国を含め各国における当局の省令やガイダンス、ならびに安全性に関する非臨床試験の実施基準(GLP;Good Laboratory Practice)、臨床試験の実施基準(GCP;Good Clinical Practice)、製造管理及び品質管理規則(GMP;Good Manufacturing Practice)の下で進めております。
② 知的財産権の状況
当社は、2022年11月に理研からiPS由来NKT細胞を全世界で独占的に開発・製造・販売する権利を導入するオプション権を行使し、iPS由来NKT細胞の他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許の独占実施権を得ました。
<主要な特許の状況>
(注)欧州については、欧州特許条約に則った特許出願(EPC出願)によっております。
[用語解説]
*1(NKT細胞)
ナチュラル・キラー(NK)細胞とT細胞の特徴を併せもち、自然免疫と獲得免疫をつなぐ役割をもつ免疫細胞。がん細胞をT細胞受容体やNK細胞受容体を通して直接殺傷する能力をもつと同時に、T細胞や樹状細胞など他の免疫細胞を活性化させるアジュバント作用をもつ。活性化すると、多様なサイトカインを産生し、自然免疫系に属するNK細胞の活性化と樹状細胞の成熟化を促す。成熟した樹状細胞は、さらに獲得免疫系に属するキラーT細胞を増殖・活性化させることで、相乗的に抗腫瘍効果が高まる。
*2(CAR-T細胞療法)
Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy:キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法。がん細胞が発現する抗原を認識するキメラ抗原受容体を、T細胞(抗腫瘍免疫をもつリンパ球の一種)に遺伝子導入し、培養で増殖させて投与する治療法。
*3(免疫チェックポイント分子)
免疫恒常性を保つために自己に対する免疫応答を抑制するとともに、過剰な免疫反応を抑制する分子群のこと。がん免疫においては、過剰な活性化によって自己を攻撃するのを防ぐために存在しているが、発がん過程では、がん細胞が免疫系からの攻撃を回避し増殖するために利用される。
*4(完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン)
個々の患者のがん細胞にあるネオアンチゲンを探索し、これに対するオーダーメイドのがんワクチン。海外ではアカデミアや先行開発企業による臨床試験が行われており、その中にはネオアンチゲンをコードするmRNAを脂質ナノパーティクル(LNP)に格納したmRNAワクチンも含まれる。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(業績等の概要)
(1) 業績
当事業年度(2023年4月1日から2024年3月31日まで)の世界経済は長引く国際紛争により不確実性を増し、欧米主要国ではインフレ抑制のため高止まりした政策金利が経済活動の重しとなりながらも、米国や主要新興市場国の底堅い景気に支えられ、堅調に推移しております。2021年末以降長らく低迷していたバイオテック企業の株価は、肥満関連薬や遺伝子編集細胞治療の領域で回復傾向が見られました。一方、我が国の経済はインバウンド需要の回復により景気に緩やかな回復が見られ、海外からの旺盛な投資により日経平均株価が史上最高値を更新しましたが、投資先は流動性の高い大手銘柄に集中し、国内バイオテック企業は引き続き厳しい資金調達環境に置かれています。
かかる環境下において、当社は第16回新株予約権の発行により資金を調達し、後述するとおりiPS細胞由来再生NKT細胞療法の研究開発環境を整え、事業化に向けて前進しております。
細胞医薬
〔iPS細胞由来再生NKT細胞療法:BP2201〕
BP2201(iPS-NKT)は、がん細胞の殺傷を含め多面的な抗腫瘍効果をもつナチュラル・キラーT(NKT)細胞を、iPS細胞技術を使って大量製造し、がん治療に用いる新規の他家細胞医薬品候補です。
これまでに当社は、開発元の国立研究開発法人理化学研究所(以下「理研」)から、iPS細胞由来NKT細胞(iPS-NKT)のCAR-T(キメラ抗原受容体遺伝子改変T細胞療法)を始めとする他家細胞療法使用を広範かつ排他的に保護する特許(日米欧で登録済み)の独占使用権を取得し、マスターiPSセルバンクからNKT細胞へ高純度で大量に分化誘導させる製造法の構築や、遺伝子編集技術の導入等を進めてまいりました。一方で、2000年代初期より自家NKT細胞療法の臨床研究を進めてきた国立大学法人千葉大学において、世界初のiPS-NKTを用いた頭頸部がん患者を対象とする医師主導の第Ⅰ相臨床試験(2020年6月開始)が実施されました。本治験について、2024年2月に学会で発表されたトップライン・データでは、主要評価項目である忍容性および安全性に問題ないこと、並びに初期的な臨床活性の確認が示されました。
本治験で用いられた非遺伝子改変iPS-NKT細胞は、いろいろながん種のがん抗原に対するCAR(キメラ抗原受容体)遺伝子を導入した、新たな遺伝子改変iPS-NKT細胞医薬へ展開する土台/プラットフォームとなり、幅広いがん種と世界の幅広い地域への展開を可能にします。
〔CAR-iPSNKT細胞療法:BP2202〕
BP2202(CAR-iPSNKT)は、非遺伝子改変iPS-NKT細胞にがんの目印(抗原)を認識するCARを付加し、がん細胞殺傷能を高めた新規の他家細胞医薬品候補です。当社が試作したHER2 CAR iPS-NKTは非遺伝子改変iPS-NKTと比較して抗腫瘍効果が高まることを示すデータを、2023年11月に開催された米国癌免疫療法学会(Society for Immunotherapy of Cancer、以下「SITC2023」)年次会議で報告しています。
また、当社は2023年5月にSTAR-CRISPRTM遺伝子編集技術をライセンス導入し、固形がんを含む様々な適応症に対して高度な遺伝子組換型CAR-iPSNKT細胞療法プログラムを創出することが可能となり、現在そのプロトタイプ製品の研究開発を進めています。
〔HER2 CAR-T細胞療法:BP2301〕
BP2301は、様々な固形がんで高発現するHER2を標的抗原とするCAR-T細胞療法です。HER2を発現する固形がんが対象となり、2022年5月より国立大学法人信州大学においてHER2陽性の再発・進行骨・軟部肉腫及び婦人科悪性腫瘍を対象とする遺伝子改変HER2 CAR-T細胞の臨床第Ⅰ相医師主導治験が行われています。
これまでCAR-T細胞療法は、血液がんでは優れた臨床効果が臨床試験で示され、グローバルで承認されてきました。しかし、より多くの方が罹患される固形がんへの展開においては、投与されたCAR-T細胞が、免疫抑制的な腫瘍微小環境において疲弊して機能を喪失し、十分に臨床効果を発揮できないという課題が明らかになってきました。この課題を解決するために、BP2301では、体内での優れた複製能と長期生存能を特徴とし、それによって腫瘍微小環境における疲弊抵抗性と持続的抗腫瘍効果が期待される幹細胞様免疫記憶型(ステムセル・メモリー・フェノタイプ)細胞を多く含むCAR-T細胞を用いる技術の開発に成功しました。これは、信州大学の中沢洋三教授の非ウイルス遺伝子導入法に基づき、中沢教授及び同大学柳生茂希教授と新規の細胞培養法を共同開発したことによって可能になったものです。
当社は2023年11月開催のSITC2023において、開発コンセプトとなるCAR-Tの作用メカニズムが動物モデルで機能していることを再確認した旨報告しました。
抗体医薬
抗体医薬では、腫瘍組織においてがん細胞を排除する免疫の働きを抑制する免疫チェックポイント分子もしくは免疫調整分子に結合し、その機能を阻害する抗体の開発を進めています。がん免疫を抑制するアデノシン産生に介入するCD73とCD39をそれぞれ標的とするBP1200とBP1202、免疫細胞に発現し、その抑制に関わるTIM-3を標的とするBP1210のほかに、CD39分子とTIM-3分子を双方発現する免疫細胞においてこれらを同時に阻害する抗CD39×抗TIM-3二重特異性抗体BP1212を開発パイプラインとして有します。
BP1202に関しては、特定のがん種におけるがん細胞、腫瘍組織でがん免疫に強力な抑制をかける制御性T細胞(Treg)でのCD39が高発現していることから、がん細胞およびTregを選択的に排除する機能を加える改変を施しました。また、BP1212の標的の組み合わせは、ファースト・イン・クラス(同じカテゴリーの中で最初に認可された新薬のこと)を狙うものとなります。
がんワクチン
〔免疫チェックポイント抗体連結個別化ネオアンチゲン・ワクチン:BP1209〕
BP1209は、がん細胞由来の遺伝子変異に由来しヒトの免疫システムが高い反応性を示すネオアンチゲンを標的とするがん免疫を、患者1人ひとりに対応して誘導するのに最適化された、完全個別化ネオアンチゲン・ワクチン・プラットフォームです。ワクチンとなるネオアンチゲン・ペプチドを、T細胞へ標的情報を伝える樹状細胞へ送達するのに免疫チェックポイント抗体を用います。同抗体への結合が可能となるよう当社オリジナルのリンカー技術が組み込まれています。抗腫瘍免疫を指令する樹状細胞に効率よくワクチン抗原を送達することによって、ネオアンチゲンを目印にがん細胞を殺傷するT細胞をペプチド単体よりもはるかに多く誘導することを、担がんマウスモデルで証明しました。
〔がんペプチドワクチン:GRN-1201〕
GRN-1201は、欧米人に多いHLA(Human Leukocyte Antigen:ヒト白血球抗原)-A2型の共通抗原ペプチド4種で構成される、米国や欧州をはじめとするグローバル展開を想定したがんペプチドワクチンです。当社は、2022年5月、米国で実施してきたGRN-1201の非小細胞肺がんを対象とする免疫チェックポイント抗PD-11抗体併用第Ⅱ相臨床試験の早期中止を決定し、当初の治験対象と試験プロトコルを見直し、新たに臨床試験を開始するための開発パートナーを模索していました。
しかしながら、新型コロナウイルス感染症へのワクチン開発以降、mRNAワクチンががん領域でも脚光を浴び、モダリティとしてペプチドワクチンは注目を失いつつあるなかで、医薬品市場の成長著しい中国をはじめグローバルで100社を超える共同開発・導出先候補とコンタクトしましたがパートナーを見つけるには至らず、パイプラインの研究開発・事業開発の優先順位付けの観点から、当社はGRN-1201の導出活動の継続を断念いたしました。
これらの結果、当事業年度につきましては、売上高は72千円(前年同期の売上高は5,280千円)、営業損失は1,155,078千円(前年同期の営業損失は1,467,059千円)、経常損失は1,158,929千円(前年同期の経常損失は1,473,774千円)、当期純損失は1,168,082千円(前年同期の当期純損失は1,485,633千円)となりました。
(2) 財政状態の状況
① 流動資産
当事業年度末における流動資産は前事業年度末より470,250千円減少し1,180,960千円となりました。これは、現金及び預金が、株式の発行による収入があったものの、研究開発に関連する支出等で減少したことにより473,609千円減少したことが主な要因であります。
② 固定資産
当事業年度末における固定資産は前事業年度末より937千円減少し49,296千円となりました。これは、人材派遣会社に差し入れていた保証金の返却により投資その他の資産が937千円減少したことが主な要因であります。
③ 流動負債
当事業年度末における流動負債は前事業年度末より114,453千円増加し191,011千円となりました。これは、1年内償還予定の社債が112,500千円増加したことが主な要因であります。
④ 固定負債
当事業年度末における固定負債は前事業年度末より2,912千円増加し60,258千円となりました。これは、退職給付引当金が2,821千円増加したことが主な要因であります。
⑤ 純資産
当事業年度末における純資産は前事業年度末より588,554千円減少し、978,987千円となりました。これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金の合計が576,950千円増加し、当期純損失により利益剰余金が1,168,082千円減少したことが主な要因であります。以上の結果、自己資本比率は前事業年度末の90.9%から77.7%となりました。
(3) キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末と比べて473,609千円減少し、1,057,360千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は1,156,920千円(前事業年度は1,204,401千円の支出)となりました。これは主に税引前当期純損失1,166,182千円を計上したことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は7,648千円(前事業年度は1,760千円の支出)となりました。これは、主に研究開発機器等の有形固定資産の取得による支出6,194千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は690,959千円(前事業年度は432,104千円の収入)となりました。これは、主に新株予約権の行使による株式の発行による収入573,382千円によるものであります。
(生産、受注及び販売の状況)
(1) 生産実績
当事業年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)前事業年度及び当事業年度ともに生産実績がありませんでした。
(2) 受注実績
当事業年度における受注実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)前事業年度及び当事業年度ともに受注実績がありませんでした。
(3) 販売実績
当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注)1.当事業年度において、販売実績に著しい変動がありました。これは、医薬品開発事業におきまして、
前事業年度に免疫測定検査の受託業務があったことによるものであります。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析は下記のとおりであります。なお、当社は、医薬品開発事業の単一事業であるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(経営指標について)
当社は、創薬ベンチャーであり、研究開発活動という投資期間が長く、その研究開発活動の成果として、ライセンスアウトによる契約一時金やマイルストン収入等などを獲得するビジネスモデルであります。
中長期的視点からの経営の安定化、企業価値の向上を目指して、また著しい技術革新がなされ、大きな期待を受けているがん免疫治療薬分野における大きな事業機会を逃さないために、既存のパイプラインの推進のみならず、新規のパイプラインを積極的に導入していく方針であります。
従いまして、売上高や当期純損益の推移やROE、ROAといった経営指標を目的とすることはせずに、現預金残高の推移、研究開発活動の効率化、パイプライン数の拡大・充実について、財務状況を勘案しながら、早期のライセンスアウト及び黒字化の実現に向けて、事業を進めてまいります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行っております。この見積りに関しては、過去の実績や適切と判断する仮定に基づいて合理的に算出しておりますが、実際の結果はこれらの見積りと相違する可能性があります。
(2) 当事業年度末の財政状態の分析
① 資産の状況
当事業年度末における資産合計は、前事業年度末より471,187千円減少し1,230,257千円となりました。
これは、現金及び預金が、財務活動による収入があったものの研究開発に関連する支出が大きかったこと等により473,609千円減少したことが、主な理由であります。
また、当事業年度末における資産の内訳としましては、現金及び預金が1,057,360千円と、資産の合計の85.9%を占めており、研究開発を推進していくにあたり、当面の資金は確保している状況にあります。
今後の現金及び預金の残高推移については、株式市場等からの資金調達やライセンスアウトによる契約一時金収入・マイルストン収入の獲得が実施されるまでの期間において、主に研究開発費用及び研究機器等の購入に伴う支出により減少する傾向にあります。現金及び預金の残高推移を注視しつつ、がん免疫治療薬分野の最先端の研究開発を積極的に推進してまいります。
② 負債の状況
当事業年度末における負債合計は、前事業年度末より117,366千円増加し251,270千円となりました。
これは、1年内償還予定の社債が112,500千円増加したことが主な理由であります。
当事業年度末における総資産に占める負債の割合は、未償還の社債を一時的に有するため20.4%であります。当社の有するパイプライン開発の推進に伴い、未払金が負債の大部分を占める傾向にあります。また、当事業年度末における現金及び預金の残高に対する負債の割合は、比較的小さいと考えており、引き続き効率的な研究開発活動を推進してまいります。
③ 純資産の状況
当事業年度末における純資産は、前事業年度末より588,554千円減少し978,987千円となりました。
これは、新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金の合計が576,950千円増加し、当期純損失により利益剰余金が1,168,082千円減少したことが主な理由であります。自己資本比率は前事業年度末の90.9%から77.7%となりました。
(3) 当事業年度の経営成績の分析
① 売上高の状況
当事業年度の売上高につきましては、前事業年度と比べ5,207千円減少(98.6%減)し、72千円となりました。
これは、前事業年度に一時的な免疫測定検査の受託業務があったためです。
② 営業損益の状況
当事業年度における営業損失は、前事業年度と比べ311,980千円損失が減少し1,155,078千円となりました。
当社は新規のがん免疫治療薬に開発領域を特化し、細胞医薬、抗体医薬、がんワクチンモダリティに関する探索から早期臨床試験段階にある複数のパイプラインの開発を同時並行で進めておりますが、当事業年度の研究開発費は前事業年度と比べ33.6%減少し775,556千円となりました。前事業年度の研究開発費には、米国臨床試験の早期中止決定に伴う前払金269百万円の費用化が含まれていたためです。
当社の販管費に占める研究開発費の割合は67.1%となり、研究開発費の推移が営業損益に直接影響を与える構造となっております。
各パイプラインの推進に加え、日進月歩でサイエンスが進む環境に迅速に適合していくためにも、新規シーズの導入は今後も引き続き積極的に行っていく方針であるとともに、川崎創薬研究所において創出している新規医薬品候補の開発を順次進めてまいります。
③ 当期純損益の状況
当事業年度における当期純損益は、前事業年度と比べ317,550千円損失が減少し1,168,082千円となりました。
当事業年度の売上総利益が前事業年度と比べ3,329千円減少した一方、販売費及び一般管理費が前事業年度と比べ315,310千円減少したこと、また特別損益では、減損損失が前事業年度と比べ2,705千円減少したことが主な要因であります。
(4) 当事業年度のキャッシュ・フローの分析
当事業年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 業績等の概要 (3) キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
(5) 経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因は、当社が推進する研究開発を遅延又は中止させる事象でありますが、詳細については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。
(6) 資金の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要は、研究開発にかかる人件費、試薬等材料費、消耗品費、外部委託費及び研究機器の購入等及び事業運営・上場維持にかかる人件費、外部委託費及び特許関連費用等であります。これらの費用及び研究機器の購入等については、自己資金により支出していく予定であります。自己資金については、すべて銀行預金としておりますので、すべての支出について迅速かつ確実に対応できるよう資金の流動性を確保しております。