2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 2,154 100.0 -294 100.0 -13.7

事業内容

3【事業の内容】

 当社は、お客様相談室または製品問い合わせセンター等のコールセンター部門や販売促進活動を行うマーケティング部門を所有するクライアントを対象に、クラウドサービスの開発と提供を行っております。コールセンター運営に必須であるIP(※1)電話交換機システムや顧客情報管理システムの他、業務効率化を促進する各種システム等、企業とユーザーとのコミュニケーションデータをシームレスにつなげるクラウドサービスを、インターネット網を介して月額料金制で提供しております。

 クラウドサービスは、企業が個別にシステム構築をするのではなく、同じシステムをインターネット経由で共同利用することにより大規模な設備投資が不要になるとともに、導入コストの低減及び導入期間の短縮が可能となります。また、業務の変動に合わせ「必要なときに必要な分だけ」利用できるため、コストの最適化を実現できます。さらに、導入後に専門のエンジニアが必要となるシステム保守やバージョンアップなどの運用・管理作業も、月額費用の範囲内で当社にて対応しております。

当社サービスの利用イメージは、次のとおりであります。クライアント企業は当社が開発したサービスを利用して、エンドユーザー向けのコールセンターサービスを提供することが可能となります。

 

 

 当社のサービスは、テレマーケティング事業者やBPO事業者を中心に、メーカー、小売、金融等、様々で、5席前後の小規模コールセンターから300 席超の大規模コールセンターまで規模を問わず、豊富な導入実績をもっております。また、コールセンターに必要なサービスはすべてワンストップで提供できる体制をとっており、クライアントのサービス導入にかかる手間や初期コストを抑え、簡易にシステムを連動させることが可能です。

 また、これまでの導入実績から多くのナレッジを蓄積しており、システム構築のみならず、通信事業者とのスケジュール調整等の導入時のサポートや業務開始後の統計レポート分析等の業務改善サポートを併せて実施しており、クライアントに密着したサービス提供を行うことで、企業の生産性向上や業務効率改善に貢献しております。

 

当社のクラウドサービスは、以下のサービスから成り立っております。

なお、当社は単一セグメントとしてクラウドサービス事業を営んでおり、セグメントごとの記載はしておりません。

 

 

■IP電話交換機システム(PBX/CTI(※2))

(1)@nyplace(エニプレイス)

 世界・国内コンタクトセンター市場でトップクラスのシェアを誇るAVAYA(※3)社製IP電話交換機を採用しており、高機能で堅牢性と安定性が特徴のハードフォン型コールセンターシステムであります。なお、在宅勤務下でも利用可能なソフトフォン型(※4)も選択可能です。また、オプションとしては、通話録音システム「Packet Folder」やAI 技術を搭載したリアルタイム音声認識システム「AmiVoice Communication Suite provided by コラボス」の提供も行っており、通話内容の自動テキスト化や感情認識による通話品質自動評価などの機能もご利用いただけます。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用席数の変更、オプション機能の追加、通話実費等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(2)COLLABOS PHONE(コラボスフォン)

 主に小・中規模コールセンター向けに、Asterisk(※5)ベースで開発した自社開発のコールセンターシステムであります。パソコンとインターネット環境があれば手軽に利用できるため、「@nyplace」よりも低価格、短納期での導入が可能でありながら、「@nyplace」と同等の基本機能を搭載しており、低コストで本格的なコールセンターシステムを導入できます。電話機本体は不要で、在宅勤務下でも利用可能なソフトフォン型で提供しております。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用プランの変更、オプション機能の追加、通話実費等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(3)VLOOM(ヴルーム)

 プラットフォームにAWS(※6)を採用した完全冗長化構成の自社開発AIコールセンターシステムであります。顧客とオペレーターの通話をリアルタイムで音声認識し、通話をテキスト化する機能や通話の自動要約機能を搭載しており、AI技術を活用したコールセンター運営により、業務の効率化を実現します。また、オペレーターと管理者間の情報伝達を円滑にするテキストチャット機能搭載のほか、マルチデバイス対応やロケーションフリーによる利便性の高さも兼ね備えております。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用プランの変更、オプション機能の追加、通話実費等によって、月額利用料が変動いたします。

 

■顧客情報管理システム(CRM)

(4)COLLABOS CRM(コラボスCRM)

 お客様から電話を受ける受電型のコールセンター業務に特化した顧客情報管理システムであります。インターフェイスを特徴としており、電話、メール対応、Web問い合わせの一括管理が可能なほか、オプションとして、発信者の顧客情報を画面上に自動表示させるポップアップ機能等も搭載しております。また、「@nyplace」や「COLLABOS PHONE」と併せて提供することで、業務効率化や顧客満足度向上を図ることが可能であります。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更、オプション機能の追加等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(5)COLLABOS CRM Outbound Edition(コラボスCRM アウトバウンド エディション)

 テレセールスなど発信型のコールセンター業務に特化した顧客情報管理システムであります。架電先リストの作成や架電結果レポートをはじめ、アウトバウンド業務に特化した機能を搭載しております。オプションとして、「@nyplace」や「COLLABOS PHONE」と併せて利用することで、架電先へ自動発信し、不応答の場合は自動的に次の架電を行うプログレッシブ機能等も搭載しており、手作業での架電作業と比べて効率化を実現できます。主に、サービスサポートのフォローコール業務、テレマーケティング業や金融業のアウトバウンド業務に提供をしております。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更、オプション機能の追加等によって、月額利用料が変動いたします。

 

■業務効率化を実現する付加的サービス

(6)GROWCE(グロウス)

 顧客情報管理(CRM)システムにマーケティングの機能を搭載した統合CRMマーケティングシステムであります。コールセンターで収集した顧客情報や応対内容等のオフライン情報と、Webマーケティング部門に集まるサイト閲覧履歴や一斉配信メール後の開封率等のオンライン情報を一元管理することが可能で、コールセンターで収集した情報をマーケティング活動に繋げることで、コールセンターの売上向上に貢献します。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更、オプション機能の追加等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(7)UZ(ウズ)

 独自開発AIエンジンを搭載したAIマーケティングシステムであります。コールセンターで蓄積される「通話録音データ(顧客の声)」から顧客の興味・関心をAIで解析し、「興味関心キーワード」を抽出し、その抽出結果を基に生成AIの活用により、広告テキストやメルマガ、トークスクリプト等が自動作成されるシステムです。ChatGPTと連携させることで、抽出した「興味関心キーワード」を基に、簡単に様々な例文が作成可能になり、効果的なVOC分析(※7)やマーケティング施策の実施に大きく貢献します。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、アップロードする通話録音データ量(時間)に応じた月額プラン型を採用しております。

(8)GOLDEN LIST(ゴールデンリスト)

 AIによる顧客分析・予測を備えたデータマイニングツールであります。企業が保有する購買履歴等の顧客データを当社独自の統計解析技術で解析・分析することにより、購買意欲の高い顧客へ向けた効果的かつ効率的なアウトバウンド施策の実行が可能になります。ダイレクトメール送付やアウトバウンドコールにおける費用対効果の向上のほか、休眠顧客の復活や解約予兆の事前察知等、様々な局面で効果を発揮します。

 価格体系は、解析するデータ件数によるプランごとの従量課金制のほか、月額料金制を採用しております。

 

(9)AmiVoice Communication Suite provided by コラボス

(アミボイス コミュニケーション スイート プロバイデッド バイ コラボス)

 AI技術を搭載したリアルタイム音声認識(※8)システムであります。通話内容を自動でテキスト化し回答候補を表示することで、応答速度の向上を実現するほか、感情認識による通話品質の自動評価も可能となります。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用席数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(10)Packet Folder(パケットフォルダー)

 高精度な「@nyplace」用音声通話録音システムであります。パケットキャプチャ方式(※9)を採用しているため、通話単位で正確な録音が可能となり、音声ファイルの検索もでき、通話品質の向上を実現できます。

 価格体系は、設計・設定等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、利用席数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(11)Afullect(アフレクト)

 コンタクトセンターにおいて、瞬間的に呼量(※10)が増加し、電話がつながらない状態となる「あふれ呼」を防止するためのサービスであります。あふれ呼の収集・分析が可能で、あふれ呼時のIVR(※11)や留守録機能、SMS送信等の自動応答機能を搭載しており、機会損失を可能な限り防止するコールバック支援システムであります。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、月額利用課金型を採用しており、電話番号数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(12)Challbo(チャルボ)

 有人・無人の切替が可能なチャットボットシステム(※12)であります。1人のオペレーターが複数の業務を請け負う場合を想定し、使いやすさを重視し、同一アカウントで複数のサイトを同時に対応することが可能です。

 価格体系は、アカウント発行等に係る初期費用に加え、プランごとの月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

(13)CollasQ(コラスク)

 社外向け、社内向けの両方で利用できるFAQ(※13)情報蓄積システムであります。頻度の高い問い合わせとその回答内容を企業ホームページのよくある質問として外部公開することで、ユーザーの自己解決を促したり、内部FAQとして、オペレーターが回答する際の検索システムとしての利用が可能です。

 価格体系は、プランごとの月額利用課金型を採用しており、利用ID数の変更等によって、月額利用料が変動いたします。

 

〔用語解説〕

※1.IP

インターネット上で通信相手を特定するためのIPアドレスに基づいて、パケット(データ通信ネットワークを流れるデータの単位で、伝送されるデータ本体に送信先の所在データなど制御情報を付加した小さなまとまり)を宛先ネットワークやホストまで届ける(ルーティング)ためのプロトコル。

※2.CTI

コンピュータと電話・FAXを統合する技術のこと。企業で利用しているPBX(構内電話交換機)のほか、CRMシステム(顧客管理システム)やSFA(営業支援ツール)を連携させることで、コールセンターなどの電話対応業務を効率化できる。

※3.AVAYA

アメリカ合衆国の通信、ネットワーク機器メーカー。IP電話交換機、IP電話製品、コールセンター向けソフトウエア等の一連の企業向けコンタクトセンターソリューションを主力製品として提供しており、IP電話交換機製品において国内外に多くの実績がある企業のこと。

※4.ソフトフォン

固定電話やビジネスフォンなどの専用電話機(ハードフォン)を使用せず、パソコンなどに専用のソフトをインストールして、イヤホンとマイクを使用し、インターネットを介して通話をする電話のこと。

※5.Asterisk

アメリカ合衆国のDigium,Inc.が開発しているオープンソースのIP電話交換機システムのソフトウエア。

※6.AWS

Amazon Web Services, Inc.により提供されるクラウドコンピューティングサービス。

※7.VOC分析

顧客の意見や声を収集・分析して企業活動に活かす分析手法。

※8.音声認識

音声情報と言語情報を組み合わせることで、音声を文字に変換する技術。

※9.パケットキャプチャ方式

ネットワーク上に流れるトラフィックのパケットを収集すること。

※10.呼量

ある一定の時間内に電話をかけたり受けたりした回数のこと。

※11.IVR

コンピュータによる音声自動応答システムのこと。営業時間外も電話対応を行うことができる。

※12.チャットボット

「チャット(chat)」と「ボット(bot)」を組み合わせた言葉で、AIを活用した自動会話プログラム。「チャット」は、インターネットを利用したリアルタイムコミュニケーションのことで、主にテキストを双方向でやり取りする仕組み。

※13.FAQ

よくある質問とその回答を集めたもののこと。

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行により経済活動の正常化が進み、個人消費やインバウンド需要の回復が見られるほか、好調な企業収益や人手不足感を背景に雇用所得環境の改善やデジタル化の推進等によるソフトウエア関連の投資拡大など、景気は緩やかな回復基調にあります。一方で、海外景気の下振れ、ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢悪化に伴う原材料及びエネルギー価格の高騰、記録的な円安や物価上昇の影響等、依然として先行きは不透明な状況となっております。

当社を取り巻く国内クラウド型コールセンター市場におきましては、数年ごとに大規模なシステム投資が必要なオンプレミス型(※1)から拡張性が高いクラウド型(※2)への移行が引き続き顕著化しており、今後については、特に大規模案件のクラウド型への移行が一層加速すると見込まれております。また、コールセンターの対応窓口が電話だけでなく、メール、チャット、問い合わせフォーム、SNS等へマルチチャネル(※3)化していることに加えて、生産年齢人口の減少や労働力不足から、コールセンター業務をアウトソーシング化する動きも拡大しております。さらに、昨今においては、ChatGPTに代表される生成AI(コンピュータが学習したデータから、新たなデータや情報を自動生成する技術)を活用した製品やサービスが急速に増えるなか、コールセンターシステムの動向についても、AIによる自然言語処理能力を活用した要約機能やVOC分析等の先端的機能に注目が集まっており、コールセンターの役割が「コストセンター」から収益を生みだす「プロフィットセンター」へ本格移行する過渡期に入ったとの見方も強まっております。

 

このような環境のもと、当社は、2023年5月10日に開示した「中期経営計画(2024年3月期~2026年3月期)」に基づき、成長投資を収益へつなげる販売拡大フェーズとして以下の成長戦略を推進してまいりました。

 

①「@nyplace」の安定成長

新機能及びサービス対応範囲の拡張、基盤強化、SIP対応や他システムとの連携強化を実現させるため、交換機のシステムバージョンアップを実施し、既存顧客の移行計画をスタートしております。また、サービス提供における作業の自動化や効率化による体制の最適化及び経営資源の再配置を進めております。

 

②独自サービスの飛躍成長

2023年8月に音声認識、自動要約、スマホ対応、完全冗長構成等の機能を搭載したAIコールセンターPBX/CTIシステム「VLOOM」の提供を開始したほか、同年11月には、AI顧客分析・予測ツール「GOLDEN LIST」の大型バージョンアップを実施、さらに、同年12月には、急騰する生成AI活用のニーズに対応し、効果的なVOC分析やマーケティング施策に貢献する当社独自のAIマーケティングシステム「UZ」の提供を開始いたしました。これらサービスの提供とともに既存市場の深耕及び新規市場の開拓を推進しております。

 

 新規顧客獲得に向けた取り組みとしては、業界最大規模の展示会への出展、シナジー効果のある企業とのオンライン共催セミナー開催によるリード獲得、SEO対策やリスティング広告等のWeb施策等に注力してまいりました。また、他社サービスとの連携及び協業施策の推進においては、サービス力の強化及び販売チャネル拡大を目的としたAI CROSS株式会社及び株式会社WOW WORLDとの協業のほか、クラウドサービスとインターネット回線サービスのワンストップ提供を目的として、ソニービズネットワークス株式会社が提供する法人向けインターネット回線サービス「NURO Biz」の取り扱いを開始しました。

 既存顧客に向けた取り組みとしては、定期的なヒアリング訪問やアンケート調査活動、顧客ニーズを反映した要望機能開発やシステムバージョンアップ等のリテンション活動により、クロスセルやアップセルでの収益機会の拡大に注力してまいりました。

 

上記取り組みの一方、主に「@nyplace」における大型案件の減席等に伴う月額利用料の減少、また、「VLOOM」及び「GROWCE」等の新サービスにおいて、サービスリリースが当初の計画から遅延したことによる新規獲得見込み案件の機会損失や受注時期の後ろ倒し等による売上貢献の遅れが、当事業年度の業績に大きく影響している状況となっております。

 

 

 これらの結果、当事業年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて477,443千円減少し、1,752,183千円となりました。

当事業年度末における負債総額は、前事業年度末に比べて320,755千円増加し、647,399千円となりました。

当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて798,199千円減少し、1,104,784千円となりました。

 

b. 経営成績

当事業年度の経営成績は、売上高2,153,973千円(前事業年度比8.3%減)、営業損失294,326千円(前事業年度は営業利益101,439千円)、経常損失276,410千円(前事業年度は経常利益100,313千円)、当期純損失798,320千円(前事業年度は当期純利益67,861千円)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当事業年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前事業年度末に比べて75,719千円減少し、1,178,233千円となりました。

当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における営業活動の結果得られた資金は、104,179千円(前事業年度は165,681千円の収入)となりました。主な要因は、税引前当期純損失759,375千円の計上があった一方で、減価償却費287,086千円、減損損失483,164千円、法人税等の支払額19,643千円、賞与引当金の減少額21,200千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における投資活動の結果支出した資金は、360,694千円(前事業年度は344,909千円の支出)となりました。要因は、中期経営計画における@nyplace用設備への投資や新サービス及び現有サービスへのITソリューション開発投資等の有形及び無形固定資産の取得による支出360,694千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当事業年度における財務活動の結果得られた資金は、180,795千円(前事業年度は125,415千円の支出)となりました。主な要因は、長期借入れによる収入300,000千円の一方で、リース債務の返済による支出69,524千円及び長期借入金の返済による支出50,000千円によるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当社の主たる業務はクラウドサービス事業のため、生産活動を行っておらず、生産設備を保有していないため、記載を省略しております。

 

b. 受注実績

a. 生産実績と同様に、当社の主たる業務であるクラウドサービス事業の事業特性に馴染まないため、記載を省略しております。

 

 

c. 販売実績

当事業年度の販売実績について、当社の報告セグメントは単一セグメントでありますが、サービス別に示すと、下表のとおりであります。

サービスの名称

売上高(千円)

前年同期比(%)

@nyplace

1,392,146

87.5

COLLABOS PHONE

481,818

99.1

VLOOM

23,213

-

COLLABOS CRM

122,507

85.6

COLLABOS CRM Outbound Edition

28,819

83.6

その他

105,467

111.2

合計

2,153,973

91.7

(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前事業年度

当事業年度

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱カスタマーリレーションテレマーケティング

347,236

14.78

276,723

12.85

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 経営成績等

1)財政状態

(資産)

当事業年度末における総資産は、前事業年度末に比べて477,443千円減少し、1,752,183千円となりました。主な要因は、リース資産が増加した一方で、ソフトウエアの減損による無形固定資産の減少によるものであります。

 

(負債)

当事業年度末における負債は、前事業年度末に比べて320,755千円増加し、647,399千円となりました。主な要因は、長期借入金及び1年内返済予定の長期借入金の増加、リース債務の増加によるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べて798,199千円減少し、1,104,784千円となりました。主な要因は、利益剰余金が減少したことによるものであります。

 

2)経営成績

(売上高)

当事業年度における売上高は2,153,973千円(前事業年度比8.3%減)となりました。製品・サービスごとの状況は、以下のとおりであります。

・「@nyplace」につきましては、オンプレミス型からクラウド型へのリプレイス案件の獲得や業務拡大及び拠点移転に伴う契約数の増加があったものの、新型コロナウイルス関連のスポット公共案件の業務縮小やノンボイスチャネル増加に伴う電話問い合わせの減少による月額利用料の減少、また、前事業年度に受注した複数拠点のサーバリプレイスに伴う大型スポット案件の一時売上高の減少により、期間平均利用席数は6,352席(同1,251席減)、売上高は1,392,146千円(同12.5%減)となりました。

 

・「COLLABOS PHONE」につきましては、他社サービスとの連携、既存顧客からの紹介、価格優位性等による新規案件の獲得や既存顧客であるBPO事業者等の業務拡大に伴う通信売上の増加があった一方で、新型コロナウイルス関連のスポット公共案件の業務縮小に伴う月額利用料の減少等により、期間平均利用チャネル数は3,594チャネル(同130チャネル減)、売上高は481,818千円(同0.9%減)となりました。

・「VLOOM」につきましては、当初の計画からサービスリリースに遅れはあったものの、展示会出展やセミナー開催等による案件の引き合い、また、大型の新規案件の獲得等により、期間平均利用チャネル数は355チャネル(同-)、売上高は23,213千円(同-)となりました。

・「COLLABOS CRM」及び「COLLABOS CRM Outbound Edition」につきましては、新型コロナウイルス関連や行政関連のスポット公共案件の業務縮小等により、契約数が減少いたしました。これらの結果、インバウンド用(受信)の「COLLABOS CRM」につきましては、期間平均利用ID数は1,808ID(同434ID減)、売上高は122,507千円(同14.4%減)となり、アウトバウンド(発信)用の「COLLABOS CRM Outbound Edition」につきましては、期間平均利用ID数は465ID(同107ID減)、売上高は28,819千円(同16.4%減)となりました。

・その他、新サービス及び業務効率化等を実現する付加的サービスにつきましては、顧客情報管理(CRM)システムにマーケティングの機能を搭載した統合CRMマーケティングシステム「GROWCE」の新規案件獲得による契約数の増加やAI 顧客分析・予測ツール「GOLDEN LIST」における金融業界のマーケット開拓による新規案件獲得等により、売上高は105,467千円(同11.2%増)となりました。

 

(売上原価)

当事業年度の売上原価は、1,661,728千円(同13.5%増)となりました。主な要因としては、「@nyplace」の体制の最適化に伴う業務委託費や外注費の大幅なコスト削減があった一方で、新サービス「GROWCE」及び「VLOOM」のソフトウエア償却費等の先行コスト及び「@nyplace」のバージョンアップ及びエネルギー価格高騰に伴うホスティング費用の増加等によるものであります。サービス別の売上原価の内訳としては、「@nyplace」は、940,920千円(同1.5%減)、「COLLABOS PHONE」は、309,262千円(同3.1%減)、「VLOOM」は、153,205千円(同-)、「COLLABOS CRM」及び「COLLABOS CRM Outbound Edition」は、52,268千円(同13.4%減)、その他、新サービス及び業務効率化を実現する付加的サービスは、206,071千円(同59.8%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費)

当事業年度の販売費及び一般管理費は、786,570千円(同0.4%増)となりました。主な要因としては、本社移転に伴う家賃の減少及びオフィス資産の減価償却費の減少があった一方で、新サービスの開発に伴う業務委託費用や販売拡大のための広告費等の増加によるものであります。

 

以上の結果、営業損失は294,326千円(前事業年度は営業利益101,439千円)となりました。また、営業外収益として、当社システム開発における外部委託の開発遅延に伴う一部負担金17,091千円が発生したことにより、経常損失は276,410千円(前事業年度は経常利益100,313千円)となりました。加えて、当社の事業環境や事業状況の変化に伴い固定資産のグルーピングを変更したことにより、改めて「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき将来の回収可能性を資産グループごとに検討した結果、当初想定した期間での回収が困難であると判断したことから、ソフトウエア及びソフトウエア仮勘定の減損損失483,164千円を特別損失として、また、法人税等調整額(損)38,329千円等を計上したことにより、当期純損失は798,320千円(前事業年度は当期純利益67,861千円)となりました。

 

b. 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社は、設立以来、コールセンター向けクラウドサービスの提供を中心に事業を展開しており、コールセンターのシステム構築から運用における業務課題解決に向けたサポート、また、AIやデータ活用によるマーケティング支援に至るまで、企業の生産性向上や業務効率の改善、販売促進等に貢献すべくサービスの提供に努めております。

当社が属するクラウドサービス市場につきましては、2022年末のクラウドサービス利用企業の割合は前年末より1.8ポイント増加し、72.2%に及んでおり、上昇傾向が続いております。(出典:総務省「情報通信白書 令和5年版」)

また、クラウド型CRM市場の市場規模につきましては、2022年度に4,932億円(前年比20.5%増)となり、2022年度においてクラウド型とオンプレミス型の市場構成比は、54.8%対45.2%とクラウド型市場がオンプレミス型市場を逆転し、クラウド型のニーズが高く推移している状況となっております。

クラウド型市場が引き続き好調に伸びている要因といたしましては、オンプレミス型からクラウド型へのシフトがさらに加速されてきていることに加えて、新型コロナウイルス感染症の発生以降、一気に高まったテレワークへの移行ニーズが続いており、オンプレミス型のシステムに在宅基盤をクラウドで追加する需要も新たに加わり、定着化したことが要因として挙げられております。最近においては、これまで移行に慎重であった比較的大規模な案件のリプレイスも増加しており、クラウド型での導入が市場全体に浸透してきていることを背景に、2023年度以降も市場は年平均17.0%で成長し、2027年度には市場規模は1兆824億円、クラウド型とオンプレミス型の構成比は、78.9%対21.1%にまで広がるものと予測されております。(出典:デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社「マーテック市場の現状と展望2023年度版〈クラウド型CRM市場編〉」)

このような状況の中、当社が属するコールセンター市場は、慢性的な人材不足や市場動向に伴うマルチチャネル化への対応等が必要とされております。今後は、生成AIや音声認識技術等のIT技術の活用による既存業務の生産性向上や顧客対応の自動化が求められ、これらの技術革新は、コールセンターをはじめ、ITベンダー、BPOベンダーの全ての業務やビジネスに大きく影響するものと考えられます。近年においては、コールセンターのみならず、マーケティング活動や営業活動といった顧客接点の幅広い領域において、VOC(顧客の声)の活用が急拡大したことから、一時は停滞感のあったコールセンター業界においてもAI技術の導入が急速に進んでおり、人手不足の解消とともに、データ分析等の付加価値の高い事業領域へのシフトが顕著になるものと予想されます。

当社は、このような将来の自動化・AI化のニーズを先読みすべく、次世代のコールセンターシステムに関する知的システムの開発を進めてまいりました。一方、2024年3月22日に「特別損失(減損損失)の計上及び業績予想の修正並びに役員報酬の減額に関するお知らせ」にて開示しました通り、当社の拡充するサービスラインナップに対応するために固定資産のグルーピングを変更したこと、また、「VLOOM」及び「GROWCE」等の新サービスにおいてサービスリリース計画が遅延したことなどにより、新規獲得見込み案件の機会損失や受注時期の後ろ倒しが発生し、当初想定した計画期間内での回収の可能性が困難であると判断したことから、当事業年度においてソフトウエア及びソフトウエア仮勘定の減損損失を計上しております。

これにより、2024年3月期を初年度とする中期経営計画の進捗が後退することとなりましたが、中期経営計画において掲げる2つの柱からなる成長戦略に変更はなく、確実に実施していくことにより売上高に結びつけてまいります。加えて、この成長戦略に合わせたコスト構造及び運営体制へ見直していくことにより、早期に安定した収益基盤を確立できるよう推進してまいります。具体的な成長戦略及びコスト改善施策は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略」に記載のとおりであります。

 

c. 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は、事業活動の成果を示す売上高及びサービス別月次利用数を重要な経営指標としており、当事業年度における売上高は2,153,973千円(前事業年度比8.3%減)となりました。

サービス別売上高及び月次利用数の内訳は、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容 a. 経営成績等 2)経営成績」に記載のとおりであります。引き続き、これらの指標を拡大していくように取り組んでまいります。

 

d. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社の報告セグメントは、クラウドサービス事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当事業年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

a.資金需要の主な内容

当社の運転資金需要のうち主なものは、情報通信機器の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。

 

b.資金調達

当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や設備投資等の調達につきましては、自己資金、金融機関からの借入及びリースを基本としております。

なお、当事業年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は、441,763千円であります。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は、1,178,233千円であります。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。

この財務諸表の作成にあたり、資産・負債及び収益・費用の報告数値について影響を与える見積りは、過去の実績や状況に応じて、可能な限り合理的と考えられる根拠や要因等に基づき実施しております。しかしながら、これらの見積りについては不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 

〔用語解説〕

※1.オンプレミス型

企業が利用するシステムや設備等を自社で保有し自社で構築運用する仕組み

※2.クラウド型

企業自身では設備を持たずインターネット等のネットワークを経由してサービスを利用する仕組み

※3.マルチチャネル

電話やメールFAXWebの問い合わせフォームチャットSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等の複数の問い合わせ手段をもつこと