2023年7月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 3,150 100.0 173 100.0 5.5

事業内容

3【事業の内容】

 

当社は『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』をミッションに掲げ、「技術で支えられているサービスを提供する会社」として技術を磨き、インターネット領域において様々なサービス提供を行っております。

21世紀に入り、インターネットによって人々の生活や企業の行動は大きく変化してまいりました。そしてこの進化はますますそのスピードを上げ、社会に大きな影響を与え続けるものと考えられます。当社はこうした変化を積極的に捉え、提供サービスの創造・進化を通じて、生活者の利便性や豊かさの向上、企業の付加価値創造活動の支援に貢献していくことを目指しております。

当社は利用者同士で質問・回答を寄せ合うウェブサイト「人力検索サイトはてな」を皮切りに、「はてなブログ」や「はてなブックマーク」といったUGC(User Generated Content)サービス(注1)を自社開発し運営しております。

当社の事業の中核となるUGCサービス「はてな」は、当社の運営するインターネットサービス上で会員登録を行ったユーザーとなる個人(以下「登録ユーザー」といいます)が投稿した文章や画像、映像などのコンテンツを登録ユーザー以外のユーザーも閲覧することができるサービス群です。興味・関心を共にするユーザーが集まるコミュニティを形成することで、他のSNS(注2)との差別化が図られております。

主要なUGCサービス一覧は下記のとおりであります。

サービス名称

サービス機能

機能の概要

はてなブックマーク

総務省「情報通信白書」で代表例に挙げられた、ソーシャルブックマークサービス

任意のウェブページを登録できるオンラインブックマークサービス。他の登録ユーザーとブックマークを共有することで有益な情報源とすることができる。

はてなブログ

無料で開設可能、有料で広告を非表示にできるブログサービス

ブラウザやスマートフォンアプリから投稿・編集ができるブログサービス。2003年に提供開始した国産ブログサービス「はてなダイアリー」の後継。

はてなフォトライフ

写真・動画共有サービス

一定容量まで無料で利用可能な写真・動画共有サービス。はてなブログの記事に利用する画像のストックとしてもスムーズに連携して使用できる。

人力検索はてな

利用者同士で質問・回答を寄せ合うQ&Aサービス

登録ユーザーが投稿した質問に対して他の登録ユーザーが回答を投稿できるサービス。回答は全てのユーザーが閲覧できる。

 

当社は投稿や閲覧のための便利な機能の提供や、登録ユーザー間で交流が促進するようなコミュニティ機能の提供等により、サイトの活性化、登録ユーザー数の増加を図っております。

直近3年間の、UGCサービスの登録ユーザー数の推移は下記のとおりです。

年月

2021年7月

2022年7月

2023年7月

登録ユーザー数  [万人]

1,150

1,183

1,214

 

当社の事業は「UGCサービス事業」の単一セグメントでありますが、狭義のUGCである「コンテンツプラットフォームサービス」の他に、企業向けに「コンテンツマーケティングサービス」及び「テクノロジーソリューションサービス」を展開しています。当社はコンテンツプラットフォームサービスのシステムや利用ユーザー、保有技術や10年以上に渡る運営ノウハウなどを他のサービスに活用することで、シナジー効果を得ています。

各サービスの内容は以下のとおりであります。

 

(1)コンテンツマーケティングサービス

コンテンツマーケティングとは、顧客の新規獲得や関係性維持のために、メディアやコンテンツを作成したり共有したりするマーケティング手法のことです。インターネット上におけるコンテンツマーケティングは主に、動画・画像・テキストなどのコンテンツを提供したり活用したりするマーケティング手法のことを指します。インターネット及びソーシャルメディア(注3)の普及によって、テレビCMや新聞・雑誌広告を通じて情報を得る時代から、ソーシャルメディアやUGCサービスでの話題に注目したり、気になったモノを検索したりして情報を得ることも並行して行われる時代に変化しています。広告主にとっては「見つけて貰う」ためのマーケティング活動が非常に重要になってきております。具体的には、顧客との関係を構築するために企業が自らウェブサイトを所有し(「オウンドメディア」と呼ばれます)、コンテンツを発信し、検索で発見されたりソーシャルメディアで拡散されたりするための活動です。

当社は、UGCサービス開発・運用及びユーザー行動に関する深い知見を活かし、コンテンツマーケティングサービスとして、クライアント企業がオウンドメディアを構築・運用する際に、コンテンツを管理するシステムの提供やコンテンツ自体の企画・制作、読者の誘導を支援しております。サービス内容としては、下記のとおりであります。

 

a. 「はてなブログMedia」サービス

「はてなブログMedia」サービスとは、オウンドメディアを所有したい企業向けに記事コンテンツの管理やSEO対策(検索エンジン最適化対策)が手軽にできるCMS(Content Management System:コンテンツ管理システム)です。具体的には、当社の「はてなブログ」や写真共有サービス「はてなフォトライフ」のシステムを利用して、当社にてクライアント企業のコンテンツデータをホスティング(注4)して管理するものであります。「はてなブログ」システムを利用したSaaS(注5)型提供であるため、アクセス負荷対策や脆弱性対策といったシステム管理に頭を悩ませることなく、コンテンツ作りに専念できると好評です。当社は、ホスティングする各クライアントのオウンドメディアに対してコンテンツ企画・編成支援なども実施しており、「はてなブログ」を利用するブロガーに寄稿を斡旋するなど、独自性の高いサービスも提供しております。当社は、「はてなブログMedia」ライセンスフィー・運用料、カスタマイズ開発料及びコンテンツ企画・支援料等を受け取っております。

 

b. 広告サービス

当社は、「はてなブログMedia」サービス利用顧客や他のクライアント企業(広告主)のコンテンツや商品等を当社UGCサービスのユーザー向けに告知するための、広告サービスを提供しております。広告代理店やメディアレップ(注6)による間接販売にて提供することもあります。広告サービスは以下のような構成で売上高に計上しております。

 

 

① ネイティブ広告

クライアント企業(広告主)が自社サイトのコンテンツや記事を持っておりその読者を増やしたい場合、当社UGCサービスと親和性の高いページから、ページ内コンテンツと同じデザインの誘導枠を利用して告知することができる広告商品です。広告であることを明示しながらも、媒体になじんだ適切な情報配置を行うことができる(ネイティブ)ことが特徴で、ネイティブ広告と分類されております。当社は、広告掲載期間やインプレッション数(注7)、広告掲載サイズなどに応じて、広告掲載料を受け取っております。

 

② タイアップ広告

クライアント企業(広告主)が告知したい商品やサービスを取材して記事コンテンツを制作します。登録ユーザーに効果的に伝達しUGCサービスを介して適切にソーシャルメディアに情報拡散されるよう、独自企画を用意するプレミアムな商品であります。当社は、広告掲載期間や制作費用等に応じて、広告掲載料を受け取っております。

 

③ 純広告

バナー広告・テキスト広告を中心とした広告商品です。ウェブサイト上の画像やテキストにリンクをはることにより、画像やテキストをクリックするとクライアント企業(広告主)のウェブサイト等を表示するものであります。当社は、広告掲載場所、インプレッション数、広告掲載サイズ等に応じて、広告掲載料を受け取っております。

 

(2)コンテンツプラットフォームサービス

コンテンツプラットフォームサービスとは、当社が企画・開発・運営するUGCサービスであり、ユーザーが文章や画像などのコンテンツを発信・拡散することができるプラットフォームとして見立てたものであります。当社は、スマートフォンなどのデバイスの普及や進化に対応して、より便利で使いやすくコンテンツを発信しやすいような機能を開発して提供していくことで、登録ユーザーがより魅力的なコンテンツを発信・拡散することでより多くの読者を惹きつけ、それがさらに登録ユーザーにとってコンテンツ発信のモチベーションとなるように努めております。

当社は機能開発を進めて、登録ユーザーに、UGCサービス内で無料で使える機能の他に、利便性の高い機能を備えたサービス利用プランを有料で提供しております。また、クライアント企業(広告主)がUGCサービスの読者に商品やサービスを告知することができるようにしております。当社は以下のような構成で収入として売上高に計上しております。

 

a. 課金収入

当社で提供するUGCサービスは全て無料で利用できますが、各サービスにおいて登録ユーザー向けに、より利便性の高い上位プランを有料で提供しております。例えば、はてなブログでは有料プランのはてなブログProに加入すると、独自ドメインを利用したり当社指定のヘッダ・フッタ表示を外してページデザインの自由度を上げたりすることができます。

 

b. アフィリエイト広告収入

当社はUGCサービスを広告媒体として、アフィリエイト広告を提供しております。具体的には、読者がUGCサービス上に掲載するバナーをクリックすることで、ECサイト(注8)等に誘導し、商品購入に至った場合に当該ECサイト等より手数料収入を得る、成果報酬型の広告商品であります。

 

(3)テクノロジーソリューションサービス

当社は、テクノロジーソリューションサービスとして、UGCサービス企画・開発・運営にて培ってきたサービス開発力やITインフラ構築力、保有する大規模データとその分析力を活かして、クライアント企業のビジネスを支援するためにユーザーによるコンテンツ投稿を促すネットサービスの企画・開発・運用を受託したり、UGCサービスに蓄積してきた膨大なコンテンツに関する分析データを用いたりして、クライアント企業にソリューションを提供しております。サービス内容としては、下記のとおりであります。

 

a. 受託サービス

クライアント企業の要望に応じて、オウンドメディア構築のためのコンテンツマーケティングサービスとは別に、独自のネットサービスの企画・開発・運用を受託するサービスであります。当社は主にゲーム業界、出版業界などコンテンツ産業に属する企業にそのユーザー同士が文章や画像を投稿してゲームについてコミュニケーションしたり、自作の小説やマンガを投稿して他のユーザーや読者に見て貰ったりするようなネットサービスを企画・開発・運用するサービスを提供しております。

 当社は、ユーザーによる投稿や閲覧行動をクライアント企業のビジネスに活かすサービスを構想し、実装に落とし込めるものとする企画力、拡張性のある設計を素早く実装できる開発力を有しております。また、サービスの規模が拡大しても表示速度を低下させず、かつ設備を無駄に使わずローコストな状態を保てるITインフラの設計・構築・運営力に強みを持っております。当社は、クライアント企業より受託開発料及び保守・運用料等を受け取っております。

 

b. ビッグデータサービス

ビッグデータサービスとは、当社が保有する大量のデータ、所謂ビッグデータを処理・分析し、クライアント企業に有用な情報を提供したり、データ量の推移を可視化できるツールを提供したりすることで、クライアント企業へソリューションをもたらすSaaS型のサービスです。当社が保有する大量のデータとは、UGCサービスに投稿されるコンテンツやその閲覧データ、またそれらUGCサービスを提供する中で収集する、サーバーなどの各種ハードウエア機器やアプリケーションソフトウエアの性能(パフォーマンス)データです。

 クラウド支援サービス

ウェブサイトを運用するインフラとして、従来のデータセンターサービスに加えて、Amazon Web Servicesなどのクラウドサービスがこの数年で急速に普及しております。初期費用を抑えられ、またアクセスの負荷状況にあわせて容量を短期間で増設できることを利点と捉え、特にウェブ業界においてクラウドサービスを採用する会社が増えてきています。当社は、このクラウドサービスにて稼働するサーバーやアプリケーションサービスをSaaS型で監視する「Mackerel(マカレル)」をクラウド支援サービスとして、2014年より提供しております。「Mackerel(マカレル)」では、サーバーやアプリケーションサービスの稼働状況を、異なるクラウドサービスやデータセンターサービスであっても統一的に監視することができます。また、大規模サービスであるUGCサービスの監視・運用経験を踏まえ、監視専用に多機能かつ洗練された見やすい管理画面を備えており、監視業務品質の向上に役立てることができます。一定の条件下(例えば、対象とするサーバー数の制限)では無料で利用可能なようにしてあり、ウェブサイト管理者が試しやすく使い始めやすいようなサービス形態としております。

当社は、ウェブサイト管理者より、主にサーバー数に応じた利用料、カスタマイズ導入料等を受け取っております。

以上より、当社の収入についてまとめると下記のとおりとなります。

 

 

事業

サービス

収入

対象

収入概要

UGCサ

事業

コンテンツマーケティングサービス

受託収入

法人

「はてなブログMedia」ライセンスフィー・運用料、カスタマイズ開発料及びコンテンツ企画・支援料等

 

広告収入

法人

(広告主)

広告商品(ネイティブ広告、タイアップ広告、純広告)の広告掲載料

コンテンツプラットフォームサービス

課金収入

個人

(ユーザー)

有料プラン(利便性の高い上位プラン)の月額利用料

アフィリエイト広告収入

法人

(広告主)

アフィリエイト広告商品の広告掲載料等

テクノロジーソリューションサービス

受託収入

法人

受託開発料及び保守・運用料等

ビッグデータサービス収入

法人

(ウェブサイト管理者)

サーバーやアプリケーションサービスを監視・管理できるサービス「Mackerel」の利用料(サーバー数に応じた利用料、カスタマイズ導入料等)

文中における用語の説明は(注)1~8のとおりであります。

(注)1. UGC(User Generated Content)サービス

インターネット上で利用者自身がテキストや画像、映像などのコンテンツを発信することができる場を提供するサービスであります。ブログサービスの他、クチコミサイトやSNS、動画共有サービスなどがあります。

2. SNS

ソーシャルネットワーキングサービスの略称であり、インターネット上において、人と人とのつながりを促進・サポートする、コミュニティ型のウェブサイトのことであります。

 

3. ソーシャルメディア

インターネット上において誰もが参加でき、情報発信が出来るメディアであります。UGCサービスの中でも他の人との交流に重きを置いており、交流を通じて広がっていくように設計されています。

4. ホスティング

インターネットサービス提供者が、自社で管理する設備に設置された情報発信用のコンピュータ(サーバー)及びそのアプリケーションソフトウエアの機能を、遠隔から顧客に利用させるサービスのことであります。

5. SaaS

Software as a Serviceの略称で、必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウエア(主にアプリケーションソフトウエア)もしくはその提供形態のことであります。

6. メディアレップ

インターネット広告の一次代理店。広告代理店を二次代理店として媒体社の広告商品を販売する事業者であります。

7. インプレッション数

ウェブサイト等に掲載された広告が表示された回数のことであります。

8. ECサイト

電子商取引(eコマース)を行うウェブサイトのことであります。

 

[事業系統図]

  以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要、及び経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 また、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

 ① 我が国経済と当社を取り巻く事業環境の概況

 当事業年度における我が国経済は、内閣府の2023年8月の月例経済報告によると、「景気は、緩やかに回復している」とされております。先行きについては、「雇用・所得環境が改善する下で、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される。ただし、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念など、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある」とされております。

 UGCサービス事業(注1)を展開するインターネット関連業界におきましては、『消費動向調査(令和5(2023)年3月実施分)』(内閣府経済社会総合研究所)によりますと、スマートフォン世帯普及率は92.6%(前年比0.7ポイント増)と普及が進んでおり、スマートフォン市場は緩やかに拡大していくものと予測されます。

 また、2023年6月に総務省情報通信政策研究所が公表した『令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書』によりますと、「休日のインターネット利用の平均利用時間がテレビ視聴の平均利用時間を全年代で初めて超過」、「スマートフォンの利用率は全年代で97.1%となり、ほぼ100%となっている」とされており、インターネットの情報通信メディアとしての存在がテレビと肩を並べ、今後もスマートフォンなどの機器の保有・利用により、インターネットを取り巻くマーケットサイズは拡大していくものと予測しております。

 さらに、『2022年 日本の広告費』(㈱電通)によりますと、「2022年の日本の総広告費は、通年で前年比104.4%の7兆1,021億円で、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大、ウクライナ情勢、物価高騰など、国内外の様々な影響を受けつつも、1947年に推定を開始して以降、過去最高となった。インターネット広告費(インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算)は、社会のデジタル化を背景に、継続して高い増加率を保っており、前年比114.3%の3兆912億円に達し、日本の総広告費全体の43.5%を占めるにいたった」とされております。インターネット広告費は各種イベントや広告販促キャンペーンの復調傾向が見受けられます。インターネット広告媒体費は2023年も堅調に推移し、全体で前年比112.5%の2兆7,908億円まで増加すると予測されております。

 このような事業環境のもと、当社におきましては、自社で開発したユーザー参加型サービス群を「コンテンツプラットフォームサービス」と位置付け、その運営を通して培われた技術力やユーザーコミュニティを活かし、法人顧客向けに「コンテンツマーケティングサービス」、「テクノロジーソリューションサービス」をサービス領域として提供しております。市場環境の変化や、それに伴う経済的予測等を鑑み、人的資本や知的財産、資金等の経営資源を各サービスへ効率的に配分することで、経営の機動力の向上を図ってまいります。

 ② 業績の概況

(ⅰ)サービス別の販売動向

<コンテンツプラットフォームサービス>

 コンテンツプラットフォームサービスでは、ユーザーがコンテンツを発信、拡散するUGCサービスとして、「はてなブログ」「はてなブックマーク」などのサービスを展開しております。

 主力サービスとなっている「はてなブログ」の登録ユーザー数は順調に増加しました。一方、「はてなブログ」の個人向け有料プラン「はてなブログPro」などについては、前事業年度においてブログ開設時に課金を開始するユーザーの割合が前年同期比で減少したことも相まって、課金売上は減少しました。

 今後は、コンテンツ販売サービスのcodoc株式会社と連携することで、ブログ記事の有料販売に対応するなど、ユーザーの収益獲得を支援するとともに、更なる売上成長を図ってまいります。

 「はてなブログ」を法人向けに提供する「はてなブログBusiness」については、堅調に推移しました。2022年10月に、経済産業省の「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金2022)」の対象ITツールに認定されるなど、有料課金サービスについては、個人・法人向け問わずに機能拡充を図りながら、契約件数を着実に積み上げ、広告収入以外の収益基盤を育成してまいります。

 コンテンツプラットフォームサービス上に掲載するアドネットワーク広告については、広告枠を提供したい数多くの広告媒体の運営事業者との間で、広告を出稿したい数多くの広告主を集めた広告配信ネットワーク(アドネットワーク(注2))が形成されるなど、関係者は増加傾向にあり、各事業者の関与の仕方は、複雑なものとなっております。このような事業環境の中で、新型コロナウイルス感染症の長期化に伴う不透明感から、一部の業界における国内の広告出稿量が減少傾向にあり、広告単価の下落の要因に繋がったことから、売上は伸び悩みました。

 以上の結果、コンテンツプラットフォームサービスの売上高は、421,103千円(前年同期比13.6%減)となりました。

<コンテンツマーケティングサービス>

 コンテンツマーケティングサービスでは、BtoB向けストック型ビジネスとして、CMS(注3)である「はてなブログMedia」を活用したオウンドメディア(企業が顧客などに向けて伝えたい情報を発信するための自社メディア)の構築・運用支援サービスや、「はてなブログ」などのUGCサービスを活用したネイティブ広告、バナー広告、タイアップ広告などを展開しております。

 当社が提供する「はてなブログMedia」について、上述の「はてなブログBusiness」と同様に、経済産業省の「サービス等生産性向上IT導入支援事業(IT導入補助金2022)」の対象ITツールに認定されるなど、大手企業、ベンチャー企業を問わず、幅広い企業層に対してサービス提供実績を積み上げてまいりました。

 デジタルマーケティングを目的としたオウンドメディアの開設が活発化している昨今の市場環境において、フルサービスを提供する「レギュラープラン」はもとより、「ライトプラン」という販売価格面での戦略的提示により、顧客のオウンドメディアの新規開設を推進したことや、「採用オウンドメディアプラン」として、自社で求める人材の獲得や、働き方改革に関する情報発信や社員インタビューなど、採用マーケティングの一環として、素早く安価にオウンドメディアを立ち上げられるプランを訴求し、顧客サイドのオウンドメディアの導入障壁をさらに押し下げた結果、新規導入のメディア数が増加しました。一方で、業績の悪化を受けて採用ニーズが縮減し、採用マーケティングをとりやめる顧客も一部にみられるなどしたことから、「はてなブログMedia」の運用数合計は142件(前期末比9件の増)となりました。また、一部の個別案件において広告・マーケティング予算が縮減されて、広告出稿の手控えにより継続的な受注に至らなかったことなどから、厳しい販売環境となりました。メディア当たり売上単価の向上施策として、公式SNS運用やメディアコンサルティングなどのサービスを拡充していくほか、記事制作や記事広告などのサービスに対する費用対効果を可視化していくことで、売上成長を図ってまいります。

 以上の結果、コンテンツマーケティングサービスの売上高は、697,716千円(前年同期比12.3%減)となりました。

<テクノロジーソリューションサービス>

 テクノロジーソリューションサービスでは、受託サービスとして、顧客独自のネットワークサービスに関する企画、開発、運用の受託と、ビッグデータサービスとして、BtoB向けストック型ビジネスであるサーバー監視サービス「Mackerel(マカレル)」を展開しております。

 Webマンガサービスに向けたマンガビューワ「GigaViewer for Web」については、「モーニング・ツー」(サービス提供者:㈱講談社)、「月マガ基地」(サービス提供者:㈱講談社)の2サービスに搭載され、合計15社、搭載累計21サービスとなりました。アプリマンガサービスに向けたマンガビューワ「GigaViewer for Apps」については、前事業年度において、初めて1サービスに搭載され、Web版、アプリ版の両輪により、売上は堅調に推移いたしました。出版業界の調査研究機関である公益社団法人全国出版協会・出版科学研究所の発表によると、紙媒体と電子媒体を合わせた出版市場は、2022年において、前年比2.6%減の1兆6,035億円となり微減となったものの、電子コミックは前年比7.5%増の5,013億円と市場規模が拡大しております。このような市場環境において、「GigaViewer for Web」、「GigaViewer for Apps」の利便性や広告運用を含めたソリューションは、顧客から評価されており、Web版、アプリ版ともにデファクトスタンダードの位置を築き上げるべく、Web版導入メディアに対して、アプリ版の導入を推進してまいります。また、開発・運用料のみならず、レベニューシェア(広告・課金収益など)の収益拡大にも注力してまいります。

 受託サービスについては、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間が、ごく短い場合の受託開発案件については、完全に履行義務を充足した一時点で収益を認識しました。ごく短い場合を除いた受託開発案件については、履行義務の充足につれて一定期間にわたり収益を認識しました。任天堂㈱のNintendo Switch™ソフト『スプラトゥーン3』のゲーム連動サービスである「イカリング3」のサービス開発など、複数の受託開発案件で成果物の納品及び検収が完了しました。保守運用サービスでは、運用案件数の積上げにより、売上成長に繋がりました。

 「Mackerel(マカレル)」については、AWS(アマゾンウェブサービス)のパートナー制度「AWS パートナーコンピテンシープログラム」において、「AWS DevOps コンピテンシー」認定を、当社が国内企業で初めて取得しております。さらに、「AWS Partner Network(APN)Award2019」において、「Mackerel(マカレル)」を通じたAWSへのビジネス貢献が評価され、「APN Technology Partner of the Year 2019 - Japan」を受賞いたしました。これにより、AWSの中で、サーバー監視サービスとしての認知度が向上し、当事業年度においても、更なる導入実績の積上げを図ることができました。今後は、AWSなどの大手クラウドプラットフォーマーのサービスを活用している顧客が、「Mackerel(マカレル)」を簡単に利用、運用しやすくなる「インテグレーション機能」をさらに充実させることで、利用開始の心理的ハードルの引き下げに注力していくとともに、販路拡大のためのパートナー拡充にも継続的に取り組んでまいります。2022年11月においては、AWSのパートナー制度「AWS Graviton Ready」においても同様に、当社が国内企業で初めて認定を取得するなど、大型顧客の獲得やパートナーセールスを主軸とした販売戦略により、更なる売上成長を図ってまいります。

 以上の結果、テクノロジーソリューションサービスの売上高は、2,031,470千円(前年同期比14.1%増)となりました。

 

(ⅱ)利益の概況

 当事業年度を将来の成長基盤の更なる強化に向けた『先行投資期間』と位置づけ、費用投下いたしました。

 営業費用(売上原価と販売費及び一般管理費の合計)については2,976,888千円(前年同期は2,738,273千円)となりました。営業費用は増加しておりますが、概ね期初計画の範囲内であります。

 主な増減要因としては、東京オフィスのフロア一部返室及び京都オフィスの移転に伴う賃借料の減少や、フレキシブルワークスタイル制度の恒久化に伴う諸管理費用の減少があった一方、テクノロジーソリューションサービスにおける広告運用売上の増加に伴って発生する広告運用原価や、主要3サービスの拡張と新たなサービスの創出のため、人材投資を積極的に行った結果、給与手当等の労務費が増加しました。人的資本への経営資源の配分は、当社が将来にわたり、競争優位性を確保するために、収益基盤の確立に向けた重要投資として位置づけております。また、外貨建決済が必要なデータセンター利用料について、サービスの伸長に伴う外貨建の利用料そのものの伸長要因と、足元の為替相場について、円安トレンドが継続していることから、外貨建の利用料を円換算した場合の円ベースでの押上要因が相まって、費用増加となりました。為替相場は、為替介入が複数回実施されたことや、日本銀行が金融政策決定会合において長期金利の許容変動幅を拡大すると発表したことを受け、ますます不確定要素が強くなっております。これら外的要因に備え、外貨建予定取引については、一定のタイミングでの為替予約や通貨オプションなどのデリバティブ取引を活用し、急激な為替変動に対するヘッジ行為を適切に行ってまいります。

 営業外損益や特別損益については、受取利息及び配当金1,862千円の計上、為替差益9,793千円の計上、当座貸越契約の実行に伴う支払利息606千円の計上、譲渡制限付株式報酬の付与対象者の退職に伴い、譲渡制限付株式割当契約に基づき割り当てた当社普通株式の全てを、当社が無償取得したことによる株式報酬費用消滅損2,850千円、東京オフィスのフロア一部返室に伴う固定資産除却損13,716千円などがありました。

 以上の結果、当事業年度の売上高は3,150,290千円(前年同期比2.8%増)、営業利益は173,402千円(同46.6%減)、経常利益は182,042千円(同46.9%減)、当期純利益は99,638千円(同58.5%減)となりました。

 なお、当社はUGCサービス事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

(注)1.User Generated Contentの略。インターネット上で利用者自身がテキストや画像、映像などのコンテンツを発信することができる場を提供するサービス。

2.アドネットワークとは、多数の広告媒体のWebサイトを束ねた広告配信ネットワークを形成し、それらのWEBサイト上で一括して広告を配信する手法であり、メディア運営者は、サイトページ上に広告枠のみをアドネットワーク事業者に提供し、掲載される広告が、システムにより自動配信される仕組み。

3.Contents Management Systemの略。HTMLやCSSのようなWEBサイトの制作に必要な専門知識を必要とせず、テキストや画像などの情報を入力するだけで、サイト構築を自動的に行うことができるシステム。

 

(ⅲ)当社を取り巻く経営環境や想定されるリスクなど

 『2022年 日本の広告費』(㈱電通)によりますと、インターネット広告費について、「前年に続く社会のデジタル化を背景に、前年比114.3%の2桁成長となった。総広告費におけるインターネット広告費(インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費の合算)の構成比は43.5%となり、2兆円超えの2019年よりわずか3年で約1兆円増加し、3兆円規模の市場となった」とされております。インストリーム広告を中心とした動画広告需要は、前年に続き高まっており、デジタルプロモーションの拡大も市場の成長に寄与しております。

 一方で、原材料価格の高騰、物流・供給の規制及び遅延等、今後の事業環境、雇用情勢などの先行きに対する不透明感から、広告出稿の取止めや予算縮小が当社の業績に与える可能性は、依然としてあります。当社を含め、広告媒体社の業績は、景気によって広告支出を増減させる広告主の動向により、景気変動の影響を受けやすい傾向にあります。これに伴い、広告支出額の比較的大きい産業部門の事業環境の変化が、今後の当社の業績に意図に反する影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社が保有するサービス開発力を、「はてなブログ」や「はてなブックマーク」などにおける機能開発や機能改善へ投下することにより、訪問者数の拡大を狙い、その結果として、有料オプション「はてなブログPro」の課金収入の伸長の実現や、ユーザー企業独自のネットサービスに関する企画、開発、運用を受託するサービス領域などで効果的に展開し、新たな収益機会の獲得を見込んでおります。そのために、売上の立ち上がりを見通しつつ、新たな収益基盤の確立に向けた戦略的投資を継続してまいります。

 経済的不透明感や危機感が継続することが予想される経営環境の中で、当社の資金の財源及び流動性については次のとおりであります。また、事業継続に対して万全の備えをする方針であります。

 当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動により獲得したキャッシュ・フローでありますが、資金の手元流動性については、現金及び預金1,482,240千円と月平均売上高に対し5.6ヶ月分であり、現下、当社における資金流動性は十分確保されていると考えております。

 また、当社は事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本的な財務方針としており、金融機関からの借入により調達することを目的として、取引銀行5行との間で、総額1,700,000千円の当座貸越契約を締結しております。バックアップラインを確保し、資金の手元流動性の補完が実現しております。今後は、運転資金や設備投資の需要動向や、それに伴うキャッシュ・ポジションを精査しつつ、適切なタイミングで資金調達を実行してまいります。

 なお、当座貸越契約の未実行残高は、1,700,000千円となっております。

 

 

 

 

 

(2)キャッシュ・フローの状況

当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、245,226千円減少し、

1,390,609千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は2,584千円(前年は327,357千円の収入)となりました。

これは主に、増加要因として、税引前当期純利益166,235千円の計上があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は158,280千円(前年は43,917千円の支出)となりました。

 これは主に、減少要因として、定期預金の預入による支出87,284千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は97,141千円(前年は52,197千円の支出)となりました。

 これは主に、減少要因として、自己株式の取得による支出117,179千円があったことによるものであります。

 

   (3)生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績

 当社は生産を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(b)受注実績

 当事業年度の受注実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。

サービスの名称

当事業年度

(自 2022年8月1日

 至 2023年7月31日)

受注高

(千円)

前年同期比

(%)

受注残高

(千円)

前年同期比

(%)

テクノロジーソリューションサービス

659,445

99.8

349,750

116.8

合計

659,445

99.8

349,750

116.8

 (注)1. 金額は、販売価格によっております。

2. コンテンツプラットフォームサービス、コンテンツマーケティングサービスは受注によらないため、記載はしておりません。

3.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。

 

(4)販売実績

 当事業年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。

サービスの名称

前事業年度

(自 2021年8月1日

至 2022年7月31日)

当事業年度

(自 2022年8月1日

至 2023年7月31日)

販売高(千円)

コンテンツプラットフォームサービス

487,389

421,103

コンテンツマーケティングサービス

795,489

697,716

テクノロジーソリューションサービス

1,780,300

2,031,470

合計

3,063,179

3,150,290

 

 (注)1.当社は単一セグメントであるため、サービスごとに記載しております。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2021年8月1日

至 2022年7月31日)

当事業年度

(自 2022年8月1日

至 2023年7月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

ストライプジャパン株式会社

292,751

9.6

295,630

9.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

(1)重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、決算日における資産・負債の報告数値及び報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行わねばなりません。経営者は、債権、棚卸資産、投資、繰延税金資産等に関する見積り及び判断について、継続して評価を行っており、過去の実績や状況に応じて合理的と思われる様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っております。また、その結果は資産・負債の簿価及び収益・費用の報告数字についての判断の基礎となります。実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、これらの見積りと異なる場合があります。 財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものについては、

「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであり

ます。

 

 

(2)当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、当社が重視している経営指標は、売上高、営業利益及び経常利益であります。

 主要3サービスのシナジー効果を最大限に活用しつつ、売上高、営業利益及び経常利益を継続的に成長させることにより、企業価値の向上、株主価値の向上を目指してまいりました。当社は、経営方針に則った業績目標について、2022年9月13日に業績予想値を公表、2023年5月31日に業績予想値を修正いたしました。当社が定める経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況については次のとおりです。

 なお、経営成績の分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

(単位:百万円)

 

区分

売上高

営業利益

経常利益

当期純利益

業績予想値(A)

3,187

223

222

145

実績(B)

3,150

173

182

99

増減(B-A)

△37

△50

△40

△46

増減率(%)

△1.2

△22.4

△18.0

△31.6

 

 当社の資本の財源及び資金の流動性については次のとおりであります。当社における事業活動のための資金の財源として、主に手元の資金と営業活動によるキャッシュ・フローによっております。資金の手元流動性については現金及び預金1,482,240千円と月平均売上高に対し5.6ヶ月分であり、当社における資金の流動性は十分確保されていると考えております。なお、当事業年度末時点において、有利子負債残高はありません。

 運転資金需要のうち主なものは、人件費やデータセンター利用料等の営業費用、法人税等の税金費用であります。また、投資を目的とした資金需要の主なものは、ITインフラ設備や事務所設備等の設備投資であります。

 当社は、事業運営上、必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。そのため、より一層の事業拡大を継続することに備え、金融機関からの借入により調達することを目的として、取引銀行5行との間で、総額1,700,000千円の当座貸越契約を締結しております。借入に関しては、経常的な運転資金需要の場合には、短期借入を基本方針とし、多額の設備投資需要の場合には、長期借入を基本方針としております。また、金利コストの最小化を図れるような調達方法を検討し、対応してまいります。

 また、当社は、フリーキャッシュ・フローを営業活動により獲得されたキャッシュ・フローと投資活動により支出されたキャッシュ・フローの合計と定義しております。当社の経営者は、この指標を戦略的投資または負債返済に充当可能な資金の純額、あるいは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、投資家に有用な指標であると考えており、以下の表のとおり、フリーキャッシュ・フローを算出しています。

(単位:千円)

区分

前事業年度

(自 2021年8月1日

   至 2022年7月31日)

当事業年度

(自 2022年8月1日

   至 2023年7月31日)

増減

営業活動によるキャッシュ・フロー

327,357

2,584

△324,773

投資活動によるキャッシュ・フロー

△43,917

△158,280

△114,362

フリーキャッシュ・フロー

283,440

△155,695

△439,135

 

 なお、経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

 

 

(3) 財政状態の分析

(資産)

 流動資産は2,283,076千円となり、前事業年度末に比べ、99,975千円減少いたしました。

 これは主に、減少要因として、現金及び預金が220,915千円減少したことによるものであります。

 

 固定資産は598,112千円となり、前事業年度末に比べ、7,685千円増加いたしました。

 これは主に、増加要因として、投資有価証券が34,061千円増加したことによるものであります。

 

(負債)

 流動負債は353,262千円となり、前事業年度末に比べ、124,668千円減少いたしました。

 これは主に、減少要因として、未払費用が46,936千円減少したことによるものであります。

 

 固定負債は39,326千円となり、前事業年度末と比べ、11,339千円減少いたしました。

 これは、減少要因として、資産除去債務が11,339千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

 純資産は2,488,600千円となり、前事業年度末に比べ、43,719千円増加いたしました。

 これは主に、増加要因として、資本金及び資本準備金がそれぞれ10,019千円増加したこと、当期純利益を99,638千円計上したことによるものであります。

 

(4) 経営成績等の状況に関する分析

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

(売上高)

 当事業年度の売上高は、3,150,290千円(前年同期は3,063,179千円)となりました。

 これは主に、テクノロジーソリューションサービスにおける受託開発売上や保守運用売上、「Mackerel(マカレ

ル)」サービス売上が堅調に推移したことによります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は、536,031千円(前年同期は414,181千円)となりました。

 これは主に、自社利用目的のソフトウエアの計上に伴い、ソフトウエアの減価償却費が増加したこと、広告レベニューシェアに伴う収益配分原価が増加したことによるものであります。

 この結果、当事業年度の売上総利益は、2,614,258千円(前年同期は2,648,998千円)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度の販売費及び一般管理費は、2,440,856千円(前年同期は2,324,091千円)となりました。

 これは主に、役員報酬や給料及び手当、及び法定福利費の増加によるものであります。

 この結果、当事業年度の営業利益は、173,402千円(前年同期は324,906千円)となりました。

 

(営業外損益、経常利益)

 当事業年度の営業外収益は、12,669千円(前年同期は18,754千円)となりました。

 これは主に、為替差益9,793千円の計上があったことによるものであります。

 当事業年度の営業外費用は、4,028千円(前年同期は1,025千円)となりました。

 これは主に、支払利息606千円の計上があったことによるものであります。

 この結果、当事業年度の経常利益は、182,042千円(前年同期は342,635千円)となりました。

 

(特別損益、当期純利益)

 当事業年度の特別利益は、564千円(前年同期は1,248千円)となりました。

 これは、固定資産売却益564千円の計上があったことによるものであります。

 当事業年度の特別損失は、16,371千円(前年同期は15,406千円)となりました。

 これは主に、固定資産除却損13,716千円の計上があったことによるものであります。

 この結果、当事業年度の当期純利益は、99,638千円(前年同期は240,222千円)となりました。

 

(投下資本利益率、株主資本利益率)

 税引後営業利益(NOPAT:営業利益×(1-実効税率))は、120,306千円となり、投下資本(自己資本+有利子負債:期中平均)2,458,444千円に対する利益率(ROIC)は、4.7%となりました。また、株主資本利益率(ROE)は、4.0%となりました。株主資本コストと負債コストの加重平均(WACC)は、4.0%と認識しており、ROE、ROICの維持・向上によって株主資本に対する利益率(ROE)の維持・向上に努めてまいります。

 

 

2022年7月期

2023年7月期

税引後営業利益(NOPAT)(千円)

225,419

120,306

投下資本利益率(ROIC)(%)

9.1

4.8

加重平均資本コスト(WACC)(%)

3.9

4.0

 

 

 

(5) キャッシュ・フローの状況の分析

当事業年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前事業年度に比べ、245,226千円減少し、

1,390,609千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果、獲得した資金は2,584千円(前年は327,357千円の収入)となりました。

これは主に、増加要因として、税引前当期純利益166,235千円の計上があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は158,280千円(前年は43,917千円の支出)となりました。

 これは主に、減少要因として、定期預金の預入による支出87,284千円があったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は97,141千円(前年は52,197千円の支出)となりました。

 これは主に、減少要因として、自己株式の取得による支出117,179千円があったことによるものであります。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2022年7月期

2023年7月期

自己資本比率(%)

82.2

86.4

時価ベースの自己資本比率(%)

127.5

91.7

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

629.0

4.3

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1.株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

2.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

3.有利子負債がないため、キャッシュ・フロー対有利子負債比率は記載しておりません。

 

(企業価値・キャッシュ創出力)

キャッシュ創出力を示す減価償却前の営業利益(EBITDA:償却前営業利益=営業利益+減価償却費)は、287,158千円となっており、キャッシュを生み出す力は着実に成長しております。

今後についても、運転資金の確保のための有利子負債の水準を一定程度に維持しつつ、人材投資やインフラ投資を行う方針を継続するとともに、主要3サービスにおける収益の柱を成長させることで、キャッシュ創出力を高め、企業価値を向上させてまいります。

2023年7月末の企業価値(EV:時価総額+ネット有利子負債)は、2,643,167千円となっております。企業価値とキャッシュ創出力の倍率を示すEV/EBITDA倍率は、9.2倍となっております。

 

(6) 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(7) 戦略の現状と見通し

 当社は『「知る」「つながる」「表現する」で新しい体験を提供し、人の生活を豊かにする』をミッションに掲げ、「技術で支えられているサービスを提供する会社」として技術を磨き、インターネット領域において様々なサービス提供を行っております。

 当社は今後も拡大されることが予想されるIT市場において、競争優位性を確保するために、顧客企業に対して高付加価値を提供するサービスの創造に鋭意努めてまいります。また、より強固なポジションを獲得するために、開発体制及び営業体制の強化を重要な戦略と認識し、事業の拡大に取り組んでまいります。

 

(8) 経営者の問題意識と今後の方針について

 当社が今後業容を拡大し、より高品質なサービスを継続提供していくためには、経営者は「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社の経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。

 

(9) その他会社の現況に関する重要な事項

 当社は、企業の社会性を認識し、社会貢献活動を重要な責務として捉え、以下のCSR活動を実施しております。

 「預金を通じて、困っている人や団体を支援する」という活動のもと、SDGsに貢献できる預金として「応援定期預金」を作成することで、定期預金の預入残高に一定割合を乗じた金額を、取引先金融機関が、応援先(こどもの医療支援、こどもの自立支援、障がい者スポーツ支援、環境保護の4つのテーマから選定)に寄付しております。寄付を通じて、重い病気や障がい等で長期入院するこどもたちを支援するなど、「支え合う気持ち」を繋いでまいります。

 発行額の0.15%を、新型コロナウイルス感染症による影響を受けたこどもたちへの支援を行う団体への緊急支援及び経済的に困難な状況下のこどもたちを支える団体の基盤づくり(組織のデジタライゼーションや事業のオンライン化を含む)への寄付にそれぞれ充当する新発債券の購入により、間接的に中長期的な支援をしました。

 脱炭素社会の実現のため、取引金融機関が販売するESG志向の投資信託を購入し、信託報酬の一部を植樹プロジェクトに間接的に寄付することで、苗木を植えることができました。苗木は森林組合により保育管理され、いずれ大きな森へと成長すると思われ、サステナブルな社会の実現を支援してまいります。

(注)CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略。持続可能な社会形成を目的として、企業が経済活動に加えて、社会や環境などの要素に向けても責任ある活動をすべきであるという概念。