2023年12月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社は、コンプライアンス・リスク管理委員会の機能でリスクを把握し、管理する体制・枠組みを構築しております。体制・枠組みに関しては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 a.企業統治の体制の概要 ニ.コンプライアンス・リスク管理委員会」を参照ください。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 建設業界を中心とした顧客業界のソフトウェア投資の動向について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

当社が事業を展開するDXソリューション事業は、現在、建設業、流通小売業、インフラ業、運輸・交通業等の顧客の業務課題を解決することに注力しておりますが、それらの企業を取り巻く環境や労働人口減少に伴う生産性向上の必要性から、需要が拡大傾向にあると認識しております。しかしながら、国内外の景気動向の悪化等により、当該顧客のソフトウェア投資が大幅に抑制された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社では、建設業の顧客が他の業界よりも高い割合を占めていることから、当社の業績は建設業界における需要動向の影響を強く受ける傾向にあると認識しております。当該リスクに対応するため、当社では建設業界内でも特定顧客への依存や偏重が生じないように顧客開拓を強化してきているほか、建設業以外の顧客を増やすこと等により、リスクの「分散化」を図ってきております。しかしながら、国内外の景気動向の悪化等により、建設業界におけるソフトウェア投資が大幅に抑制された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 競合について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

現在、当社の主力サービスであるビジネスチャット「direct」には、競合サービスが複数存在しており、一定の競争環境があり、更なる新規参入による競争の激化の可能性もあるものと認識しております。当該リスクに対しては、現場向けビジネスチャットという明確なターゲティングによる差別化を行うとともに、顧客の業務課題を解像度高く理解し、継続的にサービスのアップデートを進める方針であります。しかしながら、これらの競合サービスに対して効果的な差別化を行うことができず、当社が想定している事業展開が図れない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 技術革新への対応について

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社が事業展開しているソフトウェア関連市場では、技術革新や顧客ニーズの変化のスピードが非常に早く、その運営者はその変化に柔軟に対応する必要があります。当該リスクに対しては、最新の技術動向や環境変化を常に把握できる体制を構築するだけではなく、優秀な人材の確保及び教育等により技術革新や顧客ニーズの変化に迅速に対応できるよう努めております。しかしながら、当社が技術革新や顧客ニーズの変化に適時に対応できない場合、又は、変化への対応のためにシステム投資や人件費等多くの費用を要する場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 法的規制について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社は、サービスを提供する上で電気通信事業法、個人情報保護法等の規制を受けております。現在のところ、当社事業に対する各種法規制の強化が行われるという認識はありませんが、法規制の動向を常に確認するよう努めております。今後新たにプライバシー関連法規の制定や、インターネット関連事業者を規制する法的規制の整備・強化がなされた場合、当社の業務が一部制約を受け、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ プラットフォーム(Apple Inc.、Google Inc.)について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社サービスにおいて主に提供されるモバイルアプリは、Apple Inc.及びGoogle LLCのプラットフォーム運営事業者の仕様に従い、アプリ提供の申請、承認を受けることが重要な前提条件であり、当社はプラットフォーム事業者の規約や方針変更に対する情報を収集し、適切に対応する方針であります。しかしながら、これらのプラットフォーム運営事業者の動向や著しい仕様変更によっては、当社の事業展開や事業運営に影響を与え、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 事業に関するリスク

① 継続的な投資と営業損失計上について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:小)

当社は、継続的な成長のため、提供サービスの拡充や顧客数の拡大に努めており、開発や営業への投資を行ってまいりました。一方で、当社のビジネスモデルは、継続的に当社サービスを利用する顧客を増加させることで、収益を積み上げ投資回収を図る形態のため、2021年12月期は335,871千円、2022年12月期は316,494千円の純損失となっておりましたが、2023年12月期は46,056千円の純利益となりました。

2022年4月にリリースした「direct Apps」の開発や運用、新規顧客の獲得を目的とした広告宣伝投資等のマーケティング投資(テレビコマーシャルの放映、展示会への出展、ウェブマーケティングの実施等)を2021年12月期以降に積極的に投下してきたことが、経営成績が純損失となった原因の一つとなっておりました。

営業活動によるキャッシュフローは2022年12月期、2023年12月期と継続してマイナスとなっておりますが、費用対効果を見ながら投資を行い、新規顧客の獲得や既存顧客のアップセル等に注力して収益性が改善してきていることにより、2023年12月期以降は、営業利益及び当期純利益を安定的に計上できる見込みであることから、当社としては継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。

 

② 特定のサービス「direct」への依存について

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中)

当社は、DXソリューション事業の単一事業であり、特定のサービス「direct」に依存した事業となっており、事業環境の変化や、競合企業・新規参入企業との競争激化等が、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクに対しては、今後も「direct」を継続的にアップデートすることによって差別化を図るとともに、周辺サービスの開発・提供を行い、顧客への当社サービスへの浸透度を高めることにより、「direct」への依存度を下げてまいります。

 

③ 顧客単価について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社が提供するシステム及びアプリケーション等の価格体系や販売単価は、顧客からの要望、競合サービスにおける水準及び当社にとっての収益性等を総合的に勘案して設定しております。

当社にとって相応の収益性を維持・継続するため、顧客満足度を高めるための各種施策(例:継続的な機能追加、顧客サポート等)を実施しております。

しかしながら、これらの取り組みが十分ではない場合、競合サービスとの価格競争に直面して当社が提供するサービス価格の低下等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ ソフトウェアの開発について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社ではソフトウェア開発に関し、ソフトウェア開発プロジェクトに関する期間や費用の見積り及び顧客ニーズのヒアリングに基づく収益性について、妥当性の確認を行っております。しかしながら、顧客のニーズによる開発途中の要件変更や品質改善要求、開発遅延等により当初計画どおりの開発及びサービス提供がなされなかった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ システムトラブルについて

(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)

当社のサービスは、インターネットを介して提供されております。当社は、安定的なサービスの運営を行うために、サーバー設備の増強、セキュリティの強化、システム管理体制の構築等により、システム障害に対する万全の備えをしております。しかしながら、大規模なプログラム不良や自然災害、事故、不正アクセス、その他何らかの要因によりシステム障害やネットワークの切断等予測不能なトラブルが発生した場合には、社会的信用失墜等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 顧客から預かる情報の管理について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社では、提供するサービスの特性上、個人情報その他機密情報を顧客より受領する場合があります。当社におきましては、2016年12月に情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC27001及びISO/IEC27017)の認証を取得しており、情報管理の重要性を周知徹底するべく役職員に対し研修等を行い、情報管理の強化を図っております。また、情報セキュリティについては外部からの不正アクセス、コンピュータウィルスの進入防止について、システム的な対策を講じております。

しかしながら、当社が取り扱う機密情報及び個人情報について、漏えい、改ざんまたは、不正使用等が生じる可能性が完全に排除されているとはいえず、何らかの要因からこれらの問題が発生した場合には、顧客からの損害賠償請求等により損害が生じ、または、信用が失墜する等により、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 販売パートナー及びOEMパートナーについて

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社はSaaSサービスを顧客企業に提供しておりますが、当社による直販営業に加えて、当社から販売パートナーにサービスを卸し、ユーザー企業に再販する販売パートナーとの協業を行っております。また、OEMパートナーには当社サービスをOEM供給しており、OEMパートナーのブランドにてエンドユーザーへサービスを提供しております。当社は、販売パートナーやOEMパートナーに対して、日々の営業活動を通じて顧客企業に対する共同提案及び共同のカスタマーサクセス活動、またパートナーからのニーズを反映した新機能開発などを行っておりますが、パートナーの営業活動については当社のコントロールが及ばないことから、新規顧客の獲得が想定より進まない場合、解約が増加してリカーリングによる売上が減少した場合、又はパートナーと当社の関係が悪化した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 想定以上の解約が生じるリスクについて

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社のサービスは、顧客に継続して利用されることで収益が積み上がるストック型の収益モデルであることから、当社の継続的な成長には、新規顧客の獲得のみならず、既存顧客の継続が重要であると考えております。

既存顧客の継続については、機能の開発やサポートの充実により、継続率の維持・向上を図っております。予算及び経営計画には、実績をもとに一定の解約率を踏まえた継続率を見込んでおりますが、当社サービスの魅力の低下、追加機能やサポートに対する満足度の低下などにより、当社の想定以上の解約が生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 会社組織に関するリスク

① 特定人物への依存について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社の創業者であり、代表取締役社長CEOである横井太輔は、当社事業に関する豊富な経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定など、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。現在、同氏に過度に依存しないよう、経営体制の整備、人材の育成を行う等リスクの軽減に努めておりますが、何らかの理由により同氏による当社業務の遂行が困難となった場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。

 

② 人材の確保と育成について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

当社が今後更なる成長を成し遂げていくためには、優秀な人材の確保と育成を重要課題の一つであると位置づけております。当社は現在も優秀な人材の採用を進めておりますが、これらの要員を十分に採用できない場合や、採用後の育成が十分に進まなかった場合、あるいは在職中の従業員が退職するなどした場合には、当社の事業拡大の制約となり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 内部管理体制について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社は、現在の事業規模に応じた内部管理体制を整備・運用しており、今後は事業規模の拡大に合わせ、内部管理体制も強化させていく方針であります。しかしながら、事業規模の拡大及び人員の増加に合わせ、適時に内部管理体制の強化ができなかった場合、適切な事業運営が行えず、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) その他

① 配当政策について

(発生可能性:大、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社は、創業以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針でありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。

 

② 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

(発生可能性:大、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:中)

当社は、役員及び従業員に対するインセンティブを目的として新株予約権を付与しており、本書提出日現在における潜在株式数は403,200株であり、発行済株式総数に対する潜在株式数の割合は9.70%となります。これらの新株予約権が行使された場合、当社株式が発行され、既存株主が保有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。

 

③ 関連当事者取引について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社は、代表取締役社長CEO横井太輔から、金融機関借入に対する債務保証を受けており、その詳細は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 関連当事者情報」に記載のとおりであります。当社は、この債務保証について保証料の支払を行っておらず、また、金融機関との継続交渉により当該債務保証を解消していく方針であります。

④ 訴訟等について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社では、コンプライアンス及びリスク管理の徹底と社会的信用の向上を図ることを目的に、コンプライアンス・リスク管理規程を整備し従業員へ周知することで、法令違反などの発生リスクの低減に努めており、本書提出日現在において業績に影響を及ぼす訴訟や係争は生じておりません。

しかしながら、今後何らかの事情によって当社に関連する訴訟、紛争が行われる可能性は否定できず、係る事態となった場合、その経過又は結果によっては、当社の事業展開、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 知的財産権について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)

当社は、当社が運営する事業に関する技術・商標等の知的財産権の保護を図っております。しかしながら、当社が使用する技術・商標等の知的財産権について、何らかの理由で第三者からの侵害を保護できない場合、または、保護に多額の費用が発生する場合は、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社の提供するサービスが第三者の技術・商標等の知的財産権を侵害しないように留意しており、当社は本書提出日現在まで第三者の知的財産権を侵害したとして損害賠償や使用差止めの請求を受けたことはありません。しかしながら、第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。このような場合、当社に対する訴訟等が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 自然災害等について

(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)

大地震や台風等の自然災害や事故等により、当社の事業活動に必要な設備の損壊や電力供給の制限等の事象が発生した場合、当社が提供するサービスの継続に支障をきたす場合があります。また、損害を被った設備等の修復や、被害を受けた従業員に対する補償等の費用が発生する可能性があります。事業環境の変化に応じてバックアップサーバーの整備等により柔軟な対応を図っていく方針ですが、これらの事象が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置付けておりますが、現状において成長過程であり、財務体質の強化と事業拡大のための内部留保の充実等を図り、運転資金もしくは設備投資に充当することで更なる事業拡大をすることが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。内部留保資金につきましては、収益力強化のための開発投資や優秀な人材確保のための資金等に充当し、事業の継続的な発展のための資金として有効に活用していく考えです。

そのため、創業以来配当は実施しておらず、今後においても当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。

今後の剰余金の配当につきましては、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。現時点においては、配当実施の可能性及びその実施時期については未定であります。

なお、剰余金の配当を行う場合、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。また、当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款に定めております。